リスナーだけが集まった説明会と、リーダーシップという新しいお題
この回は、玉置さんがゴールデンウィーク中に急遽開いたヒトハタの説明会の話から始まります。
急遽、「明日説明会です」みたいな感じで言われて。
やったら、参加者の方皆さんが、リスナーさんだったんですよ。
玉置さんはヒトハタの開講をポッドキャストでしか告知しておらず、集まったのはほぼリスナーだったと話します。文脈が共有されている分、話しやすかったといいます。
その説明会で、これまで番組で扱ってこなかった相談が出てきました。それがリーダーシップの悩みでした。
今まで話したことないなっていうのが出てきたのが、リーダーシップの話が出てきたんですね。
リーダー経験ゼロのまま社会人になる人が大半
玉置さんは、自分はリーダーシップ論に詳しい人間ではないと前置きします。それでも改めて話そうと思ったのは、多くの人が同じ壁にぶつかるからだといいます。
初めてリーダーになった人は、右も左もわからず、身近な知っているリーダーの真似をします。しかしそれが正解かわからないまま進み、壁にぶつかると話します。
ここで玉置さんは、そもそも学生時代にリーダーを経験する人は少ないと指摘します。
クラス40人いて、何人リーダー経験しましたかっていうと、1割もいないんじゃないですか?
大抵の人がリーダーとは縁がないまま社会人になるんですよね。
つまり、大抵の人がリーダーとは縁がないまま社会人になるということです。30手前で突然リーダーだと言われても、わからなくて当然だと玉置さんは話します。
20歳で社長になった玉置さんに「引っ張る」発想がなかった理由
玉置さんの原点は特殊です。20歳で社長になったとき、一緒に働く人は全員年上でした。
年齢だけでなく、社会人経験も相手のほうがありました。玉置さん自身の経験はゼロです。
そのリーダーシップのスタート地点が、「引っ張っていこう」とか「教えてあげよう」とかが皆無だったんですよね。
だから玉置さんは、自分より経験のある人たちに、どうすれば力を発揮してもらえるかだけを考えました。組織のゴールを達成するために、誰にどんな役割と環境を与えるか、という視点です。
そもそもリーダーだという意識さえ薄かったといいます。一緒に仕事をする仲間であり、代表取締役はあくまで役割だという感覚でした。
組織をピラミッドとして捉えてないわけですよ、頭の中で。
20代後半で芽生えた「教えてあげよう」が、部下の力を奪った
転機は20代後半でした。この頃、初めて自分より年下で経験の浅い人と働くようになります。
すると初めて、「この人にやり方を教えてあげよう」「こうした方がいいのに」という気持ちが芽生えたと玉置さんは振り返ります。
自分の経験値っていう定規で相手を測り始めるんですよ。
良かれと思ってアドバイスし、一生懸命サポートするほど、相手はだんだん力を発揮できなくなっていきました。
こっちの方が絶対いいはずなのに、なんで力発揮してないの?やる気がなくなったの?みたいな感じになってくるわけですよね。
20歳のときより経験もレベルも上がっているはずなのに、20歳のときの組織のほうがうまくいっていた。その違いを玉置さんは考えます。
ヒントは、自分が部下だった1年ちょっとの経験でした。自分で考えてやっているのに、相手のやり方を押し付けられ、価値観で「違う」と言われると、プライドが傷つきやる気を折られる。相手も同じだと気づいたのです。
「全員が最大限頑張っている」という前提で人と付き合う
玉置さんがたどり着いたのは、相手は自分とやり方も考え方も価値観も違い、何より頑張り方が違うということを認める姿勢でした。
人は自分と同じ頑張り方をしていないと、頑張っていないと判断しがちだといいます。
「やる気やったら徹夜しろよ」とか。それは私の頑張り方なんですよね。
時間をかけて力技でやりきるのが玉置さんの頑張り方でした。その目には、効率を考えて動かない人が頑張っていないように見えてしまう、と正直に語ります。
しかし、効率を考えることに時間を割くのは、その人なりの最大の頑張り方かもしれません。そこで玉置さんは、頑張っているかどうかを一切見ないと決めました。
全員最大限頑張ってるっていう前提で付き合うと。
理由は2つあります。頑張りは主観であり本人にしかわからないこと。そして、仮に頑張っていないとしても「お前頑張ってないよな」という言葉は、その人を頑張らせるのに一切役立たないことです。
「頑張ってるよね」から始める心理的安全性
この前提は、よく話題になる心理的安全性とも直結します。
「お前頑張ってないよね」っていう空気を出されたら、もう絶対安全じゃないんですよ。
一方で、「ちゃんと真面目にやってるよね。でも今うまくいってないよね」という前提なら、安全に会話ができると玉置さんは言います。
岡島さんも、頑張っていない人扱いの空気の中では意見が言いづらいと同意します。何を言っても「違うよ」と返される確率が高いからです。
玉置さんは、リーダーの役割はゴールに対してチームのリソースで結果を出すことだと整理します。本人のネガティブな感情は前進を阻む摩擦になるため、正直に言える環境のほうがゴールを達成しやすいのです。
正直に「やりたくない」とか「苦手だ」とか「しんどい」とかって言える関係性、環境の方がゴールを達成しやすいんですよね。
世代で変わる「正直さ」と、聞く側に求められる姿勢
ただし、そういうことを言ってもいい環境は多くない、と玉置さんは見ています。「甘えだ」と精神論で返す、そこだけ侍のようになる人もいます。
玉置さんは、自分たちの世代は仕事への依存度が高く、ネガティブな発言がタブーになりやすかったと分析します。「24時間働けますか」の世代だといいます。
そういうネガティブな発言をすることがこうタブーになっていて、こう振る舞わなければいけないみたいなものが、その一つ明確にあったような時代だったと思うんですね。
一方、生活を主軸に置く世代は「参加したくありません」と正直に言いやすい。だからこそ、聞く側であるリーダーが、その正直さを「むしろありがたい」と受け止められるかが大事になります。
嫌なことあったら言ってくれた方がいいんですよね。
玉置さんは、それを黙って去られるクレームとの対比で説明します。何も言わずに買わなくなる客より、クレームをくれる客のほうがありがたい。社員も同じだというわけです。
事実を変えなくても、解釈が変われば解決する
正直に言ってもらったからといって、必ず事実を変える必要はない、と玉置さんは補足します。人は解釈の世界で生きているからです。
たとえば「このルールは不条理だ」という不満があったとき、そのルールがなければどうなるかを想像してもらうと、「あった方がいい」に意見が変わることがあります。
ちょっとした見方を変えれば、今まで不快だったものが「あってよかったよね」に変わるみたいなことっていっぱいあると思うんですよね。
事実が何も変わらなくても、解釈が変われば解決する。ただし、アイデアを言ってもらえなければ、納得できないまま黙って辞めていくことになる、と玉置さんは指摘します。
だからこそ、正直に言ってくれる環境をつくることが、リーダーとして大事だと考えています。
AI時代のリーダーに残るのは「共感する力」
話題はAI時代のリーダーシップに移ります。指示する、方針を示す、評価する、管理する。これらはAIのほうがうまくできてしまう、と玉置さんは言います。
では人間に何が残るのか。よく挙げられるのが共感する力ですが、玉置さんはこれを本質的な真実だと捉えています。
相手にいい感じで動いてもらうには、相手を知る必要があります。何ができて何ができず、どこにやる気スイッチがあり、何を怖がっているか。それを知るには、たくさん話を聞くしかありません。
リーダーシップっていうと、方針を示して演説が上手いみたいなイメージあるかと思うんですけど、やっぱりこれも聞くことだと思ってるんですよ。
そして玉置さんは、共感の意味を独自に定義します。悲しい話に「かわいそうだね」と返すのは共感ではない、というのです。
完全無欠のリーダーには共感してもらえない
玉置さんは、完全無欠に見えるリーダーを例に出します。自分を律し、明るく元気で、どんな苦労も厭わず結果を出す人です。
その人に「めっちゃやりたくないんですよ」とか「だるいんですよ」って共感してもらえる感じしないじゃないですか。
怠けたい気持ちや人を見下す気持ちなど、褒められないような感情を自分の中に見つけていなければ、相手に共感することは難しい、と玉置さんは言います。
そのため、共感力を高めるには、まず自分がいろんな人の深い話を聞くこと、小説や物語、漫画を通じて人の機微に触れることが必要だと話します。
同時に、自分を知ることも欠かせません。自分の中にある認めたくない感情まで見つけておかないと、相手と同じ感情を探し当てられないからです。
悲しい出来事の相手に「かわいそうだね」と外側から声をかけること
相手が持っている感情を、自分の中にも見つけること
最もオーラのない監督が結果を出せた理由
玉置さんは、自分と同じスタイルの人物として、中竹竜二さんのフォロワーシップを挙げます。早稲田大学ラグビー部の監督を務めた人物です。
キャッチコピー、「最もオーラがない監督」みたいな。
前任はカリスマ性のある監督で、学生たちはすごいコーチングを期待していました。しかし中竹さんは、3年生までレギュラーになれず、それでも人望で4年生の主将になった経歴の持ち主です。
決して優れたプレーヤーではなかった彼は、選手たちのほうがすごいという前提から始め、自主性を持たせて自分たちで考えさせるマネジメントをして、結果を出しました。
リーダーシップは才能ではなくスキルである
玉置さんは、こうしたスタイルのほうが合うリーダーは多いはずだと言います。クラスでリーダーをやらなかった9割の側の人でも果たせる役割だからです。
陽キャですごく「これやるぞ、みんなついてこい」みたいなキャラじゃなかったとしても、リーダーという役割は果たせるんですよね。
ここで玉置さんは、リーダーシップ観の転換点に触れます。かつては生まれ持った特性とされていましたが、ハーバード大学の教授が「リーダーシップはスキルだ」と示し、身につけるものへと考え方が変わっていったといいます。
つまり、リーダーシップは特性ではなくスキルだということです。学生時代のリーダーは特性のあるカリスマ型で、むしろ弱みを相談されるには不利かもしれない、とも玉置さんは指摘します。
リーダーシップは生まれ持った特性・才能だという考え方
リーダーシップは後天的に身につくスキルだという考え方
経験や偶像が、かえってリーダーシップを邪魔する
玉置さん自身、経験を重ねるにつれて、弱みを相談される力が損なわれていく感覚があるといいます。
若い頃を共にしたスタッフは、玉置さんのダメさも見てきているため、完璧な人間として扱いません。困った一人では来られない人、という扱いが、かえって楽だったと語ります。
キャリアを重ねたことによって勝手に思われる偶像みたいなのが出てくるじゃないですか。
その偶像のせいで、「玉置さんみたいな完璧な人から見たら私なんて」と言われ、「そんなことないよ」とわざわざ説明しなければならない。それがリーダーシップの発揮を邪魔することもある、と話します。
だからこそ、経験が浅い、部下と年が近い、できないことが多い人のほうが、玉置さんの言うリーダーシップを発揮しやすいのだといいます。
先頭に立たなくていい。人を動かすのが仕事
玉置さんは、みんなが思う「あるべきリーダー像」を捨てて、シンプルな基本に立ち返ることを勧めます。仕事として目的を達成できればいいのです。
チームスポーツなら、自分が司令塔になり、シュートを決める必要はありません。チームが勝てばいいのです。
岡島さんは、エースストライカーにならないとリーダーになれないと思い込みがちだが、そんなスター性はなくていい、とまとめます。
人がどうやったら機嫌よく動いてくれるかを考える仕事ですからね。
玉置さんは、金銭的なインセンティブやペナルティで動かすのは仕組みの話であり、リーダーシップではないと区別します。そこに過剰に依存せず、人のやりたい気持ちを引き出すのが本質だといいます。
信頼関係を築く
お互いに信頼できている前提をつくる
相手を知る
何ができ、何を怖がり、どこにやる気スイッチがあるかを聞いて知る
環境を整える
役割・情報・人の組み合わせなど、力を発揮できる条件を用意する
やりたい気持ちを引き出す
どうすれば機嫌よく動いてくれるかを考え続ける
最初の壁は「自分がリーダーなんて」と「頑張ってくれない」
岡島さんは、この回全体を「自分がリーダーなんて、と止まってしまう最初の壁を外す話だった」と受け止めます。
玉置さんは、その次に来る壁として「思うように頑張ってくれない」を挙げます。ついつい「お前らもっと頑張れよ」と言いたくなるのです。
「お前頑張れよ」って言われたら頑張りたくなくなりますもん。
相手も相手なりに考えて頑張っている。それを本気で思えたらうまくいく、と玉置さんは繰り返します。頑張っているかどうかはこちらからは本当にわからないからです。
相手も相手なりに考えていて頑張ってるっていうことを、本気で、そこ本気で思ったらうまくいきます。
最後に玉置さんは、世の中に幸せなリーダーが増えてほしいと締めくくります。それは幸せに働ける人を増やすという、ヒトハタと番組の目指すところでもあります。
まとめ
この回は、リーダーシップは生まれつきの才能ではなく後天的に身につくスキルだ、という一点を軸に語られました。20歳で全員年上の会社を率いた玉置さんの経験から導かれたのは、先頭に立つより、相手を知り、頑張っている前提で信頼関係を築き、やりたい気持ちを引き出すという実践でした。
- 学生時代にリーダーを経験する人は1割以下で、大半はリーダーと縁のないまま社会人になる
- 一番いいやり方は効率のいいやり方ではなく、その人が最大限に力を発揮できるやり方
- 頑張っているかは主観でわからないので、全員が最大限頑張っている前提で付き合う
- 共感とは、相手が持っている感情を自分の中にも見つけること
- リーダーシップは特性ではなくスキルであり、カリスマ性や経験がなくても果たせる




