親の「べき思考」を一緒にほどく番組とは?
「親の呪いを解くラジオ」は、「親はこうあるべき」「子どもはこう育てなければいけない」という、べき思考という名の呪いを毎回1つずつ解いていく番組です。
番組の進め方について、桜林さんは冒頭で、専門家として正解を答えるのではないと断っています。
私たちは専門家として正解を答えるのではなくて、一緒にこの呪いを解いて楽になりましょうというスタンスでお話をさせていただきます。
パーソナリティの中里さんは、不登校や発達障害の子どもを持つ1000以上の家族と接してきたBranchの代表です。桜林さんは「雑談の人」として、月に50人以上の話を聞く仕事をしています。
余裕のない子育てと、1000家族と向き合った経験
初回は、2人がこの番組を始めた理由から話が始まります。桜林さんの子どもは22歳になり、子育てを一旦終えたタイミングだといいます。
桜林さんはシングルマザーとして子どもを育ててきたため、とにかく時間がなかったと振り返ります。
一言で言うと余裕がなかった。だからずっと(子育てが)これでいいのかなとか、もうちょっとこうできたんじゃないかなっていうことを、もう置き去りにしながらずっと子育てをしてきたっていう感じなので。
今だからこそ、当時を振り返って考えられるタイミングにいる、というのが桜林さんの出発点です。
中里さんにも高校生の子どもが2人いて、親離れ・子離れが進んでいる時期だといいます。収録は、中里さんが経営する渋谷区代官山のフリースクール ── 学校に行かない・行けない子どもが通える、学校以外の学びや居場所の場。民間団体が運営することが多く、形態はさまざまです「ブランチルーム」で行われています。
中里さんはBranchで、発達障害や不登校の子ども向けのサービスを12年ほど運営してきました。その中で保護者と話すと、「こうしなければいけない」「ちゃんとしなきゃいけない」という話がたくさん出てくるといいます。
その辺の呪いというか鎧というか、その辺を脱いだり、呪いを解いたりするようなことがここでできたらいいなと思って。
「学校は行くべき」「母乳であるべき」はどこから来る?
初回のテーマは、そもそも親にかかっている呪いやべき思考とは何なのか、という根本の問いです。
中里さんが挙げたのは、子どもが学校に行きたくないと言ったときの「学校は行くべき」という思いです。ほかにも、幼い頃の「お弁当はしっかり作らなければいけない」、上の世代でよく聞かれた「母乳でなければいけない」といった例が出てきます。
神話レベル。
桜林さんは、ほぼ全員の親がつまずく理由として、親になること自体が初めてである点を挙げます。
なんかやっぱり親になるのみんな、一人目のお子さん初めてだと親になるのも初めてだから。でお手本があるとしたら自分の親ぐらいしかなくて。
教科書もなく、育児書のようなものはあっても「すごいちゃんとしてる」。それを全部やろうとしてもできる人はいない、と桜林さんは話します。
中里さんはこの「自分の親」と「育児書」という2つの出どころに注目します。たとえば「勉強はするべき」と育てられた人は、自分の子どもにも同じように接していることが多いと感じているそうです。
また中里さんが「べき思考」という言葉を使い始めたきっかけは、育児本やウェブ記事、上の世代が子育てを語る場面で、「何々すべき」という強い表現が多かったことだといいます。桜林さんはそれを「あたかも正解があるかのように」と受け止めています。
SNS時代は「正解のべき」探しが止まらない
桜林さんは、親のべき思考の出どころとして、今ならSNSもあると加えます。
SNSを見れば情報がありすぎて正解がないってことはわかるけど、今度じゃあ、どれをお手本にしたらいいのかとか、真逆のことを言ってたりとかすると振り回される。
で、よりべきを探したくなるっていうか、じゃあどうするべきなの?って。
中里さんは、本来なら選択肢が出てきた段階で「自分の家庭ではこうしよう」と家族の中で決めていくはずだと話します。ところが実際には、次の「正解のべき」を探してぐるぐる回る悪循環が起きやすいといいます。
情報があふれる
SNSには正解がないとわかるほど多様な情報がある
振り回される
真逆の意見もあり、何をお手本にすればいいか迷う
べきを探す
「じゃあどうするべきなの?」と次の正解を求める
ぐるぐる回る
家庭で決める前に、また別の正解を探してしまう
桜林さんはこの状況を「今はトラップがたくさんありますよ」と表現しています。
呪いを解く第一歩は「自覚」すること
桜林さんは、話を聞けば「それも呪いだわ」と気づけるかもしれないが、一人で子育てをしているとそもそも自覚がない、と指摘します。
桜林さんにとって、親の呪いをほどくうえでは自覚がいちばん最初であり、それが大変で、とても大事なことだといいます。
不登校の家庭が「マイノリティ」でなくなるとき
中里さんは「学校は行くべき」という思い込みの例に戻ります。同じ学校のママ友・パパ友の中では、子どもが不登校になっている家庭は圧倒的マイノリティだといいます。
同じ経験をしている保護者に出会いづらく、周りでは学校に行くべきかどうかは考えるまでもない「普通」のこととして扱われます。そのため、保護者は自分がおかしいのではないかと苦しむことがある、と中里さんは見ています。
一方、Branchには学校に行っていない家族が何百家族も来ています。その中で他の家族の話を聞くと、保護者の受け止め方が変わるそうです。
あれ、別になんかこれ(不登校)はこれで普通じゃんみたいな。
いっぱいいるってことじゃん。
学校のコミュニティでは圧倒的マイノリティで、自分がおかしいのではと苦しむ
不登校の家族が集まる場で「いっぱいいる」と知り、思い込みに気づける
桜林さんも、自分だけだと思っていたことが「あるある」だとわかると少し安心できると応じます。思い込みの見つけ方はいろいろあっても、まず自覚が一番最初だという点で2人は一致しています。
「解いてやる」ではなく集合知で考える
中里さんは、リスナーからも「こういうべき思考にとらわれていた」というお便りを募りたいと話します。番組タイトルは「パンチが強すぎる」ため、「俺らが解いてやるぜ」ではなく一緒に考えたいといいます。
結局(呪いを)解くのは自分だから、私たちが何かできることではないし、それこそ正解。じゃあどうすればいいんですか?っていう答えを私たちが持ってるわけではもちろんないので、一緒に考えようねという感じだね。
番組では、2人の考え方に加え、本で紹介されている考え方や、Branchに来る保護者の意見なども持ち寄る予定です。桜林さんはこれを「集合知」と呼んでいます。
桜林さんは、聞き手にとってもその方が楽だと話します。「あの人がこう言っていたからこうすればいい」となれば、また新しい「べき」が強くなってしまうからです。
すべての原因は「余裕のなさ」?
中里さんが「楽になってほしい」と話すと、桜林さんは余裕の大切さを強調します。
時間的にも体力だったりとかも余裕がないと、新しい考えが入ってくる隙間がないので。
まず一度力を抜かないと、新しい考え方も入ってこない、というのが桜林さんの考えです。そのため番組も、メモを取りながら集中して聞くのではなく、流し聞きぐらいで気楽に聞いてほしいと中里さんは呼びかけています。
思い込みは「新しい癖」で剥がせるのか
では、べき思考の自覚ができたあとはどうすればいいのか。桜林さんは、時間がかかっても思い込みは剥がせると考えています。
要は癖だと思うので、思考の癖だと思うから。
桜林さんによれば、新しいやり方は最初は違和感があっても、練習して少しずつ真似をしているうちにできるようになります。そして「前はこうしてたけど今はあまりしなくなった」という変化が必ずあるといいます。
中里さんはこれを受け、番組では新しい思考の癖になるヒントを見つけてきたいとまとめました。次回は「学校は通わなきゃいけない、休まず登校するべき」という呪いを取り上げる予定です。
まとめ
初回では、親を縛るべき思考が自分の親、育児書、SNSなどから生まれ、多くの親が気づかないまま抱えていることが語られました。そのうえで、まず自覚し、余裕を取り戻し、新しい思考の癖を少しずつ身につけていくことが、呪いをほどく道筋として示されています。
- 「学校は行くべき」「母乳であるべき」など、子育てには多くの「べき」がある
- べき思考の出どころには、自分の親、育児書、SNSなどがある
- 呪いを解く第一歩は、それが思い込みだと自覚すること
- 余裕がないと新しい考え方が入る隙間がないため、まず力を抜くことが大事
- 思い込みは、新しい思考の癖をつけることで時間をかけて剥がせる






