仕事も恋愛も、すべては期待値調整だった
今回のテーマは「期待値調整」です。言葉としては聞いたことがある人が多い一方で、日々自分の期待値を意識的に調整している人はそれほど多くないのではないか、と玉置さんは切り出します。
期待値調整が大切だよねって分かっている方はいると思うんですけど、じゃあ日々自分の期待値調整をしているって方がどれだけいるかというと、そんなに多くないんじゃないかなと思いますね
そのうえで玉置さんは、いろいろな人の話を聞くなかで、仕事も恋愛も人間関係も全部が期待値調整につながっているのではないか、と感じたと話します。
仕事も恋愛も人間関係も、なんか全部期待値調整じゃんって思うことがあったんですね
岡島さんは、期待値とはもともと数学で習う概念であり、ここでは相手が自分をどれくらい評価しているか、それをこちらでどうコントロールし、どう上回るかという話だと整理します。
玉置さんは、この期待値がずれていることこそが、全ての人間関係の摩擦の正体なのではないかと考えていると語ります。
期待値はどうやってできる?3つのパターン
期待値のでき方には、大きく分けて3つのパターンがある、と玉置さんは整理します。
相手が勝手に作る
「この人はこういう人だ」「ゴミ捨てをしてくれる人だ」と、相手が思い込みで期待値を作る
自分から上げに行く
よく思われたいあまり、実力以上のことをして期待値を上げてしまう
過去の実績で固定される
一度できたこと・やってくれたことが、再現性があるものとして固定される
1つ目は、相手が勝手に「この人はこういう人だ」と思い込んで作るパターンです。私たちは他人に対して、嘘をつかない人だ、遅刻しない人だ、といった仮説を必ず立てて付き合っており、その仮説の中に期待値も含まれています。
2つ目は、自分から期待値を上げに行ってしまうパターンです。結婚当初にゴミ捨てをしていた夫は、よく思われたいあまりに実力以上のことをしてしまっているのだ、と玉置さんは例を挙げます。仕事でも「できる人だと思われたい」「できない人だと思われたくない」という気持ちから、実力以上に見せに行くことはよくあると言います。
3つ目は、過去の実績で期待値が固定されるパターンです。
たまたま営業先で受注が取れましたっていうことがあると、それぐらいはできる人だっていう実績に基づいて固定するじゃないですか
そして次に受注が取れなくなると、「お前最近頑張ってないよな」という話になってしまう。これは過去の実績に再現性があると思い込まれてしまう例だ、と玉置さんは説明します。
普通にしているだけで、期待値は下回っていく
こうしてできた期待値を上回れば、相手は喜び、プラスの感情になります。一方で下回ると、残念・がっかり・怒り・悲しみといったネガティブな感情になってしまいます。
玉置さんが最も注意すべきだと指摘するのは、普通にやっているだけで期待値を下回ってしまうという構造です。相手が「毎回同じ成果が出せる」「毎回同じことをしてくれる」と期待していると、ほとんどの場合それを裏切ることになります。
つまり気持ちがなくなったわけでも、頑張っていないわけでも、不誠実になったわけでもないのに、そう思われてしまう。玉置さんはこれを「期待値の不条理な仕組み」と呼びます。
岡島さんは、この期待値を「見えないパラメータ」に例えます。
RPGとかやったらゲージが出るんだけど、超大事なのに見えないみたいな。現実世界だから謎なんですけど
仕事もプライベートも、相手の期待値を上回るゲームをずっとしなければならない側面がある、と玉置さんは言います。上司や会社が役職に求める期待値を超えれば昇進・昇給につながるのも同じ構造です。放っておけば下回るものを、上げ続けるゲームを強いられている、というのがまず理解すべき前提です。
やりがちな失敗は「いい人を演じる」こと
この構造の中でやりがちな失敗が、自分をよく見せようとすることだ、と玉置さんは続けます。入社面接で自分を盛るのはその典型で、「実はかなり遅刻していました」「この実績もほぼ僕じゃなくても大丈夫です」と正直に言う人はいません。
岡島さんは、むしろそこで正直に言うのは「スーツを着てこない」ようなもので、メタに見ればおかしいと感じられる、と応じます。
仕事だけでなく、人間関係でも「いい人に思われたい」という気持ちはデフォルトで持っている人が多い、と玉置さんは指摘します。頼まれてもいないことを親切でやってあげるのもその一例です。
一期一会の親切ならそれでいいものの、定期的に顔を合わせる相手だと話が変わります。前はやってくれたのに、と過去のプラスが基準になり、やらなくなった瞬間にマイナスに転じてしまうのです。
どちらかというと、過去にプラスがあったってだけの話なのだが、マイナスになっちゃうっていう
さらに「行けたら行きます」のような曖昧な対応も、期待値をずらす原因になります。相手が「来ないんだな」と受け取ればいいものの、「来るんだな」と受け取れば、結果として「約束を破ったやつ」になってしまいます。
日本人的に「ノー」と言いづらく、「多分」「一応」「確認してみますね」と言ってしまう。本人は本当に保留しているだけでも、相手は「確認してくれる」と期待し、放置されると怒りに変わる。その場のつらさを避けるために期待させたまま放置し、より大きな問題になることも多い、と玉置さんは語ります。
いつの間にか積み重なる「人間関係の負債」
問題が大きくなって相手が怒ったり、会社でトラブルになったりすれば「期待値コントロールをしくじった」と表面化します。しかし、そこまでいかずに静かにがっかりされていることも多い、と玉置さんは言います。
いつの間にかがっかりされることが積み重なり、人間関係に変な負債がたまっていく。上司からしても「なかなか信頼できないな」と思われれば、いいチャンスや大きな仕事を任される機会が減ってしまいます。
そしてそれが自分の中では、「なんで私じゃなくてあの人なの?」「贔屓してるんじゃない?」という不満として表面化する、と玉置さんは説明します。
岡島さんは、双方に悪意はないのに悲しみだけが生まれるこの構造に驚きます。
別に悪い人を詰め込んだわけじゃなくて、ちょっと親切なだけの人を普通に集めただけでそうなっちゃうんじゃないか
玉置さんは、これが自動化されていることこそ恐ろしいと同意します。原因が分からないと、人は別のところに原因を求めてしまう。だからこそ、周りで起こる出来事を「期待値のずれではないか」という目で見始めると、問題が解けることが多いと語ります。
実践編:再現性があるかを、自分で見極める
ここからは実践編です。誰にも親切にしない人になったり、面接で自分がいかに最低かを話したりするのは現実的ではありません。いい人でいたい気持ちは持っていていい、と玉置さんは前置きします。
大事なのは、「頑張ります」と言うときに、これぐらいなら何回でもできるのか、今回だけ無理して頑張れるのかを、自分で立ち止まって考えることです。
玉置さんは、シフトを代わってほしいと頼まれた場面を例に挙げます。毎回頼まれてもYESと言えるのか、今回だけならいいのかで、相手への伝え方を変える必要があります。
ごめん、ちょっと全部は無理なんだけど、この部分だけだったらいいよっていう引き受け方をしてあげたらいい
仕事でたまたまいい成果が出たときも同じです。運が重なって成約できた例外を、謙遜ではなく「これは再現性が高い話ではない」とちゃんと勇気を持って伝える。それだけで、相手の期待値を「次回は違うかもしれない」という方向に持っていけます。
曖昧な返事より、「制約」で説明する
親切がすれ違うのを防ぐには、自分から防御することが必要だ、と玉置さんは言います。「平日の夜なら代われるけど、土日はごめんね」と最初から言っておく。等価交換でなければ嫌なら「今度私がダメな時も代わってね」と伝えておく。これはいやらしい話ではなく、人間関係をこじらせないための工夫だと強調します。
断るのが嫌で曖昧にしてしまうときも、感情ではなく制約で説明するのがコツです。「土日は子供の面倒を見なきゃいけないから難しい」と物理的な条件で伝えれば、「冷たい人」とは受け取られません。
仕事でも「嫌だ」ではなく、「その時間は難しい」「この仕事を何日までに終わらせなきゃいけないので余力がない」と、できない構造を相手にも分かる形で説明する。返事を先延ばしにしたり曖昧にしたりせず、感情論ではなく説明することで、期待値のギャップが生まれなくなります。
さらに、期待値そのものを言葉にして共有することも大切です。家事の分担を暗黙の了解で進めると「前はやってくれたのに」とすれ違いますが、言語化して共有すればずれません。
玉置さんは、今回話しているのは期待値を「下げる」話ではなく、誤解がないように調整する話だと整理します。
放っておいたら期待値はずれるっていう前提に立つんですよ。なので、ずれたら困る期待値はちゃんと言葉にする、共有する、誤解がないように調整する
いい人を過剰に演じない、明るく短く断る
いい人を「過剰に」演じないよう努力しておくことも重要です。玉置さんは、頼まれていないことはわざわざしない、引き受けるかどうかは「よっぽど疲れていてもやってあげるか」を基準に考える、と自身のやり方を明かします。
調子がいいときに引き受ける場合も、「今日はたまたま忙しくないからいいよ」と伝えることで、「忙しかったらダメ」というラインを暗に共有できます。
「ノー」を言うと嫌われると思われがちですが、長期的にはちゃんとノーを言える人のほうが大きな摩擦を起こさず、信頼も築きやすいと玉置さんは言います。断るときの心がけは「明るく短く」です。
Noっていう摩擦を過剰に評価しているからであって、明るく短く断るっていうことの方が実はダメージ小さいんですよね
申し訳なさそうに長々と言い訳をするより、「ごめん、ちょっと時間ない」と明るく簡潔に断るほうが摩擦は少ない。過剰に恐縮されると、言われた側も気持ちが重くなってしまうからです。
そして、無理に引き受けない人だという評価が上がれば、むしろ頼みやすくなる。ダメなときはダメと言ってくれる人のほうが信頼されるのです。岡島さんも「明るく短く断る」は練習したいと応じます。
いい人ぶらず、自己開示で期待値を下げておく
もう一つのコツは、いい人ぶらずに自己開示をしておくことです。露悪的に自分を下げる必要はありませんが、等身大の弱みやダメなところも出しておく。できないことはできないと伝えておけば、期待値を無用に上げずに済みます。
玉置さんはこれを、身近な例えで表現します。
不良が雨に濡れた子猫を大事にしているといい人に見える理論ですよね
岡島さんは、ヤンキーは期待値がめちゃくちゃ低いから、暴力を振るっていないというだけですごく見える、と受けます。そこまで極端でなくても、自分を完璧に見せないよう開示しておくことは、期待値コントロールの最もベーシックな方法だと玉置さんはまとめます。
必要以上に「いい人なんですよ」という感じを出さないほうが生きやすい。これは無駄に高い期待値を持たれないための、リスクヘッジでもあるのです。
「調整」から「設計」へ、視点を変えると楽になる
玉置さんは、期待値は多くの人がこれまで意識も介入もしてこなかった領域であり、そこに積極的に介入していこうと提案します。相手に「私に何を期待していますか」と質問することも、多くの人はしたことがないはずです。
仕事なら特にやりやすく、「私にはこういうことを期待していますよね」と確認すれば、仮説でしかなかった期待値が現実のものになります。それは相手の中でも期待値を言語化させ、その期待値に基づいて評価してもらえる効果があります。
そのうえで、毎回のコミュニケーションで再現性のあるなしを調整することが、摩擦を減らす鍵になります。玉置さんは、この再現性にはこだわったほうがいいと繰り返します。
岡島さんは、期待値調整は仕事でよく問われるものの、具体的なやり方を教わったのは初めてかもしれない、と振り返ります。
具体的にこうやって調整するんだよみたいな話を、ちゃんと教わったのは初めてかもしれないですね
さらに二人は、言葉のニュアンスにも注目します。「調整」だと相手に合わせるように聞こえるが、主語はこちら側です。
期待値設計とかですよね
岡島さんは、「設計」のほうが、自分から作る・仕組むという意識が出て、行動が変わりそうだと同意します。
日程調整のように、相手に合わせるニュアンスが出やすい
主語が自分になり、期待値を能動的に作る・仕組む意識が生まれる
自分の期待値も見直せば、がっかりしなくなる
この視点は、自分が他人に抱く期待にも応用できます。玉置さんは、自分ががっかりするのは、たいてい相手への期待値を高く持ちすぎているからだと指摘します。
だからこそ、相手に何かを頼むときも「この前やってくれたのは、再現性のあることなのかな」と確認したほうがいい。「無理してない?大丈夫だった?」と聞いてあげることも大切です。
自分の期待値設計を見直すことで、悲しみやがっかりを相手のせいにせず、「自分の期待値設計がおかしかったかな」と捉え直せる。そうすれば感情的な問題ではなくなり、生きやすくなる、と玉置さんは語ります。
岡島さんは、あまり頑張っていなくても期待値を超えるだけで「すごくいいやつ」と評価されるお得さにも触れます。結果は絶対的な数字よりも、相手の期待値を超えたかどうかで測られることが多いからです。
変に演じるとか、ややこしいことは全然しなくていいので、調整する、誤解を取り除くみたいなことだけやってれば十分かなと思います
まとめ
人間関係の摩擦の多くは、言葉にしないまま形成される期待値のずれから生まれます。放っておけば期待値は下回るという前提に立ち、いい人を過剰に演じず、再現性の有無や制約を明るく短く伝えて誤解を取り除く。それが仕事も生活も楽にする「期待値設計」の実践だと語られた回でした。
- 期待値は「相手が勝手に作る」「自分から上げに行く」「過去の実績で固定される」の3つのパターンで生まれる
- 普通にしているだけで期待値は下回るため、放っておくと人間関係に負債がたまる
- 引き受ける前に「何回でもできるか/今回だけか」を見極め、再現性の有無を相手に伝える
- 曖昧な返事や過剰な親切は避け、感情ではなく制約で説明し、明るく短く断る
- 「調整」ではなく「設計」と捉え、自分の期待値も見直すことで、がっかりを減らして楽に生きられる




