Webメディアはなぜ「広告だらけ」か「有料」の二極になったのか
けんすうさんはまず、現在のWebメディアが構造的に難しい状態にあると切り出します。
多くのユーザーが感じているのは、無料メディアで広告がとても増えて見づらくなったこと、そして朝日新聞や日経新聞、ブルームバーグ、noteなどで有料化が進んでいることです。
つまり、無料で情報を見たい人は大量の広告を見なければならず、そうでなければお金を払う、という二極の状態になっていると整理します。
背景には、新聞をそのままWebに持ってきたときに広告収入で賄えるのかという長年の議論があったといいます。世の中がインターネットへシフトし新聞の売上が下がるなかで、結論として広告ではうまくいかなかったと話します。
け
けんすう
Yahoo!ニュースに配信して、Yahoo!経由で人は来る状態にはできたものの、広告収入でそんなに儲かるわけでもなかった。
その結果、多くの新聞社が有料へシフトしました。ただし日経や朝日は成功しているものの、新聞の売上をカバーできているとは限らないケースも多いといいます。
雑誌は成り立ってWebで成り立たない理由
普通のWebメディアとして立ち上げても、広告費だけで稼ぐのは厳しいとけんすうさんは指摘します。
たとえば10万PVを稼いでも売上は1〜2万円ほど。10万PVを稼ぐのは大変なので、ライター代を考えるとペイできないといいます。
その理由として、雑誌との違いを挙げます。雑誌は800円ほどで売れますが、読者が実際に読むのは大体2割ほどだといいます。
つまり雑誌には余剰利益が多く、1万〜2万円のライター費用をかけても成立します。一方Webでは、無駄な記事は読まれず、1ページで離脱されてしまうと説明します。
け
けんすう
雑誌だったら買ったから読もうかなで読んでくれて、それでも2割ぐらい。でもウェブだと1ページとかで終わってしまう。
その結果、Webメディアで雑誌的なコンテンツを出してもペイできない状態になっていると話します。
元ネタを他から取ってくるトギャッターのような会社ですら、TwitterのAPI料金の高さなどから広告を多く入れざるを得ず、Webメディア全般が岐路に立たされていると見ています。
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トギャッター ── Twitter(現X)の投稿をまとめて閲覧できるサービス。ユーザーが投稿を集めてページを作る形式で、SNS上の話題を後から追いやすくする役割を担ってきました。
アメリカのSubstackと、良い情報が有料へ移る流れ
アメリカではSubstackのような有料メルマガのプラットフォームが伸びているとけんすうさんは紹介します。
これは、個人やビジネスパーソンが読者から直接お金をもらって書くスタイルへの移行だと見ています。
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Substack ── 書き手が有料メールマガジンやニュースレターを配信し、購読料を直接受け取れる米国発のプラットフォーム。個人が読者から直接収益を得る発信スタイルを広げました。
けんすうさん自身もnoteで有料記事を書いており、1500〜2000人の読者がいれば、記事のライティングを請け負うよりもお金が入ると話します。
その結果として、Web上から良い情報がどんどん消えていくのが現状だといいます。AIが集めてくるような無料記事は、お金をかけられないため質が下がり、良いコンテンツは有料に移っていると指摘します。
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キーインサイト
どんどんウェブ上からいい情報が消えていくっていうのが現状。
── けんすう
ポッドキャストを記事化して「良い情報」を増やす試み
この構造問題を踏まえて、けんすうさんは自身が手がけるサービス「Pody」について触れます。事前登録の最初のほうの人だけに開放している段階だといいます。
ポッドキャストで喋った内容をそのまま記事にすれば、コストをかけずに良質なコンテンツを出しやすくなると考えていると話します。
ポッドキャストで話した良質な内容が記事になることで、ネット上に良い情報が増え、検索に引っかかり、ポッドキャスト自体も知られていく。さらにAIが良い情報を手に入れられるようになる、という循環を描きます。
後半では、Podyの事前登録に関する質問にも答えています。850人ほどが事前登録しているなかで、最初の100人ほどで試している段階であり、すぐ登録申請した人からメールが届いている状態だと説明しました。
個人開発のアイデアは「ニッチだけど本来こうあるべき」を狙う
質問コーナーでは、バイブコーディングでサービスが簡単に作れる今、作りたいものが見つからないという相談が寄せられました。
■ 質問
質問者
バイブコーディングでサービスが簡単に作れる今、アイデアの見つけ方を知りたい。作りたいものが見つからない。
回答
これまではコストが高くてニッチなものは作れなかった。そのニッチなニーズを叶えるなら専用ツールのほうが良い、という領域から探すとよい、というのがけんすうさんの答えです。
例として、前日に作ったというプランク用アプリを挙げます。プランクは1分などのタイマーで行うため、1分を測れて、毎日やったか、週に何時間やったかが出てくるアプリを作ったといいます。
こうしたアプリは意外と見つからず、既存のものはタイマーアプリ、筋トレアプリ、習慣化アプリのいずれかに寄ってしまうと話します。
け
けんすう
僕は毎日プランクできればOKで、そのために専用アプリがあってOK。
他にも、音声入力でメモを溜めてメールで送りAIのメモリに入れられるツールや、自分なりの返信一覧がある音声入力アプリなど、ニッチだが本来こうあるべきという発想の例を挙げました。
競争が激しい時代に個人開発で打率を上げるには
iOSアプリをリリースしたものの次の一手に悩む、という相談もありました。
■ 質問
質問者
V0などの台頭で誰でも作れる時代になった今、個人開発で打率を上げるためにどんなジャンルを狙いますか。
回答
面白アプリをどんどん出すのは今なら良いとしつつ、けんすうさんは「他が入ってきづらい仕組み」を作ることを勧めます。
サーバーサイドがいらないツール系はすぐ作れてしまうため、ネットワークエフェクトが起こるアプリや、最初にやると他が入りにくい仕組みが一つの狙い目だと話します。
素早く出すことに注力すると1日でできるアプリばかりになりがちで、これはあまり良くないと指摘します。むしろ3ヶ月かかるようなものは他が入ってきづらいといいます。
け
けんすう
現物のアプリがあってもパクりづらい仕組みのものを作るといい。
ツールについては、Claudeで作れる人ならCodexなどを入れて使えばよく、Claudeでデザインとコードを進めるのが一番楽ではないかと話します。
さらに、トークン消費を抑えるノウハウはネット上に多いため、それらを調べてまとめてもらってから進めるのがタイパが良いとしています。
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バイブコーディング ── AIに自然言語で指示しながらプログラムを組んでいく開発スタイルを指す言い方。細かくコードを書かなくても、対話的にアプリを作れる点が特徴とされています。
決断と判断を混同しない、個人の意思決定
役員3人での経営を通じて、個人の意思決定の難しさに気づいたという相談です。
■ 質問
質問者
個人での意思決定に必要な要素は、実は「決める」以外にハードルがあるのでしょうか。
けんすうさんは、悩めば精度が上がると思っている人が一定数いると指摘します。1秒で決めても1週間考えても変わらない場面では、1秒で決めたほうが合理的だといいます。
ここで、決断と判断を混同していると整理します。判断は情報を集めたほうが良い場合があるが、決断は「決めの問題」であり、決めてしまったほうが良いと話します。
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キーインサイト
決めてからその後悩んだ方がいいのに、決める時点で悩むっていうのは、比較的もったいない。
── けんすう
さらに、決められないときに「何もしない」を選ぶ人が多いとも指摘します。
たとえば起業を悩み続けて今の会社に1年いるのは、今の会社に居続けると決断したのとほぼ同じ意味だといいます。しかし何もしていないから「まだ決めていない」と勘違いし、1年を無駄にしてしまうと話します。
け
けんすう
決断自体が怖いので、なんとなく何もしてなくて、まだ決断してないっていう状態にいると思うことで安心したい。
AIツールを「習得する」発想は捨ててよい
ChatGPTとGeminiを実務で使っており、次のステップに進みたいという相談もありました。
■ 質問
質問者
次に触るべきおすすめのAIツールと、有料AIスクールを選ぶ基準を教えてください。
けんすうさんは、Excelの次はWordという感覚でAIツールを一つずつ習得しようとするのはありがちな勘違いだと話します。
け
けんすう
次に触るべきおすすめのAIツールみたいな感覚は捨ててもいいかもですね。あんま意味ないと思います。
ChatGPT、Gemini、Claudeの3つを触っていればほぼAIを使っていると同義であり、聞いたことのないツールも裏側は同じようなモデルを使い、側だけの工夫であることが多いと説明します。
一歩進めたいなら、パソコンの操作もしてくれるCodexやClaudeのCoWorkを使うと今より先に進めるとしています。
有料のAIスクールについては、今使えているなら通わなくてよく、自分でAIに聞きながら学べばよいと話します。
どうしても学びたい場合は、月額5980円ほどで年間契約もなく辞められるAI木曜会のようなコミュニティのほうが良いのではないかと紹介します。数十万のスクールは、学ぶ意欲がある人には基本的に不要という立場です。
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CoWork / Codex ── Codexはコード生成や実行を支援するAIツールの名称として言及されています。ここでは、パソコン内の操作まで手伝ってくれる一歩進んだツールという文脈で紹介されています。
資本が資本を呼ぶ「経験格差」とナラティブ
メタスキルの本で「ナラティブが重要」と書かれていた点について、原体験のことかという質問が寄せられました。
■ 質問
質問者
ナラティブが重要というのは原体験のようなものでしょうか。良い経験を持った人しか価値を出せないということですか。
けんすうさんは原体験の話が嫌いだとし、ナラティブとは今からどう積み上げるかの話だと答えます。過去が今の自分に影響を与えるとは考えない立場です。
け
けんすう
昨日まで野球やってたからといって、テニスのプロになりたかったら、今日テニスの練習した方がいい。
未来にどうなりたいかから今の行動が決まり、その積み重ねでナラティブができると説明します。就活時の棚卸しについても、20歳そこらで棚に入るほどの重要な体験がある人は少ないと話します。
一方で経験格差は「スーパーある」と認めます。お金や人脈という資本があるほど、大人になってからさらに資本が増えていくと指摘します。
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初期の頃の打ち出し角度が高ければ高いほど、どんどんその角度のまま登っていく。
── けんすう
「相方になる」ドミナント戦略という指摘
自分のファンを直接増やすより、いろいろな人の相方になるほうが認知も信頼も広がるのでは、という鋭い質問が寄せられました。
■ 質問
質問者
いろんな人の相方になる努力のほうが結果として広がる時代では。ケンスーさんは意図的にその戦略を取っているのですか。
けんすうさんは、初めて言われたと驚きつつ、まさにドミナント戦略だと認めます。ポッドキャストで誰と組むかを重点的に設計していると明かします。
古典ラジオの深井さんや樋口さん、田中圭さん、箕輪さんといった枠を意識し、それぞれの層をかなり重点的にカバーしていると説明します。
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ドミナント戦略/ランチェスター戦略 ── ドミナント戦略は特定領域に集中して優位を築く考え方、ランチェスター戦略は弱者が局地戦で一点集中して勝つ考え方として語られています。どちらもニッチで一番を取ることを重視します。
一般の会社員や中小企業が実践するなら、ニッチすぎない分野で絶対に一番を取ることが第一歩だと話します。
例として、賢い若手が社内のAI推進担当を取りに行く動きを挙げます。会社でAIに一番詳しくなると、若手でも重要役職に抜擢され、給与が上がることもあると説明しました。
まだ掘り起こされていない情報源とストーリーの限界
音声から文字を作る流れは知識の流通経路が変わる話だ、という感想とともに、他に価値が眠る情報源はあるかと問われました。
けんすうさんは、飲み会などで話される内容には超重要な情報があるのにネットにほとんどない、と繰り返し語っている点を挙げます。
け
けんすう
マジでほとんどネットに出てない情報が、IT系ビジネスの社長の集まりですらこれだけ感じる。
ダボス会議やシリコンバレーのトップ層では、さらに重要な情報が行き交っているはずで、それを想像すると焦ると話します。
また、価値の源泉がストーリーへ移るという話には8割賛成としつつ、2割の留保も示します。みんながストーリーを語ると、人間の認知資源には限りがあるため、かえって差別化にならないと指摘します。
性別適合手術を経た人の経験や、身体的なコンプレックスの話を例に挙げ、当人にとっては大きな出来事でも、似た話を何度か聞くと慣れてしまうことがあると話します。
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それぞれの主観ではすごく大事な話なのに、一般の人から見たらそのストーリーがそんなにピンとこない。
── けんすう
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性別適合手術 ── リスナーからの指摘を受け、番組内では「性転換」ではなく性別適合手術・性再指定手術という呼び方が適切とされました。当人の身体と性自認を一致させるための医療行為を指します。
マネタイズは急がない、という一貫した立場
マネタイズを急ぐべきかという質問に対し、けんすうさんは急がないほうが良いと一貫して答えます。
■ 質問
質問者
お金がない場合でもマネタイズを急がない方が得ですか。急いでもいい状況はありますか。
すぐマネタイズできるものはすぐ真似され、競争が激化して収入が下がるのが目に見えていると指摘します。半年頑張って500万稼いでも、そこで終わってしまうといいます。
一方でマネタイズを急がず信頼を獲得できれば、その信頼は毀損しにくく、毎月の収入を長く保てると話します。
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500万ゲットできるのと、ずーっと500万ゲットできるのだと、ずーっと500万の方がいい。
── けんすう
そもそもマネタイズを急げる手法自体が今はほとんど残っていないとも指摘します。ブログのアフィリエイトもnoteでの有料情報も、数年前ならできたが今は難しいと話します。
AIを教える仕事の寿命と、ExcelやPC教室との違い
地方で中小企業のAI活用や業務効率化を支援している、という方から仕事の寿命についての質問がありました。
■ 質問
質問者
AIに詳しい人はあと2年でなくなると言われますが、地方ではExcel教室のように残る需要もあるのでは。この仕事の寿命をどう見ますか。
けんすうさんは、2年後は余裕であるが5年は分からない、という見立てを示します。
ExcelはExcelを学ばないと使えなかったが、ClaudeCodeができる人が1人いれば、Excelを使わなくてよい状態を100人に作れる、という点が違うと説明します。
け
けんすう
ClaudeCodeを使って業務改善アプリを誰かが作ってくれて、私それ使ってますみたいな感じになる気がする。
そのため、ExcelやPCほどニーズが続くわけではなく、3年ほどでこれを教えるニーズ自体が減る可能性はあると話します。とはいえ2年でなくなることはなく、3〜4年はいけるだろうとしています。
他人の人気にあやかる企画の落とし穴
認知度アップのため、VTuberのサムネ採用を目標にしたYouTube配信を始めたい、という相談もありました。
■ 質問
質問者
VTuberさんのサムネ採用を目標にしたチャンネルを始めたいのですが、どう思いますか。
けんすうさんは良いとしつつ、ネガティブ面も認識したほうがよいと助言します。認知度アップのためにVTuberの人気にあやかろうとしている意図が見え見えで、反応してもらいにくいと指摘します。
け
けんすう
「踏み台にして人気になってやろ」っていう匂いって、めちゃくちゃ敏感に感じる。
採用されない状態が続くと、見ているユーザーも「成果が出ないんだな」と感じて応援しなくなる、勝ちが見えにくい企画だと話します。
自分の元にも、認知度アップ目的でイラストを描いて送ってくる人が多く、踏み台にされている感じが強いと嫌になると打ち明けます。
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人の人気にあやかるのはいいが、あやかり方が下品なんで嫌われそう。
── けんすう
インフルエンサーやVTuberは、そうした意図に囲まれているぶん過敏に反応する、という点を自覚したほうがよいとまとめました。
ガラガラポンはもう起きている
AI時代に努力すべき方向が変わるなか、社会がまだ調整されていないという声に対し、いつ大きな転換が来るのかという質問です。
けんすうさんは、ガラガラポンはもう起きているが、起きていることに気づいていないだけだと答えます。
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インターネットの時にこれはガラガラポンやなと思ったのを1としたら、今100ぐらいガラガラポン。
── けんすう
インターネットを革命だと思っていた自分が恥ずかしいくらいの規模だといい、変化に気づくこと自体が難しいと話します。
まとめ
Webメディアが「広告だらけの無料」か「有料」に二極化する背景を起点に、良質な情報が有料へ移り、無料の世界から痩せていく構造が語られました。その解決策としてポッドキャストの記事化を挙げつつ、後半では意思決定、個人開発、マネタイズ、発信戦略まで一貫した考え方が示されました。
- 無料メディアは広告依存で見づらくなり、良い情報は有料へ移っている。雑誌と違いWebでは無駄な記事が読まれないため、雑誌的コンテンツはペイしにくい。
- 個人開発は「ニッチだが本来こうあるべき」領域や、他が入りにくい仕組みを狙うと打率が上がる。
- 決断は「決めの問題」であり、決める時点で悩むより決めてから悩むほうが合理的。何もしないことも一つの決断。
- マネタイズは急ぐと真似され短期で終わる。信頼は毀損しにくく、長く続く収入につながる。
- 他人の人気にあやかる発信は意図が透けると嫌われる。AIによる変化はすでに起きているが、気づきにくい。