アンケートではなく、Xでお客さんの興味を拾う
西野さんの朝礼にて、西野亮廣お笑いコンビ・キングコングのメンバー。絵本作家・映画制作者としても活動し、オンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」を運営している。さんが、モフぎゅうぎゅう店での"モフ誘拐事件"や新作Tシャツの話題に触れつつ、映画『えんとつ町のプペル〜約束の時計台〜』を長期戦で届けるために「お客さんの本音をどう拾うか」を語った回です。アンケートではなくXのタイムラインに流れる考察こそが本音であるという気づきと、それを施策に変えた具体例が紹介されました。その内容をまとめます。
モフ"誘拐"事件と抱きしめたくなる吸引力
渋谷で開催中のモフぎゅうぎゅう店映画『えんとつ町のプペル〜約束の時計台〜』に登場するキャラクター「モフ」をテーマにしたチムニータウンのポップアップストア。床や壁にモフのぬいぐるみが敷き詰められたフォトブースが人気。は連日大盛況とのこと。そんな会場で前日、ちょっとした"事件"が起きたそうです。フォトブースに用意されていた「抱く用のモフ」が忽然と姿を消したのです。
スタッフが気づいた時点では「持っていかれたか?」と笑い話になっていたものの、約3分後にモフは無事帰還。どうやら、来場者がモフを抱いたまま無意識にブースを離れてしまっただけだったようです。
モフって抱いたらもうそこに"ひたっ"ときちゃうんだなっていうことが分かりました
西野さんによれば、同様のケースはその日だけで複数件あったそうです。会場にはマイモフ(自宅から持参したモフ)を持ち込む来場者も多く、商品モフ・抱く用モフ・マイモフが入り乱れるカオス状態。悪意のある盗難ではなく、「抱いたら離せなくなる」というモフの吸引力が生んだ現象だったといいます。
ルビッチ×恐竜──一番好きなキャラへの偏愛
モフが圧倒的な人気を誇る中、西野さん自身が一番好きなキャラクターはルビッチ絵本・映画『えんとつ町のプペル』シリーズの主人公。煙に覆われた「えんとつ町」に暮らす少年で、間違えたり怒られたりしながらも懸命に行動する姿が魅力。だそうです。「間違うところ」「わーっと言っちゃって怒られてしゅんとするところ」に心当たりがありすぎて嫌いになれない、と語っていました。
そんな偏愛から生まれたのが「ルビッチザウルス」のイラスト。ルビッチに恐竜の着ぐるみを着せたら可愛いのでは、という発想で描いたところ、自分でも驚くほど可愛く仕上がったとのこと。このイラストがアパレルブランドSTRAIGHT X EDGE(ストレートエッジ)西野亮廣が協力しているアパレルブランド。素材の質にこだわったTシャツやパーカーを展開。とのコラボTシャツになり、オンラインでも購入可能です。
僕が描くルビッチが一番可愛いんですよ。なぜなら僕がめっちゃ愛してるから
映画のエンドロールで流れるイラストも西野さん本人が手がけており、「ほっぺたパツパツ」のルビッチがお気に入りとのこと。クリエイターの愛がそのままグッズに落ちている好例と言えるかもしれません。
独立系映画は初動勝負に乗ってはいけない
ここからが本題です。映画『えんとつ町のプペル〜約束の時計台〜』を届ける過程で見えてきた「独立系映画の戦い方」について、西野さんが持論を展開しました。
大手映画会社の出資に依存しない独立系(インディペンデント)映画大手映画会社(メジャースタジオ)の出資を受けずに制作される映画のこと。宣伝費や配給網で大手に劣るため、口コミやSNSでの拡散が重要になる。西野さんは自身の作品を「準独立系」と表現。は、「初日から3日間が勝負」という土俵に乗った時点で、バズる以外に勝ち目がない。しかし「バズ」には再現性がない。だから、初動に全体重を乗せる"一本足打法"はやってはいけないというのが結論です。
莫大な宣伝費で初動を最大化。初日〜3日間の興収で勝負が決まる
初動に全賭けせず、作品の力を信じて長期戦で口コミを育てる
問題は、世間が「初動が全て」という勝負しか知らないこと。メディアも初週の数字で「大ゴケ」と報じてしまう。西野さんは「そんな雑音に振り回されてバランスを崩しちゃダメ」と強調し、見るべきはお客さんの反応だと繰り返しました。
見栄を張らず、現状を正直に共有する戦略
公開から3週間時点で、観客動員数はおそらく30万人を突破し、興行収入は4億円を超えていると西野さんは予想しています(正式発表はこの日の午後)。この数字で「大ヒット上映中」と打ち出す作品もあるけれど、今回はあえてそうしないと明言しました。
「大ヒット上映中!」と見栄を張る → バンドワゴン効果を狙う定番戦略
目標と現状を正直に共有 →「私たちが育てていく」という空気を熟成させる
ただし西野さんは、バンドワゴン効果「みんなが支持しているものは良いものだ」と感じて追随する心理現象。映画の「大ヒット上映中」という宣伝文句はこの効果を狙ったもの。を使う戦略自体を否定しているわけではなく、別のプロジェクトなら使うこともあるかもしれないと補足。あくまで今作については「正直路線」で行くという判断です。
製作委員会の会議でも「今回は長期戦。ここからは我慢比べ。この作品には力があるので、作品を信じましょう」と伝えたそうです。
Xの考察がお客さんの"本音"だった
映画を届けるために何ができるかを考えていた時、西野さんが見つけたのはX(旧Twitter)イーロン・マスク買収後にTwitterから改称されたSNSプラットフォーム。リアルタイムの短文投稿が特徴で、映画の感想や考察が活発に交わされる場でもある。のタイムライン上のやりとりでした。今作は脚本の構成上、前作とは比べ物にならないほど考察が上がっていて、「あのシーンにはこういう意味があったのでは」「あのシーンですでにあいつは気づいていたぞ」といったやりとりが散見されるそうです。
これこそまさにお客さんの声じゃないですか。お客さんの興味がそこに行ってるってことでしょ
この気づきからすぐに施策が生まれました。4月20日〜26日に映画館で鑑賞した方を対象に、西野さん本人が「ストーリーに隠された秘密」を徹底解説するオンラインライブを開催するというものです。いわば「劇場特典のオンライン版」。半券またはオンラインチケットの購入画面を撮影して応募フォームに申請すれば、視聴リンクが届く仕組みです。
発見
Xのタイムラインにお客さんの考察が大量に流れている
解釈
「ストーリーの裏側を知りたい」という本音がここにある
施策
期間限定で「徹底解説オンラインライブ」を劇場特典として提供
ここで西野さんが強調しているのは、アンケートでは本音は測れないということです。アンケートではお客さんはいいように書く傾向がある。「好きな映画は?」と聞かれて「フランス映画」と答えてしまうような見栄が入る。一方、Xに自発的に投稿する考察は、誰に頼まれたわけでもない"素の興味"が表れている。だからこそ、そこに耳を傾けることが大事だというわけです。
店に立って気づく──目の前で描く価値
Xだけでなく、リアルの現場にも「本音」は落ちています。西野さんはなるべく販売の現場に立つようにしているそうで、モフぎゅうぎゅう店でも「お客さんがどこで足が止まるか」「どこに手が伸びるか」「どこにストレスを覚えているか」をずっと観察しているとのこと。
前日のモフのイラスト入りサイン会で印象的な出来事があったそうです。ポスターにその場でモフのイラストを描いてサインを入れたところ、あるお客さんから「この場で描いてくださるんですか?」と驚かれたのです。
つまり、「モフのイラスト入りサイン会」と聞いて、イラストはあらかじめ印刷されていて名前だけ入れるのだろうと思っていた方がいた。その方にとっては、「自分の目の前で描いてもらったモフ」に大きな価値がある。この気づきから、西野さんは案内の仕方を改善する必要性を感じたといいます。
そっかそっか、この案内しなきゃダメだと思いました。その場でモフのイラストを描くってことをちゃんと伝えなきゃいけなかった
小さなことですが、現場に立っていなければ絶対に気づけないポイントです。お客さんがどこに価値を感じているかは、聞くよりも「観る」ほうが正確に拾える。これもまた、今回のテーマである「お客さんの本音に耳を傾ける」の実践例と言えるでしょう。
まとめ
今回の放送は、モフの"誘拐"事件やルビッチザウルスTシャツといった楽しい話題を挟みつつ、核心は「お客さんの興味をどう拾うか」というマーケティングの話でした。
独立系映画は初動勝負に乗ってはいけない。長期戦で戦うなら、見栄を張るより現状を正直に共有して「一緒に育てる」空気を作る。そして次の一手を考えるとき、アンケートの回答よりも、Xに自発的に上がる考察や、販売現場でのお客さんの行動のほうがはるかに本音に近い。その本音を見つけたら、すぐに施策に変える。今回は「ストーリー徹底解説オンラインライブ」という形で実現されました。
「お客さんの本音を拾う → すぐ施策化する」というサイクルの速さが、西野さんの強みなのかもしれません。
- 独立系映画は「初動が全て」の勝負に乗ってはいけない。バズには再現性がなく、一本足打法はリスクが高い
- 「大ヒット上映中」と見栄を張るのではなく、目標と現状を正直に共有して「一緒に育てる」空気を作る戦略もある
- アンケートでは本音は測れない。Xのタイムラインに自発的に上がる考察こそがお客さんの"素の興味"
- SNSで拾った興味をすぐに施策化(考察オンラインライブの開催)するスピード感が重要
- 販売の現場に自ら立ち、お客さんの視線・行動・ストレスを観察することで、案内の改善点にも気づける
