お盆の常識が変わる? 休暇分散時代の宿泊業
旅館経営者の八木司さんと、Web制作会社プロスパー代表の土田さんが、2025年のお盆を振り返りながら、観光業界で起きている変化を語ります。「お盆=繁忙期」という常識が通じなくなりつつある今、宿泊業はどう対応すべきか――現場のリアルな声から見えてきた、休暇分散時代の戦略のヒントをまとめます。
今年のお盆、何かが違った
2025年のお盆、ホテル八木では例年と異なる現象が起きていました。お盆期間中の予約が予想より少なく、むしろお盆前やお盆後の方が活発に予約が入るという状況です。八木さんはこれを「すごく変わっている」と表現しています。
土田さん自身もお盆は福井県内への日帰り旅行にとどめ、高速道路も混雑していなかったといいます。福井から南へ向かう道は空いており、逆に金沢方面へ北上する車が増えていた印象だったそうです。
お盆期間中が繁忙期。料金設定も高く、予約が集中する。
お盆前後の方が予約が活発。お盆期間そのものは予想より静か。
帰省ラッシュは本当に起きているのか
ニュースでは毎年「帰省ラッシュ」が報道されますが、実態はどうなのでしょうか。八木さんは「帰省も減っているらしい」と指摘します。土田さんも、新幹線は満席になっても「乗車率100%超え」の報道が以前ほど見られなくなったと感じています。
以前は百何十パーセントとか言ってましたけど、それがないなって。
確かに。満席だとは聞きますけど、乗車率を超えたってなかなか。
福井市内では県外ナンバーの車を見かけることは多かったものの、それは観光地ではなく「街中のスーパー」に集中していたといいます。つまり、観光というより帰省目的の車が多かった可能性があります。
「混雑回避」が新常識に
土田さんが嶺南福井県南部の若狭湾沿岸地域。敦賀市・小浜市・美浜町・高浜町などが含まれます。北陸新幹線の延伸により注目が高まっています。方面を選んだ理由の一つは「混んでないから」でした。福井市から高速道路で1時間〜1時間半という手頃な距離で、未就学児を連れて遊べるイベントも多く、何より人混みを避けられる点が魅力だったといいます。
混んでるとこう、避けません?
避けます。道も避けます。同じ時間を過ごして倍かかるじゃないですか。値段も倍じゃないですか。
八木さんは、特に30代・40代の子育て世代にこの傾向が強いと指摘します。休暇を使ってわざわざ疲れに行く、という行為を避ける価値観が広がっているようです。
有給取得と休暇の柔軟化
土田さんは、会社勤めの人なら年10日ほどの有給があり、それを一度にまとめて取る人が増えていると指摘します。大型連休を自分で作れるのであれば、わざわざ混雑する時期を選ぶ必要はありません。
保育園に通う子どもの友達も、夏休み期間中に適度に休んでいるという話が聞かれました。つまり、有給有給休暇(年次有給休暇)。労働基準法により、一定の条件を満たした労働者に付与される、賃金が支払われる休暇。2019年の働き方改革関連法により、年10日以上付与される労働者には年5日の取得が義務化されています。を活用して7月後半から8月前半にかけて分散的に休暇を取る家庭が増えているようです。
八木さんが見ている30代・40代の子育て世代も、お盆前後に活発に動いていることから、子どもの休みに合わせて柔軟に休暇を取る家庭が増えていると推測されます。小学校入学後も平日に休ませて旅行に行く家庭が目立つといいます。
お盆・年末年始など暦通りの休暇
全員が同じ時期に休む
有給を活用した柔軟な休暇
7月後半〜8月前半に分散
お盆営業の隠れた課題
八木さんは、お盆やお正月の時期には市場がお休みになってしまい、材料の仕入れが非常に読みにくくなると明かします。特に鮮魚や精製食品魚介類の加工品(練り物、干物など)や肉の加工品などを指します。生鮮食品と異なり、流通や在庫の管理が複雑です。は暦通りに休むため、大量に仕入れることができません。
あんまりたくさんも仕入れれないんですよ。悪くなるし。
夏は直前に予約が伸びることも多いため、材料の調達がさらに難しくなります。お盆明けは市場が通常営業に戻るため、仕入れは安定するといいます。
つまり、お盆は需要が読みにくく、仕入れも制約が多い「やりにくい時期」だったのです。逆に言えば、休暇が分散すれば、宿泊業にとっても安定した運営がしやすくなる可能性があります。
分散化がもたらす可能性
八木さんは、休暇の分散化が進むことで「全てのものがやっぱり変わってくる」と述べています。連休に集中していた需要が平準化されれば、価格の歪みや仕入れの困難さも解消されるかもしれません。
現在、ホテル八木ではお盆明けの平日も含めて予約が活発に入っており、月曜日でも満室に近い状態だといいます。土田さんからは「休館日がもったいない」という声も出ましたが、これは逆に言えば需要の分散が実際に起きている証拠です。
八木さんは、こうした動向をチェックしながら戦略を立て、お客様にしっかり届けていく必要があると語ります。次回のエピソードでは、秋のチラシ戦略について具体的に話し合う予定です。
まとめ
2025年のお盆を振り返ると、従来の「お盆=繁忙期」という常識が揺らいでいることがわかります。有給取得の柔軟化や働き方改革により、30代・40代の子育て世代を中心に、混雑を避けて休暇を分散させる動きが広がっています。
宿泊業にとって、この変化は大きなチャンスです。需要が平準化されれば、仕入れや価格設定の安定性が増し、より質の高いサービスを提供しやすくなります。八木さんが語るように、「今まで当たり前だったこと」を見直し、新しい戦略を立てていく時期に来ているのかもしれません。
次回のエピソードでは、こうした動向を踏まえた秋のチラシ戦略について具体的に掘り下げていきます。
- 2025年のお盆は、お盆期間中より前後の方が予約が活発だった
- 30代・40代の子育て世代を中心に、混雑回避と有給活用が広がっている
- お盆・正月は市場が休むため、宿泊業にとって仕入れが難しい時期
- 休暇の分散化は、宿泊業の安定運営につながる可能性がある
- 「当たり前」が通用しなくなる時代、新しい戦略が求められている

