「AI依存症」は悪いこと?社会のOSに組み込まれた技術
話の発端は、ちーずが最近AIをどっぷり使っているという話題でした。ちーず本人は「AI依存症になりかけている」と語り、もし禁止されたらどうしようというほど、なくてはならない存在になりつつあると打ち明けます。
たとえば議事録。以前は手打ちで書き、校閲程度にAIを使う程度でした。しかし今は、話したいことを音声入力で喋ってサマライズしてもらい、そこからNotebookLMGoogleが提供するAIツール。アップロードした資料をもとに要約や質問応答、資料生成などを行える。で資料を生成し、デザインもトンマナだけ指示して自動生成させる、という流れになったといいます。
これに対しておぐらくんは、依存かどうかはもはや気にしていないと返します。AIが登場する前だって、私たちはずっとパソコンに依存してきたし、株の取引も昔は紙でやっていたものが今は電子機器なしでは成り立たない。それと同じで、AIはすでに「社会のシステムや働き方のOSに組み込まれてしまった」ものだ、という捉え方です。
依存とも言えるし、もう社会のシステムや働き方のOSに組み込まれてしまったみたいな感じだから。スマホみたいなもんだもんね。産業革命だよね、これほんと。
おぐらくんは、パソコンを一人一台普及させるべきかどうかも登場直後は費用対効果が議論されていたが、今では笑い話にもならないほど「あるのが当たり前」になっていると指摘します。AIも同じ時代に入った、という見立てです。
登場直後
「費用対効果は見合うのか?」と導入が議論される段階
普及後
議論の対象ですらなくなり、社会のOSに組み込まれる(パソコン・スマホ・そしてAI)
三人三様のAI活用術。仕事からプライベートまで
三人がそれぞれの活用事例を語ります。おぐらくんは「全部にAIを使うように頑張っている」というスタンス。意識しないと慣れたやり方に戻ってしまうため、あえて全ての仕事にAIを噛ませて効率化や自動化を試みているといいます。
具体例は多岐にわたります。仕様や課題の解決策を考えるときはテキストや音声でAIとディスカッションし、実装はCursorAIを組み込んだコードエディタ。自然言語での指示によるコード生成・編集ができる、エンジニアに人気の開発ツール。やタスク管理ツールから呼び出して完結させる。機能追加後の分析ではMetaBaseオープンソースのビジネスインテリジェンス(BI)ツール。データベースに接続し、SQLクエリやダッシュボードで指標を可視化できる。と連携し、CursorにSQLクエリを書かせる。さらにそれらをスキル化・オートメーション化し、毎朝自動で実行させたり、一日の終わりに使用アプリのログやGitHubソースコードのバージョン管理・共有を行うプラットフォーム。コミット履歴などの開発活動が記録される。のコミットをまとめさせたりしているそうです。
プライベートでも同様で、Instagramの競合アカウントをNotionのテーブルで管理しCursorに最新情報を自動取得させたり、料理中やお風呂でChatGPTと会話して気になることを調べたりしていると語ります。ディープリサーチAIがネット上の複数の情報源を横断的に調べ、レポート形式でまとめてくれる機能。手作業では手間のかかる情報収集を自動化できる。機能を使って、Figmaの株価をAdobeやWixと比較したレポートを作らせたのは、なんとこの収録の1〜2時間前、ジムにいながらだったといいます。
めっちゃ使ってるじゃん。ってか怒涛のように喋るじゃん、一人で。
なべちゃんは、最近家を買ったこともあり、家のレイアウトや家具選びをChatGPTと画像を使って壁打ちしていたそうです。自分の家の写真を撮って相談すると、かなり正確に参考になる提案が返ってくるとのこと。ちーずも結婚式場のレイアウトや花の相談で同じような使い方をしていたと共感します。
一方で株については、なべちゃんは「まだAIより自分の方が賢い」と語ります。AIの意見を鵜呑みにするのではなく、自分の考えをぶつけてクリティカルシンキング物事を批判的・多角的に検証する思考法。前提や根拠を疑い、論理の妥当性を吟味する。で見てもらい、自分の思考のエッジを鋭くする使い方をしているといいます。おぐらくんも、株の将来性を聞くより、情報を集める手間をディープリサーチで省ける点が便利だと同意しました。
アンラーニングか、移譲か。そして増えた「内省の時間」
おぐらくんは、これまで慣れてきたやり方を「アンラーニング」することの大切さを語ります。自然に何も考えずに行動していると変化は起きないため、あえて新しいやり方を取り入れる、という姿勢です。
これに対しちーずは、自分の感覚は「アンラーニング」というより「移譲」に近いと指摘します。今まで習慣化していたものをAIに任せ、それを繰り返し使えるよう改善しているイメージだといいます。おぐらくんも「半分は移譲かもしれない」と受け止めました。
慣れたやり方を手放し、AI前提で仕事を再構築する
習慣化した作業をAIに任せ、繰り返し使えるよう改善していく
さらにちーずは「内省しやすくなった」と語ります。人間は忘れる生き物ですが、対話をサマライズさせることで、振り返るための情報を集めやすくなったといいます。おぐらくんもこれに強く共感。AIの言うことを鵜呑みにするだけでは頭がバカになってしまう。だからこそ、AIに任せて空いた時間や得た情報を使って、自分で内省し、自分の考えをまとめたりアイデアを思いつく時間を意図的に取ることが大事だと述べます。
同じツールを使う時代に、どう差をつけるか
おぐらくんは、今は誰もが同じツール(ChatGPT、Gemini、Claudeなど)を使うようになったからこそ、どう差をつけるかが重要だと語ります。そこで残るのは「判断」の部分だといいます。判断すらAIに任せれば、他の人と同じことをやっているだけになり、価値が生まれにくい。だからこそ、他人と違う個性を維持するために判断は自分でやりたい、という考えです。
結局、人ができることを自分も同じようにできますだと、なんか意味ないなと思って。
なべちゃんも、時給単価で仕事する時代ではもうないと述べます。AIによって仕事が早く終わる中、浮いた時間でどう価値を出すかが差別化になる。フリーランスの立場から、待ち時間をどう使うかを意識していると語ります。ちーずが「間の時間に何を考えているか」を尋ねると、なべちゃんは、次のタスクの先回りや、キャッチアップのためのコード読解に時間を使っていると答えました。
自分の「認知の癖」を知るとAIの使い心地が変わる
おぐらくんは、同じAIを使っていても、尋ね方や欲しいアウトプットの方向性は人それぞれ違うと指摘します。だからこそ、自分の「認知の癖」を把握しておくことがAIをうまく使う鍵になるといいます。人が視覚優位・聴覚優位などタイプに分かれるように、物事を理解したり考えたりするときの心地よい形は人によって異なる、というわけです。
おぐらくん自身は、コードやコードレビューを直接見るのではなく、一度AIに解説をお願いしてから見るようにしています。そうする中で気づいたのは、自分は頭の中で言葉ではなく図を描いて理解しているということ。丸や四角が線でつながり、矢印が刺さっているようなメンタルモデルで理解する方が、テキストの説明より格段に理解しやすいといいます。
そのため、コードレビューでも個人開発でもSNSのブランディングでも、自分にとって理解しやすいフォーマット(=図の形式)を指定してアウトプットを求めるようにしているそうです。「どういう対話形式が自分にとって最も有効か」を自分自身に問いかけて理解しておくと、AIの使い心地が大きく変わる、という気づきでした。
この流れでコーディングの話にも及びます。ちーずは、かつては美しいロジックを書けたときのテンションの上がりや、自信満々でプルリクを出す楽しさがあったが、それがなくなったと語ります。今はガイドラインに準拠したコードが出力され、テストケースが網羅されていればOK、という感覚になったからです。おぐらくんは、その楽しさに近い新しい感覚として「自分の望むアウトプットが一回のお願いでぴったり出てきたとき」を挙げ、良いコンテキストを渡してピンポイントで結果を得る喜びは、綺麗なコードを書く楽しさに近いと語りました。
職域の壁が薄まる時代。エンジニアの価値はどこへ?
なべちゃんが「コードを書く時間が減った正社員は、その分の時間で何をしているのか」と問いかけます。おぐらくんは、自身の会社が「エンジニアはビルダーになろう」という方針を掲げたことを紹介。コードを書くだけでなく、ビジネス課題からのソリューションを考えたり、カスタマーと話したり、デザインを考えたり、リリースした機能の分析を自分でやったりする機会が増えたといいます。
ちーずは、並列で実行するタスク量が増えたことに加え、「対話をもっと仕組み化できないか」「共通資産にできないか」を考えるようになったと語ります。個人のスキルにとどめず、全員が同じフローで効率化できる状態が理想だからです。さらに「職種の壁が本当になくなっている」とも指摘しました。
なべちゃんの「仕様がわかっている人にエンジニアの基礎を叩き込んだ方が早いのでは」という問いに対し、おぐらくんとちーずは「双方向だ」と応えます。実装がわかる人がプロダクト思考を身につける方向と、ビジネスやプロダクトがわかる人が実装知識を身につける方向、その両方があり得るということ。ただし、システムに責任を持つならバグやセキュリティを担保する知識は依然として必要で、そこに難しさが残ると補足します。
ちーずは、この変化はエンジニアだけの話ではないと指摘。PDMやデザイナーの仕事もAIで代替できるようになり、特にデザイナーには革命が起きているといいます。ツールを使わずにガイドラインに準拠したプロトタイプを生成し、職種間の連携を早めることができるようになった、というのです。
おぐらくんは、みんながビルダーとして全職域をこなせるようになる一方で、「自分の一番の強みはデザイン」「一番の強みはエンジニアリング」といった、わかりやすいT字型のビルダーが求められるようになるのではと予測します。全ての人への要求水準が上がった上で、専門領域を持ちつつ、人間にしかできない意思決定ができるようになることが大事だ、というまとめです。
熱量・知識欲・モデルの差。取り残されないために
プロジェクトのスピード感の変化も話題に。おぐらくんは、AI以前は半年かかっていたプロジェクトを、最近は1〜2ヶ月でやることがよくあると語ります。一方で「これからエンジニアになりたい」という人への助言には回答に困るといい、呪術廻戦のキャラクター「かしも」の「どちらもあり得る。そんだけだ」というコマになぞらえます。AIが今の仕事を奪う可能性も、奪わない可能性も、どちらもあり得る、という受け止めです。
ただし三人が共通して口にしたのは「仕事はなくならない」ということ。そして「サボっている人は取り残される」という点です。海外では“ぶら下がり社員”のような存在が許されないが、日本の会社ではそれができてしまうため、変化のスピードに置いていかれやすい、という指摘もありました。
ちーずは自分への活も込めて「一定の熱量を持ち続けることは大事」と語ります。AI時代に入ってから、本を読むよりAIに聞けばいいという感覚になり、エンジニアとしての学習モチベーションが落ち着いてしまった傾向があると打ち明けます。おぐらくんは、その熱量の新しい出し方として「人より多くAIに聞く」「プラス2〜3往復会話を深める」ことを提案。同じようにAIを使っていても理解度やできることに差がつく、というわけです。ちーずはこれを「熱量というより知識欲」と言い換え、その知識欲はAIとともに満たせるものだと気づいたと語りました。
なべちゃんは、どのAIに相談するか、そのモデルの性能差も今後の影響として大きいと指摘します。同じClaudeでも一番安いHaikuに聞くのとOpusに聞くのでは全然違うし、有料でしかアクセスできないモデルや、国によって使えないモデルもある。「AIを使っている」と言っても中身が全然違うことは現在進行形であり得る、という話です。
だからこそおぐらくんは、尊敬する人や賢い人がどうAIを使っているかを知ることで、AIの使い方自体から学べるものがあると述べます。そして、これは以前ITトリオで話していた「言語化されていなかった“AIを使うこと自体”がスキルになる」という予測がまさに現実になったものだ、と三人で振り返りました。
まとめ
今回のトークは「コーディング以外のAI活用法」から始まり、最後は少しコーディングの話に戻りつつ、AIとの向き合い方全般に広がりました。三人に共通していたのは、AIへの「依存」をネガティブに捉えるのではなく、社会のOSに組み込まれた前提として受け入れる姿勢です。
その上で大切なのは、AIに任せられることは任せ、浮いた時間で内省や自己研鑽を続けること。判断や意思決定という人間の領域を磨き、自分の「認知の癖」を知り、専門性を持ちつつ職域の壁を越えていく——そんな新しい働き方の輪郭が見えてくる回でした。三人は、こうしたAIの面白い使い方をしている人からのお便りも募集しています。
- AIへの「依存」は、パソコンやスマホと同じく社会のOSに組み込まれた変化と捉えられる
- 議事録・資料作成・株の分析・家のレイアウト相談など、活用は仕事からプライベートまで幅広い
- AIに任せた分、内省や自己研鑽の時間を意図的に取ることが重要
- 誰もが同じツールを使う時代、差がつくのは人間の「判断・意思決定」の部分
- 自分の「認知の癖」を知ると、AIへの尋ね方やアウトプット形式を最適化できる
- 職域の壁が薄まり、専門性を持ちつつ全職域をこなすT字型ビルダーが求められる
- 熱量・知識欲を持ち続け、使うモデルの差も意識することが取り残されない鍵
