お風呂で指がシワシワになるのはなぜ?理科の常識を覆す「ハイパー理科クイズ」全問解説
サイエントークのレンさんとエマさんが、JAPAN PODCAST FESTIVAL 2026の公開収録に初登場。ゲストに「おしゃべりな理科東京書籍が配信するポッドキャスト番組。教科書編集者の森田さんと小学校教員の辻先生・木月先生の3人が、小学校理科の教科書をテーマにおしゃべりする番組。」の森田さん・木月先生を迎え、「これって常識?ハイパー理科クイズ」を実施しました。指のシワシワの正体から進化の分岐点まで、大人でも間違える理科の問題を4人+会場140人で考えた、その内容をまとめます。
初の公開収録と「レアキャラ」エマさん
2026年3月15日、東京赤坂のTBSスタジオで開催されたJAPAN PODCAST FESTIVAL 2026日本最大級のポッドキャストイベント。公開収録やトークセッションが行われ、多数のポッドキャスターとリスナーが集まる。にて、サイエントーク初の公開収録が行われました。約140名の観客が集まり、抽選になるほどの人気ぶりだったそうです。
サイエントークが2人揃って人前に出るのは実はこれが初めて。レンさんはさまざまなイベントに出演していますが、エマさんは「レアすぎる」存在で、会場のゲスト・木月先生も「生エマさんに感動してます」とコメントするほどでした。
遠くから来た人いますか?……ロンドン!
勝てる人いない。
レンさんは一昨日ロンドンから帰国したばかりで、まだ時差ボケが残っている状態。あと2ヶ月ほどで日本に戻る予定とのことでした。普段の収録ではエマさんには内容を事前に伝えず、リスナー目線のリアクションがサイエントークの魅力になっているという話も。森田さんからは「知ってる人と知らない人という構図なのに、夫婦だから関係性が完全にフラット。教えてる・教わってるという感じがしない」と番組の特徴が語られました。
理科室の加熱器具はもうアルコールランプじゃない?
最初のクイズは「理科室で加熱に使われているのはアルコールランプかカセットコンロか?」。会場では圧倒的にアルコールランプが多数派でしたが、正解はカセットコンロです。
約10年前から、小学校の理科室ではアルコールランプに代わって実験用カセットコンロが使われるようになっています。家庭用の鍋に使うものとは違い、1点で加熱できるよう中央だけから火が出る実験専用仕様。対流の観察など、ピンポイントで加熱する必要がある実験に対応しています。
さらに、着火方法も変わっています。かつてはマッチが当たり前でしたが、今はチャッカマン。木月先生によると「今の子はマッチを擦った経験がない」とのこと。ただし「理科の先生としてはマッチは擦らせたい」と、あえてアルコールランプで火に慣れさせてからカセットコンロに進む実践もされているそうです。
アルコールランプって何ですか?
エマさんがまさかの「アルコールランプって何?」発言で会場を沸かせる一幕も。ガスバーナーと混同していたようです。
砂糖と塩、同じ100gで多く見えるのは?
2問目は「砂糖と塩を100gずつ量ったとき、多く見えるのはどちらか?」。会場も小学生も圧倒的に砂糖派が多く、正解も砂糖。同じ重さで比べると、砂糖の方が約1.5倍もかさばって見えます。
木月先生が前日に6年生のクラスで同じクイズを出したところ、22人が砂糖・7人が塩。班で話し合った結果は9班中8班が砂糖を選んだそうです。子どもたちの根拠がユニークで、「綿あめは軽いから」「コンビニのサトウスティックは思ったより軽い」といった生活経験に基づく推理が飛び出しました。
小学校の「物の重さ」という単元では、この実験を通じて「同じ体積でも物によって重さが違う」ことを体感させます。ただし密度単位体積あたりの質量のこと。小学校では「密度」という言葉自体は登場せず、体感を通じて概念の入り口を学ぶ。中学校以降で正式に扱う。という用語や「なぜ」の部分には踏み込まないのがポイント。塾で先に知識を得た子が「密度が違うから」と答えても、「密度って何?」と聞き返して、みんなに伝わる根拠を探すよう促すのが教育現場のテクニックだそうです。
指がシワシワになるのは「自分から」だった
3問目、そしてエピソードのタイトルにもなっている問題です。「お風呂で指がしわしわになるのは、皮膚が水を吸ったからである。○か×か?」。会場はほぼ半々に割れましたが、正解は×です。
もし皮膚が単純に水を吸っているだけなら、全身がシワシワになるはず。しかし実際にシワシワになるのは手と足の裏だけ。これは身体が能動的に行っている反応です。
水に触れる
指先の神経が水を感知する
自律神経が反応
血管を収縮させ、指先の皮膚の体積が減る
シワが形成される
タイヤの溝のように、グリップ力が向上する
根拠となっているのは、神経が損傷した患者の指はどれだけ水に浸してもシワシワにならないという臨床的な観察です。さらに、2013年の論文Kareklas et al. (2013) "Water-induced finger wrinkles improve handling of wet objects" Biology Letters, 9(2). 濡れたビー玉を持つ実験で、シワのある指の方がグリップ力が向上することを示した。では、30分ほど水に浸した手の方が濡れたビー玉を持ちやすくなるという実験結果が報告されています。
木月先生が子どもたちに聞いたところ、×派の根拠として「草や花が枯れるときも水がなくなってくしゃくしゃになる」「きゅうりの塩もみと同じ」という発想が出たそうです。一方、○派の子どもからは「指もラーメンと同じ。水を吸ってふやけるから」という名言も飛び出しました。
家帰ってお風呂入ったとき、「自分でふやけさせてるわ」って思ってください
「ふやけなかったら神経的に何かあるかもしれない」という話から、「毎日ふやけてるのは健康の証拠」と前向きに捉えるオチも。進化的になぜこの機能が残っているかは完全には解明されていませんが、濡れた場所を歩く際に滑りにくくするための名残ではないかという説が有力です。
哺乳類は爬虫類から進化した?
4問目は「哺乳類は爬虫類が進化した姿である。○か×か?」。会場は×がやや多め。正解も×です。
よくある「魚→両生類→爬虫類→哺乳類」という一直線の進化イメージは正確ではありません。実際には、両生類から有羊膜類卵の中に羊膜という膜を持つ動物群の総称。羊膜が水分を閉じ込めるため、水辺を離れて陸上で卵を産めるようになった。爬虫類・鳥類・哺乳類がこのグループに含まれる。という共通の祖先が登場し、そこから爬虫類と哺乳類は別々のルートに分岐しています。
両生類
水辺でしか卵を産めない
有羊膜類(共通祖先)
羊膜の獲得で陸上への進出が可能に
胎盤の発達、体温調節など独自の進化
鱗、変温動物としての適応など
木月先生のクラスでは17対14とほぼ半々。班で話し合っても4対5と見事に割れたそうです。子どもたちの中には「猿から人間」というイメージはあっても、「自分がかつてワニみたいなものだった」という感覚には抵抗があるようで、「ワニからとかやだな」という声も。
レンさんからは、哺乳類が誕生したきっかけとしてウイルス感染説哺乳類の胎盤形成に関わるシンシチンというタンパク質が、もともとレトロウイルス由来であることが判明している。ウイルスのDNAが宿主のゲノムに取り込まれ、胎盤の進化に寄与した可能性がある。が紹介されました。胎盤の形成にはウイルス由来の遺伝子が関わっているという研究があるそうです。
沸騰の泡の正体は空気か水蒸気か
最後のクイズは「水が沸騰すると出てくる泡の正体は、溶けていた空気か水蒸気か?」。会場では水蒸気が多数派で、正解も水蒸気です。
ただし、木月先生によると小学4年生は「空気以外にないだろう」と思っている子が多いとのこと。水が気体に変わるという発想自体が、直感に反するからです。
昔はね、空気に変わってるっていう説明をしてましたね。2000年前とか
レンさんによると、古代ギリシャのアリストテレス紀元前384年〜322年のギリシャの哲学者・自然学者。万物は土・水・空気・火の4元素からなり、互いに変換可能とする「四元素説」を唱えた。この考えでは水が沸騰すると「空気に変わる」と解釈されていた。の時代には「水が空気に変換される」と考えられていました。子どもたちの直感は、じつは2000年以上前の偉大な哲学者と同じ発想だったわけです。
木月先生は「子どもたちは気体イコール空気だと思っている」と指摘。空気がさまざまな気体の混合物であるという概念自体が、ロバート・ボイル1627年〜1691年のアイルランド出身の化学者・物理学者。真空ポンプを用いた実験で「ボイルの法則」を発見し、空気の性質や気体の研究に大きく貢献した。近代化学の父とも呼ばれる。が真空ポンプを作った1600年代になるまで生まれなかったことを考えると、無理もありません。
まとめ
サイエントーク初の公開収録は、約140名の観客とともに「ハイパー理科クイズ」全5問を楽しむ45分間となりました。理科室のカセットコンロ、砂糖と塩の見た目の違い、指のシワシワの神経反応、哺乳類と爬虫類の分岐、沸騰の泡の正体——どの問題も、会場の意見がきれいに割れる良問ぞろいでした。
木月先生が事前にクラスの6年生に出題した結果と会場の大人たちの反応がほぼ同じ割合だったのも印象的です。「常識」だと思っていることは案外あやふやで、だからこそ考える余地がある。レンさんが最後に語った「考えるのが面白いっていうのがいろいろ広まったらいいですよね」という言葉が、この回のすべてを要約していたように思います。
- 小学校の理科室ではアルコールランプに代わり、約10年前から実験用カセットコンロが使われている
- 砂糖と塩を同じ100g量ると、砂糖の方が約1.5倍かさばる(分子構造の違いによる)
- お風呂で指がシワシワになるのは、水を吸っているのではなく、神経が反応して血管を収縮させる能動的な仕組み。グリップ力を上げるための進化的適応とされる
- 哺乳類は爬虫類から直接進化したのではなく、有羊膜類という共通祖先から別々のルートに分岐した
- 沸騰の泡の正体は溶けていた空気ではなく水蒸気。「気体=空気」という直感は大人にも根強い
- 正解を知ることよりも、身近な経験と結びつけて「なぜ?」を考えるプロセスにこそ価値がある

