天才は「才能」ではなく「状態」── けんすうが語る、誰でも天才になれる方法
けんすうが、漫画家かっぴー『左ききのエレン』などで知られる漫画家。SNSやウェブ広告業界出身で、クリエイティブと才能を題材にした作品を多く手がける。さんとの出版記念トークイベントを振り返り、「天才とは状態である」という新刊『天才になれなかったすべての人へ』のテーマを解説します。自分の持つ「カード」を把握し、デッキを組み替えながら生きる戦略論、そしてリスナーからの質問への回答まで、その内容をまとめます。
天才は「状態」である ── かっぴー本のコアメッセージ
けんすうは日曜日、かっぴーさんの新刊『天才になれなかったすべての人へ』(ダイヤモンド社日本の大手出版社。ビジネス書・経済書の出版で知られ、『嫌われる勇気』など多数のベストセラーを出している。)の出版記念イベントに登壇しました。テーマはまさに「天才」。
本の主張をざっくりまとめると、こうなります。
天才には誰でもなれる
天才とは「スキル」や「才能」ではなく、周囲からそう評価される状態のことだから。
自分のカードを把握してデッキを組む
明るい・暗い・失敗してもおちゃめに見える ── これらはすべて「カード」。世間から評価されるデッキの組み方を設計する。
多くの人は天才や才能ある人を見ると「諦める」「羨む」方向に行きます。しかしかっぴーさんは「なんで自分は天才じゃないんだろう」をずっと研究してきた人。だからこそ他のビジネス書にはない切り口の本になっている、とけんすうは評価します。
僕もかなり同意するところがあり、自分に才能があるとは思ってないんですけど、「このカードとこのカードで戦うとめっちゃ評価されるよね」みたいなことを考えて戦うタイプなので。
カードには賞味期限がある
自分の持つスキル・性質・カードには賞味期限がある、というのも本書の重要なポイントです。
可愛げがある、上司に生意気を言っても可愛がられる、挑戦者ポジションで泥臭くSNSを使う
同じキャラのままだと「パワハラ」「圧がある人」と思われる。格を上げるポジションへの移行が必要
かっぴーさん自身も20〜30代では挑戦者ポジションだったが、40代に入って「格を上げる」方向にシフトしているのではないか、とけんすうは指摘します。バトルフィールドは変化するので、同じカードで戦い続けるのは危険なのです。
AI時代に「楽しい」と「情熱を注げる」は違う
リスナーから「AIアプリ開発に猛烈に熱中している。本業より情熱を注げるので退職したい」という相談が寄せられました。けんすうの回答は、慎重なものでした。
AIアプリ開発はクリエイティブだが、努力の部分があまり要らないのでほぼ全員が楽しめてしまう。これは「ゲームが楽しい」「サッカー観戦が楽しい」と同じレベルの楽しさかもしれない。
本当に情熱を注げる仕事になっているかは「毎日5時間プログラミングの基礎を勉強しても飽きないか」で見たほうがいい。
けんすう自身がAIでアプリを作れるのも、UI設計・インフラ・トークンAIモデルが処理するテキストの最小単位。AI APIの利用料金はトークン使用量に応じて課金されることが多い。使用量の最適化など、これまでのアプリ開発経験があるから。基礎知識がないと「AIでイラストを描いて楽しい」と言っている人との差がつかなくなるのです。
頭のいい人の3レイヤー ── けんすう・福島・孫
「頭のいい人」を3段階に分けて、それぞれが何をやっているか、という質問にけんすうが答えました。
けんすうの分析では、レイヤーXは「AIで人が減る」という大勢に反して営業を増やし、値上げの方向に動いている。バクラクの営業電話が頻繁にかかってくるのもその一環で、大組織をマネジメントできる企業がさらに稼ぐ未来を見据えている、というのです。
そしてその上の孫正義ソフトバンクグループ創業者。数年前からAI時代の到来を予見し、ARM買収やOpenAIへの巨額投資を進めている。さんは、もっと先を見ています。
悩みの共通項は「決断と判断の混同」
普段リスナーから受ける相談を見ていて、けんすうは多くの人が陥っているミスを2つ挙げます。
「どのAIに課金すべきか」を3時間調べるくらいなら、2つに同時課金して10時間ずつ試したほうが早い。無駄になるのは1500円だけ。3時間調べるのは時給500円で自分の時間を切り売りしているのと同じ、というわけです。
「失敗したくない」より「リスク管理」
「成功しなくていいから失敗したくない」という相談に対し、けんすうは「失敗を恐れずに挑戦する」も「失敗したくない」もどちらも間違いだと指摘します。正解はリスク管理をすること。
| シナリオ | 損失 | 対応法 |
|---|---|---|
| 最悪(一個も売れない) | −200万円 | 在庫処分 |
| 半分売れる | −100万円 | 貯金から対応 |
| 半額処分で圧縮 | −50万円 | 2ヶ月働けばチャラ |
こうExcelで管理しておけば「最悪のケースでも2ヶ月働けば取り戻せる範囲」とわかります。成功か失敗かの二元論で見ると挑戦できなくなりますが、ダメージコントロールの発想なら踏み出せるのです。
自分のカードに気づくということ
「早めに気づけてよかった自分のカードは?」という質問に、けんすうは2000〜2001年頃に気づいた「ネットで文章を書くのが得意」を挙げます。学校では褒められたこともなかったのに、ネットでは読まれた。ブログブームで「どうやったら受けるか」を研究し、2004〜2005年に対策が一致して、それ以降ずっと武器になっているといいます。
カードの賞味期限はAI時代でますます短くなっています。けんすうは「死ぬほど速くなっている」と表現します。
カードの賞味期限が10倍、100倍のスピードで縮んでいる ── これがAI時代の現実だというのです。
まとめ
かっぴーさんの新刊『天才になれなかったすべての人へ』は、「天才=状態」という新しい視点を提示しています。スキルや才能ではなく、自分のカードを把握し、賞味期限に応じてデッキを組み替えることで、誰でも天才と呼ばれる状態にたどり着けるかもしれない。けんすう自身もこの戦略で戦ってきたタイプだと話します。
AI時代はカードの寿命が劇的に短くなり、組み合わせのセンスが勝敗を分けるようになりました。リスナーの相談に答える中でも、判断と決断を混同せず、失敗ではなくリスクを管理し、ニーズのある場所で自分のカードを使う ── という一貫した思考が浮かび上がってきました。
- 天才は「才能」ではなく「状態」。自分のカードを把握してデッキを組めば、誰でも天才と呼ばれる状態を目指せる
- カードには賞味期限がある。20代で有効だったものが40代では逆に評価を下げることもある
- AI時代はカードの寿命が10〜100倍速で縮んでおり、組み合わせのセンスが重要に
- 悩みの共通項は「聞きやすい人に聞く」「判断と決断を混同して悩み続ける」の2つ
- 「失敗を避ける」のではなく、Excelで最悪シナリオまで書き出してリスク管理する
- 頭のいい人ほど、未来から逆算して今の打ち手を決めている(孫正義さんはその究極形)
