AI薬歴の普及で生まれる不安
最近、AI薬歴が普及してきたことで、薬歴の記載が便利になったという声が上がっています。
その一方で、こうした道具を使うと薬剤師の考える力、思考力が落ちるのではないかと危惧する声も聞こえてくるといいます。
たいぞーさん自身も、最初は少し気になっていたと振り返ります。薬歴を書くという作業そのものが、患者さんを振り返って考えるきっかけになっている側面があると感じていたからです。
薬歴を書きながら考えていた時間
服薬指導が終わった後、薬歴を書きながらいろいろな考えが巡る経験は、多くの薬剤師にあるのではないかと問いかけます。
「あれ、もしかしてこの症状ってどうなんだろう」「次回はこのポイントを確認して、今疑問に感じているところを解決しよう」。そのためにはこういう情報が必要だ、といった具合です。
たいぞーさんも、薬歴を書いている時間の中でそうした思考が数多くあったと振り返ります。
AIが薬歴を書くことへの懸念
その薬歴をAIが作ってくれるようになると、これまで患者さんのことを考えていた時間がなくなってしまうのではないか、という不安が出てきます。
AIが書いてくれるようになるぶん、薬剤師が考える力が落ちる、考えなくなってしまうのではないか。そうした懸念が出てくるのは自然なことだといいます。
ただし、たいぞーさんは「本当にこれでいいのか」と自分で健全に疑ってみたそうです。すると、見え方が変わるポイントが見つかったと話します。
考えるタイミングを「前」に移す
そもそも薬歴を書くときの思考とは、患者さんを振り返り、薬効や副作用を考え、今回結論が出なかったことをはっきりさせるために次回の確認ポイントを整理する作業だといいます。つまり患者さんを理解するための思考の時間です。
ここでたいぞーさんは疑問を投げかけます。その思考は、薬歴を書くとき、つまり患者さんの対応を終えた後にするのが本当に最適なのか、と。
本来であれば、その思考は患者さんと出会う前、患者さんを薬剤師の前に呼ぶ前にしておくべきものではないか。これが最近気づいたポイントだと語ります。
今どれくらい薬を飲めているだろうか、前回こういう状態だったが飲んだあとどうなっただろうか。こうしたことを呼ぶ前に考えておくと、患者さんを呼んだときに確認のための情報収集ができます。
呼ぶ前に考える
前回の状態や服薬状況を振り返り、確認したいことを整理する
情報収集する
考えたことを確認するために、患者さんから必要な情報を集める
薬歴を記載する
集めた情報に基づいて記録する。ここをAIが担う
時間と余力が生まれる
記載時間が短縮され、次の患者さんに向けて考える余裕ができる
AIを見極めて使う薬剤師へ
薬歴の記載をAIが担うようになると、これまで十分かかっていた時間が5分に、5分だったものが1分にと、大幅に短縮できます。
そのぶん、次の患者さんを呼ぶ前に考える時間と余力が生まれます。患者さんにしっかり関わり、専門的に患者さんを読み解く、薬学で患者を語ることに費やせる時間が増えると考えられます。
患者さんに会う前に思考するプロセスにすれば、AIが思考力を奪うことは全くない、とたいぞーさんは言います。むしろAIの記載内容が本当に適切かを見極め、上手に使えるようになるといいます。
今日の放送が、AIによって失われるものではなく、本来薬剤師の思考はどこですべきなのかを改めて見つめ直すきっかけになればうれしい、と締めくくられました。
まとめ
AI薬歴で思考力が落ちるかどうかは、AIを使うかどうかではなく、考えるタイミングをどこに置くかにかかっているという回でした。思考を対応後から対応前へ移すことで、AIはむしろ思考を助ける道具になると語られました。
- AI薬歴への不安の背景には、薬歴を書きながら考えてきた経験がある
- 思考力の鍵は、AIを使うかではなく考えるポイントをいつに置くか
- 患者さんを呼ぶ前に考えておくと、対応時に必要な情報収集ができる
- 記載をAIが担うことで生まれた時間を、患者さんと関わる思考に回せる
- 会う前に考えるプロセスなら、AIの記載が適切かを見極めて使える
