Grok4.5のファーストインプレッションとAIコスト事情
冒頭で話題になったのは、イーロン・マスク氏のxAIイーロン・マスク氏が設立したAI企業。対話型AI「Grok」を開発している。番組内ではスペースXの一員として再出発したと語られている。が出した新モデル「Grok4.5」です。zaruは早速このモデルを実際に使ってみたと言います。前評判では「GPTなどと同レベルの知能なのに、トークンのコストは安い」という触れ込みでしたが、その通りの性能を感じたそうです。
同じプロンプトでGPT5.5とGrok4.5に計画作成から実装まで任せて比較したところ、Grokの方が早くタスクを終え、ロジックでも優れている部分があったとのこと。部分的にはGPTが勝る点もあり、トータルでは「同じ土俵に立っている」印象だと語られました。決定的だったのはコストで、GPT5.5だと数ドルかかる作業がGrok4.5では1ドル未満、場合によっては5分の1〜10分の1になるといいます。
他にもDevinのオリジナルモデル「SWE」など、高性能かつ安価で速いモデルが次々登場しており、zaruは「AIモデル新時代に突入した」と表現しました。
AIコストが引き起こす現場のジレンマ
zaru個人のAI費用は、一時期の月10万円弱から今は約2万円まで断捨離したそうです。内訳はAnthropicのClaudeのマックスプラン(約100ドル)を中心に、GeminiやCursorなど。ただし業務で使うAIを合わせると10万円近くに達するといいます。
ここでzaruは危機感を口にします。コスト抑制のために「賢く使え」というお達しが出ても、みんなが空気を読んで安くて頭の悪いモデルを使い、結果的にアウトプット品質が下がって生産性も落ちる——そんな無意味なサイクルに入りつつあるのではないか、というのです。ムーはこれを「ディストピアみたい」と評しました。
安いモデル使ってケチるぐらいだったら、もうAI使わない方が絶対いいとは思いますけどね。
HerderとHunkで進化するAI開発スタイル
モデルが賢くなったことで、開発スタイルそのものが変わりつつある——これがこの回の核心のひとつです。zaruは開発の変遷を次のように整理しました。
ムーが「GrillMeはどこへ行ったのか」と突っ込むと、zaruはバイブコーディングから要件をきちんと定義するアプローチ、Cursorのようにピンポイントで指示するアプローチなど、様々なスタイルが試されてきたと補足しました。そしてモデルが成熟したことで、そうした悩みをすっ飛ばして「フル任せでも一定品質のものが出てくる」段階に来たと語ります。
ターミナルをIDE化する「Herder」
並列開発を快適にするツールとして紹介されたのがHerderスペルはHERDR。AIエージェント時代のターミナルマルチプレクサ。開発から4カ月ほどの新しいツールながら注目を集めていると語られている。です。起動するとターミナル上にIDEのようなレイアウトが現れ、サイドバーにワークスペース、メイン部分にタブやペインを配置できます。
特徴的なのは、立ち上げたAIエージェント(ClaudeやCodexなど)が左下に一覧表示され、それぞれ「アイドル」「ワーキング」「ブロックド(入力待ち)」などのステータスが分かること。クリックすれば入力待ちのプロンプトへ一発で飛べます。zaruは4つのプロジェクトで各2エージェント、合計8個を立ち上げていると明かしました。
Herderの魅力は「ゼロコンフィグ」であること。TMUXのようにプラグインを入れて自分でセッティングする手間なく、デフォルトでほとんどの設定が済んでいます。マウス操作ファーストで、ショートカットを覚えなくてもドラッグや右クリックメニューで使えるのも初心者に優しい点です。タブ同士で通信し、あるエージェントのレビュー結果を別のエージェントへプロンプトとして送る機能もあるとのこと。
ターミナルでdiffレビューできる「Hunk」
zaruが「足りていないピース」として挙げたのが、AIが書いたコードのレビュー環境です。レビューを怠けていた時期に微妙なコードが積み重なり、それを元にAIがさらに書くことで「微妙×微妙で超悪い」状態になったと反省を語りました。
すごく頭のいいコードを書いてくるんだけど、今このコードいらないんじゃないか、みたいなものが結構あったりするわけよ。
おせっかいおばさんね。飴ちゃんくれる。
そこで発見したのがHunkhunk.devで公開されているdiffツール。ターミナル上でGitHubのプルリクエストのようにコードの差分を表示し、コメントを付けるとそのままAIにフィードバックできる。です。ターミナル上でGitHubのプルリクのように差分を表示し、コメントを付けるとそのままAIにフィードバックできます。修正結果を再び同じ画面のdiffで確認でき、開発サイクルが1つの画面で完結するのが革新的だと語られました。
AIがコードを書く
Hunkコマンドで差分を表示
diffにコメント → AIへフィードバック
修正されたコードを再びdiffで確認
同種の課題を解決するツールとして、Herderの対抗にあたるcmux(Macアプリ)、Hunkの対抗にあたるCrit(ブラウザで動くdiffツール)も紹介されました。zaruはこの新スタイルに「これだ」という確信を持ち、AIコーディングレベルが「7から21へ、3倍にジャンプした」と表現しています。ただしHerder・Hunk自体を使い続けるかは未知数で、「その2つが解決しようとしている問題を解決できれば新しい次元に行ける」という確信だと補足しました。
一方のムーはAIコーディングレベル2。Codexに月100ドルほど課金したものの「あんまり使っていない」と明かし、サブスクの闇に絡め取られていると笑いを誘いました。
ボタンのカーソル、ポインターにする派?しない派?
ここからは何十年も繰り返されてきたデザイン論争。「ウェブサイトのボタンのカーソルスタイルを、デフォルトのままにするか、ポインター(指のマーク)にするか」というテーマです。zaruは結論が出ていないので、この場ではっきりさせたいと持ちかけました。
ムーは即座に「デフォルト」と言い切ります。理由は「変える作業をこの世からなくしたい」から。標準に従えば余計な仕事が減るという、ある種の合理主義(怠けたい主義)です。
zaruによれば、この論争のきっかけはshadcn人気のUIコンポーネント集「shadcn/ui」の開発者。ボタンはポインターにすべきだと主張し、SNSで議論を呼んだと語られている。の開発者がXで「ボタンはポインターにしている、お前らアホなのか」と主張したこと。見た目が同じボタン風UIでも、片方がボタン要素、片方がリンク要素だとカーソルスタイルが違い、ユーザーを混乱させるという指摘です。
| フレームワーク等 | ボタンのカーソル方針 |
|---|---|
| Tailwind v3 | ボタンもポインターに変更していた |
| Tailwind v4 | 標準に合わせ、ボタンは変更しない |
| shadcn | 両方ともポインターにする |
| React Aria | 標準に合わせる(ボタンは見た目で判断できるため) |
zaruはReact Ariaの姿勢に揺れつつも、最終的に「デフォルト」で結論を出しました。その根拠は明快です。そもそも同じ見た目のボタンとリンクを共存させるUIデザインが良くない。ボタンはボタンらしく、リンクはリンクらしく異なるデザインにすれば、カーソル問題はクリアになるという考え方です。
大多数の人がそう思ってるはずです。我々はマイノリティです。
声なき声を拾っていきたい。だからそういう人こそコメントしてほしい。
AIの文章、読めますか?
昨今チャットでもプルリクでもAIの生成物が飛び交う日々になりましたが、シンプルに文章が読めません。AIはいくら調整しても文章量と情報量が同等にしかなりません。読むことが広がる文章という概念はAIの苦手分野に感じます。読みづらい文章が横行して、人間の認知負荷が上がっていると憤る毎日です。皆さん、AIの文章は読めるんでしょうか?
メリーナイトさんは、100の情報を10の文章で伝え、読み手に100が伝わるのが理想だと考えています。しかしAIは文章量と情報量が同じになりがちで、なぜそうしたのかを順序で暗に表現したり、細かい言葉で状態を伝えたりといった芸当が苦手だと指摘します。
ムーは「完全にこちら側の人間」と共感を示し、zaruもブログを読んでいて「今はこれが刺さる」「ここが革新的」といったAIが生成しがちなフレーズが出た瞬間に「読むの損した」という気持ちになると語りました。大げさな言い回しや代名詞的な使い方が「癪に障る」とのこと。
AIが書いたなって気づいた瞬間の、この「ちっ」みたいな。
二人は、文章だけでなく動画やプレゼン資料でも同じ現象が起きていると話します。一見クオリティが高くても、細部を読むと「何言ってんだこいつ」となるがっかり感。さらにzaruは、もともと優秀な人がAIでまとめたコンテンツを出すようになり、内容は高いのにどこか残念に感じてしまう、という複雑な心境も打ち明けました。
①慣れて当たり前の世界になる
②AIが進化し「AI臭さ」が脱臭される
③人間が心を取り戻してAIを捨てる(※二人とも「そこには行かなそう」と苦笑)
ビジネスと開発の関係、AIのマイクロマネジメント
私の会社ではビジネスサイドが偉くて開発サイドは下っ端という価値観があります。思い切ってセキュリティやアクセシビリティ、保守性の危険性を指摘したところ、四方八方から袋叩きにあってしまい、今ではストレスで体調不良を抱えています。お二人はビジネスと開発の関係性についてどのような価値観をお持ちでしょうか?
二人は内定がないぞさんの行動を「めちゃくちゃ偉い」と大絶賛。おとなしい集団の中で唯一孤軍奮闘し、しかも指摘内容がセキュリティ・アクセシビリティ・保守性という真っ当で価値の高いものだったからです。zaruは「一時的な開発顧問として雇ってほしい、駆けつけて一緒に戦う」と冗談交じりにエールを送りました。
ビジネスと開発の関係性は良好であるべきで、一方的に殴られるのではなく「殴り合いができる関係」が理想。もう一人二人一緒に戦う仲間がいれば状況が変わると励ましつつ、まずは体調を最優先にしてほしいと締めくくりました。
AIへの依頼の仕方を変えました。今までは事細かに指示していたのですが、マイクロマネジメントをやめようと思い、目的やビジョンを濃く伝え、具体案はAIに任せることに。禁止事項や制約事項、安全上のことだけ守ってあとはよろしく、というスタイルに変えたら、とんでもないパフォーマンスを引き出せてびっくりしています。お二人はどのように依頼していますか?
ムーは「これはすごく新しい」と驚きます。これまで「AIには細かく指示した方がいい」とよく聞いていたからです。マイクロマネジメントをやめてうまくいったという逆のアプローチに、ムーは「試してみたい」と関心を示しました。
事細かに手順を指示(マイクロマネジメント)
目的・ビジョンを濃く伝え、禁止事項と制約だけ守らせて具体案はAIに任せる
zaruはこのやり方に「ハーネスエンジニアリング」的な要素を感じると(本人いわく知ったかぶりで)コメント。ジャンクハックさんは指示や言語化がうまいのだろうと分析しました。
zaru自身のスタイルは、実はジャンクハックさんに近いといいます。最初は細かい指示をせず達成したい条件だけ伝える一方、成果物に対してはしっかりマイクロマネジメントする。つまり「どこで細かく見るか」の力点が変わったのです。成果物を見なかった結果ダメになった経験から、今は成果物をチェックし、自分でコードを直したり細かく指示したりしてやりくりしていると明かしました。
キャリア・情熱・楽しさをめぐる人生相談
30代後半、妻と幼い子供がいます。大手製造系企業で働いていますが、DX化の流れで職場のデジタル化が楽しく、IT企業への出向を自ら希望しました。出向先はリモートやフレックスも可能で最高です。一方、出向元は収入は安定していますがリモート不可、ITもレガシーでAIも自由に使えなさそう。戻った後の身の振り方に悩んでいます。お二人なら今からどうしますか?転職も考えますか?
ムーは「転職を考える」派。安定を切ってチャレンジするのはいいと思う、まだ30代後半で超若いから、という立場です。「仕事が趣味との区別がつかない」というのはなかなか味わえない幸運だと二人とも共感しました。zaru自身も趣味がそのまま仕事になったタイプだといいます。
子供が「なんか知らないけど(お父さん)楽しそう」って感じる方が、よりいいなと思って。
一方でzaruは「転職しない方がいい」派。出向するくらいなら関連会社や子会社などの関係性があるはずで、戻った後もまたチャンスが転がっているのでは、というのです。慌てて飛び出さず、チャンスを伺いながら「素振りして待つ」のがいいのではとアドバイスしました。
ムーが「面白くない仕事でもざるさんは楽しめるのか」と問うと、zaruは「今までの人生でそういう状況にぶち当たったことがない。絶対にどこかに楽しめる余地がある」と即答。二人合わせて「転職してもいいし、しなくてもいい」という中庸な着地となりました。
事業会社の社内SEとして社内業務アプリを開発しています。レガシーかつ低難易度で、優秀なエンジニアが社内にいません。外の世界のエンジニアのレベルにいつも焦りを感じています。今年でエンジニア歴5年になりますが、5年目にこれくらい到達しておきたいレベル感を雑に教えてください。
zaruは「外の世界のエンジニアへの焦り」は自分もずっと昔から感じているものだと共感。ピラミッドで例えるなら、自分は下から数えて一番下の段にいると思っており、それは過小評価ではなく実際に低いと感じているといいます。「ムーもzaruも同じくらいのレベルで過ごしているから気にしなくていい」と伝えました。
肝心の「5年目に到達しておきたいレベル」については、意外な角度からの答えが返ってきます。それは「情熱があるかないか」。3〜4年やると慣れて飽き、流れ仕事になりがちな中で、自分を奮い立たせ、やりたいことを作ってやっていく——そんな情熱こそが欲しいと語りました。
エンディングでは、前回の呼びかけで「料理動画リクエスト100件」を(ギリギリ)達成したことが報告されました。ムーが撮影時にzaruへフライパンを持たせた「差し金」疑惑も飛び出し、「ありがた迷惑」と言いつつも、近々ムーザルクッキング企画を実施することが決まったそうです。
まとめ
この回は、AIモデルの進化が「開発スタイルそのもの」を変えつつあるという実感が中心でした。Grok4.5のような安価で高性能なモデルの登場、HerderやHunkといった新ツールによる並列開発とレビューの効率化。その一方で、AIコストの現場ジレンマや「AIの文章が読めない」というモヤモヤも語られ、光と影の両面が浮かび上がりました。
リスナー相談では、AIへの指示は「マイクロマネジメントから目的・ビジョン重視へ」という潮流の変化が共有され、キャリアや情熱をめぐる話では「今の環境で楽しむ余地を見つける」「情熱こそが5年目のレベル」という、技術論を超えた二人らしい答えが返ってきました。
- Grok4.5はGPT並みの性能で圧倒的に低コスト。Xのプレミアムプランで試せる
- Herder(ターミナルのIDE化・並列開発)とHunk(ターミナルでdiffレビュー)が新しい開発サイクルを実現
- ボタンのカーソル論争は、二人とも「デフォルト派」で結論。ボタンとリンクはそもそも別デザインにすべき
- AIの文章・動画・資料への「モヤモヤ」は共通の悩み。着地点はまだ見えない
- AIへの指示は「マイクロマネジメントから目的・ビジョン重視へ」。ただし成果物のチェックは重要
- 5年目に必要なのはスキルの到達度より「情熱」。外への焦りは二人も同じ
