朝ドラという番組と、舞台になる地域
今回のテーマはNHKの連続テレビ小説、通称「朝ドラ」です。朝に放送される十五分間のドラマで、一年に二作品、半年クールで放送されています。
ワタンドさんは『あまちゃん』『ごちそうさん』『マッサン』などをフルで見て楽しんだと話しています。
朝ドラでは主演俳優が大きな話題になりますが、忘れてはいけないのがどこの地域が舞台になるのかという点です。
だいたい地方出身や生まれ育った町が前半のメイン舞台として描かれ、その後の観光の呼び水にもなります。『あまちゃん』なら岩手の三陸地方が舞台でした。
気になっていた「主題歌に地域性がない」問題
今回話したいのは、ドラマ本編ではなく朝ドラの主題歌、テーマソングの話です。
テーマソングは誰が歌うのかで大きな話題になりますが、地域を舞台にした作品でありながら、その歌に地域性があまりないことが、ワタンドさんが前から気になっていた点でした。
いや、歌に地域性がなくね?って思って。いろんな曲があるんだけど、歌にね、地域性がないのがね、悩みなんですよ。
俳優は、その地域のイメージをまとうことがあると話されています。『あまちゃん』ののんさんが岩手のイメージをまとった例などが挙げられました。
だからこそ、国民的に認知される曲でもある主題歌に地域のイメージをつけて、その地域をPRする曲になればいいのに、という思いがあります。
そこで、これまで朝ドラで主題歌になった曲を全部調べたそうです。
NHK公式も認める「地元出身アーティスト」の起用
調べ方は、NHKの朝ドラ特設サイトやテーマソング特集ページ、Wikipedia、歌詞情報などを参照し、聴けるものはサブスクで聴くという形でした。
すると「地域性がない」という見立ては半分外れていました。九十年代以降は特に、舞台になる地域の出身アーティストを起用していることがわかったのです。
大阪が舞台の『やんちゃくれ』は大阪出身のウルフルズ、京都が舞台の『オードリー』は京都出身の倉木麻衣さんという具合です。
沖縄が舞台の『ちゅらさん』は沖縄出身のKIRORO、屋久島が舞台の『まんてん』は奄美民謡の歌手でもある元ちとせさんが起用されています。
北海道が後半の舞台になる『マッサン』は北海道出身の中島みゆきさん、福島が舞台の『エール』は福島出身のGReeeeNが歌っています。
| 作品 | 舞台 | アーティスト(出身) |
|---|---|---|
| やんちゃくれ | 大阪 | ウルフルズ(大阪) |
| オードリー | 京都 | 倉木麻衣(京都) |
| ちゅらさん | 沖縄 | KIRORO(沖縄) |
| まんてん | 屋久島 | 元ちとせ(奄美) |
| マッサン | 北海道 | 中島みゆき(北海道) |
| エール | 福島 | GReeeeN(福島) |
地元出身のスターがその舞台の歌を歌うことで、作品と地域の結びつきを歌でも強めていたわけです。ワタンドさんは「地域性ねえじゃねえか」という見立てを謝っています。
歌詞に地域が感じられた三曲
出身が地元の歌手は多くいました。ただワタンドさんが本当に欲しいのは、歌詞の中に地名や地域らしさが入っている曲です。
結論から言うと、ずばり地名が出てくる歌はありませんでした。ただ、地域らしいエッセンスがある曲が三つあったそうです。
一曲目は『まんてん』の主題歌、元ちとせさんの「この街」です。宇宙飛行士を目指すヒロインの物語で、歌い出しも星から始まる壮大な歌です。
サビの後に「あまぬふしとぅみーが」というフレーズが出てきます。主人公は屋久島出身の設定で、元ちとせさん自身も奄美出身です。
調べたところ、これは奄美の島言葉のようで、「天の星を求めて」といった意味だそうです。ただしソースはYahoo!知恵袋なので断定はできない、と話されています。
二曲目は『なつぞら』の主題歌、スピッツ「優しいあの子」です。ヒロインは広瀬すずさんで、舞台は北海道十勝の大自然です。
歌詞に「消えかけた火を胸に抱き、たどり着いたコタン」という言葉が出てきます。
コタン、コタンですよ。これはもうドンピシャ。アイヌ語で集落、村という言葉を意味するものになってます。たどり着いた村。
北海道の自然もアイヌの言葉も入っていることから、これは北海道のご当地ソングと言えるのではないか、と評価しています。
三曲目は『マッサン』の主題歌、中島みゆき「麦の唄」です。他の二曲より地域の入れ方は弱いものの、地域性が表現されていると話されています。
ニッカウヰスキーの創業者の妻をモデルにした視点で歌詞が描かれ、スコットランド出身のエリーが遠い日本でウイスキー作りに励む気持ちがストレートに表れています。
イントロのバグパイプがスコットランドの雰囲気を出し、歌詞では北海道の麦畑や大地の風景が描かれます。地名がずばり出るわけではないものの、作品全体で地域性を表現している一曲です。
なぜ地名を入れないのか、という考察
三曲を見比べてみても、分かりやすく地名が出てくる歌はありませんでした。二曲は奄美の言葉やアイヌの言葉であり、「北海道のどこどこ」のような表現ではありません。
アーティストにその地域の人を起用しているのに、ここまで地域の歌詞が出てこないのは、意図的な楽曲作りではないか、とワタンドさんは感じています。
特定のイメージがつきすぎないように、ストレートにどこかを歌わないようにしているのかもしれない、という見立てです。
朝ドラは全国放送のビッグコンテンツで、家族の絆や夢、成長といった普遍的なテーマが描かれます。
だから地域らしいエッセンスも、Aメロやイントロのバグパイプなど、サビではないつなぎの部分に、アーティストの心意気でさらっと入れているのかもしれない、と話されています。
一方でご当地ソング好きとしては、やはり歌詞に入れてほしいという期待も語られました。岩手や石川県をゴリゴリに歌った朝ドラ主題歌ができれば、日本中の耳に届く代表的なご当地ソングになるだろう、というわけです。
タレコミ曲:舞城みゆき「恐竜めがね」
後半では、SNSで教えてもらった曲が紹介されました。やまだんさんからのタレコミで、舞城みゆきさんの「恐竜めがね」という曲です。
福井県の魅力が伝わる楽しい曲だが、リリースがコロナ禍の開始時期に重なりプロモーションができなかった、というメッセージが寄せられました。2020年リリースの曲です。
タイトルの「恐竜」「めがね」はどちらも福井の名物です。福井は恐竜がよく発掘され、恐竜博物館があり、福井駅前にも恐竜のオブジェがあります。
「めがね」は鯖江のメガネで、質の高いメガネの生産が盛んな地域です。ワタンドさん自身も鯖江のメガネを使っていると話しています。
歌詞には「福井良いとこ」として、恐竜、めがね、永平寺、あわら温泉、鯖のへしこ、東尋坊、丸岡城といった福井らしい名物がたくさん盛り込まれているそうです。
朝ドラと共に起きていた思い出
最後にワタンドさんは、朝ドラへの愛着を語りました。
『あまちゃん』『ごちそうさん』の頃はちょうど朝ドラの時間にテレビがつくようにして、朝ドラと共に起きる生活をしていたそうです。
半分うとうとしながら音声が聞こえてくると、自分が作品の中に入り込んだ夢を見ながら起きるような経験になり、登場人物のような気持ちで愛着が生まれた、と話されています。
まとめ
まとめ
歴代の朝ドラ主題歌を全部調べた結果、舞台の地域出身アーティストは多く起用されていたものの、歌詞にずばり地名が出てくる曲はありませんでした。方言や自然描写で地域性がにじむ三曲が見つかった一方、普遍性を大切にする国民的番組ゆえに地名は抑えられているのかもしれない、という考察でまとまっています。
- 朝ドラは地域が舞台になり、九十年代以降は地元出身アーティストが主題歌に多く起用されている。
- 歌詞に地名がずばり出てくる主題歌はなく、地域性は方言や自然描写でにじむ程度だった。
- 地域が感じられた三曲は、元ちとせ「この街」、スピッツ「優しいあの子」、中島みゆき「麦の唄」。
- 全国放送ゆえに、地名や方言はノイズを避けて意図的に抑えられている可能性がある。
- タレコミ曲は舞城みゆき「恐竜めがね」で、恐竜やめがねなど福井の名物が歌詞に詰め込まれている。
