裏方に徹する代表・播磨先生の仕事
播磨先生は、現在のレッスンで教鞭をとることはあまりありません。生徒からすると「この人は何をしているのか」が見えにくい、少し謎の存在になっているようです。そこでまずは、普段どんな仕事をしているのかから話が始まりました。
本人いわく、担っているのは「裏方全般」。実際にレッスンをするのが表の人だとすれば、その裏で仕組みづくりを支える役割です。具体的には、新しい教材の制作、先生が働きやすくなる環境づくり、生徒がより楽しく授業を受けられる仕組みの設計などを手がけています。
実際にレッスンをするのが表の人だとしたら、裏方全般をやってます。
肩書きを整理すると、社長業をこなしつつ、ときにはコードを書き、デザインも作り、事務作業もこなすという幅広さ。教材動画も、原稿づくりから収録・アップロードまで自身が担当しているといいます。ひとつのことに専門化するのではなく、いろいろなことを横断的にやる立場です。
経験①:ラジオへの憧れと「仲間探し」の場としての学生時代
今の仕事につながった大きな要素として、まず挙がったのは「パソコンとインターネットが好き」だったこと。たとえば知らないページで「あなたのIPアドレスはこれです」と表示されてドキッとし、それをきっかけに「IPアドレスとは何か」を調べる。そうやって好奇心から知識を積み上げていったといいます。
進学先は大阪芸術大学の放送学科。もともとラジオが作りたかったのがその理由でした。子どもの頃からテープレコーダーやラジカセで自分の声を録って遊ぶのが楽しく、ラジオを聴くのも好きだったといいます。ラジオに関わるメディア系を学べて手頃だったのが、この学科だったわけです。
ところが、いざ入ってみるとメディア系よりインターネットの方が面白く感じ、そこからIT業界へと足を踏み入れていきました。「やりたかったこと」とは少しずれても、その過程で面白い方向が見つかったわけです。
この経験から播磨先生が一番伝えたいのは、「何か自分でやりたいなら、仲間がいた方がいい」ということ。高校や大学は、その仲間を見つける場所だと思ってしまってもいいと語ります。若いうちは一人でできることが限られています。お金もスキルもコネもない。けれど時間とエネルギーはある。そんな仲間が集まって「こういうことをしたら面白いんじゃない?」と実際に手を動かすのが、とてもいいというのです。
大学は仲間探し期間。
その説得力の源は、アンズテック自身にあります。播磨先生と後藤先生は高校で出会い、同じ志で会社を立ち上げました。当時は一緒にこんなことをするとは思っていなかったといいますが、若い頃の人間関係がどこで芽を出すかは分からない、という好例です。
経験②:大学で身についた映像・デザインのスキル
山田さんが「播磨先生のすごいスキル」として挙げたのが、動画編集と音声編集。これは完全に大学で身についたものだといいます。放送学科では、撮影や編集が半ば強制的にカリキュラムに組み込まれていました。
驚くのはその内容です。八ミリフィルムを実際に切って編集する手法まで学んだといいます。「斜めに切るといいんだよ」と教わり、フィルムを止める専用テープを使う──今ではなかなか体験できないアナログな作業です。当時は「こんなことがしたいわけじゃなかった」と感じていたそうですが、その流れでAvidやPremiere Proといったデジタル編集ソフトも習得していきました。
さらにPhotoshopやIllustratorといったデザインツールも習得。ここで語られた重要な気づきが、「ソフトは一つ覚えると、体感で三割くらいは他のソフトでも同じことができる」という点です。山田さんは、これはプログラミング言語にも通じると応じます。一つの言語をしっかり習得すれば、他はいわば方言のようなもので覚えやすくなる、というわけです。
1つのツールに習熟する
Photoshopや、ある言語を徹底的に使い込む
他のツールへ応用が効く
肝となる操作や考え方は共通。体感で約3割はそのまま通用する
芸大には、授業で扱っていないはずのPhotoshopやPremiereを普通に使いこなす学生がたくさんいたそうです。播磨先生は「どこで覚えたんだろう」と不思議に思いながら、そうした友人たちに教えてもらいながらスキルを伸ばしていきました。ここでも「持つべきは友達」という結論に落ち着きます。
経験③:役割分担が育てた責任感とスキル
現在のアンズテックのWebサイトやイベント告知ページは播磨先生が制作しており、モダンで凝ったデザインが印象的です。そのデザインの習得法を尋ねると、答えは意外にもシンプルでした。本屋のデザインコーナーで『はじめてのPhotoshop』のような本を買い、一ページ目から順にやる──つまり独学です。
ただし、独学を後押ししたのは環境でした。知人と「ホームページを作ろう」という企画があり、播磨先生がデザイン担当、もう一人がコードを書く担当と役割を分けたのです。「やらなきゃいけない環境」ができたことで、頑張って覚えられたといいます。
この構図は、アンズテックの生徒にも見られるといいます。中学一年生のある生徒は、友達と一緒にゲームを作るなかで3Dモデル担当になり、いまモデルを作っているとのこと。役割を持つことが学習の大きな原動力になっている好例です。
誰かと一緒に何かをやるのは、自分一人でやるのとは違う緊張感がある。うまくいったことも失敗したことも糧になる。
それぞれが自分の領分を持って責任を分担するのが、揉めないための秘訣なのかもしれませんね。
ポイントは、誰か一人に任せきりにならないこと。それぞれが自分の担当分に責任を持つことが、共同作業をうまく続けるコツだと語られました。
会社員を経ずに起業した理由
多くの人が就職という道を選ぶなか、播磨先生はこれまで企業勤めをしたことがありません。理由を尋ねると、「本当にする気がなかった」とのこと。大学時代の就活ガイダンスなどにも全く行かず、前述のホームページ作りにずっと打ち込んでいたそうです。
もちろん、避けられなかったのが親の説得です。「大学まで行かせたのに就職しないのか」と言われるフェーズがありました。それに対する播磨先生のアンサーは、実践でした。当時すでにWeb制作、いわば「ホームページ屋さん」として、少額ながら報酬を得て仕事をしていたのです。それだけで食べていける金額ではなかったものの、「将来あることをしようとしているので安心してください」と伝えたといいます。
播磨先生の親は、本人の選択にあまり干渉しなかったといいます。それが起業への道を後押ししました。この経験から、自分も将来わが子が「YouTuberで食べていく」と言い出しても見守らなければ、と考えているそうです。親から受け継いだ姿勢を、次の世代へ渡していくという発想です。
アンズテックに通う小学生・中学生のなかにも、ITで起業したいという子がいるといいます。播磨先生にとって、そうした「きっかけ」を作れることは大きな喜びのようです。
まとめ
今回の3つの経験は、それぞれ独立しているようでいて、実は密接につながっていました。ラジオへの憧れが大学進学につながり、そこで身についた映像・デザインのスキルが今の仕事を支え、仲間との共同制作が起業へと発展した──すべてが一本の線で結ばれています。
播磨先生は最後にこう締めくくりました。「人生って伏線回収」。昔は無駄に思えたことが、あとになって「あの時のあれがつながっていたんだ」と気づく。特に子どもの頃は、好奇心の赴くままにいろいろやって、いろいろ失敗してみるのがいい、というメッセージです。
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- 播磨先生はアンズテックで、教材制作から仕組みづくりまで「裏方全般」を担う代表。ときにコードやデザイン、事務作業も手がける。
- 経験①:ラジオへの憧れから大阪芸術大学放送学科へ。学生時代は「仲間を見つける場所」であり、後藤先生との高校での出会いが起業につながった。
- 経験②:大学で映像・デザインのスキルを習得。ツールは一つ覚えると他にも応用が効く。友人と教え合う環境も大きかった。
- 経験③:仲間との役割分担が「やらなきゃいけない環境」を生み、責任感とスキルを育てた。任せきりにしないことが揉めない秘訣。
- 会社員を経ずに起業。学生時代のWeb制作の実践と、干渉しない親の理解が道を後押しした。
- 「人生は伏線回収」──無駄に見えた経験もあとでつながる。好奇心のままに挑戦し、失敗することの価値。
