若者の「車離れ」をどう見るか
番組冒頭で、ワタンドさんは「若者の丸々離れ」という言葉を取り上げます。
テレビ離れ、お酒離れ、活字離れなど、よく聞く言い回しです。
まあとはいえね、これうるせえよって話だと思うんだよね。昔当たり前だと思われていたものが、価値観が変わって当たり前じゃなくなったっていうだけの話だと思うのよ。
そうした「丸々離れ」の代表格として挙げられるのが車離れです。
ワタンドさんは子育て世代でありながら、マイカーは持っていないと話します。
ただ車に乗らないわけではなく、レンタカーやカーシェアで時々使うそうです。離れたのは「車」ではなく「マイカーという所有の形」かもしれないと整理しています。
道路の歌が減っている、という気づき
地名やご当地ソングを集めるワタンドさんは、ある気づきを語ります。
首都高や国道何号線といった、具体的な道路が出てくる歌が減ってきているというのです。
この現象を、車離れと結びつけた因果のイメージで説明します。
車に乗らなくなる
マイカーを持つ人が減る
ドライブの機会が減る
出かける場面自体が少なくなる
共感できなくなる
ドライブソングに気持ちが乗らない
ドライブソングが減る
みんなに伝わらないため作られにくくなる
道路の歌が減る
ドライブソングの中にあった具体的な道路描写が消える
ここから「このままいくとドライブソングや道路の歌は滅びてしまうのか」という仮説が立てられます。
80年代・90年代のドライブソング
ワタンドさんは、これまでの経緯を曲とともにさかのぼります。
かつてドライブは、大人のたしなみであり定番の体験でした。恋人を助手席に乗せて出かけるドライブデートは、多くの人にとって憧れだったと話します。
代表例として挙げるのが、荒井由実さんの「中央フリーウェイ」です。1976年の曲で、中央道を舞台にしたロマンティックな情景が描かれています。
「片手で持つハンドル、片手で肩を抱いて、愛してるって言っても聞こえない、風が強くて」みたいなのがあるんですよね。オープンカーみたいな感じなんかね。
その後も中村あゆみさんの「翼の折れたエンジェル」、TM NETWORKの「GET WILD」、サザンオールスターズの「希望の轍」など、車内を舞台にした青春を描く名曲が続きます。
90年代に入ると、ドライブはより日常的になっていきます。80年代までの背伸びした特別感から、ナチュラルな雰囲気へ変わったと分析します。
Mr.Childrenの「車の中で隠れてキスをしよう」では車内が二人だけの閉鎖空間として描かれ、L'Arc~en~Cielの「DRIVER'S HIGH」では運転そのものの高揚感が押し出されています。
2000年代以降、変わっていくドライブ
21世紀に入ると、流れが変わってきます。この頃から社会全体で「車離れ」という言葉も出てきました。
バブル崩壊後の収入の伸び悩み、長いデフレ、都市部の公共交通の充実などが背景にあると話します。所有ではなくレンタカーという手段も定番になっていきました。
実際「レンタカー」という歌詞は、以前は数えるほどだったのが2000年代に増えてきているそうです。椎名林檎さんの「走れゎナンバー」もその一つとして挙げられます。
2020年代に入ると、ドライブはさらに特別な体験になりつつあります。
2021年のSHISHAMOの「ドライブ」では、免許を取らない彼氏にやきもきする彼女が描かれ、ドライブデートが叶わない夢のように登場します。
同じく2021年のsumikaの「アンコール」では、カーシェアで迎えに行く場面が自然な言葉で出てきます。車を持たないことが、普通の光景になってきていると話します。
滅びるのではなく、ドライブが変わった
ここで最初の仮説に戻ります。ドライブソングはこのまま滅びゆくものなのでしょうか。
いろいろな曲を聴いた結果、ワタンドさんが行き着いた答えは少し違うものでした。
滅びるっていうか、ドライブっていうものがそもそも変わったんだなっていうことだと思いました。
どこかに出かけることも、そのために車のようなテクノロジーを使うことも変わりません。変わったのは、車との関係性だと整理します。
所有からレンタカー、そしてカーシェアへ。使い方が社会の変化とともにじわじわ変わってきたというのです。
自動運転が起こす「感情の革命」
さらにこれから、ドライブシーンに大きな革命が起ころうとしていると話します。それが自動運転です。
自動運転が当たり前になれば、自分で運転する感覚がなくなります。助手席の言葉に慌てたり、後部座席の人を安心させたりする関係性も薄れそうだと指摘します。
運転そのものの高揚感、乗り物を操っているという感触もなくなります。
そうするとドライブソングで描かれていた気持ちの結構な部分がなくなると思うんですよね。
その結果、今のドライブソングに描かれた感情は、未来の人には理解されなくなるかもしれないと想像します。
昭和とか平成の人って自分で運転してたんだ、めちゃめちゃめんどくさくない?みたいな。ドライバーの気持ち全然わかんないんだけどって、未来の人はなんか今のドライブソングを見るかもな。
ただし、レコードのように、あえて古いテクノロジーを楽しむ人が残る可能性にも触れます。自ら体験する喜びに愛着を見出す人はいるかもしれない、と締めくくります。
タレコミ曲コーナーとカーシェア事情
後半は、リスナーから寄せられた曲を紹介するコーナーです。今回は「誰かの落書き」さんから、坂道グループの2曲が届きました。
1曲目は乃木坂46の「他の星から」。飯田橋や神楽坂といった地名と、実在する店舗の名前が出てくる曲です。
ワタンドさんは、歌詞に登場する紀ノ善のあんみつを、十年ほど前に友達と食べた思い出を重ねてしみじみしたと話します。
2曲目は櫻坂46の「条件反射で泣けてくる」。麻布十番を舞台にした、大人ではなく若者のラブソングとして紹介されました。
都会的なスポットと若者のデートというギャップから、登場人物のパーソナリティが見えてくると感想を述べています。
最後にワタンドさん自身のカーシェア事情も語られます。車内で音楽を聴くのが好きで、今はカーシェアを契約しているそうです。
ただ土日は倍率が高く、押さえておいて使わなければ直前にキャンセルする使い方が多いため、パッと使いたい時に予約できないもどかしさもあると話します。それでも「めっちゃ便利」と、カーシェアをおすすめしていました。
まとめ
道路や車が歌詞から減っていく背景を、車離れの因果としてたどりつつ、たどり着いたのは「ドライブが滅びるのではなく、変わった」という見方でした。自動運転の時代には、今の感情がタイムカプセルのように残るのかもしれません。
- 道路が出てくる歌の減少は、車離れと連動した因果としてイメージできる。
- ドライブは憧れから日常へ、そして再び特別な体験へと描かれ方が変わってきた。
- マイカーからレンタカー、カーシェアへと、車との関係性そのものが変化している。
- 自動運転が広がれば、運転する高揚感や車内の関係性が薄れ、今のドライブソングの感情が理解されにくくなる可能性がある。
- 今のドライブソングは、その時代の気持ちを保存するタイムカプセルとして残るかもしれない。
