📝 エピソード概要
今回のゲストは、大ヒット作『チ。』などで知られる漫画家・魚豊さん。ANRI代表の佐俣アンリ氏が、既存のイメージに当てはまらない「ニュータイプ」の魚豊さんの熱源に迫ります。
「売れること」を大衆芸術としての価値と捉える独自の歴史観や、デビュー作『ひゃくえむ。』が直面した市場の壁、そしてそこから生まれた徹底したマーケティング戦略について詳細に語られます。クリエイティブな世界における「稼ぎ」と「市場評価」へのこだわり、そして編集者とVCの役割の共通点まで、ビジネス視点を取り入れた議論が展開されました。
🎯 主要なトピック
- 漫画家・魚豊の出自とペンネームの由来: 中流家庭に生まれ、学生時代に漫画『バクマン。』に影響を受けて漫画家を目指す。ペンネーム「魚豊」は、好きなハモ(魚)から派生した居酒屋風の、意図を入れない適当な名前である。
- 漫画家という選択と「売れること」への意識: 絵を描く職業として漫画家を選んだのは、時間と費用がかからず始めやすかったことに加え、「開かれたマーケット(市場)で評価されたい」という稼ぎへの強いモチベーションがあったため。
- 哲学と歴史観が裏付ける「売れること」の重要性: 哲学など人文系の知識を好み、2000年前の言葉が現代に届く奇跡に魅力を感じる。偉大な作品とは長期的に人々の心に響き続けるものであり、「本物は結局売れる」という強い信念を持つ。
- デビュー作『ひゃくえむ。』での市場での挫折: 最初の連載がアプリで配信された際、熱烈な期待とは裏腹に全くバズらず大挫折を経験。この失望はスタートアップがプロダクトをリリースした時の感覚に酷似していた。
- 作品を変えずに売り方を変える戦略: 内容は絶対に曲げず、売るために「できることは全部する」と決意。印税を全てターゲティング広告に費やし、フォロワーを増やすなど、徹底したマーケティング施策を素人ながら行った。
- 編集者とVCの役割の比較: 漫画編集者の役割の多様性(原作者、コーチ、プロデューサー)はVC(ベンチャーキャピタリスト)に似ている。佐俣氏は、VCの役割を「大量のデータから事象を相対化する助産師」に例え、人の金を預かるからこそ頑張れるという独自のモチベーションを語った。
💡 キーポイント
- 魚豊さんは、自作のマーケティング機能を編集者任せにせず、市場の反応を分析し、自ら具体的な施策(Twitter広告など)を実行した。この「マーケティングを手放さない姿勢」が成功の鍵となった。
- 挫折を乗り越える原動力は、閉じたコミュニティ(編集部内)ではなく、開かれた市場で評価されない責任を100%自分にあると自認し、作品への信念を貫く姿勢だった。
- 哲学が2000年の鮮度を保って現代に届くように、作品の真価は時代の権力や言語を超えて訴求し続けられるかにあると考えている。
- 佐俣氏の投資判断は、事業計画よりも「駄目でもなんとかなるだろう」と思える起業家そのもの、つまり「人」への信頼に基づいている。
- VCや編集者のようなアドバイザー的立場は、専門家としての知識提供だけでなく、メンタルサポートや「よくあること」として不安を相対化する機能が重要である。
