セカンドブレインとは何か、なぜ今また話すのか
今回の題材は、自分の考えや情報をうまく整理してくれる「セカンドブレイン」と呼ばれるツール群と、AIアシスタントの掛け算です。宮武さんはこの2つを組み合わせて話すと切り出しています。
草野さんは、セカンドブレインツールを実際に試したことがあるといいます。挙げたのはObsidian ── Markdownのメモ同士をリンクでつなぎ、関係をグラフとして可視化できるメモアプリ。ローカルにファイルを保存する設計が特徴です、アンドリーセン・ホロウィッツなどが出資したMem、そしてRoam Researchでした。Roam Researchは有料だったため、諦めたかもしれないと振り返っています。
草野さんがこれらのツールで面白いと感じたのは、整理の考え方そのものです。Notionのようにファイルの中にファイルがある階層型ではなく、メモ同士の相関をタグやリンクでつなぎ、全体を俯瞰して分析できる点に衝撃を受けたといいます。
(RoamやObsidianは)メモ全体の中で分析をちょっとしてくれるというか、どういう言葉がよく出てるのかとかわかるみたいなのは、階層じゃない考え方ですごく面白いなって思った。
ファイルの中にファイルがあるように、上下の階層で情報を収める
メモ同士をタグやリンクでつなぎ、全体を俯瞰して相関や頻出語を見る
一方で宮武さんは、いくつものセカンドブレインアプリを使ってきたものの、うまく使い続けられたアプリはなかったといいます。RoamやMemを試しても結局続かなかったため、その理由を考えてきました。
その課題が解決できない限り結構難しいのかなと思ってたんですけど、それがようやくこのタイミングで可能になってきたのかなと。
草野さんは、メモアプリという1つの生産性ツールを「第二の脳」と名付けたこと自体が天才的だと話します。宮武さんも、SF映画にありそうなイメージが湧きやすい名前だと応じています。
情報が増えすぎた社会で、セカンドブレインはなぜ必要なのか
宮武さんは、セカンドブレインが重要になる背景として、個人も社会も大量の情報を消費しているのに、その処理が追いついていない状況を挙げます。
宮武さんが紹介したのは、情報のスケールには閾値があるという理論です。社会が大きくなるほど取引や情報が記録され、それを処理する技術や管理のレイヤーが作られますが、どこかで処理しきれなくなると社会が崩れるのではないか、という考え方です。
情報を増やし複雑にしてきた技術として、宮武さんは書記言語、印刷機、そしてインターネットを並べます。インターネットの時代にはアテンションエコノミー ── 人々の関心や注目そのものが希少な資源となり、それを奪い合う形で経済が回るという考え方と呼ばれるほど情報があふれ、何が本物で何が偽物かがわかりにくくなりました。
技術の発展
書記言語、印刷機、インターネットが登場する
情報の増加と複雑化
記録される情報が大量に増え、真偽の見分けが難しくなる
処理の遅れ
フェイクニュースや信頼の低下として表れる
個人の対処手段
メモアプリやセカンドブレインが生まれる
宮武さんは、フェイクニュースや信頼の低下は、社会が情報処理に間に合っていないことの一部の表れだと見ています。だからこそ、個人の情報処理の手段としてメモアプリやセカンドブレインが出てきた、という整理です。
個人のナレッジを蓄積するという発想は昔からあり、Evernoteはメモアプリと呼ばれ、Twitterはパブリックなタウンスクエアと呼ばれました。一時期は「デジタルガーデン」という呼び名もあったといいます。
デジタルガーデンの意味を草野さんが尋ねると、宮武さんは、自分の庭の中で1つ1つのアイデアを種として育てる、という意味合いだと説明しています。そうした呼び名の中で、今いちばんしっくりくるのがセカンドブレインだというのが宮武さんの見方です。
Roam Researchはなぜカルト的に盛り上がったのか
宮武さんによると、Roam Researchが登場したのは2019年ごろです。当時はRoamとNotionのどちら派かで対立するような時期があり、一時はRoamのほうが人気だったものの、今は完全に逆転しているといいます。
2020年、Roamは時価総額2億ドル(200ミリオン)で900万ドル(9ミリオン)を調達しました。これをシードラウンドで実施しており、Stripeの創業者兄弟や著名なVCも出資していたと宮武さんは紹介しています。
Roamはカルトブランドのような盛り上がり方をし、Twitterでは「#Roamカルト」が流行りました。草野さんは、RoamもNotionも使い方のコツを共有するコミュニティがあり、今も根強い人気があると話します。宮武さんは、一度コアユーザーになると離れにくいのがこの種のツールの特徴だと見ています。
Roamが目指したのはナレッジグラフ ── 情報同士の関係をノードとリンクのネットワークとして表現したもの。検索や知識整理の分野で使われる概念ですを作ることでした。鍵になったのが「双方向リンク」という考え方です。
従来のメモアプリは、あるメモから別のメモへ飛べるだけで戻ってこられない
Roamの双方向リンクで、メモ同士がネットワークとしてつながる
ただ、双方向リンクは新しい課題も生みました。何をリンクすべきかがわからない、という問題です。草野さんも、友達はうまく使いこなしているものの、自分は何から始めればいいのか、軸は何なのかで迷うといいます。
実際これってなんか考え方のシステムなので、この人によってうまくいくケースとうまくいかないケースがあったりするので。
宮武さんは大量の情報をどうメモしているのか
草野さんは、膨大な情報に触れている宮武さんがどう整理しているのかを尋ねます。後で調べようとタブを大量に開いてしまうのは「あるある」ではないか、という問いかけです。
宮武さんは、タブを開きすぎると全部に対応しなければならない気がして嫌な気分になるといいます。そこでTwitterで気になったリンクは、ブックマークではなく、リンクをSlackにコピペして後で見返すようにしています。
| ツール | 用途 | 整理の仕方 |
|---|---|---|
| Slack | Twitterで見つけたリンクの一時保存 | 開いて消費したあとも残しておく |
| Evernote | 番組の台本やリサーチのまとめ | ある程度のフォルダ分けのみで、タグはつけない |
| Sublime Text | 日々のメモ | ひたすら書き続け、必要なときに検索する |
メモを忘れないのかと聞かれると、宮武さんは検索で過去のノートを見つけることもあるが、今は基本的に記憶に頼っていると答えます。そのやり方はどこかでまずいことになる気がする、とも話しています。
草野さんが、宮武さんは以前スター・ウォーズのセリフを全部覚えていたと持ち出すと、話は少し脱線します。宮武さんは毎週見ていたファンなら誰でもそうなると主張し、草野さんは強く否定しました。
だって、それこそ好きな曲の歌詞とか覚えるじゃないですか。
いや、4分ですもん、それ。
このやり取りを受けて草野さんは、記憶の仕方や頭の使い方は人によって違うとまとめます。宮武さんも、セカンドブレインの整理の仕方を教える人がいるものの、それも特定の考え方の1つだと話しています。
セカンドブレインの「教え方」とメモアプリ最大の課題
宮武さんによると、セカンドブレインには、ツールの使い方ではなく頭の中の整理の仕方を教える人がいます。名前は忘れたものの、セカンドブレインの理論のようなものを掲げ、授業をしたり本を書いたりしているといいます。
草野さんは、そうしたHowtoを学べば整理しやすくなるかもしれないと関心を示します。宮武さんは、それが自分にフィットするかはわからないと留保しつつ、メモアプリが抱える大きな課題を説明し始めます。
宮武さんが比較対象に挙げたのは、SalesforceやHubSpotのようなCRM ── 顧客関係管理(Customer Relationship Management)の略。顧客情報や商談履歴を一元管理する仕組みやソフトウェアを指しますです。
顧客ベースで、ある程度決まった情報を入力するため用途がスペシフィック
どんな情報でも入れられるため、非常に整理がしづらい
メモアプリの問題は、入れる情報の幅が広すぎることにあります。宮武さんは、タグやカテゴリ、フォルダの付け方が正しいかどうかは、その時点ではわからないと指摘しています。
TheBrainと、自社セカンドブレイン構想が難しかった理由
セカンドブレインという概念は昔からあり、宮武さんは1997年に登場して今もインターネット上に存在するTheBrainというウェブアプリを紹介します。マインドマップのような機能を持つツールです。
宮武さんが2023年3月に台本を書いていた時点で、TheBrainのアドバイザーであるジェリー・ミカルスキージェリー・ミカルスキーさんは、98年ごろから使い続けてきたといいます。マインドマップ上でつながる1つ1つのノードは、約3万個にのぼるそうです。
宮武さんは、3万個のノードからどこまで過去にたどり着けるのかが気になるとしつつ、それだけのものを作ったこと自体はすごいと評価しています。
宮武さんはさらに、Off Topic社内でセカンドブレインのようなものを作る構想を話したことがあると明かします。番組で集めた情報をまとめ、データベースとしてサービス化することも考え、ある会社に相談もしましたが、最終的には難しかったといいます。
難しさの1つは、どのメモアプリにも追加のワークフローがかかることです。Memの場合、Twitterで「これをMemしてください」と言わなければ情報は残りません。
例えばミーティングの半分の話をメモした場合に、もう半分メモしてないので、その話を思い出したければできないじゃないですか。
結局自分の判断によって自分のキュレーションをめちゃくちゃ頼らないといけない。
手作業での記録
メモや保存という追加のワークフローが必要になる
人間による選別
残すかどうかを自分の判断で決める
取りこぼし
記録しなかった情報は後から思い出せない
宮武さんは、こうした課題がいまこのタイミングで解決できるのではないかと考えています。スタートアップのピッチ資料にある「Why now?(なぜ今なのか)」のスライドに当てはまる状況が来ている、という見立てです。
Rewindは「人生の検索エンジン」になれるのか
「なぜ今」の答えとして宮武さんが挙げるのは技術的な要因で、基盤のインフラからLLM ── 大規模言語モデル(Large Language Model)の略。大量のテキストで学習し、文章の理解や生成を行うAIモデルですまで、AIモデルの進化がセカンドブレイン領域を変えつつあるといいます。その好例がrewind.aiを運営するRewindです。
Rewindは自らを「人生の検索エンジン」と掲げています。草野さんは「もうブレインではなく人生」と驚いていました。人間の記憶力はあまり良くないので完璧な記憶を提供したい、というのがサービスの目的です。
Rewindは前年の11月にMacのデスクトップアプリとしてローンチし、M1チップ以上のMacでしか使えません。ダウンロードすると画面をずっと記録し、ユーザーが許可すればマイクやスピーカーにもアクセスして、電話会議で話した内容や聞いた内容も記録します。
記録はすべてローカルに保存されます。宮武さんによると、ローデータを約3500倍に圧縮するため、数年分のデータが入るといいます。名前のとおり過去を巻き戻せて、1週間前に何を見て、何を聞き、何を話していたかに戻れます。
うわぁ、ちょっと怖い。
草野さんの率直な反応に、宮武さんも「ちょっと怖いですよね」と同意しています。Rewindの創業者は、このサービスをGoogleマップに近いものと説明しているそうです。
Googleマップがない時代は、場所への行き方をいちいち覚える必要があった
Googleマップが覚えてくれるので、見るだけで済む
Rewindを実際に使うと何が便利なのか
宮武さん自身もRewindを使っています。主な使い方は、過去のツイートや記事をキーワードで検索することです。たとえば1週間前にStripeの記事を読んだと思ったら「Stripe」と検索すると、画面にStripeが出た場面がすべて表示され、リンクや記事のテキストもコピーできます。
宮武さんが想定していなかった使い方として、Rewindの創業者が挙げていたのが電話会議です。会議中に飛び交う会社名などを聞き逃しても、5秒前に戻れば書き起こしで確認できるので、話を止めて聞き直す必要がありません。
ローカル保存にしている理由はプライバシーで、他人がデータを見られず、会社で使っても会社は従業員のデータを見られないといいます。インターネットがなくても使えることも重要です。M1チップ以上に限定しているのは、圧縮に加えて、バッテリーなどの消費を抑えて普段どおりパソコンを使えるようにするためです。
最近はChatGPTとも連携し、「この人といつ会いましたか」と尋ねれば、過去の画面データを見て文章で答えてくれます。メールやSlackでのメンションも画面上にあれば拾えます。検索結果が多すぎる場合に備えて、アプリ別や時系列のフィルタ機能もあります。
便利だった場面を草野さんが聞くと、宮武さんは、1週間ほど前に読んだ記事のタイトルを完全に忘れていたときだと答えています。
新しい発想でもあるので、そのマジックモーメントが本当にその瞬間来ないと、マジックモーメントって理解できないので。
宮武さんは、マジックモーメントが体験しないとわからない点をRewindの課題とみています。このサービス自体が流行るかは正直わからないとしたうえで、これができること自体が重要だと話しています。
全部記録してAIに整理させると何が変わるのか
宮武さんによると、Rewindが解決するのは「何をメモすれば後で役に立つかわからない」という課題です。RoamやMemでは、何を優先するかを最初に人間が決め、フィルタリングも人間がしています。Rewindは、それをせずに全部を記録します。
すべての情報から必要なものを探すキュレーション力が要るのでは、と草野さんが問うと、宮武さんは、それこそがLLMの役割だと答えます。
全部のデータを最初から持っていれば、そのプライオリティ付けをLLMにお願いして頼めば出してくれるんですよね。
宮武さんが挙げた例は、人物ベースでメモを取っていた場合です。後から会社ベースで調べたくなっても、手作業で取ったメモの整理軸は変えられません。全データがあれば、LLMに会社ベースでも人物ベースでも、発言ベースでも出してもらえます。
メモを取る時点で人間が優先順位と整理軸を決め、整理の仕方は1パターンしかない
全部を受動的に記録し、使うときにAIへ整理の仕方を頼むので、複数の見方ができる
宮武さんは、インターネットで情報が複雑になったのに、意味をわかりやすくする「センスメイキング」の仕組みがなかったと整理します。全情報を受動的に集め、AIで整理する形なら、何をメモするかを考える必要もなく、仕事のワークフローも変えずに済むといいます。
何が大事かわからなくなりそうだという草野さんの懸念にも、宮武さんは答えています。メモは「その瞬間に大事だと思ったもの」を残すだけなので、1か月後に別の視点で見たかったと思うことがあり、全記録ならそれが可能になる、という考えです。
ChatGPT連携で「先週の金曜日に何をしましたか」のような質問もできるようになりつつあります。宮武さんは、こうしたソフトウェアがiPhoneやGoogleのPixelなど、特にボイスアシスタントを持つデバイス側にも入ってくるのではないかと見ています。
AIが自ら行動する秘書、Lindyは何をしてくれるのか
Rewindの話は、パソコンが受動的に情報を集め、ユーザーがAIを通して必要な情報を取り出すというものでした。宮武さんは、もう1つの大きな変化として、AIがアクションを起こすことを挙げます。
これまでのAIはテキストや画像を生成するものでしたが、これからはAIがパソコン上のツールを使って、メールを書くといった行動を取ってくれるといいます。来週の題材としてAdeptにも触れつつ、今回紹介したのはlindy.aiを運営するLindyです。
Lindyは、LLMにSlackなどのAPI仕様書を読み込ませることで、AIがカレンダーやメールを使えるようにしています。草野さんは「仕様書ならいちばんわかりやすく書いてあるかもしれない」と納得していました。
宮武さんが紹介した例は、「今日のミーティングの前に、会議リンクと参加者の情報を送って」という1つの依頼です。草野さんが「秘書」とつぶやくと、宮武さんも「本当にまさに秘書なんですよ」と応じています。
草野さんは、採用面接のように大量のミーティングをさばく場面なら有用だと認めつつ、限られた重要な面談で「共通点を調べましたよ」という雰囲気になることに少し引っかかりを示します。宮武さんは、秘書がいるのと同じことで、ミーティングするのは最終的に本人だと答えています。
宮武さんは秘書との違いも挙げます。人間の秘書にはパスワードを全部渡す必要があり、リスクがあります。LindyはAPI連携なので、いつでもブロックでき、パスワードも渡さないため、できることがある程度限られるといいます。
最後のアクションは人間が持つべきなのか
Lindyはタスクを与えられると、達成するためのコードを自ら書き始めるといいます。宮武さんはRPA ── ロボティック・プロセス・オートメーションの略。定型的なパソコン作業をソフトウェアで自動化する仕組みですに似た動きだと説明しています。
別の例はメール処理です。朝100通ほど届いたメールに優先順位をつけ、返信すべき重要なメールには返信のドラフトを作ってくれます。過去のGmailのやり取りを見て、自分の書き方だけでなく相手に合わせた書き方にも変えるそうです。
働くとは何かみたいな、ちょっと考えさせられますね。
草野さんは、便利だけれど少し怖いとも感じています。宮武さんは、現時点ではドラフトまでで実際には送信しないと補足しました。NDAを最初に締結させる、といったワークフロー上のルールも指示できるといいます。
Lindyの創業者は、AIを作るうえで「確実性」と「重要度」を考えていたそうです。どれだけ正しい応答を出せるか、その判断がどれだけ重要かによって、自分で実行するか、確認を取るかを決めています。
草野さんは、もっともらしく正確な回答はAIが出し、最後の確認や行動は人間がするという形が、今のAIの性質に合っていると話します。宮武さんも、人間がエージェンシーを持つことがすごく重要だと強調しています。
Microsoft 365 Copilotが示した人間とコンピューターの関係
宮武さんが今回の準備を始めたのは、MicrosoftがExcel、PowerPoint、WordにGPT-4を組み込んだMicrosoft 365 Copilotを発表した翌週ごろでした。発表ではCEOのサティア・ナデラさんが、人間とコンピューターの関係の変化から話を始めたといいます。
出発点は1945年、アメリカのエンジニアのヴァネヴァー・ブッシュさんが書いたエッセイです。そこには、人類のあらゆる本や記録、コミュニケーションを保管するMemex ── ブッシュが1945年のエッセイ「As We May Think」で構想した個人用の情報機械。ハイパーテキストの先駆けとされますという未来のデバイスが描かれていました。
サティアさんによると、検索やSNSのレコメンドなど、これまでのAIは人間が選ばない「オートパイロット」でした。これからは人間の判断とエージェンシーでAIが働く「Copilot」の時代だという整理です。
検索やSNSのレコメンドで、見るものや買うものを与えられ、人間が選ばない
人間の判断とエージェンシーのもとでAIが働く
宮武さんが印象に残ったのは、PowerPointのデモでAIがミスをし、デモ担当者がそれを見つけて修正した場面です。草野さんも「発表でやるのはわざとですね」と同意しています。宮武さんは、人間が判断していることを見せたかったのだろうと見ています。
窓から投げられないパソコンは信じるな?上から目線のAIは嫌われる
宮武さんは、OpenAIのサム・アルトマンさんの話も紹介します。人間はコンピューターに怒られたり、上から目線で扱われたりするのを嫌う、というものです。草野さんはこれを「主導権を握られたくない」と言い換えました。
これツールだと思うことが大事。
草野さんは、AIは擬人化しがちだが無機質なツールだと受け止めます。宮武さんは、人間がコントロールできると見せることが大事だという話の流れで、アルトマンさんが語ったスティーブ・ジョブズの逸話に触れました。
逸話の題材は、ジョブズがAppleに戻って最初に作った、丸くて半透明でカラフルなiMacです。背面に取っ手がついている理由を、アルトマンさんは問いかけたといいます。
噂によると、スティーブジョブズがハンドルを入れた理由は、窓から放り投げられないパソコンは信じるなって言ったから。
宮武さんは、実際に窓から投げる人はほとんどいなくても、それができると知ることが大事だという話だと説明します。草野さんは「コントロールできることが大事ということですね」とまとめました。
ただし宮武さんが調べたところ、この話はどこにも出てこず、噂かもしれないといいます。デザイナーのジョナサン・アイブジョニー・アイブさんは、より個人的で触りたくなるデザインにしたかったと、まったく違う説明をしていたそうです。草野さんは、この話を逸話として聞いておくと受け止めました。
AIアシスタントは新しいOSになるのか
話をMicrosoftに戻すと、宮武さんはCopilotがRoamやNotionのようなセカンドブレインサービスにとって脅威になると見ています。Microsoft Graphで365の各アプリから情報を引っ張れるためです。Googleも、過去のGmail履歴をもとにドキュメントの文面を作るようなことをやるだろうといいます。
宮武さんは、AIを束ねたサービスはアプリをまたいだ体験を提供できるので強いと指摘します。Rewindも画面全体を見るので複数のアプリを扱え、草野さんの言うとおりプラットフォームに依存しません。Lindyも、API連携は必要なものの複数のアプリに対応しています。
宮武さんが面白いと感じているのは、こうしたAIアシスタントがOSになり得る点です。しかも、その位置づけは従来のOSとは逆だといいます。
アプリケーションレイヤーの上にあるOSという今までにない作り方がどうなるのか、宮武さんは気になっているといいます。草野さんがAppleのOSがこれを始めたら怖いと言うと、宮武さんも同意し、AppleがRewindを買収するのではという話もあると触れています。
セカンドブレインはマルチプレイヤーになれるのか
宮武さんが今後いちばん気になっているのは、これまで自分のメモというシングルプレイヤーだったセカンドブレインが、マルチプレイヤー化できるかどうかです。
宮武さん自身、良い事例はあまり思い浮かばないとしつつ、会社での例を挙げます。従業員のオンボーディングのどの瞬間が良かったのかは普段わかりませんが、従業員の許可を取ってその瞬間だけRewindのように分析できれば、見えてくるかもしれないといいます。コミュニティなら、情報がすべてコミュニティのAIに蓄積される形も考えられます。
草野さんは、サイトを訪れている人のカーソル位置がわかるサービスを昔見たと振り返り、近いかもしれないと話します。数十人から数百人規模のSlackで、誰がどのチャネルを見ているかがリアルタイムでわかれば面白い、というアイデアも出しました。
ここのチャネル盛り上がってないなって、なんかbotが。何々さん、久しぶりにもうちょっと来てみませんか?みたいな。
宮武さんは、AIがチャネルを改善するようなことも出てきておかしくないとし、マルチプレイヤー化の可能性はいろいろなところにあると締めくくりました。翌週も、AI企業を作るうえでの考え方や、AI業界で実際に議論されている話を取り上げる予定だと予告しています。
まとめ
セカンドブレインは、何を残しどう整理するかを人間が先に決めなければならない点でつまずいてきました。宮武さんは、全部を受動的に記録してAIに後から整理させるRewind、人間の確認を残して秘書のように動くLindy、人間中心を打ち出すCopilotに、その限界を越える兆しを見ています。
- 従来のメモアプリは、手作業の記録と人間による取捨選択が前提で、続かない原因にもなっていた
- Rewindは画面や会話を丸ごとローカルに記録し、後からLLMで整理の軸を選び直せる
- Lindyは仕様書を読んだAIが複数ツールをまたいで行動し、外部に影響する判断は人間の確認に回す
- MicrosoftのCopilotやアルトマンさんの話が示すのは、人間がエージェンシーとコントロールを持つ関係の重要性
- AIアシスタントはアプリの上に乗る新しいOSや、マルチプレイヤー化したセカンドブレインになる可能性がある





