なぜ「5W1H」は舐められてしまうのか
今回のテーマは、玉置さんの提案による「みんな5W1Hを舐めすぎ」というもの。5W1Hとは、Who、What、When、Where、Why、Howの6つを指します。
玉置さんによれば、これらは多くの人が小学校の作文で習うため、作文ツールぐらいの感じでちょっと小バカにしている傾向があるといいます。
これ以来一切、中学の教科書にも高校の教科書も出てこないので、皆さん「5W1Hってああ」みたいな感じで知っているけど、「それが?」みたいな感じになりがちじゃないです?
岡島さんも、すでに知っている感、わかっている感が邪魔をしているのかもしれないと応じます。
しかし玉置さんは、ここに大きな見落としがあると指摘します。多くの人が身につけたいと願うロジカルシンキング、その基礎の基礎が実はこの5W1Hだというのです。
ロジカルシンキングというと、複雑な高度な思考ツールを覚えて使いこなしたいというイメージを抱く方がいると思うんですけど、日常的に日々の仕事の中でカジュアルにロジカルシンキングをできた方が、仕事の成果にもつながるはずなんですよね。
発言を「意味」に置き換える読み替え
玉置さんは、5W1Hをただの疑問詞のセットとして捉えると「仕事にどうやって使うねん」となってしまうと言います。そこで、思考を空間的に整理するためのメタフレームとして言葉を置き換えることを提案します。
Whoは「主体」、Whatは「対象」、WhenやWhereは「時間軸や文脈」、Whyは「動機・目的・因果」、Howは「方法・プロセス」。この読み替えによって、多くの仕事の問題や課題が一旦整理できるといいます。
誰か、ではなく「主体」
何、ではなく「対象・テーマ」
いつ・どこで、ではなく「時間軸・文脈」
なぜ、ではなく「動機・目的・因果」
どうやって、ではなく「方法・プロセス」
この6つの軸で今の課題を整理すると、点だった情報が立体的になり、面になるといいます。岡島さんはこれを「座標が決まるみたいな感じ」と表現しました。
「売り上げが下がった」をどう立体にするか
玉置さんは、具体例として「売り上げが下がった」という話を挙げます。これ単体では、ただの点にすぎません。
そこに5W1Hを当てはめてみると、話が一気に動き出します。
Who(主体)
30代から40代の女性の顧客が
What(対象)
オンラインショップでの購買を
When/Where(文脈)
8月に、関東圏で
Why(因果)
商品ニーズが変わったから
How(方法)
SNS施策が購買につながらなかった
一気に、売り上げが下がっただけの話が、なんかこう改善できそうな話になりません?
岡島さんも「だいぶ立体として立ち上がる感じがする」と応じます。単なる数字のデータには、何らかの原因や意味や価値がある。そのデータを意味に変えていくときの補助線として、5W1Hが使えるというわけです。
玉置さんによれば、分けられたら、ほぼほぼロジカルシンキングはできていると言ってもいいそうです。そして、この「分ける」「整理する」作業こそが実は一番難しいと語ります。
皆さんいろんなフレームワークを勉強されるんですけど、この分けるという作業が、一番できてなかったりするんですよね。
議論の「論点ずれ」を防ぐ共通の座標
5W1Hは、何かを思考するときに一旦考えてみる癖をつけると、まず足りない情報がわかるという利点があります。さらに玉置さんが強調するのが、チームでの議論における効果です。
会議では、売り上げ回復の方法を考えましょうとスタートしたはずが、気づくと紐付かない話をしていたり、AさんとBさんが違う角度で議論していたりすることがよく起こります。
サービスを良くしましょうという話をしているときに、私たちのオペレーターが使いやすいシステムにしようとしているのか、お客さんが買いやすいようにしているのか、その「誰が」がずれちゃうと全くかみ合わないじゃないですか。
玉置さんは、5W1Hが一致していれば議論は案外ずれないと言います。論点がずれ始めたと感じたら、もう一度5W1Hに立ち返ることで、お互いが違うところで話していると気づきやすくなります。
そして、5W1Hを共有できると思考が同期し、無駄なコミュニケーションを減らせるといいます。議論とは共同で思考することだからです。
玉置さんは、これが機能する理由を「みんなが知っているから」だと指摘します。高度なフレームワークは共有できませんが、5W1Hなら全員がわかる。一番共有されているフレームワークだから使えるというわけです。
5W1Hを「変数」にして発想を広げる
5W1Hは、漠然としたものの解像度を上げるだけでなく、変数として捉えることで創造的な思考にも使えると玉置さんは言います。どこかを1つずらしてみることが、新しい発想の起点になるのです。
Whoを変数として考えてずらすと、他の顧客層を考えるということなんですよね。今まで若者向けにやっていたものを、じゃあ高齢者向けにやったらどうだろうという創造的な思考につながりますよね。
岡島さんは、身近な例を挙げます。医療情報のYouTubeで1億再生を記録する先輩の医師の話です。
若者が多く見ている印象のあるYouTubeですが、その医療情報チャンネルは高齢者が多く見ていて、しかもアナリティクスを見るとテレビ経由でYouTubeを見ている人が多かったといいます。
玉置さんは、これをまさにいい例だと受け止めます。Whatは変わらないまま、残りの4W1Hを変えることで、全然違うサービスや市場になった話だというわけです。
指示・質問・AIへのプロンプトに効く実用性
5W1Hは、日常のさまざまな場面で使える実用ツールでもあります。玉置さんは、質問や指示のやり取りを例に挙げます。
「何か質問ありますか?」と言われたときに、聞いた話を5W1Hで整理しておき、抜けている軸があればそれを質問すればいい。上司からの指示を受けたときも同様で、抜けを埋めておかないとアウトプットのイメージがずれてしまいます。
上司からの指示があったときも、5W1Hで整理をして「あれ、ここがないな」というところは聞いておかないと、お互いのアウトプットイメージがずれる可能性があるんですよ。
玉置さんは、難しいロジカルシンキングの本を買うより、日々5W1Hで整理する場数を踏んだ方が近道だと勧めます。うまくできない経験を積み、その都度考える方がよほど身につくというわけです。
この考え方は、AIへの指示でも効いてきます。5W1Hがちゃんと入っているかどうかで、出力のずれが変わるといいます。
この5W1Hを雑に設定するのか、意味だけを考えて設定するのか、一旦立ち止まって考えると、自分の指示が割と曖昧だったり投げやりだったりするのに気づくと思うんですよね。
岡島さんも、前回のマネジメント回を経て、音源編集などを担ってくれている人への指示が「ふわっと投げすぎていたかも」と改まったと明かします。指示を出す側が5W1Hに気をつけることで、思うような成果が出ないのは自分のせいだと気づけるのです。
事実と解釈を分けるという、もう一つの基礎
岡島さんは、5W1Hが誰でも使えるように見えて、実は高度な話だと感じたと語ります。起きていることを正しく認知する、事実と解釈を分けるという難しさが背後にあるからです。
玉置さんも、これを5W1Hと同じくらいロジカルシンキングの基礎だと同意します。多くの人が、事実ではないことを事実だと思っているといいます。
「明日の太陽は東から昇る」は事実ですか?
玉置真理さんからの問い さんからの質問
玉置さんは、これは確定していないので事実ではないと答えます。私たちが認知している範囲では東から昇っていますが、明日西から昇る可能性もゼロではない。認知していない科学があるかもしれない、というわけです。極端な例ですが、思い込みを事実として扱ってしまう危うさを示しています。
玉置さんは、5W1Hを丁寧に使いこなせるようになると、的確な質問ができる人になり、わかりやすい指示を出せる管理職になれると語ります。
岡島さんは、こういう基礎こそ最初にレベルを上げるべきポイントだと締めくくりました。玉置さんも、みんながハッピーになり、いいリーダーになれる最短距離ではないかと応じています。
まとめ
小学校の作文で習うだけで軽視されがちな5W1Hは、実はロジカルシンキングの基礎の基礎であり、日々の仕事で使える実用的なフレームワークだという回でした。意味への置き換え、課題の整理、議論の同期、発想の展開、指示の精度向上まで、幅広く効いてきます。
- 5W1HはWho=主体、What=対象、Why=因果のように意味へ置き換えると、仕事の課題整理に使える
- ロジカルシンキングの最初の一歩は「分ける・整理する」ことで、これが実は一番難しい
- 議論の論点ずれは、5W1Hを共有し、ずれたら立ち返ることで防げる
- 5W1Hを変数として1つずらすと、新しい顧客層やサービスを発想できる
- 指示・質問・AIへのプロンプトも、5W1Hで抜けを埋めるとイメージのずれが減る




