なぜチケット代は上がり続けるのか
演劇のチケット高騰問題って、今かなり大変なことになっています。
シンプルに物価が上がっているし、世界の情勢もあの調子です。
日本に物が入ってこない、なんだかんだで、美術セット一つ作るにも前よりかなり値段が上がってしまった。
そうすると、そのしわ寄せはチケット代に行くわけですよね。
ある程度チケット代をいただかないと、これまで皆さんがご覧になっていたような演劇はもう見られなくなってしまう。
一方で、チケット代を上げすぎると、お客さんが来ない、あるいは来られるお客さんが限られてしまう。
この問題に対して、僕はもう千年前から言っていることがあるんです。大前提として、別で予算を作らなきゃいけないんですよ。
演劇を作りました、グッズを作りました。この2つだけではもう採算が合わなくなってくるんですね。
だから別で予算を作らない限り、チケット代は上がり続ける。シンプルにそれだけの話なんです。
別で予算を作る手は、いくつかしかない
じゃあ、別で予算を作るためにどうするか。手は何個かしかないんですよ。
クラウドファンディングも、もしかしたら一つかもしれない。
そのうちの一つに、VIP戦略みたいなものがあります。
去年の夏にやったミュージカル『えんとつ町のプペル』では、チケットの高騰問題どころか、子だくさんファミリーとシングルファミリーの子供たちは全員無料でした。
数千人の子供たちが無料で見ているんです。チケット代なんか発生していない。
なんでそれができたかというと、VIP席を戦略的に作ったからなんですね。
だから、クラウドファンディングだのVIP戦略だのを否定したカンパニーは、遅かれ早かれ廃業に追い込まれると思っています。
これはそのカンパニーが面白いものを作っているとか、そうじゃないとか、そういう話じゃないんです。単純に算数の話。数字が合わなくなるというだけなんですよ。
だから、そういう選択肢は否定しちゃダメだと思っています。
これ、僕が言うから一番嫌なんですけど、西野がやっていることを否定していいこと一個もないんです。
なぜなら、僕は別に一人勝ちに興味がないから。みんなが勝つためにはどうすればいいか、を考えている。
クラウドファンディングという選択肢、オンラインサロンという選択肢、無料公開という選択肢、VIP戦略という選択肢。持っておいた方が良くないですか、と言っているのが僕なんです。
一人勝ちしようと思ったら、こんなことは言いません。うまくいっているなら、こっそりやった方がいいわけですから。わざわざ競合を増やしているんです。
現代エンタメを知らない交渉が、作り手を苦しめる
もう一つ、最近ちょっと「あちゃちゃ」と思ったことがあって。
僕は会社をやっているので、いろいろ契約周りも見ていくんですけど、現代エンタメに明るくない弁護士がついているクリエイターやアーティストは、だいぶやばいなと感じます。
なんかふっかけてきたり交渉してきたりするんですけど、あまりにも浅はかで。
クリエイターさん本人に悪気はなくて、弁護士は弁護士なりに仕事をしようとしているんだけれど、現代エンタメ戦のことが全くわかっていない。
たとえば、出演ギャラをつり上げてやれ、と考える弁護士がいたとします。
そうすると運営側は、それでは立ち行かなくなるから、その人を起用するのをやめようって、絶対なるんです。
だから、出演ギャラはこれぐらいでいいから、その代わりこの作品がヒットした時にこの権利をもらえませんか、というふうに交渉していかなきゃいけない。
実際、これは世界的にそうなっていて、ハリウッドスターを使うのをやめようという流れになっているんだもん。
何十億、何百億かけてハリウッドスターを引っ張ってきても、そこまでお客さんが来るわけじゃない。だったらもうAIでいいじゃん、となっているのが今なんです。
エンタメがこれだけ細分化して、役者一人に一千万人のファンがついているわけでもない。
このあたりがアップデートされていないことで、クリエイターさんが泣きを見ることになる。それがあったんですね。
もう一つ言っておくと、僕にオラオラ交渉しない方がいいです。僕はそもそも全員勝たせるっていうのが大前提だから。
ここでこれぐらいやっておいてもらったら、最終的に絶対勝たせますから、と。僕は一人勝ちに興味がないんです。
これはもう、チケットの問題というより僕の仕事の向き合い方の話になってきちゃいましたけど、弁護士にもその知識が必要だなというのは、最近すごく感じることでした。
この演劇のチケット高騰問題については、オンラインサロンにかなり生々しい話を書きました。もう予言に近いものです。
結論を言っちゃうと、日本のオリジナルミュージカルはほぼ続かない、ほぼ終わっちゃう、という話です。物価が上がっている時点で、回るわけがないんですよ。
いい作品だからどうこう、という話ではないんですね。
かなり踏み込んだ話を書いたので、興味がある方はぜひオンラインサロンを覗いてみてください。
まとめ
演劇のチケット高騰問題は、いい作品かどうかではなく算数の話で、別で予算を作れるかどうかに尽きると考えています。クラウドファンディングやVIP戦略を否定したカンパニーは、遅かれ早かれ立ち行かなくなるというのが僕の見立てです。
- 物価高のしわ寄せがチケット代に向かい、上げ続けるしかない構造になっている
- 演劇とグッズだけでは採算が合わず、別で予算を作る手を持つ必要がある
- VIP戦略で数千人の子供を無料招待できた実例がある
- 現代エンタメを知らない交渉は、かえって作り手を苦しめる




