薬歴が「しんどい業務」になってしまう理由
薬局で働く薬剤師にとって、薬歴を書く業務は大きなネックになりがちです。
「書く時間がない」「なかなか書き終わらない」「もっと効率よく書けたら」という声を、たいぞーさんもよく耳にすると話します。
たいぞーさん自身も新人の頃、たくさんの患者さんの薬歴を書ききれず、業務が終わってから必死に書いていた経験があるそうです。
新人の頃、薬歴を書くのがとても困って、たくさんの患者さんの薬歴を書かずに、業務が終わってから必死で書いていたという経験も実際にはあります。
振り返って気づいた「勝負はすでについていた」
服薬指導が終わり、パソコンの前で「さて何を書こうか」と考えを巡らせながら書いていた新人時代。
今振り返ると、その状況になった時点で、実はもう勝負はついていたのではないかと、たいぞーさんは考えています。
薬歴の本質は「思考の記録」
たいぞーさんが考える薬歴の本質は、患者さんとのやり取りを文章として残すことではないと言います。
患者さんを理解するための思考の記録を残すもの、それが薬歴の本質だと話します。
そしてその思考は、薬歴を書く段階ではなく、患者さんの前に立った時点ですでに始まっているものだと考えられます。
患者と会う前に立てる「仮説」がスタートライン
たとえば高血圧の患者さんが来局したとき。処方内容を見て、前回の薬歴を確認し、検査値や残薬の状況も見ます。
そのときに、たいぞーさんは患者さんの姿を思い浮かべながら仮説を頭に浮かべると言います。
血圧が安定しているなとか、ふらつきないかなとか、最近暑くなってきてるけど脱水とかどうかなとか、ちゃんと薬飲めてるかなみたいなことを思い浮かべながら、患者さんに会う前にいろいろ考えているんじゃないかなと思います。
この仮説を立てる時間こそが、薬歴のスタートラインだと話します。
そして患者さんとやり取りをする中で、その仮説を検証していきます。予想通りだったのか、予想と違う状況に陥っていないか、想定外の別の問題が見つからないか。こうした確認が会話の中から生まれてくると考えられます。
予想する
患者さんに会う前に、処方や薬歴、検査値から仮説を立てる
確認する
患者さんと対面し、やり取りの中で仮説を検証する
記録する
確認した内容を踏まえ、考えた結論を薬歴に残す
書く前のプロセスが抜けると薬歴は大変になる
薬歴が「しんどい」「大変」になっているときは、この前半の「予想する」「確認する」というプロセスが抜け落ちているのかもしれません。
最後の「記録する」だけを頑張ろうとしている状態です。
話した内容を思い出しながら「何を書こうか」と悩むのは、とても大変なことです。
一方で、服薬指導の前に「今日はこういう状態かもしれない」と想定して向き合えば、確認していく過程で書くことの大筋はすでにまとまっていきます。
患者さんとのやり取りを終えた時点で結論が出ているので、あとはそれを粛々と文章に残すだけになります。これが効率的な記載にもつながると話します。
AI薬歴の時代に「思考」が持つ意味
昨今はAI薬歴が普及し、多くのメーカーがAI機能を搭載した薬歴を販売しています。
AIが薬歴を作ってくれるとしても、その手前の段階で薬剤師が考えていることがあるかどうかが問われます。
きちんと考えを持ってやり取りをすれば、AIが出力した薬歴が自分の考えに沿ったものになっているかを確認でき、AIを上手に使えると考えられます。
逆に、記録を残すことだけを薬歴の目的にしてしまうと、AIに使われる薬剤師になってしまうのではないか、とたいぞーさんは危惧します。
薬学的な「目」を活かすために
薬剤師は、専門知識を持って患者さんを見極める薬学的な目を持った専門職だと、たいぞーさんは考えています。
その目を活かし、現代のテクノロジーも上手に使いながら患者さんに関わる。それが結果として、患者さんのより良い薬物治療や健康につながっていきます。
そのためにいかに思考するかを大事にすること。だからこそ「薬歴は書く前が勝負」と言えるのだと、この回はまとめられています。
最後にたいぞーさんは、薬歴を書く前に思考しているだろうかと、自分自身に問い直してほしいと呼びかけました。
まとめ
薬歴の本質は文章を残すことではなく、患者さんを理解するための思考の記録を残すこと。書く前の「予想」と「確認」を丁寧に踏むことが、質の高い薬歴と効率的な記載の両方につながるという回でした。
- 薬歴の本質は、患者を理解するための思考の記録である
- 思考は薬歴を書くときではなく、患者に会う前から始まっている
- 「予想する→確認する→記録する」の流れが薬歴の基本
- 書く前のプロセスが抜けると、記録だけが大変になる
- AI薬歴の時代こそ、書く前に薬剤師が思考することが問われる
