なぜ薬剤師がバイタルサインを学ぶのか
本題に入る前に、10月25日の日曜日に兵庫県姫路市で開催される、日本在宅薬学会のバイタルサイン講習会の告知がありました。
この講習会では、血圧計の使い方や聴診器の扱い方を学ぶだけではないと説明されています。
そもそも薬剤師がなぜバイタルサインを学ぶ必要があるのか、その意義や目的を理解した上で機器を扱うことが重視されているそうです。
集めた情報をただ収集するだけでなく、薬剤師の専門性や薬学の知識で読み解き、薬剤師ならではの見立てを多職種に共有する。それによって薬物治療の質を上げていくのがプログラムの特徴だと話されています。
5時間の長丁場ですが、その分みっちり学べる内容が詰まっているとのことです。
令和8年の調剤報酬改定で薬局や薬剤師に変化が求められる中、何をしていったらいいのか迷っている人に、この先の役割へのヒントになるのではないかと案内されています。
体調が優れない在宅患者に遭遇して
ここから本題です。たいぞーさんは薬局に勤めて日々薬剤師の仕事をする中で、最近体調が優れない患者さんに遭遇したと語ります。
特に在宅領域で、急に症状が出始めた患者さんがいたそうです。
なぜそうなっているのか、なぜ急にこの症状が出始めたのかを、訪問診療で一緒に回っている医師とともに考えを巡らせたと話されています。
体調が変化する要因はさまざまです。在宅医療で関わる人は高齢の方も多く、年齢的な変化で体調が刻一刻と変わることも考えられる一つの要素だといいます。
病気を抱えて治療している方でもあるので、病気の影響がないかも考える要素になります。
さらに生活環境や食事の習慣、体を動かす習慣、お通じや睡眠の状態なども、体調に顕著に影響が出るところだと説明されています。
薬を減らしたのに症状が出た謎
そして薬の影響も、もちろん考えなくてはならないところです。薬の作用機序や働き、起こりうる副作用を想定しながら見ていきます。
症状が出始めたタイミングと起きている症状を照らし合わせ、薬が影響している可能性がないかを見極める。これは薬剤師の専門的な能力を一番生かせるところだと話されています。
ただ、今回悩んでいる患者さんには特徴がありました。困りごとがいくつかあり、薬が影響しているかもしれないと考えて、薬をやめていっている最中に状態の変化が起こったのです。
薬を足した結果、不調が起こるのは比較的よく見られることで、増やしたときに起きた症状は、薬が影響しているかもしれないという大きな判断材料になります。
ところが今回は、薬を減らしているにもかかわらず症状が起きてきました。では昔から起こっていたのかというと、そうでもない。一体何が起こっているのかが大きな問題だったといいます。
化学構造の類似性から見えてきた答え
そこで服用している薬剤を見直していったとき、ある特定の薬剤の組み合わせに気づきがありました。
この間やめた薬が、実は別の働きを持つ薬と、化学物質としての構造がよく似ていることに気がついたのです。
構造が似ているということは、その別の薬と同じような働きを体に発揮しているかもしれない、と考えられます。
もしそうなら、やめた薬と残っている薬の組み合わせが、うまく体のバランスを取っていたのかもしれません。
以前やめた薬が体からなくなったことで、絶妙に保たれていた体の均衡が崩れ、今回困っている症状が出てしまったのではないか。そんな見立てが見えてきたと話されています。
その絶妙なバランスで保っていた体の状態の均衡が崩れてしまって、今回その困っている症状が出てしまったんじゃないかなということが見えてきました
薬剤師にしか気づけない視点とは
薬剤師がなぜだろうと考えるとき、薬力学や薬物動態など、体の中での薬剤の動きを考えることも大事な判断材料になります。
それとともに、化学物質としての薬には、類似した構造を持つものが複数あると説明されます。
構造が似ていると、通常の治療薬としての効果だけでなく、それと類似した作用も出てくることが想定されます。そこまで検討の視点を広げることで、対処の選択肢が見えてくるといいます。
こうした構造の類似性から薬剤の体への影響を予測する視点は、有機化学をしっかり学んでいる薬剤師でなければ気づくことが難しい領域だと話されています。
ただし、それが優れているという話ではないと強調されています。医師には医師の、看護師には看護師の強みがあり、それぞれの専門性を最大限に発揮し合うことが大切だといいます。
症状の出現
薬を減らしている最中に、以前はなかった症状が発生
薬剤の見直し
やめた薬が別の薬と化学構造が似ていることに気づく
作用の推測
似た構造ゆえに、別の薬と同じような働きをしていた可能性
均衡の崩れ
薬が体からなくなり、保たれていたバランスが崩れたと考えた
薬学で「なぜ」を読み解く意味
今回の経験を通して、薬剤師の持つ薬学の専門性は奥深く、患者さんにとってより良い関わりを生み出すきっかけになると実感したと語られています。
なぜ患者さんがこうなっているのかを薬学の視点で読み解くことで、薬剤師ならではの患者さんの見え方が見えてくる。そして治療を最適にする一手を打ち出せるようになるといいます。
患者さんのなぜを薬学で考えることの可能性について、聴き手にも改めて考えてほしいと締めくくられています。
まとめ
在宅の患者さんに起きた不調を、薬を減らしたのに症状が出たという謎から出発し、薬剤師が薬学の視点でどう読み解いたかを追った回でした。化学構造の類似性という着眼点が、薬剤師ならではの見立てを生み出しています。
- 薬を減らしている最中に症状が出た患者さんの原因を、化学構造の類似性から読み解いた事例が語られた
- 構造が似た薬は別の薬のような作用を体に及ぼし、薬をやめたことで体の均衡が崩れた可能性が示された
- 薬力学や薬物動態に加え、化学構造から作用を予測する視点は、有機化学を学んだ薬剤師の強みだと話された
- 医師や看護師それぞれの専門性を発揮し合うことで、患者さんの治療はより良くなると強調された
- 10月25日に兵庫県姫路市で日本在宅薬学会のバイタルサイン講習会が開催されると告知された
