日常生活そのものを支える「あえるひかり」の仕事
番組の冒頭で、川﨑さんは自身が10万人に1人の難病とともに、鹿児島で約80名のスタッフと福祉の会社を経営していると紹介します。
この回のテーマは「介護の資格も経験も本当にいらないのか」です。まず前提として、川﨑さんの会社「あえるひかり」が行う介助の中身が説明されます。
それは、重度の障害を持った人の日常生活の介助です。テレビをつける、ご飯を食べる、頭が痒いところを掻く、トイレに行く。そうした当たり前の行為を、ヘルパーがサポートします。
川﨑さんは、皆が当たり前に過ごしている日常を思い浮かべ、そこにヘルパーがいて、自分がやることすべてを代わりにやってもらう姿をイメージしてほしいと話します。
ただし、ただ代わりにやるのではありません。当事者が見ながら、伝えながら、指示しながら進めていく介助だと説明されます。
重度障害があっても介助が成り立つ理由
こう聞くと、重度の障害を持つ人の介助は本当にできるのか、と思う人もいるかもしれません。それに対して川﨑さんは「できる」と断言します。
その理由は、障害を持った人自身が「やりたい」という思いを持ち、良いか良くないかを何らかの方法で感じ取り、伝えることができるからだと語られます。
言葉でうまく説明できる人もいれば、手振り身振りや自分なりの意思表示で伝える人もいます。ベテランのヘルパーや親は、その受け取り方を知っているといいます。
だからこそ、その意思を感じ取り、日常生活の全体像を知りながら、当事者の生活をサポートすることができるようになる、と説明されます。
施設・病院の介助は「ルーティン化」している
ここから、タイトルの本題である「経験は要らないのか」という話に入ります。川﨑さんの答えは「本当に要らない」というものです。
その理由として挙げられるのが、施設や病院、グループホームでの介助が、ある意味でルーティン化しているという点です。
食事、休憩、おやつ、夕食、消灯、トイレ、入浴。それぞれが時間や曜日で決まっていて、勤務時間内に流れるように済ませていくのが一般的だと語られます。
トイレはこの時間とこの時間とこの時間。入浴は火曜日と金曜日ですみたいなね。
さらに施設では、介助が本人主体ではなく、看護師や介護士が決めた方法に本人が合わせる形になりがちだと指摘されます。
本人がやりたい時にやりたいことをする現場
一方で、CILの考え方は施設とは異なると説明されます。本人がやりたい時に、やりたいことをサポートするという発想です。
そのため、いつもならご飯を食べ始める時間でも「今日はしない、これから出かける」ということが起こります。夜10時に寝る準備を促しても「今からお風呂に入る」と言われることもあります。
これは、障害を持った人が他の人と変わらないように生活することを守ろうとしているだけだ、と川﨑さんは語ります。
その生活に合わせて介助する側がサポートしていく。これが自立生活支援の現場だと説明されます。
施設経験は「アンラーン」が必要になる
人の体に直接触れて介助する、という定義では施設も自立生活も同じです。ただし、施設や病院で学んだことは、この障害の人には1割か2割しか役に立たないかもしれない、と川﨑さんは話します。
腰を痛めない介助方法や、着脱がやりやすい方法など、一部は適用される場合もあります。しかし同じ腰麻痺でも、腰を上げると痛い人と、勢いよく上げても平気な人がいるといいます。
人を介助するという大きな前提では「慣れ」は大事です。しかしそれより上のステップは、家庭ごと、当事者ごとに変わってくるものだと語られます。
だからこそ、過去の経験を信じて疑わず、「あそこではこうしていた」とやりすぎてしまうと問題が起きる、と指摘されます。
当事者の気持ちや思いが言えなくなり、家にいるのに施設にいるような空気になって、苦しくなってしまうことがあるといいます。
時間や曜日で決まったルーティン。介助方法に本人が合わせる。
本人がやりたい時にやりたいことをサポート。当事者主体で動く。
資格は「一部正解、一部誤り」の理由
続いて、資格が必要ないという点については「一部正解で一部誤り」だと説明されます。
無資格でも求人に応募できますが、面接に受かった後、重度訪問介護従業者という資格を、長くて3日、短くて2日で取得してもらうことになります。
この資格があれば、重度訪問のご家庭に入り、活躍できるようになるといいます。
一方で、ヘルパーの初任者研修や実務者研修では、障害を持った人の分野や自立生活の思い、運動の歴史や背景を学ぶ場が、ほぼ学習プログラムに入っていないと語られます。
そのため、障害者に対する福祉的な先入観が強すぎると、行動の抑止につながる可能性があると指摘されます。たとえば「外が寒いから、呼吸器系が弱い人は行かない方がいい」といった判断です。
川﨑さんは、これはエンパワーの制限になりかねないとして、なるべくフラットにやっていくことが望ましいと話します。
なるべくね、フラットに、えー、やっていくことがね、この重度訪問介護に興味があってスタートを切るって方がいらっしゃったら、本当にいいのかななんて思っています。
まとめ
重度訪問介護の現場では、施設で身につけた介助のルーティンや先入観が、かえって当事者の意思をふさいでしまうことがあります。だからこそ「経験はいらない」と言える、という川﨑さんの解説でした。
- あえるひかりの仕事は、当事者の意思を感じ取りながら日常生活を支える介助
- 重度障害があっても、本人の意思表示を受け取ることで介助は成り立つ
- 施設・病院の介助はルーティン化しており、自立生活支援とは発想が異なる
- 過去の福祉経験は「アンラーン」しないと、かえって難しくなる場合がある
- 資格は無資格でも応募可能。入職後に短期間で重度訪問介護従業者を取得する
