AIは「人が伝える意味」を奪うのか
冒頭で川邊さんが注目したのは、AIに何でも聞く癖が広がることの効用でした。AIは比較的フラットな意見を返すため、それを見て冷静に判断できるようになると話します。
川邊さんは、AIリテラシーが同時に育っていけば、AIが役立つ場面になるのではないかと語ります。徳永さんも、AIが潤滑油や交通整理のような役割を果たせば助かるかもしれないと応じました。
そこから徳永さんは、自分のアナウンサーやキャスターという仕事がこれからどうなるのかへと話を向けます。
それこそ私のアナウンサーとかキャスターみたいな仕事っていうのがこれからどうなるかっていうのを。
徳永さんは、AIが伝えてもいいニュースは事象として存在すると認めた上で、人間が伝える意味のあるニュースがあると話します。例に挙げたのは政治で、政治家の顔やちょっとした行間、たたずまいといったものです。
人間が起こした事象だからこそ、人間から生まれる行間であり、たたずまいであり、空気でありっていうものを人間が伝えるっていうことの大切さっていうのは、最後の最後まで残る可能性は高い。
ただし徳永さんは、それさえもいずれAIができるようになるかもしれないとも付け加えます。夢がないというより、いい可能性として捉えていると語りました。
ドラえもんの国のAI観
話は、キャスターとアナウンサーの違いへと進みます。川邊さんは、キャスターは人間そのものを伝えるから生き残るのではないかと確認しました。
徳永さんは、AIの研究者と話す機会が多いと明かします。AI研究とは結局「人間とは何か」を探求することであり、その先ではAIも人間のようになっていく未来が待っているのかもしれない、と語ります。
それはあんまり悲しい意味じゃなく、悲観的な思いじゃなく、いい可能性として思ったりするんですけど。
川邊さんはここで、テレビ朝日でドラえもんを放送していることを引き合いに出します。ドラえもん ── 藤子・F・不二雄の漫画・アニメ。ネコ型ロボットのドラえもんが少年のび太に寄り添う物語。ここではAIとロボットが家族の一員になった姿の例として挙げられている。
ドラえもんっていうのはAIとロボティクスの塊ですから。だからその可能性を信じてないテレ朝の人がいたら、もう自己否定ですよね。
川邊さんは、いまのAIは技術的には意思も感情もないと説明します。生成AIは穴埋め問題のように、確率的に最もありそうな語を出しているだけだと語ります。生成AI ── 文章や画像などを生成するAI。ここでの「穴埋め(フィルインザブランクス)」とは、直前までの文脈から次に来る確率が最も高い言葉を予測して出力する仕組みを指す。
それでも人間は勝手に意思や感情を感じてしまう、と川邊さんは指摘します。すでにChatGPTを「チャッピー」と呼び始めているのがその表れだと話しました。
100mを2秒で走るロボットに感動しない理由
川邊さんは、あらゆるものにロボティクスとAIが融合すれば、人間ができることはほぼできるようになると見ています。それでも人間のほうが付加価値の高い領域は残ると語り、その最たるものとして徳永さんが関わってきたスポーツを挙げました。
100mを2秒で走っちゃうロボットは出てきますけど、別にそれ見て感動しないですから、人間は。
川邊さんは、ウサインボルトの記録が30年ぶりに破られるといった人間のドラマにこそ感動するのだと話します。将棋についても同様で、藤井さん以降の棋士はAI研究を頭に入れた上で、同じくAIで武装した藤井さんと戦う人間ドラマが見たいのだと語りました。藤井さん ── 将棋棋士の藤井聡太。AIを活用した研究で知られる。ここでは、AI研究を前提に人間同士が戦うことの面白さの象徴として語られている。
すごいAIが藤井さんを打ち負かすのを見ても、別に何にも感動しないので。
川邊さんは、人間が人間に相対するほうが効果が高い領域はマッサージなど数多くあり、キャスターもそのうちの一つなのだろうとまとめます。
徳永さんも、AI時代でも人間にしかできないこととして筋トレや飲み会を例に挙げ、AIと乾杯してもつまらないと笑いました。
事象として成立する情報。定型的に伝えられるものはAIでも担える
政治や事件など、人が起こした事象の行間・たたずまい・空気を含むもの
ネットと地上波を往復して感じる相乗効果
話題は、報道ステーションとABEMAの両方に出演する徳永さんの働き方に移ります。川邊さんは、ネットと地上波を両方やることに相乗効果があるのではと尋ねました。
徳永さんは、地上波は多くの人が見るため、万人に伝わりやすいものを優先する面があると説明します。一方でABEMAでは、テック系や経済、AIなど最先端のテーマを扱えると話します。
他がやってないような角度からできるっていうのはものすごい楽しいですね。結構新しいもの好きなので、何でも挑戦したくなりますし。
徳永さんは、水曜・木曜にABEMAをやりながら、金曜日に報道ステーションで濃い打ち合わせを重ねて放送にこぎ着ける行為は、似て非なる楽しさがあると語りました。報道ステーション ── テレビ朝日系の平日夜の報道番組。ここでは徳永さんが金曜日を担当していることが語られている。
金曜日の報道ステーションに込める意識
川邊さんは、金曜日の報道ステーションは月曜から木曜とテイストが違うのかと尋ねます。かつてのニュースステーションには金曜日ならではの企画があったことにも触れました。ニュースステーション ── 報道ステーションの前身となったテレビ朝日系の報道番組。久米宏がキャスターを務めた。金曜日には他の曜日と異なる企画が組まれていたと語られている。
徳永さんは、いまの報道ステーションでも金曜日はピアニストやバイオリニストを呼ぶなど、エンターテインメントを扱う頻度が高い気がすると答えます。事件や事故が立て込むときは別として、金曜日ならではの柔らかさをスタッフも意識しているのではないかと話しました。
徳永さん自身も、金曜日の夜に伝えることを強く意識していると言います。
月木終わって金曜日、明日休みだっていう方に向けて、ちょっとゆったりめでやれたらいいかなとかと思う時は多々ありますね。
自分を大切にすることが、大切な人を大切にすること
川邊さんは、今回は働く女性が多く聞く回になり、徳永さんがそのモデルになっていると語ります。松尾さんとのやり取りを引きながら、美容室で「徳永さんみたいな髪型に」と頼む客がいるほど、髪型がキャリアへの憧れの象徴になっていると話しました。
川邊さんは、憧れられる存在になった自分自身を振り返ってどう思うかと尋ねます。これはメタ認知の問題でもあると付け加えました。メタ認知 ── 自分の考えや状態を一段上から客観的に見つめる働き。ここでは、憧れられる立場になった自分を自分で振り返ることを指している。
徳永さんは、人のために生きることは女性にとって王道で大切だとしつつも、自分を大切にしてほしいと強調します。
自分を大切にすることが、自分の大切な人を大切にするってことにもつながる。
徳永さんは、ジェンダーが語られる時代にあっても、人は一人の個人であり、その個性を認め合うことが大切だと語ります。言葉を探しながら、迷っている女性への思いを述べました。
迷っている女性へ──一度自分の足で立ってお金を稼ぐ
徳永さんは、迷っている女性がいたら、一度自分の足で立ってお金を稼ぐことにトライしてほしいと語ります。そのためには人に迷惑をかけてもいいと言います。
徳永さんは、人に迷惑をかけるなと言われて育つ人は多いと認めつつ、生きていれば必ず誰かに迷惑をかけると話します。大事なのは、どういう迷惑をかけるかを考えることだと語りました。
自分の人生を大切にして、自分がフォローできるところは精一杯フォローしながら、たくさんの人たちの協力を得て、自分の人生を全うするっていうことを、たくさんの女性にも考えてほしいなって。
徳永さんは、人のためと自分のためは同時にできると考えています。欲張りに、自分の人生にベットするという言葉で、自分でお金を稼ぐことの大切さを語りました。
自分でお金を稼ぐ。お金ってすごい大事だと思うので、そういうことをやっていくと、また新たな世界だったり、新たな扉が開くっていうふうには思います。
50歳から英語を学び直す理由
川邊さんは最後に、今後の抱負を尋ねます。徳永さんが挙げたのは、英語でした。
徳永さんは、報道ステーションでは超優秀な通訳の助けを借りて外国の方にインタビューしてきたと明かします。イスラエルの哲学者ユヴァル・ノア・ハラリさんへのインタビューでは、本を全部読み込み、通訳もそれに応えてくれたと振り返りました。ユヴァル・ノア・ハラリ ── イスラエルの歴史学者・哲学者。『サピエンス全史』などの著者。徳永さんは3回インタビューしていると語っている。
徳永さんは、英語ができないなりにしのいできたと言います。しかし自分自身は普段からたくさんのことを感じ、それを伝えたいという思いが強いと語りました。
こんなにいろんなことを感じてる。この変わった感じの感性を相手に伝えて、どう反応が返ってくるかすごい聞きたいのに、本当に人生損してる感じがして。
徳永さんは、眼鏡型の翻訳デバイスなども試したものの、相手の言葉はわかっても自分から発語はできないと話します。決定的だったのは、ウクライナのアーティストの友人が日本で個展を開いたときでした。
素敵なアートを目の前にしても感想を伝えられず、常に友人に通訳を頼むしかなかった経験が極めつけになったと徳永さんは語ります。
50歳になったその日から真剣に英語をちゃんとお金をかけて1から勉強し直して、今朝も4時半とかに起きて英語をやって。
徳永さんは、英語はあくまでハブであり、世界中の人に自分なりの意見を伝え、共感し合うためのものだと語ります。海外に住む人たちの人生を知り、それを日本の人たちに伝えたいという思いです。
アスリートの素敵な復活物語だったりとか、成功物語みたいな、なんかご褒美のようにいただける時があるんですね。そういうものを自分自身で発掘しに行って、世界中をちょっと探してみたい。
川邊さんは、テレビ朝日の黒柳徹子さんがいまなお現役で人の話を聞き続けていることに触れ、ここから30年ほど続けてやり抜いてほしいとエールを送りました。黒柳徹子 ── 俳優・司会者。テレビ朝日系「徹子の部屋」を長年務めている。ここでは長く現役を続ける先例として語られている。
徳永さんは、締めが英語という話になったことに照れながらも、その先には世界中の人とのコミュニケーションがあると受け止めました。最後はこれだったかと自分なりに笑える、と会食を締めくくります。
まとめ
AIが浸透しても、人が起こした事象の行間やたたずまいを伝えることや、人間同士のドラマに感動する領域は残る──徳永さんはそう語りながら、自分を大切にして自分の足で立つこと、そして50歳から英語を学び直す挑戦へと話を広げました。
- AIが伝えてもよいニュースはあるが、政治や事件など人が起こした事象の行間・たたずまいは人間が伝える意味が残る
- 100mを2秒で走るロボットや藤井さんを打ち負かすAIには感動せず、人間同士のドラマにこそ感動するという川邊さんの視点
- 地上波は万人に伝わるものを、ABEMAは最先端を、と往復することに相乗効果を感じている徳永さんの働き方
- 自分を大切にすることが大切な人を大切にすることにつながり、迷う女性は一度自分の足で立ってお金を稼いでほしいというメッセージ
- 通訳に頼りきりだった経験を機に、50歳から早朝2時間の英語学習を始め、世界の人と自分の言葉で語り合うことを目標に据えている





