公開収録の幕開けと、二人が出会ったきっかけ
番組冒頭、進行役はThe Solutionsを「その手があったかと言わせるようなアイデアに着目し、深掘っていくビジネスメディア」と紹介しました。この回のテーマは「新年度に覚醒するアイデア」です。
ゲストは投資家でラジオパーソナリティの田中渓さん。収録は深夜におこなわれ、田中さんは終わり次第すぐに帰宅して寝る予定だと語り、和やかにトークが始まりました。
参加者からの事前質問「お二人が知り合ったきっかけは何ですか」に答える形で、二人の関係が明かされます。きっかけはX(旧Twitter)でした。
そもそも僕が週末に読みたい本っていうので、3冊ぐらいパーッとこれ今週読もうって思った中に三浦さんの本があって、それで反応してくださって。
そのXの反応に三浦さんがコメントを返し、ランチに誘ったことから交流が始まったといいます。二人は同年代で、田中さんは1982年生まれだと補足しました。
この回は収録日が4月2日、新年度が始まったタイミングでした。前半は新年度に最高のスタートダッシュを切るための習慣、後半はキャリアの積み重ね方をテーマにすると進行役が説明します。
日記に飲酒記録、そして逆立ちを毎日1秒ずつ増やす最新ルーティン
最初のテーマは田中さんの最新ルーティンです。田中さんは毎朝3時45分に起きて運動する生活で知られていますが、この回では最近取り入れた新習慣が語られました。
1つ目は日記です。田中さんは人に日記をつけるよう勧めてきた手前、去年から自分でも半年ほど日記を続けているといいます。
2つ目は飲酒量の記録です。田中さんは365日酒を飲み、自分でも依存症だと話しつつ、量を記録し始めたところ実際に飲む量が減ったと語りました。
そして3つ目が、会場を騒然とさせた逆立ちのルーティンです。田中さんは去年5月の誕生日から、逆立ちの時間を毎日1秒ずつ増やしているといいます。
逆立ちをずっと毎日1秒増やすってやつ。
怖い怖い怖い。
きっかけは、コロナ禍で暇を持て余したマッチョたちがオンラインで逆立ちの耐久勝負をしていた動画でした。そのチャンピオンが5分ちょっとで倒れたのを見て、田中さんはあることに気づきます。
5分って300秒だなと思って。あ、これ1日1秒ずつだったら忍者の竹の子飛びシステムで増やせるだろうと。
以来、田中さんは一日も欠かさず逆立ちを続けています。成長は直線ではなく、伸びては踊り場が来る曲線を描いてきたと、田中さんは自身の成長論に詳しく触れました。
成長について詳しすぎる。
気になる現在の記録について、田中さんは淡々と答えます。
今ね7分半ぐらい行けるんですけど。
聞かなきゃよかった。
逆立ちのギネス世界記録は17分ほどだといいます。田中さんはひとまず日本チャンピオン級を目標にしていると語りました。
習慣は本能が先で理由は後付け——田中渓の習慣論
三浦さんは、逆立ちが健康やビジネス、投資に活かすためのものかと尋ねました。田中さんの答えは、大半のことは最初は趣味から始まる、というものでした。
田中さんによれば、早朝のランニングも「食べるから燃やしたい」という動機で始めたもので、続けるうちに後から良い効果が見えてきて、それを大人の理論で後付けするのだといいます。
最初は趣味みたいな感じなんですよ。結局やってみると後でいいことがいっぱい出てきて、それを後付けで大人のなんか理論で(説明する)。
逆立ちも同じで、スクワット・懸垂・逆立ちは自重でできる最強の運動だと聞けば、健康にいいと語れるようになると田中さんは笑います。三浦さんはこの姿勢に、習慣化の本質を見出しました。
三浦さんは、田中さんのような人は効率的に習慣付けをしていると思われがちだが、実際は興味や関心が先にあり、外に発信するときだけ論理が先行するのだと整理しました。
習慣化が苦手な三浦崇宏に、田中渓が示した「ファイナンス思考」
ここで三浦さんは、自分は習慣化がとても苦手だと打ち明け、何からやればいいかと田中さんに問いかけます。しかし習慣化したいことも特にないと続けました。
田中さんの答えはシンプルでした。必要性を感じていないことは、そもそも続かないというものです。
一軍の会社にいる人たちは本当にいないんですよ。
そのうえで田中さんは、必要性を自分で作り出す考え方として、投資家らしい「ファイナンス思考」を示します。仮に20キロ痩せたら1億円もらえる、あるいは痩せなければ5年後に死ぬとしたら、人はやるだろうという例え話です。
田中さんはタバコを例に、やめれば浮くお金、吸っていた時間の生産性、その金額を運用した場合の増え方など、いくらでも試算できると説明しました。三浦さんはこれを、想像力で自分に条件設計してみることだと言い換えます。
一方で三浦さんは、自分は肥満のリスクの話を聞いても「長生きしている肥満もいる」といった少ないサンプルを探してきてしまうと自虐的に語り、自分はダメだと改めて感じたと述べました。
二軒目の飲み会をやめる——「やめてみる」ことの効用
続いて話は「新年度に覚醒したいなら何をやめればいいか」へ移ります。田中さんがまず挙げたのは、二軒目以降の飲み会をやめることでした。
ただし田中さんは条件を付けます。人間関係を築く時期、特に20代や若い頃は新しい人と出会うので、飲み会はやった方がいいというのです。
やめた方がいいのは、いつも同じメンバーで、何軒はしごしても同じ話を繰り返す会だといいます。
どこ行ったかも、何を話したかも、どうやって解散したかも、お会計したかも覚えてない会あるじゃないですか。
田中さんは、こうした会をやめるとFOMO(取り残される不安)を感じるが、二、三回やめてみると、たいていのことはデメリットがなかったとわかると語りました。支障が出れば戻ればいいだけで、やめることを試さない人が多いと指摘します。
三浦さんはここで、自身の実体験を語ります。顎の骨を骨折して2週間入院した際、スマホをいじるのをかなりやめたというのです。
三浦さんはXやInstagramをよく見ていましたが、自分が倒れて何も生産していないときにそれらを見ると、辛い気持ちになったと打ち明けました。
みんなこんなに仕事頑張ってるのに俺は病院で寝てるとか、みんなこんなに海外とか行って新しいものを吸収してるのに、俺は病院で寝てるみたいな。
見るのをやめて三日も経つと全く気にならなくなり、三浦さんは自分がSNSのジャンキーだったと気づいたといいます。やめてみることの大切さを改めて感じたと語りました。
一軍はSNSを見ない——SNSは娯楽だと認めること
三浦さんは、田中さんが以前SNSで発信していなかったが、仕事柄見てはいたのではないかと尋ねました。田中さんの答えは、見てもいなかった、というものでした。
僕らの世界にSNSやってるやつを見てるやつも、一軍の会社にいる人たちは本当にいないんですよ。
田中さんによれば、一軍を揶揄したり冷笑する人はいるが、本当に一軍にいる人はSNSを見ておらず、自分もXを見たことがなく、Instagramはかわいい動物を見るくらいだったといいます。
三浦さんが、一軍がSNSを見ないのは時間がないからか、それとも得のないものだと認識しているからかと問うと、田中さんは投資の世界では役に立たないと判断したからだと答えました。
そこで得られるものが何の役にも立たないんで、まあいっか、手を出さないでっていう感じでした。
この流れを受けて、三浦さんはSNSとの向き合い方の核心を語りました。
三浦さんは、SNSを見て吸収しよう、勉強しようと思って使う人が多いが、それは楽しい時間つぶし以上のものではないと認識しないと危ないと述べました。
一方で田中さんは、いまの発信活動によってSNSがなければ出会えなかった人にリーチできるようになった恩恵も強調します。ただし怖さも知っているため、アルゴリズムが表示する「おすすめ」のタイムラインはあまり見ないといいます。
田中さんは一日一個必ず発信する習慣を続けており、そのネタを拾う目的でわざと「おすすめ」を見に行くと説明しました。ただし中毒性が高く、ずっと見ると終わらなくなると警告します。
リアルに戦争起こってることにあんなに日本人関心持ってないのに、なんでこの痴話喧嘩みたいなやつめちゃくちゃ見てんだろうってなるじゃないですか。
三浦さんは、SNSはあくまで自分の人生とは関係のないちょっと面白い娯楽であり、見過ぎると体調が悪くなる、という認識で付き合うのがいいと締めくくりました。
アイデアは放牧する——雑食なインプットと脳のオートパイロット
続くテーマは「アイデアを生み出す人の新習慣」です。田中さんは、機械のようなストイックさというA面が出過ぎたため、最近は音楽やアート、お笑い、漫画、ゲームと雑食なB面を発信していると語りました。
田中さんが挙げた具体的な習慣は、一日一個Wikipediaを5分見ること、用もないのに家電量販店をぶらつくこと、そしてリアル書店を訪れることです。
(青山ブックセンターは)ほんとセレンディピティの塊みたいなところある。
三浦さんはここで、クリエイティブの師匠である嶋浩一郎さんの「アイデアを放牧する」という考え方を紹介しました。
三浦さんによれば、放牧とは、目的を持って一方向にインプットするのではなく、日常の中で知ろうとも思っていなかった知識との出会いを集めておくことです。それらの知識の種が結合してアイデアになるといいます。
田中さんもこれに同意し、雑多に取り入れた知識のシナプスがつながる瞬間があると語ります。そのつながりは、集中しているときではなくリラックスしているときに起きるといいます。
昨日読んでたわけわかんないカルチャーの本の話と、今やってる投資の話がつながって、なんかこういうアイデアで投資しようみたいなのが出てくる。
田中さんは、走る習慣を「脳のオートパイロット」と呼び、他人にはハードな運動に見えても自分にとってはリラックスの時間だと説明しました。
雑食なインプット
目的を持たず、Wikipediaや書店、家電量販店で知らない知識を雑多に取り入れる
シナプスの蓄積
取り入れた知識が脳の中で結びつく準備状態として溜まっていく
リラックスした時間
走る、風呂に入るなど、脳のオートパイロット状態になる
アイデアの発火
集中時に取り込んだ知識同士が、リラックス時に急につながって発想が生まれる
自分の脳を信じる——知らないことさえ知らない情報と出会う
三浦さんは田中さんの話を受け、二つの重要な視点を提示しました。一つ目は、人間は自分よりも自分の脳を信じた方がいい、というものです。
三浦さんによれば、人間が言語や体の動きとして統御できている脳の領域は全体の三割ほどで、残りの使えていない脳に一度委ねてみる習慣を持つことが大事だといいます。運動中やトイレで突然思いつくのはその例です。
田中さんもこれに、運のいい人の話を重ねます。風呂で降りてきた、散歩中にひらめいた、といった逸話には、その裏に膨大なインプットと努力があると強調しました。
三浦さんは「人事を尽くして天命を待つ」になぞらえ、死ぬほどインプットした後に、統御できていない脳の七割に委ねる雰囲気だと言い換えました。
二つ目の視点は、世の中の情報には「知っていること」「知らないこと」「知らないことさえ知らないこと」の三種類があるというものです。三浦さんは手元の水を例に、この水を作った会社は知らず、その他の無限の情報は知らないことさえ知らないと説明しました。
田中さんは、繁華街を走ることで、タピオカ屋やチーズタッカルビ、唐揚げ屋がいつ現れていつ消えるかがすべて見えると語りました。日々同じ場所を走ることで得られる、独自の観察です。
高級食パンは意外と長いなとか、そういうのもずっと見えるんで。
三浦さんは、人事を尽くしたうえで脳の機能に任せる時間を意識的に作ることと、知らないことさえ知らない情報と出会える生活習慣を持つこと、この二つを持ち帰ってほしいとまとめました。
AI時代に残るもの——信頼・愛嬌と、AIで補強する準備
最後のテーマはAI時代の新習慣です。田中さんは、若い人は音声入力や議事録などのツールを使うべきだとしつつ、人間に残されているのは信頼関係と愛嬌だと語りました。
田中さんによれば、AIで議事録を書き尽くしても、その上に自分の意見という人間らしいスパイスを載せてコミュニケーションしなければ意味がないといいます。
田中さんは、初めて会う人を鬼リサーチしてから臨む人だといいます。かつては人を調べるのが難しかったが、今はメディアに出ていない人でも、その人の趣味や領域のトレンドまで調べられると語りました。
人に向き合うためにAIをもっともっと使った方がいい。
三浦さんは、AIが普及して人間の能力が上がったとき、会った瞬間に気に入られる愛嬌がより重要になり、その愛嬌をAIで補強するのだと整理しました。事前に相手を知っておくことで雑談につながるといいます。
三浦さんは、田中さんが10年ほどWikipediaを見続けていること自体が相当変わっていると指摘します。そのちょっと変わった興味関心こそが、AI時代に平板化しがちな愛嬌の源になると語りました。
田中さん自身も、天才トレーダー路線は最初からないと考え、何者でもない人がどう戦うかをすべて試してきたと明かします。三浦さんは、田中渓というキャラクターが戦略と努力で作られていることに本質があると感動を語りました。
田中渓ってこの人格、このキャラクターは一定戦略と努力で出来上がってる。
ディープリサーチや音声入力で、相手や領域を鬼リサーチし、雑談のネタを仕入れる
信頼関係と愛嬌。会った瞬間に気に入られる力と、ちょっと変わった興味関心
まとめ
公開収録で語られたのは、狂気とも言えるルーティンの裏にある一貫した習慣論でした。習慣は本能から始まり理由は後付けであること、やめてみることの効用、そしてAI時代に残る信頼と愛嬌が、田中さんと三浦さんの掛け合いを通して立ち上がってきます。
- 習慣は本能や興味が先に立ち、論理や理由は後から付けるもの。必要性を感じないことは続かない
- 二軒目の飲み会やSNSなど、思い切ってやめてみると多くはデメリットがないとわかる
- SNSは娯楽だと認め、見過ぎると体調が悪くなるくらいの距離感で付き合う
- 雑食なインプットを放牧し、リラックス時に脳のオートパイロットへ委ねるとアイデアが発火する
- AIで相手や領域を鬼リサーチし、その上に信頼と愛嬌という人間らしいスパイスを載せる



