Sozo Venturesとは何者か。日米の架け橋という戦略
番組ホストのおいなりさんは、Sozo Venturesは日本でよく知られたVCだが、若い起業家にはまだ十分に知られていないと切り出します。
Robさんによると、Sozo Venturesは中村幸一郎さんと共同創業者のPhil Wickhamさんが約15年前に立ち上げたファンドです。
その出発点には、日本には世界有数の大企業が数多く本社を構えているという着眼がありました。
日本経済の基盤である世界的な大企業は、素晴らしい会社ばかりです。ただ、経営陣が望むほどには社内でイノベーションが起こせていなかった。
そこで、世界のスタートアップと日本企業をつなぐ「架け橋」になる、という大きな機会があったとRobさんは説明します。
Twitter日本進出とローソンの協業
架け橋戦略の象徴的な事例が、Twitterの日本進出でした。中村さんたちは2010年頃、日本で意味を持ちそうなスタートアップを探し、Twitterを見つけたといいます。
Jack Dorseyさんと長期にわたって設計したのが、ローソンを起点にした戦略でした。
消費者がローソンに入ってTwitterに登録し、QRコードを読み取るとPontaポイントがもらえる。これは中村さんのアイデアでした。
このロイヤルティポイントの魅力は大きく、Twitterが当初見込んでいた月間登録者数の3倍以上を1か月で達成する結果につながったと語られます。
さらにTwitterは、このデータ連携の戦略を米国での上場申請書類にも記載したといいます。
最初の5社が全社IPO。1号ファンドの実績
Twitterへの投資は2011年頃で、その後2012年に1号ファンドを組成したとRobさんは振り返ります。
これは初回のベンチャーファンドとしては非常に異例だと話されています。投資先にはMongoDB、Fastly、Palantirなどが含まれていました。
その後もZoomやCoinbase、近年ではApplied Intuitionといった企業に投資してきたといいます。
Applied Intuitionはすでに日本だけで100人の従業員を抱え、上場も見込まれるとRobさんは述べます。
創業者たちのビジョンは、世界最高のスタートアップを日本に持ち込むことで、日本のエコシステムに雇用を生み出すことにありました。
そこで働いた人たちが、やがて自分の会社を立ち上げていく。そこが日本にとってワクワクするところなんです。
原点はスタンフォード。ゴルバチョフを迎えた幼少期
おいなりさんは、Robさんのスタートアップや日本のエコシステムへの情熱の源を尋ねます。
Robさんはスタンフォード大学のキャンパスで生まれ育ちました。父親が大学の広報担当副学長を務めていたため、住まいは大学所有の家だったといいます。
その仕事柄、家には多くの来客があり、料理は母親が担っていました。
来客の中には、1980年代後半にスタンフォードを訪れたゴルバチョフさんもいました。
子どもの頃、ある日、大柄な男の人たちが袖に向かって話しているのをたくさん見たのを覚えています。
それはロシアのゴルバチョフ大統領の訪問準備で、公式会談前の昼食会を自宅で開いたのだと説明されます。
世界中から人が集まり、食卓で議論が交わされる。そんな環境が、Robさんの考え方や仕事のスタイルを大きく形づくったといいます。
だからこそRobさんは今も、チームや投資先、LP(出資者)と定期的に食事を共にしているそうです。
SVBでの17年。全米スタートアップの約6割を支える
キャリアの最初の20年ほどについて、Robさんはスタートアップやアセットマネジメント会社での経験を経て、2005年にスタートアップ向けの金融に進もうとしたと語ります。
そのときに面接を受けたのがシリコンバレーバンク(SVB)で、結果として17年間を過ごすことになります。
当時SVBは、スタートアップ向けとしては世界最大の金融サービス組織でした。
Robさんは融資のために各社のビジネスモデルを深く理解する必要があり、年に20〜30社に融資していたといいます。
一方で、平均的なVCが1年に手がけるのは1〜4件程度だと対比します。
この時期、Robさんは日本にも関心を寄せ、2007年にPhilさんと出会い、日本を通じて意気投合したと振り返ります。大学で日本語を学んだ経験もありました。
エンジニアリングや精緻さを、日本ほど大切にする文化やコミュニティが、スタートアップやイノベーションで苦手なはずがない。
当時のSVBのCEOに「いつか日本は面白いスタートアップ市場になる」と売り込んだといいます。そして2026年の今、日本生まれの創業者への関心の高まりを実感していると話されています。
VCであり起業家。フィンテックへの新たな挑戦
2022年、Sozo Venturesが増資に成功し新たなパートナーを必要としたとき、Philさんから声がかかったとRobさんは語ります。
Robさんが「なぜ自分がこの仕事に向いているのか」と尋ねると、Philさんはこう答えたといいます。
多くのVCよりも多くのスタートアップと関わってきたあなたは、世界でも指折りにスタートアップを知っている。
一方で、SVBでは各社と深く関わることはできなかったため、Sozoでより深く企業に関わるという発想に惹かれたと話します。
またRobさんは、Sozoに誘われる数か月前に自ら創業した会社を持っています。フィンテック企業の「Turbine Finance」です。
Robさんは、Sozoの役割が得られなければフルタイムで参画し、得られれば創業者として関わり続ける、とPhilさんに伝えたといいます。
Turbine Financeが手がけるのは、ベンチャーキャピタルファンドに出資した人への融資です。
Turbine Financeが解く「LPの流動性」問題
日本のVCでは1つの役割に集中するのが一般的だが、米国では創業者とVCを並行する例も珍しくない、とおいなりさんは指摘します。
Robさんは、Turbineには日々関わっているわけではなく、あくまでアドバイザーの立場だと説明します。
創業者でいることは、親でいることに似ていると聞いたことがあります。親であることをやめる瞬間はないんです。
Turbineの事業について、Robさんは具体例で説明します。あるVCファンドに100万ドルを投資し、8年後に500万ドルの価値になったとします。
そのポジションを高く評価して売りたくはないが、流動性は欲しい。そうした人に対し、ファンド内の各ポジションを精査したうえで融資を行うのがTurbineの仕組みです。
Amazon株やソフトバンク株を担保にマージンローンを組むのと同じように、LPポジションを担保にTurbineのローンを組めるんです。
この仕組みは、LPが次のファンドに再投資する際にも使われ、VCとLPの双方にメリットがあると説明されます。
一方で、安全に運営するのは難しい貸付事業だとも述べます。共同創業者のうち自身とCorey Wagnerさんは、ともにSVBで10年以上を過ごした経験があるといいます。
投資基準は「Readiness」。世界進出のタイミング
Sozoは特定の業界に縛られないジェネラリスト型のファンドだとRobさんは言います。注目される業界は10年ごとに移り変わると考えているためです。
投資対象は、社会の未来を大きく変えうるものです。ソフトウェアに限らず、Carbon Roboticsのような企業も含まれます。
そしてSozoの投資基準が「Readiness(準備が整っていること)」です。企業が世界に出る準備が整ったタイミングを重視します。
創業した瞬間から世界に出る準備ができている会社もあれば、2年、3年、5年、10年かかる会社もあるんです。
例として、Jack Dorseyさんが挙げられます。Twitterでの経験があったため、Squareでは平均的な起業家よりずっと早く国際展開に踏み切れたといいます。
経験豊富な起業家ならシードやシリーズAの段階で準備が整うこともあれば、初めての起業家は一つの市場に集中したい場合もある、と対比します。
投資先のDoppelは数年しか経っていないにもかかわらず、日本のメガバンクやJPMorganと商用契約を結んでいるといいます。製品と、周囲のアドバイザーや経営陣の存在が、早期の国際展開を可能にしたと説明されます。
製品ができる
企業が製品を売り始める段階に入る
準備度を見極める
経験や製品、周囲の人材から世界進出の準備を判断
日本での展開を支援
準備が整った企業の日本ローンチをSozoが支える
日本のLPが求める「戦略的リターン」
スタートアップの成功には10年ほどかかるが、多くの日本企業はそれを待てないのではないか、とおいなりさんは問いかけます。
Robさんは、Sozoのネットワークは15年かけて築かれており、日本から資金を取らなくても関係は維持できるだろうと述べます。
それでも日本企業にLPとして出資してもらうのは、彼らが自社の成功に関与してくれるからだと説明します。
日本の大企業をファンドの投資家として迎え、その過程でスタートアップの評価やPOC(実証実験)を一緒に行い、社外からのイノベーションを持ち込む狙いがあるといいます。
日本のLPは、財務的リターンだけでなく戦略的リターンも求めているということでしょうか。
Robさんは、最良の仕事ができたときにはLPがスタートアップとの関わりを通じて事業を拡大できる、と説明します。ただし、戦略的リターンは財務的リターンなしには得られないとも述べます。
その理由として、VC資金を集める上位1%の企業だけがすべての価値をもたらす、という考えが語られます。
宇宙分野ならSpaceX、映像会議ならZoomのように、各業界を牽引する1〜2社に入ることが財務的リターンの条件だと説明されます。そうした企業は製品が最も優れているからこそ勝ち、それが戦略的リターンにもつながるといいます。
日本と米国のIPO市場をどう見るか
日本では上場後の基準維持が難しくなり、東証のルール変更もあって日本企業がスタートアップ市場に関心を向け始めた、とおいなりさんは指摘します。
これに対しRobさんは、米国のIPO市場はむしろ制限が強すぎると答えます。
米国では上場するには大きくなりすぎていないといけません。ここ数年、IPOはほとんど起きていない。
その結果、個人投資家が企業の株を買えるのは、すでに非常に高い価値になってからになってしまうと指摘します。
一方で日本は、非常に小さな売上でも上場できると対比します。
ただしRobさんは、最も緩い市場でも最も厳しい市場でもなく、その中間がたいてい正しいバランスだと述べ、日本が基準を少し引き上げて試すことを賢明だと評価します。
制限が強く、上場には大きな規模が必要。近年IPOは少ない
小さな売上でも上場可能。基準の引き上げを試している段階
日本の起業家へ。初日から英語とデラウェア法人で
おいなりさんは、日本のスタートアップが世界で戦うために改善すべき点を尋ねます。
Robさんは、自分は日本で暮らしたことがなく専門家ではないと前置きしつつ、他の投資家からよく聞く点を挙げます。それは、多くの企業が日本向けに作られている、ということでした。
Sam Altmanさんのような起業家は、世界全体や業界全体を変えるという発想で、初日から会社を立ち上げると説明します。その野心が、英語での運営やデラウェア法人での設立につながるといいます。
Robさんが日本のスタートアップに望むのは、デラウェアで法人化し、グローバルなスタートアップ市場を理解した弁護士を使い、初日から英語で運営することだと語ります。
立ち上げた最初の瞬間から、英国にも米国にも行ける。プロダクトマーケットフィットを見つけるのは大変ですから。
一つの市場に自分を縛ることは、野心を狭めることになり、10億ドル規模のリターンを狙う投資家にとって投資しづらくなる、と述べます。
日本発スタートアップを世界へ。Sozoの野望
おいなりさんが英語でインタビューを始めた理由は、日本の起業家やVCに世界の状況をもっと知ってほしいからだと語ります。
Robさんは、日本の起業家や投資家に残すメッセージとして、日本に本社を置く企業にもぜひ投資したいと述べます。
自分をアメリカの会社、英国の会社と考えるスタートアップは、今やほとんど見かけません。多くの創業者は米国で法人化し、チームを世界中に分散させています。
Robさんは、新橋のオフィスに来て、最初からグローバルな会社としてピッチしてほしいと呼びかけます。
日本で作って米国市場向けにまず展開し、後から日本に戻る、あるいは両市場に同時に進出するという道もある、と提案されます。
日本の起業家は、世界に出るためにSozo Venturesへ投資を求めてもよいのでしょうか。
Robさんは、日本のスタートアップの世界進出をぜひ支援したいと答えます。現在のネットワークは企業を日本に持ち込むことに焦点があるものの、将来的にはそれを拡張したいと述べます。
Sozoは自らをプロダクトマーケットフィット後の投資家と位置づけているといいます。だからこそ、その前段階を担う優れたVCが日本企業に資金を入れることを望んでいると語ります。
まとめ
Twitterの日本進出やSVBでの17年を経て日米の架け橋を担うRob Freelenさんは、業界に縛られず「準備が整った」企業に投資し、日本発のスタートアップが初日から世界を狙うことを強く求めています。
- Sozo Venturesは世界のスタートアップと日本企業をつなぐ架け橋を戦略に掲げ、Twitterの日本進出やローソンとの協業を支えた
- 1号ファンドの最初の5社がすべて米国で上場し、SVB時代のRobさんは全米スタートアップの約6割と取引していた
- 投資基準は業界ではなく「Readiness」で、企業が世界へ出る準備が整ったタイミングを重視する
- 日本のLPには財務的リターンと戦略的リターンの双方があるが、戦略的リターンは財務的リターンなしには得られない
- 日本の起業家には、初日から英語で運営しデラウェアで法人化し、グローバルを前提に会社を作ることが求められている
