マネジメントを語るのが一番難しい理由
この回のテーマは、マネジメントとAIの使い方です。岡島さんが提案し、玉置さんが応じる形で話が始まりました。
ただ玉置さんは、マネジメントの話が一番難しいかもしれないと切り出します。ずっと考え続けていて、まだ正解にたどり着いた感覚がないというのです。
まだ自分が「これだ」とか、正解に至ったっていう感じがないんですよね。
やればやるほど、こう、山の高さが見えてしまうみたいな。
若い頃のほうが「マネジメントはこうあるべきだ」と無邪気に言えた、と玉置さんは振り返ります。
一方で、聞き手にとっては「一番」や「ランキング」と言われたほうが受け入れやすい、というジレンマもあると話します。
本質的な話をしたとしても、誰にも耳を傾けてもらえなかったらゼロなので、受け入れてもらいやすい角度で話を伝えていくことは必要なのかなと思ってます。
そのうえで、AIの使い方と絡めたほうが、マネジメントの話はまだしやすいと玉置さんは言います。ここから具体的な話へ移っていきます。
AIも部下も、つまずくのは「指示が曖昧」だから
玉置さんは、そもそもマネジメントが得意でない人は、AIを使うのもあまり上手ではない、と指摘します。
マネジメントの癖がやっぱり出ちゃってるんですよね。
両者に共通するのは、指示が明確かどうかだと言います。何をやってほしいのかがちゃんと言語化できていることが必須だというのです。
ところが実際には、そこを曖昧にしてしまうことが多いと玉置さんは言います。喋りながら考えたり、たくさん喋ることで伝えた気になってしまうのです。
たくさん言っちゃった方がその場で早く伝わるから楽なんですけど、受け手からすると結局何だったの?ってわかんなかったりする。
これは自分への反省も含めた話だと玉置さんは付け加えます。言われたことをAIに要約させると、まったく違う内容が返ってくることもあると言います。
そもそも指示が間違えてるので、アウトプット間違えるに決まってるじゃないですか。
だからこそ、一度自分のところで言語化し、突き詰めて考えることが必要だと玉置さんは話します。
岡島さんも、部下目線では「とにかくこれをやってください」と一行でもらったほうがわかりやすいのでは、と応じます。指示は短いほど、やる側は楽になるというわけです。
「なんか考えといて」とか「うまくやっておいて」みたいな指示って、いやそれ困るよねって思うんですけど、案外それに近いことを日常的にしちゃってる。
言葉数の多さでごまかしてしまうというのが、曖昧な指示の正体だと玉置さんは言います。
情報を渡しきる。相手には「ない」前提で伝える
玉置さんは、明確な指示はスタート地点にすぎないと続けます。目的やゴール、期待する成果、使えるリソース、やってはいけない制限など、周辺の情報も伝えないと絞り込めないと言います。
ここで重要なのは、自分が無意識に使っている情報の存在です。感覚や経験で知っていることは、相手には備わっていません。
相手がないという前提で、足りない情報をきちんと伝えてあげる。そうしないと、望んだ結果が出るわけがないんですよね。
精神論では乗り越えられない、と玉置さんは言い切ります。指示に対して違うものが出てきて、修正が面倒だから「自分でやった方が早い」となるパターンは、マネジメントが苦手な人によくあるといいます。
そしてこれは、AIのプロンプトとまったく同じだと玉置さんは重ねます。曖昧な指示ではずれたアウトプットが返り、目的やゴール、制約まで伝えたほうが確度の高い答えが出るのは、人もAIも変わらないというわけです。
AIと人が同じって言っちゃうと語弊があるかもしれないんですけど、でも思考のたどる道は同じじゃないですか。
一つ工夫として、玉置さんは日常からの情報共有を挙げます。指示のたびに大量の情報を渡すのは負荷が重いので、目的やゴール、市場環境、自社のリソースといった前提を日々共有しておくのだと言います。
そのつど大量の情報を渡すため負荷が重く、伝え漏れも起きやすい
目的・ゴール・リソースを日々共有しておき、指示は必要分だけで済む
これもAIと同じ構造だと玉置さんは言います。プロジェクトに必要な情報を最初に入れておけば、その後のタスクにも引き継がれるのと同じことを、人にもやる必要があるというのです。
「能力差より情報差」が結論を分ける
話の核心として、玉置さんは結論や行動がずれる原因を、能力差ではなく持っている情報の違いだと言います。岡島さんも、この視点を面白いと受け止めます。
だからこそ、優秀な人を採用することよりも、情報の格差をなくすことが大事だと玉置さんは続けます。
社長しか知らない情報があったら、それは社長しかその判断はできませんよになっちゃうじゃないですか。
みんなが等しく同じ情報を持ち、それを正しく解読できていれば、よほど複雑なケースを除いて、自分で考えて同じ結論を出せるはずだと言います。
一方で、指示を出してもずれることはあると玉置さんは認めます。そこで「自分でやった方が早い」と巻き取ってしまうのが、マネジメントの初期段階で起こりがちなつまずきです。
一人でそうだったら、20人のスタッフをマネジメントしていくとか絶対無理じゃないですか。
結果、使える人間がいない、優秀な人が欲しいという話になりがちだと玉置さんは指摘します。
とんちんかんなアウトプットが出たときこそ、まず自分を振り返るべきだと玉置さんは言います。相手を修正するのではなく、次回以降の自分の指示をどう修正するかを考えるのです。
岡島さんは、汲み取ってくれる優秀な部下がいても、その人がいなくなれば同じ問題が起きると整理します。誰にでも伝わる指示と情報を渡せれば、任せた仕事のクオリティが底上げされる、という理解です。
ずれても巻き取らず、修正を重ねる
玉置さんは、ずれたとしても根気よく正しいアウトプットが出るように修正をかけるべきだと言います。これもAIと同じで、ずれたのは指示か情報が間違っているからだというのです。
自分で答えを出してしまえば、その件は早く済みます。しかし次からも同じずれたアウトプットが出る状態は変わりません。
自分で答え出しちゃったら、その件に関しては早く済むかもしれないんですけど、次からもやっぱり同じずれたアウトプットを出す状態が変わらないので。
コミュニケーションを重ねながら修正していくのは、人間対人間の関係性を育てることでもある、と玉置さんは話します。
最初は面倒くさいと思います。マネジメントしたくないとか嫌いって人って、大体このプロセスが嫌いなんですよね。
岡島さんは、プレイヤーとして優れた人ほど「自分がやった方が早い、正確」となりがちだと補足します。
そこで玉置さんは、100点を取る必要はない、という割り切りを持ち出します。岡島さんも、以前玉置さんが70点を許容して仕事を進める話をしていたと振り返ります。
大事なところ、根幹だけクリアできてれば前に進むじゃないですか。それぐらいの割り切りをした方が、マネジメントのストレスは減ると思うんですよね。
相手も精一杯頑張っている、という前提に立つ
話はテクニック論から、捉え方の問題へ移ります。マネジメントにストレスや不満を抱え続けるか、少し楽しむかは自分の選択だと玉置さんは言います。
仕事ができるタイプの人に玉置さんがまず伝えるのは、「皆があなたと同じ頑張り方をするわけではない」ということだそうです。
人は自分と同じような頑張り方をするって、絶対デフォルトで思ってるんですよね。
だから、仕事が終わっていないのに早く帰った人を見て「頑張っていない」と判断しがちだと玉置さんは言います。しかしそれをやってもプラスがないと言い切ります。
そこで、相手も精一杯頑張っている前提で会話することが大切だと玉置さんは言います。「お前頑張ってないよね、もっとできるよね」が滲むと、うまくいかないケースが多いというのです。
岡島さんが「本当に頑張っていない時もあるのでは」と問うと、玉置さんはそれは考えないほうがいいと答えます。頑張っているかどうかにかかわらず、より頑張ってもらえばいいからです。
頑張ってるか頑張ってないかは考えずに、どっちにしてもより頑張ってもらえばいいわけなんで。より機嫌よくやってもらった方がいいじゃないですか。
キャンセル界隈と、相手への敬意
話題は、当時トレンドになっていた「残業キャンセル」に及びます。岡島さんが、実際には頑張っていない人もいるのではと想像で持ち出しますが、玉置さんはそれも違う頑張り方だと受け止めます。
玉置さんは、キャンセル界隈という言葉を偉大な発明だと評します。「やらなければいけない」に縛られた自分を、簡単に解放できるからです。
やらなければいけないと思って、心を殺しながらやってたことをやめてしまったら、時間と心の余裕ができて、仕事にもプラスになってるはずだと思う。
相手を頑張っていると認めることと、期待しすぎないことはセットだと玉置さんは言います。しかも人は、自分を基準に期待してしまうと指摘します。
できる人ほど「そんなの簡単でしょ」「ちょっと考えればわかるでしょ」と思いがちで、それは言わなくても伝わってしまう、と玉置さんは話します。
その解決策として玉置さんが挙げるのが、本気で相手の強みを見つけることです。誰と向き合っても、自分が全面的に優れていることはないからです。
岡島さんは、その敬意は能動的に探しに行かないと見つけづらいと応じます。ぼんやり生きていると見落としてしまう、というわけです。
AIに主体を奪われないために
最後にAIの話へ戻ります。岡島さんは、AIも物によって得意分野が違うと指摘します。玉置さんは、「AIはバカだ」と結果を笑うより、うまく使える角度を見つけたほうがいいと言います。
こういう風に使うとすごくいい結果出すよねっていう、使える角度を見つけた方がいいですよね。
岡島さんは、OpenAIやGeminiの新機能に触れ、みんながアイアンマンのトニー・スタークのように指示だけで仕事を任せる方向に進むと語ります。玉置さんも、2年経たないうちに多くのことがストレスなくできるようになるだろうと見ています。
一方で玉置さんは、恐ろしいリスクも挙げます。自分の意思やWillが曖昧だと、AIの提案を鵜呑みにして、自分の考えがない状態になってしまうというのです。
岡島さんは、AIの言う通りに動くことで、逆に人間が物理世界へのインターフェースになってしまうような逆転を想像します。玉置さんも、思考や行動の理由が全部AI由来になれば「物体」だと応じます。
自我というものが、良いのか悪いのか曖昧になるんでしょうね。
自分をしっかり持つという着地で、この回は締めくくられました。
まとめ
AIも部下も、成果を左右するのは能力そのものより、渡された指示と情報の質だという回でした。曖昧な指示を情報量でごまかさず、前提を共有し、ずれたら自分の指示を見直す。その積み重ねが、人にもAIにも効くマネジメントの基本として語られました。
- 何をしてほしいのかを、主語と述語で明確に言語化して伝える
- 目的・ゴール・制約・リソースなど、相手が持っていない前提の情報を渡しきる
- 結論や行動のずれは、能力差よりも持っている情報の差から生まれる
- ずれても巻き取らず、次回の自分の指示を修正しながら関係性を育てる
- 相手は精一杯頑張っている前提に立ち、強みを見つけて敬意を持つ




