草野さん不在のPIVOT収録で何が困った?
今回のOff Topicは久しぶりの雑談回です。冒頭では、前週のPIVOTでの収録に草野さんが体調不良で出られなかったという、番組史上初の出来事が振り返られます。
これまでOff Topicは基本的に二人だけの番組で、どちらかが休むと収録日をリスケしていました。PIVOTでの収録はスケジュールを変えられず、宮武さんは一人で臨むことになったそうです。
めっちゃ緊張しました。結構やっぱり、草野さんが拾ってくれるタイミングとか。
宮武さんによると、草野さんが話を入れてくれる間に、台本の次の部分を読み直しているのだといいます。長年一緒に番組をやってきたからこそ、相槌の間合いに頼っていたことに気づいたようです。
それ(草野さんの合いの手)がないとずっと話さないといけないんで、ちょっと追いつけなくなるっていうか。
この回で宮武さんは初めてOff Topicのイントロとエンディングも担当しました。後日収録を見た草野さんは、AIの話について「それを知った上でどう前向きに進めるか」だと受け止めています。
LindyのAIアシスタントは何をしてくれる?
宮武さんは最近、以前セカンドブレインの回で紹介したAIアシスタント「Lindy」の社長、フローさんを取材する機会がありました。その動画はOff TopicのYouTubeチャンネルで別途公開される予定です。
Lindyは、ひと言でいえばAIアシスタントです。メールを優先度順に並べて返信のドラフトまで書いたり、ミーティングの5分前に全参加者のプロフィールと過去の会話をまとめたりといった依頼ができます。
ただし宮武さん自身はまだLindyを使えていません。ベータ版の招待制で、ウェイトリスト待ちの状態だそうです。
草野さんは、以前の回で話した「受動的に情報を摂取する人が増えている」という話題と重ね、Lindyのようなサービスは受け身でAIと関わる秘書のようなものではないかと感じたと話しています。
人間がソフトウェアを触らなくなったら、UIはどうなる?
宮武さんは、草野さんの「受動的」という指摘が重要なポイントだと応じます。これまでソフトウェアは、人間がアクションを起こして初めて求めるアウトプットが出てくるものでした。
フローさんとの対話で出たのは、今後はAIが人間に代わってソフトウェアと接するようになる、という見方です。AIアシスタントはアプリケーションの上に乗る別のOSレイヤー ── ソフトウェアの階層構造のうち、アプリの土台となる層のこと。ここでは、個々のアプリの上にAIが共通の操作窓口として乗るイメージを指していますになりうるという話でもあります。
だって結局人間が、例えばSalesforceとかそのSaaSのソフトウェア触らないのであれば、AIが触るのであれば別に人間の仕様にしなくていいじゃないですか、SaaSを。
宮武さんは、この変化をコンピューターの歴史になぞらえます。直接コーディングで操作していた時代から、GUI ── Graphical User Interfaceの略。アイコンやウィンドウをマウスで操作する画面の仕組みで、パソコンを一般に広めた技術とされますによって誰でもコンピューターとやりとりできるようになった変化に近いものが、ソフトウェア領域で起きているのではないかという見立てです。
人間がSaaSを直接操作し、使いやすいUIUXが求められる
AIアシスタントが人間の意図を読み取り、複数のSaaSを代わりに操作する
草野さんも、ExcelやAdobeのように機能が多すぎて使いこなしている人はほとんどいないと同意します。NotionやExcelの関数をBtoBインフルエンサーに教わるような状況が、AIに意図を伝えるだけで済むようになるかもしれません。
フローさんは、UIやUXという概念がどんどんなくなり、「AIX」という言葉が重要になると語っていたそうです。草野さんが「それはデザイナーがデザインするのか」と尋ねると、宮武さんは、AIが読み取りやすい仕組みは必要でも、見た目のデザインの話ではなくなるだろうと答えています。
AIアシスタントに頼みたいのは「人に頼みづらい仕事」?
草野さんから「AIアシスタントに何を頼みたいか」と聞かれた宮武さんは、ミーティング前のサマリーを挙げます。草野さんの「自分でやりたくなりません?」という問いには、AIならではの利点を語りました。
AIアシスタントのいいところって、普通のアシスタントだと多分頼みづらいことをいろいろ頼めるっていうか。
今までの内容を全てまとめてくれって頼みにくいじゃないですか、人間に。
宮武さんの例は具体的です。ポッドキャスト収録の前にGarageBandを立ち上げて専用ファイルを用意するような準備も、「ミーティングの5分前に全部整えてください」と任せられるといいます。
人間には頼まないようなunreasonableなタスクは意外と多く、だからこそAIアシスタントは思った以上に人を効率化させるのではないか、と宮武さんは考えています。
二人が挙げた頼みたいことは、次のようなものでした。
- ミーティング前のサマリー作成
- 収録前の機材やファイルの準備
- 定型の挨拶を含むメール返信の用意
- 請求書の作成と送付
- 面白い記事の追加リサーチ
草野さんは、宮武さんに教わったAutopodという、ビデオポッドキャストのカメラを自動でスイッチングするツールを試したそうです。音声の関係でうまくいかなかったものの、話者を映すといった「編集に味が出ない部分」は自動化できると便利だと話します。
一方でリサーチについて草野さんは、自分で調べる中で気づきに出会うのではと問いかけます。宮武さんも同意したうえで、まとめを任せるのではなく、自分でも探しつつ面白い記事を追加で探してもらう使い方を想定していました。
AIが判断する時代、SaaS企業とデータはどうなる?
宮武さんは、これから作られるSaaSは場合によっては明らかに変わると考えています。そのうえで、SaaS企業側としてはそれでいいのか、という疑問も感じているそうです。
逆にそのAIがいろいろ判断してくるので、時と場合によっては、この機能は別のサービスを、競合サービスを使った方がいいとか。
草野さんはWeb3 ── ブロックチェーン技術を基盤に、個人がデータや資産を自分で管理できるインターネットを目指す考え方の総称ですの「データを自分で持つ」という発想と結びつけ、自分の管理下にあるAIがデータを持つ未来が来るのかと問いかけます。
宮武さんは、個々のデータをAIとシンクさせる流れは起きるだろうとしつつ、データをサービス内だけに置くのかなどはまだわからないと答えました。AIアシスタントに慣れるには少し時間がかかるかもしれない、とも話しています。
AIには「ask」?「order」?呼び方に表れる関係性
草野さんは、AIに何かをさせることを英語でどう表現するのかに興味を持ちます。宮武さんによると、プロンプトなら「ask」になるといいます。
フローさんはLindyのことを「she」と呼んでいたそうで、宮武さんは、もともと良いアシスタントを作るところから始まったサービスなので人格化している部分があると見ています。ChatGPTでもaskが一般的ですが、commandやorderと言う人もいます。
宮武さんは、orderには「命令」と「注文」の両方の捉え方があると補足します。草野さん自身は「お願いする」「入力する」という感覚だそうです。
そこもやっぱり人によって、そこでちょっと見えますよね、AIとの関係性が。
草野さんは、画像AIでは「生成する」という言葉が使われ、人格を感じさせないと指摘します。テキストも本来は生成ですが、画像は条件を細かく入力するからではないか、と二人は推測しています。
ask、お願いする、Lindyをsheと呼ぶなど、相手として扱う
生成する、入力する、command、orderなど、操作として扱う
AIの急成長は誰も予想していなかった?
フローさんへの取材の後半では、AGI ── 汎用人工知能。人間のように幅広い課題をこなせるAIのこと。ASIは人間の知能を大きく超える人工超知能を指します・ASIのリスクについても聞いています。フローさんの答えは、リスクは明確にあるというものでした。
フローさんは人類滅亡のリスクを5〜10%と見る立場です。Lindy自体は、AIに7つのルールを与える「憲法システム」を導入しており、その中には最終的には人間が判断するといった項目があるそうです。
フローさんは、現在主に使われている憲法モデルとRLHF ── 人間のフィードバックによる強化学習。人間が回答を評価し、その評価をもとにAIの振る舞いを調整する手法ですの2つだけでは、リスク削減には足りないかもしれないと考えています。
宮武さんが特に正しいと感じたのは、安全性の専門家やAI研究者も今の状況を予測できていなかったという点です。
しかもその、元々今のAIのキャパビリティは多分10年から15年先のことだとみんな思ってたので。
予測がこれだけ外れたのなら、AGIやASIも予想以上に早く来るのではないか、というのが宮武さんの見方です。草野さんも、VCの「来年来るジャンル」予想でもAR・VRや動画コマースが語られていた時期とは違うと振り返ります。
取材で興味深かったのは、フローさんの見方の揺れです。2〜3ヶ月前の別のポッドキャストではかなりネガティブでしたが、今回はもう少しポジティブだったといいます。
でも本当に何か日によって変わるって言ってたので、明日また聞いてくれって言ってましたね。
宮武さんは、研究者にはネガティブな人が多い気がするとしつつ、気持ちが上がったり下がったりするのは、それだけすごいテクノロジーだからこそ納得感があると話しています。
AIに愛着は湧く?Off Topicも再現される?
草野さんは、AIに愛着が湧くかという話題について、以前は湧かないと思っていたと話します。ただ人っぽいAIを目にするうちに、見分けがつかなくなるかもしれないと感じ始めたそうです。
宮武さんは、AIとわかった瞬間に愛着がなくなるかもしれないし、わからなければ愛着が湧いてもおかしくないとして、「人間とは」が問われると応じました。
話題は、Off Topic自体がAIに置き換えられるかに移ります。All InやJoe Roganのポッドキャストには、すでに非公式のAIバージョンがあると宮武さんは紹介します。
(Off Topicのようなものを)全く同じことはするのは難しいと思うんですけど、ただ似たようなことはできると思うので。
宮武さんは、Off Topicの良さは情報だけでなく、視点や考え方、パーソナリティの組み合わせにあると考えています。それでもAIの解説のほうがいいと言う人が出てくる可能性はある、と率直に認めています。
人間の非合理さは、AIとの違いになるのか?
草野さんは、人間が非合理的であることこそAIにない面白さではないかと話します。合理的にやればいいのにそうしないところに、人間味を感じるといいます。
宮武さんはここに面白い論点があると指摘します。Off Topicなどのコンテンツでも、一見非合理に聞こえる話が後々つながることがあり、その瞬間は聞き手も、話している本人でさえ先が見えていないことがあります。
ところがAIも同じことをします。宮武さんが例に挙げたのは、チェスや囲碁のAIが一見非合理な手を打ち、それが先の局面で大きな意味を持つというケースです。
非合理に見える行動
その場では意図が誰にも見えない話や一手
時間の経過
話や対局が進む
後からつながる
結果的に意味のある布石だったとわかる
それを同じように再現されると、すごいOff Topicとしても困るなって思いますよね。
映画『her』に見る「自分だけに優しくしてほしい」心理
草野さんは、AIアシスタントのサマンサに恋をする映画『her ── 2013年公開のスパイク・ジョーンズ監督の映画。孤独な男性がAIのOSと恋に落ちる物語で、人とAIの関係を描いた作品として知られます』の結末に触れます。主人公は相手がAIだと知りながら好きになりますが、現実の生活が少しうまくいかなくなります。
さらに主人公は、サマンサが同時に別の人とも話していて、自分だけに優しいわけではなかったと気づきます。最後は新しく頑張ろうという終わり方だそうです。
結局、自分だけに優しくしてほしいっていう、そうじゃなかったってことに気づいて、冷めるみたいな。
草野さんが面白いと感じたのは、AIならそういうことが起きると最初からわかっていたはずなのに、実際に目にすると「自分だけじゃないんだ」とショックを受ける点です。
不思議ですよね。思った以上に、そこまで複雑じゃなかったりとか。
宮武さんは、人間は知性があると言いたいものの、裏ではそこまで複雑ではないのかもしれない、と話をまとめています。
MrBeast来日アテンドで見た素顔とチームの実像
後半の話題は、世界トップのYouTuberであるMrBeastの来日です。宮武さんは約1ヶ月前、MrBeastのチームを1週間ほどアテンドしました。
ジミーさん本人と話す機会は何度かあったものの、宮武さんは基本的にスタッフ側に回っていました。スケジュール作り、車の手配、多少の通訳など、裏のオペレーションを手伝っていたそうです。
第一印象は、思った以上に背が高かったことです。宮武さんは185cmくらいかと話しましたが、草野さんがその場で調べると191cmと出てきました。5年前に入ったスタッフも、最初に会ったときは驚いたといいます。
動画ではドローンで上から撮影したり島を映したりするため、小さく見えるのではないかと二人は話します。セキュリティも同行しており、宮武さんには他のYouTuberより格段上のセレブのように映ったそうです。
来日したのは数十名でしたが、スタッフによればこれは小規模なチームです。普段の大型企画との違いを、宮武さんは数字で説明しています。
本社は200人以上。大型企画では出演者約100人、カメラ約100台を回す
タレント側を含め合計数十名。カメラは圧倒的に少なく、TikTok担当は1人
撮影内容は明かせないものの、初来日の印象はすごく良かったそうです。MrBeastは日本だけの動画は出さないと思われる中で、撮影の手応えから、もともとの案を変えると話していたといいます。
日本人にはあまり気づかれなかった一方、外国人にはよく気づかれたそうです。人混みに出る機会は少なかったものの、浅草寺や竹下通りではさすがに気づかれたといいます。
スタッフと同行した宮武さんは、毎晩遅く、その日のスケジュールが朝の2時や3時に決まるという大変さも見てきました。それでも1週間の模擬体験はとても楽しかったと振り返っています。
Off Topicがショート動画クリエイターを募集
最後は、Off Topicのショートフォーム動画クリエイター募集のお知らせです。現在はポッドキャストを中心に、YouTubeでたまにビデオポッドキャストを出していますが、コンテンツを広げるためにTikTok向けの動画を作る人を探しています。
宮武さんによると、求めているのは音声の切り抜き動画ではありません。Off Topicのコンテンツをベースにしても別の素材でもよく、ショート動画ネイティブのOff Topic流コンテンツを作ってほしいそうです。
僕とか草野さんの顔を出すよりも、その人が軸でコンテンツを出してもらいたいと思ってるので、本当に1クリエイターとして。
顔出しは必須ではないとのことです。募集要項の詳細はエピソードの概要欄に掲載されています。
まとめ
Lindy創業者フローさんへの取材を起点に、AIアシスタントが人とソフトウェアの関係を根本から変える可能性、AGIのリスク、そしてAIと比べて浮かび上がる人間らしさが語られた回でした。後半はMrBeast来日の裏側と、Off Topicの新しい仲間募集で締めくくられています。
- AIアシスタントが人間の代わりにSaaSを操作するなら、UIUXは「AIX」へ変わるかもしれない
- AIには、人間には頼みにくい細かな準備やまとめ作業こそ任せやすい
- AIの急成長は専門家にも予想外で、フローさんのAGIリスク評価も日によって揺れている
- 一見非合理な行動が後で意味を持つのは、人間だけでなくAIにも見られる
- MrBeastの来日チームは数十名でも「小規模」で、撮影の手応えから企画案を変えるほどだった





