誰も望まなかったトランプ対バイデン再戦?
雑談回では毎回トピックに困るため、宮武さんがいつも話題を準備しています。今回、宮武さんが最初に挙げたのは、2024年のアメリカ大統領選挙です。
宮武さんの見立てでは、よほどのことが起きない限り、大統領選はトランプ対バイデンの再戦になりそうです。ただ、宮武さんはこの組み合わせを「みんなが望んでなかった対決」と表現します。
別になんかそれはトランプ派とかバイデン派とかの話ではなくて、単純にこの2人をもう一度見たくなかったっていう。
宮武さんによると、トランプ氏は前回の選挙で負けていないと主張し続け、去年は告発もされました。一方、現職のバイデン大統領は支持率が40%を切り、3年目の大統領としては歴代2番目ぐらいの低さだといいます。
年齢も問題になっています。バイデン氏は80歳を超え、トランプ氏も77歳です。新しい声が必要だという意見がある中で、アメリカ社会の分裂はむしろ深まっていると宮武さんは見ています。
宮武さんが示した数字では、党派ごとの支持がはっきり分かれています。
| 候補 | 共和党派の支持 | 民主党派の支持 |
|---|---|---|
| トランプ | 89% | 7% |
| バイデン | 5% | 83% |
両陣営が極端な方向へ進んでいるため、宮武さんは難しいとわかっていながらも「第三の党」の登場に期待しています。
草野さんから第三の党は実際に可能なのかと聞かれ、宮武さんは可能ではあると答えます。前回の選挙にも3つ目、4つ目の党は出ていましたが、基本的には選ばれませんでした。
一方で、ギャラップ ── アメリカの世論調査会社。政治や社会に関する定期的な世論調査で知られていますの調査では、アメリカ人の63%が「共和党も民主党もアメリカをうまく代表していない」と答えたそうです。第三の党への需要は高まっているものの、実際には起きにくい状況だといいます。
宮武さんが個人的に注目しているのは、民主党の下院議員ディーン・フィリップス氏です。55歳ほどで、最近では珍しく論理を組み立てて話す政治家だと評価しています。
まず、そのロジックで喋ってくれるところからっていう、そのバーが低すぎるので。
宮武さんは、フィリップス氏がアメリカの負債の問題をしっかり語り、共和党派やトランプ支持者にも声をかけている点を挙げます。両側がポピュリズムに寄る中で、国をまとめるにはそうした人がもう少し必要だと話しています。
テック業界にとって、どちらが勝つほうがいい?
選挙初心者として、2024年の大統領選ではどこに注目すべきか。草野さんがそう尋ね、テック業界への影響に話が移ります。宮武さんは、テック業界への影響は「めちゃくちゃある」と答えます。
宮武さんの見方では、ビジネス全般にとってはトランプ氏が勝つほうが有利になる可能性があります。共和党派は自由主義やビジネス寄りの傾向があるためです。ただし、トランプ氏には読めない部分も多いといいます。
バイデン政権については、直近3年間の動きから、大手テック企業への警戒心がはっきり見えると宮武さんは話します。ただ、政権が変わった場合に、その姿勢がどこまで変わるかはわからないとしています。
討論会に出ない候補者は何を避けているのか
宮武さんは、2024年の大統領選がこれまでの選挙と大きく違うものになる可能性を指摘します。共和党では候補者を決める討論会が開かれていますが、トランプ氏は一度も出ていません。
もう自分がもうこれだけリードを持っているので、なんかそもそも出る必要ないんじゃないっていう。
草野さんの「強気ですね」という反応に、宮武さんは「めちゃくちゃ強気なんですよ」と返します。トランプ氏は討論会の代わりに自分でイベントを開いたり、Twitterでライブ配信したりしているそうです。
さらに宮武さんは、本選挙でもトランプ氏とバイデン氏の2人が討論会に出ないのではないか、という説を紹介します。バイデン氏はキャンペーンにもほとんど顔を出しておらず、民主党が出したがっていないのではないかと批判されているといいます。
なぜ討論会に出ないのか。草野さんがその理由を尋ねると、宮武さんは真偽は置いたうえで、両者の事情の違いを説明しました。
年齢の問題で受け答えが十分にできないのではと言われており、討論会に出すこと自体がリスクとみなされる
大差のリードがあり、出る必要がないという姿勢。変なことを言っても、もともとそういうキャラクターとして受け止められる
バイデンが言うとより悪く見えるっていう。なのでそのリスクをそもそも取るのは、なんか危険なんじゃないかっていう判断が行われる可能性があるっていう。
草野さんは、カリスマ的な人物が出てくれば受け入れられそうだと話します。宮武さんは、支持率だけでなく各党の内部で誰が影響力を持つかの問題だと答えます。両党で過激な会派の影響力が増しているため、国民が本気で第三の選択肢を求めない限り、今の構図は続くだろうと見ています。
ネガティブキャンペーンばかりの選挙ビジネス
宮武さんは、アメリカの選挙ビジネスの面白い点として、広告のほとんどがネガティブキャンペーンであることを挙げます。自陣営の候補者の良さを訴えるのではなく、相手がいかに悪いかを訴える広告が中心だといいます。
なんで、なんかずっとネガティブな話ばっかりしか出ないっていう。
宮武さんの見込みでは、2024年の大統領選は広告予算だけで少なくとも1ビリオン(10億ドル)以上が動きます。そのぶん、社会の分裂も進むだろうと話しています。
宮武さんは、テレビCMを出せない日本と、アメリカのどちらがいいのかが気になるといいます。アメリカは政治がエンタメ化しているぶん分断も起きますが、国民の多くが何かしらの関心を持つことにもつながっています。
草野さんの「楽しみですね」という言葉に、宮武さんは「楽しみではないです」「恐怖感しかないです」と返します。宮武さんは、ここで選挙の話題を切り上げました。
なぜシリコンバレーにはナポレオン崇拝者が多い?
次に宮武さんは、あるポッドキャストで聞いた「シリコンバレーにはナポレオンを崇拝する人が多い」という話を取り上げます。草野さんは、革命家でアグレッシブなリーダーという点が好まれそうだと答えます。
宮武さんは、日本の起業家が『キングダム』を読むのと近いのかもしれないと話します。ナポレオンは若くして頭角を現し、フランスのトップに立ったのも35歳ごろだったといいます。エネルギッシュな革命家であったうえ、新しいものが大好きだった人物でもありました。
宮武さんによると、ナポレオンは農業の開発や潜水艦、橋を早く作る方法などに関心を寄せていました。当時発見されたばかりのアルミニウムも気に入っていたそうです。
宮武さんの話では、ナポレオンはフランスの学術団体のフェローに選ばれ、すべての会合に一番前の席で参加し、新しいイノベーションについて聞きたがっていたといいます。
宮武さんによると、去年出たイーロン・マスクの伝記でも、マスク氏をナポレオンにたとえる場面が何度か出てきたそうです。宮武さんは、マイクロマネジメントをする点や、重要な局面で自ら現場に入る点が似ていると話します。
宮武さんはもう1つ、共通点を挙げます。ナポレオンは他国を攻略したあとに現地の科学者を集めて学び、マスク氏はTwitterを買収した直後にエンジニアを集めて、それまでの仕事を確認しました。宮武さんは「無理やり感が若干ある」と認めつつ、好かれる理由はわかると話しています。
草野さんは、ナポレオンが最近映画化されて話題になっていたことにも触れました。
偉大なリーダーの晩年は、なぜ良くないのか
ナポレオンの話から、宮武さんは偉大なリーダーの多くは終わりが良くないという点に注目します。大敗したり、場合によっては自殺に至ったりするケースもあります。
草野さんは、うまくいき続けた人が最後に「いろんな意味で刺される」パターンは多いのかもしれないと応じます。宮武さんは、それがイノベーションを続けられなかった問題なのか、別の問題なのか、歴史上のリーダーの晩年を分析すると面白いかもしれないと話しました。
大きな責任には大きな犠牲が伴うみたいなことなんですかね。
この発言に宮武さんが「それスパイダーマン」とツッコみます。草野さんは続けて、権力や名声が大きいほどリスクも大きくなり、自分の失敗を指摘する意見が聞けなくなるので、比例しているのではないかと話しています。
アインシュタインの「奇跡の年」は他の人にもある?
宮武さんが最近気になっているテーマは「アウトライヤーのアウトライヤー」です。トップの人の人生を見ると、突出した1年があるのではないかという仮説です。
宮武さんが一番わかりやすい例として挙げるのが、アインシュタインです。1905年、25歳ごろのアインシュタインは、物理学や人類を変える4本の論文を1年で書きました。一方で、30代、特に35歳を過ぎてからは、その年ほどの貢献はしていないといいます。
1905年は、アインシュタインの「奇跡の年 ── アインシュタインが光量子仮説、ブラウン運動、特殊相対性理論などの重要論文を相次いで発表した1905年を指す呼び名です」と呼ばれています。宮武さんは、こうした年が他の人にもあるのか、それとも重要な瞬間が長い期間に何度も起きているだけなのかが気になると話します。
起業家の場合は、ピボットのタイミングなどが手がかりになりそうです。宮武さんは例として、Metaのモバイルへのシフトを挙げます。それがあったからこそ、InstagramやWhatsAppの買収ができたといいます。
科学者は論文の数と内容で調べやすいものの、起業家は把握しづらいと宮武さんは話します。1年という短い期間で成し遂げたことは長続きしないため、起業家には「奇跡の年」はないかもしれない、とも考えています。
なんか出会う人とか市場の動きとかトレンドによってめちゃくちゃ左右されるので。
草野さんは、ステークホルダーの多い起業家の仕事では、タイミングがより重要だと話します。いい投資家が入った、組織が一気に大きくなったなど、自分の力だけではない転換期があるのではないかという見方です。
いま「30アンダー30」に入るのは誰か
宮武さんは、エラッド・ギル ── シリコンバレーの著名なエンジェル投資家・起業家。スタートアップ投資やスケールに関する発信で知られていますさんのものと思われるツイートを紹介します。今、「30アンダー30」を作るなら誰が入るか、という問いです。ここで言うのは、毎年発表されるForbesのリストではなく、自分たちで今のリストを作る場合の話です。
宮武さんは、かつての若手の多くがすでに30代になっていると指摘します。宮武さんが挙げた人物と年齢は次のとおりです。
| 人物 | 分野 | 年齢 |
|---|---|---|
| テイラー・スウィフト | 音楽 | 34歳 |
| パトリック/ジョン・コリソン(Stripe) | 起業家 | 35歳/33歳 |
| ディラン・フィールド(Figma) | 起業家 | 32歳 |
| メラニー・パーキンス(Canva) | 起業家 | 36歳 |
| ミスタービースト | クリエイター | 25歳 |
| ヴィタリック・ブテリン(イーサリアム) | 起業家 | 29歳(今年30歳) |
| アレックス・ワン(Scale AI) | 起業家 | 26〜27歳ぐらい |
リストに入りそうな人として、宮武さんはミスタービースト、ギリギリのヴィタリック・ブテリン氏、アレックス・ワン氏、ビリー・アイリッシュを挙げます。それでも、テック系の起業家となるとあまり思いつかないのが正直なところだといいます。
宮武さんは、以前にも番組で話した「20代がテック業界のトップにいない」という問題に改めて触れます。個人的に面白いと思う20代として、多くの人にインタビューしているブロガーのドゥワルケシュ・パテル氏の名前を挙げました。
映画『哀れなるものたち』はどんな物語?
宮武さんが「ポジティブな感じで終わったほうがいいですかね」と言うと、草野さんが最近見た映画の話を切り出します。エマ・ストーン主演の『哀れなるものたち』(原題『Poor Things』)です。
草野さんがあらすじを紹介します。自殺した若い女性ベラに、天才外科医ゴドウィン・バクスターがベラの子どもの脳を移植し、ベラは奇跡的に生き返ります。
頭は子どもで体は大人というベラが、世界を自分の目で見たいと旅に出る物語です。時代や偏見から解き放たれて自由に成長していく話だと、草野さんは説明します。
じゃあ逆コナンなんですね。
原作はスコットランドの小説で、「女性版フランケンシュタイン」とも言われているそうです。草野さんは、映画を見た人にはぜひ小説を読んでほしいと勧めます。
小説版は「信頼できない語り手」だらけの構成
草野さんによると、小説版の面白さはメタフィクションになっている点です。草野さんが説明した本の構成は、次のような入れ子になっています。
登場人物の手記
登場人物の1人が、後世に残したいという体で物語を書く(小説の約8割)
別の人物の文章
主人公ではない別の人物が、その本を読んで改めて書く
著者の注釈
最後に小説家アラスター・グレイが「実際はこうであった」と注釈を加える
この構成のため、誰が本当のことを言っているのかがわからなくなると草野さんは話します。映画ではとてもいい人に見えた人物にも、小説では別の顔があるといいます。映画には反映されなかった裏設定や、映画の結末のその後を描くエピローグも、小説にはあるそうです。
草野さんがこの小説から得たのは、誰かのナラティブは正解ではないことも多いという学びです。
誰かの目線で書いてるから、すごくかっこつけてる部分とか誇張してる部分とか、なんか良くも悪くもあったりして。
作中には「哀れ」という言葉が何度も出てくるといいます。草野さんは、そうした人間らしさが描かれている点を、この作品の面白さとして挙げています。
映画と原作のずれ、原作派はどう受け止める?
草野さんは、映画化を知ったことをきっかけに小説を先に読み、そのあとで映画を見ました。映画を見たときの印象を、宮武さんが尋ねます。
草野さんは、小説ではリアルに描かれていたスコットランドやポルトガルが、映画ではフューチャリスティックに描かれていた点を挙げます。衣装もヴィクトリア調を基調にしながら、素材は現代的なものを使っていて、小説からは見えなかったアートな雰囲気が面白かったといいます。
配役も見た目がぴったりだったと草野さんは話します。マーク・ラファロや、トビー・マグワイア版『スパイダーマン』で悪役を演じたウィレム・デフォーも出演しています。
宮武さんは、小説を映画化したときの違いがどちらかといえば好きではない「原作派」です。ハリー・ポッターや『ロード・オブ・ザ・リング』も本で読んでいたため、本のほうがいいと思ってしまうといいます。
一方の草野さんは、映画も原作もどちらも好きだと答えます。監督のヨルゴス・ランティモスやエマ・ストーンが好きで、映画化してくれてありがたいという気持ちがあるそうです。草野さんは、映画をきっかけに本も読んだので、違いがあること自体が面白いと話しています。
草野さんが挙げた映画と小説の具体的な違いを整理すると、次のようになります。
| 観点 | 映画 | 小説 |
|---|---|---|
| 舞台の描き方 | フューチャリスティックでアートな雰囲気 | リアリティのあるスコットランドやポルトガル |
| 売春宿を辞める理由 | 父親的な人物が病気になり、仕方なく帰る | 自分で嫌だと思って辞める |
| 結末 | とてもハッピーに終わる | 主人公自身は違う思いを抱えている面もある |
| 人物像 | いい人に見える人物がいる | しこりのある人物として描かれる |
宮武さんは、ハリー・ポッター3作目で箒のファイアボルトが最後にしか出てこない例を挙げ、2時間ほどの映画では場面を選ばざるを得ないと話します。
草野さんは、監督のランティモスが小説に惚れ込み、原作者に会いに行って映画化を申し出たという話を紹介します。作り手が本当にやりたいと思っているか、仕事として来た案件かで、違いが出そうだと話しています。
話は漫画原作の映画へ広がります。草野さんは、予告の時点で「原作とは違う結末」をうたい、原作を知る人も巻き込むパターンがあると話します。宮武さんは知人から聞いた話として、映画の予告は世界でほぼ統一されるのに、日本だけ変えることが多いと紹介しました。
分厚い注釈と、真実は語り手次第という結論
草野さんは改めて、『哀れなるものたち』の小説版について、フィクションなのに巻末の注釈が分厚い点に驚いたと話します。誰かが亡くなった場面にも「その日は晴れていた」といった注釈が付いているそうです。
実はこの人はこういうつもりでここにいたのだろう。後にわかったみたいな。わかったってお前が考えてんだろみたいな。
宮武さんは、著者自身も「だろう」と書いている以上、完全にはわかっていないことになると指摘します。草野さんは、自分で全部書いておきながらわからないというメタフィクションの形が面白いと応じます。
宮武さんは、映画のDVDにある監督のコメンタリーのような形で、映画にも注釈を付けられないかと提案します。草野さんは、それだと演技の話になってしまうかもしれないと返しました。
草野さんは、まだ読めていない小説として、アメリカで以前に出た『TRUST』も紹介します。伝記、その伝記の著者の日記、最後にその妻の日記と続く構成で、出版物から日記まで、性質の違う書き物を重ねているといいます。
確かにそれで毎回ナラティブがちょっと変わったり、なんか情報がちょっと削られたりとか追加されたりとかしますからね。
最後に、映画と小説のどちらを先に楽しむべきかを宮武さんが尋ねます。草野さんは、映画のほうが気楽に見られるとしつつ、おすすめは本からだと答えました。
まとめ
今回の雑談回は、米大統領選への不安から始まり、ナポレオン、偉人の晩年、「奇跡の年」、若手の不在を経て、『哀れなるものたち』の語りの構造へと広がりました。リーダーの語られ方も、小説の語り手も一面的ではなく、真実は語り手次第だという視点が全体を通じて浮かび上がります。
- 宮武さんは、2024年の米大統領選がトランプ対バイデンの再戦になる見込みで、分断の深まりと討論会不参加の可能性を懸念している
- シリコンバレーでナポレオンが好まれる背景には、新しいものへの関心や、現場に入り込むリーダー像がある
- アインシュタインの1905年のような「奇跡の年」が、起業家にもあるのかという問いが提示された
- 『哀れなるものたち』の小説版は、手記と注釈を重ねたメタフィクションで、映画とは結末や人物像が異なる
- 草野さんは、映画と小説の違いを楽しみつつ、これから両方に触れる人には本から読むことを勧めている


