初のお便り、仮説構築どうしてる?
今回は番組初のお便り回です。リスナー名ISニキさんから、こんな相談が届きました。
現在インサイドセールスでアウトバウンドを中心に活動しているのですが、アプローチの質を高めるために仮説構築に取り組んでいます。ただ、良い仮説をなかなか立てることができません。良い仮説の立て方について教えてください。
廣田さんは、インバウンドが減り、自分たちで取りに行きたい企業へアプローチするアクションが増える中で、仮説構築という言葉をよく耳にするようになったと話します。
確かにこういったご質問は、皆さんお悩みなのかなと思って採用させていただきました。
まずは顧客理解と、仮説が「何に対して」かの分解
樋口さんがまず挙げたのは、お客さんをどれだけ把握できるか、という顧客理解の解像度です。
自社製品を理解しているだけだと、仮説はもちろん作れるんですけど、お客さんにとって響くような仮説を作れるかというと、結構難しかったりします。
業務だけじゃなくて、どういうふうに事業を運営するかというドメイン知識を持てていけると、仮説はどんどんいいものを作れるようになるんじゃないかなと思っています。
一方で廣田さんが強調したのは、その仮説が「何に対しての仮説なのか」をちゃんと分解することです。
セールスの要件定義では、問題があって、原因があって、課題がある、という流れがあります。自分が立てた仮説が、そのどこに対しての仮説なのかを理解する必要がある、というわけです。
よくありがちなのが、課題に対しての仮説を皆さん立てられるんですね。
課題は打ち手に近い部分なので、そこだけに仮説を立てると、問題や原因にアプローチしないまま問いを投げてしまう、と廣田さんは指摘します。
たとえば「アプローチ数が伸びない悩みですよね、AIで5倍にも10倍にもできるサービスを作ったんです、どうですか」という提案。一見よさそうでも、そもそもアプローチ数を増やすことが本当に重要なのか、という問いには答えていません。
問題への仮説
その左辺(成果)が本当にその問題で合っているか
原因への仮説
右辺の項と変数、その因果関係が本当に正しいか
課題への仮説
原因を解決する打ち手としてそれが正しいか
枝葉に対して仮説を立ててしまっているのが、いわゆる良くない仮説の立て方なんじゃないかなと個人的には思っています。
良い仮説をつくる「方程式」の考え方
では良い仮説はどうやって作るのか。廣田さんの答えは「方程式をちゃんと作ること」です。
まず自社の打ち手やソリューションを一切除いて、お客さんが成果を出す状態を左辺に置きます。売上や利益といった成果を生み出すために、どんな要素や因果関係があるのかを右辺に組み立てていくイメージです。
項をできるだけ少なくできるとベスト。大体3つか4つぐらいに整理した上で、その項に対して変数となる値がついていて、どこに比重が高いのかを、一旦お客様起点で整理する必要があります。
ところが多くの人はこれが描けず、自社起点で「アポ数を増やすには活動数が…」と、枝葉の枝葉から考えてしまうと言います。
そこで廣田さんは、まず本部クラスまでピンポイントで当て、そこの方程式から部署ごと、担当者ごとへと項を降ろしていく整理を勧めます。
担当者が持つ成果に対して、インパクトの大きい「センターピン」にソリューションを当てないと、緊急性も重要性も上がらない、という考え方です。
問題への仮説には「歴史」を知る必要がある
樋口さんは、枝葉ではなく左辺(問題)に対して仮説を立てられる人とそうでない人の違いを尋ねます。廣田さんの答えは「歴史を知る必要がある」でした。
セールス業界の歴史そのものがどう変わってきたか。なぜ日本に「TheModel」が来て、どういう変遷をたどってきたのか。時代とともに左辺と右辺はアップデートされ続けてきた、と廣田さんは説明します。
一人で成果を最大化するのが前提だったところから、「それって効率悪いんじゃない?」と思い始めた人たちが、「TheModel」をはめていって、左辺を変えに行ったんですよね。
だからこそ、分岐ごとに左辺と右辺がどう変わったかを2つか3つ前まで遡り、なぜ今の公式が使われているのかの背景を知る、というのが廣田さんの言う「歴史を知る」です。
その公式は外的要因で変わっていくので、業界・文化・顧客態度の変化を先に捉えられれば、「次の方程式はこうなるよね」とアップデートできる、と続けます。
電話をぶん回すとか、メルマガをじゃんじゃん投げるとか、展示会にとにかく出展するとかが成果最大化できる時代があったわけじゃないですか。でも、その時代はもう崩れかけてきているんです。
答えとなる公式を持っていなくても、変化への橋渡し役になれる。そういう人が、問題に対する仮説で示唆を与えられるインサイドセールスになれる、というのが廣田さんの結論です。
結局は勉強不足。知識がないと仮説は作れない
樋口さんは、ここまでやりきれている組織は多くないと感じています。ハコモノでもオンボーディングでプロダクトやデモの理解は深める一方、外的な情報のインプットは実は少なかったと振り返ります。
新人の人たちが深い質問ができない、自分の仮説が伝わらない、反応が得られない、と言われるところの原因かなと思ったんですよね。
では変化をどうキャッチアップするのか。廣田さんの答えはシンプルでした。
ビフォーアフターのビフォーすら知らないのに、アフターだけ考えても仕方ないんですよね。
たとえばウェルネスが流行っている理由を、事業をやっている人よりも高く語れないといけない、と廣田さんは言います。生活者側にも方程式があり、それがアップデートされているから動きが変わっている、という解像度が必要だ、という話です。
「事例が話せる」だけでは足りない
樋口さんは、導入事例の使い方にも同じ落とし穴があると指摘します。売上がこれだけ上がった、何時間削減できた、という成果はつい伝えたくなるものです。
事例ってずるいじゃないですか。時間効率がこれだけ上がったというのも、もう弾いて弾いて、こういう風に言えるよねって出しただけで。それは嘘じゃないんですけど、みんなもうわかってるんですよ。
目が肥えたお客さんは、成果の数字だけでは動きません。廣田さんはあえて「あれは無理やり成果証明として出したもの」と言い切ることもあると話します。
大事なのは、新しい方程式を組んだときに不足していたパーツの役割を自社が担える、と伝えること。それが数字よりも強い、というわけです。
この方程式に対して不足していたパーツの役割を僕たちが担えるから導入してもらっている、と伝えれば、数字よりも強いんですよね。
樋口さんは、店舗数を増やしたい事業者の例を挙げます。20店舗を目指す会社が10店舗のときに導入した理由を、いま5店舗や10店舗の事業者に話すと、自分事にしてもらいやすいと言います。
10店舗の方程式のまま30店舗に行こうとしたときの落とし穴があるじゃないですか。それを先に導いて、いくつもある落とし穴の1個2個を防げるソリューションなんです、と言えるといいですよね。
採用や組織における30人の壁、100人の壁のようなストーリーを自分たちで作っておくことも、良い仮説づくりに役立つ、と樋口さんは補足します。
答えの整理と、勉強の続け方
最後に廣田さんが、ISニキさんへの回答を整理します。まずは自社のソリューションを除いた「方程式」を状態として組むこと。
その方程式が、歴史をさかのぼってどんな変遷で変わってきたのかを追えていること。各方程式がなぜ変わったのかという背景を理解できていること。
そして今と、これから起きることを察知するために勉強し、なぜ今の方程式が通用しなくなるのか、どんな外的要因からそうなるのかを言語化できること。ここまでできて、ようやく課題への仮説を立てられる、という流れです。
要するに勉強ですね。多分、知識が不足されてる可能性が高いんじゃないかなと思います。
廣田さんは、これまで20商品以上を一人で支援してきましたが、商品理解をそこまで深めたプロダクトはなかったと明かします。むしろ業界理解の勉強に振り、ある領域では本を60〜70冊読んだそうです。
製品理解はほとんどせず、どちらかというと業界理解の勉強をしていて。実際、訪問営業に行っても割と対等に喋れるようになってきているので、もう勉強あるのみですね。
インプットしたものをお客さんに当てて、会話して理解を深め、また次の人にいい仮説を持っていく。その繰り返しが大事だ、と2人は話しました。
回の最後には、第4回のオフ会開催のお知らせもありました。詳細は概要欄とXで発信するとのことです。
まとめ
良い仮説を作る鍵は、自社の打ち手を一旦外して顧客の成果を「方程式」として描くこと。そのうえで業界の歴史と外的要因を勉強で押さえることが、刺さる仮説への近道だと語られた回でした。
- 仮説は「問題・原因・課題」のどこに対してかを分解する。課題(打ち手)だけに仮説を立てると響かない
- 自社ソリューションを除き、顧客の成果を左辺に置いた方程式を3〜4項で整理する
- 問題への仮説には歴史を知り、外的要因の変化から次の方程式を先読みする
- 事例の数字だけでは目の肥えた顧客は動かない。不足パーツの役割を担えると伝える方が強い
- 結局は業界理解の勉強不足が原因になりやすい。製品理解よりも業界の勉強を積み重ねる
