売却した起業家たちが、なぜまたSNSを作るのか
草野さんと宮武さんがソーシャルアプリを取り上げるのは、前年末以来およそ半年ぶりです。草野さんは、BeRealのような次世代アプリが出てきたものの苦戦も多いと振り返ります。
宮武さんによれば、2020年ごろからソーシャルアプリの流れが再び来て、2021年には次世代SNSがいくつも登場しました。ただ、Papalatchがシャットダウンするなど、多くのアプリが上がっては下がる展開をたどっています。
最近だとPapalatchとかもシャットダウンしたりとかもしてましたし、いろいろ上がっては下がってはっていう感じですよね。
そんな中で宮武さんが注目するのが、前年後半から目立ってきた動きです。かつてソーシャル系アプリを立ち上げて成功・売却した起業家たちが、もう一度新しいアプリを作ったり、起業を発表したりする流れがありました。
宮武さんが挙げたのは、Instagramの創業者2人、Vineのドームさん、Zenlyのアントウィンさん、Housepartyのベンさんなどです。アントウィンさんのプロダクトはまだベータ版の段階だといいます。
Twitterの有料プランは課金する価値がある?
「普段使っているSNSは」と聞かれた宮武さんは、個人的にはやはりTwitterだと答えます。宮武さんはTwitterの有料プランに課金していて、草野さんはその価値を尋ねます。
価値は、感じる瞬間は時々ありますね。
宮武さんが挙げるメリットは、日本語で140文字を超える投稿ができること、長い動画を出せること、そして感覚的にはリーチの度合いが違うことです。広告は減っているはずですが、広告自体は気にならないといいます。
課金の一番の理由は拡散力でした。Off TopicのトラフィックもTwitterで稼いでいるためです。ただ、効果ははっきり測れないと宮武さんは話します。
バズるツイートがあるかないかですごい変わってくるので。(課金したから)10パーセント増えたとかっていうのが見えてこないんですよね、残念ながら。
フォロワーも少しずつ増えているため平均値も動いてしまい、課金の効果は切り分けにくいそうです。宮武さんは、課金しない人の理由もよくわかるとし、明確に勧めるのは言いにくいと締めくくりました。
Instagram創業者が作ったニュースアプリArtifactとは
本題は、Instagramの創業メンバーが立ち上げたアプリArtifact ── Instagram共同創業者のケビン・シストロム氏とマイク・クリーガー氏が2023年に公開したアプリ。AIによるパーソナライズを特徴とするニュースアプリとして始まりましたです。宮武さんはArtifactが出た翌月ごろからこの回を企画していましたが、AIの話題が続いたため、3か月ほど遅れての収録になったといいます。
今回は、これまでのSNSの進化の振り返りではなく、SNSの作り方や考え方を扱います。宮武さんは、もしソーシャルアプリの会社に出資していたらこういう話をするだろう、というアドバイス寄りの内容になるかもしれないと前置きしました。
Artifactは、現状ではニュースキュレーションアプリと呼ぶのが近いサービスです。最初に興味のあるトピックを選ぶと記事が表示され、読んだ記事に応じて関連情報がどんどん出てくるようになります。
宮武さんはArtifactを、簡単に言えば「TikTok版のニュースアプリ」と表現します。TikTokを運営するバイトダンス ── TikTokを運営する中国のテック企業。ニュースアプリ「Toutiao(今日頭条)」でもアルゴリズム推薦を成功させたことで知られますもニュースアプリを持っているため、参考にしている部分があるのではないかと見ています。
「インスタには魂がない」発言と、売却しないことのリスク
2度目の起業となるケビン・シストロムさんたちが取材でよく聞かれるのは、「今のInstagramをどう思うか」です。数か月前には、ケビンさんがキャラ・スウィッシャー ── 米国の著名テックジャーナリスト。鋭い質問で経営者に迫るインタビューで知られ、テック業界の重鎮的な存在ですさんのインタビューで「インスタには魂がない」と語ったといいます。
もう1つ繰り返し聞かれるのが、Instagramを売却するべきだったのかという質問です。草野さんは「何万回も聞かれていそう」と笑い、「後悔したでしょ?」「そう言ってよ」という聞き手の空気を代弁しました。
宮武さんによれば、ケビンさんの答えは、売却しないことのダウンサイドも考えるべきだというものです。そもそもFacebookに約1ビリオンで売却した理由の1つは、Facebookが抱えるユーザー数というディストリビューションが欲しかったことでした。
SpaceXを作れた理由って、PayPalを早めに売ったからじゃないですか。
宮武さんは、イーロン・マスクさんを例に挙げます。今のPayPalのほうが売却時より圧倒的に価値があるのに、その問いをイーロンさんには誰もぶつけず、ケビンさんにだけ聞くという構図です。
ケビンさんから見ると、イーロンさんが売却で手にしたのは「自由」でした。そういう意味で売る価値はある、というのがケビンさんの考え方だと宮武さんは紹介します。
2度目の起業が持つアドバンテージ
宮武さんは、2度目の起業ならではの強みを2つ挙げます。1つはお金をある程度持っているため自由に動けることで、Artifactは収録時点で外部から資金調達をしておらず、自己資金で運営しています。
もう1つは初期ユーザー集めです。Artifactには初日に数十万人が入ってきたといい、名前の知られていない創業者にはまずできないことだと宮武さんは話します。
最初から数十万人入ってほしいですよね、オフトピックも。
草野さんは、Artifactのプロダクト自体がテック業界やビジネス業界の人と相性がいいと指摘します。宮武さんも、コア層はケビン・シストロムさんとマイク・クリーガーさんを慕う人たちだと同意しました。
資金調達が必要で、初日から数十万人のユーザーを集めるのは難しい
自己資金で自由に動け、初日に数十万人が入ってきた
Twitter派の宮武さんがArtifactを使いこなせない理由
実際にArtifactを使ってみた感想について、宮武さんは、普段どこからニュースを仕入れているかで使い方が変わると話します。宮武さんはすでにTwitterとSubstackで情報を選んで読んでいるため、Artifactを使いこなすにはハードルがあるといいます。
刺さるものはあるんですけど、すでにTwitter経由で読んじゃってるんですよ。
Artifactより先にTwitterを開いてしまうので、気になる記事はTwitterで読み終えています。その結果、Artifact上では記事をクリックしなくなり、アルゴリズムが自分向けにトレーニングされないという悪循環が起きます。
Twitterを先に開く
読みたい記事をTwitter経由で先に読んでしまう
Artifactでクリックしない
すでに読んだ記事はArtifact上で開かない
学習が進まない
アルゴリズムが自分の好みに合わせてトレーニングされない
草野さんも継続利用はしていないものの、自分が見ているメディアやトピックの比率がわかるインサイト機能を面白いと感じたそうです。記事をシェアしたときのサムネイルにArtifactと表示される点も、マーケティングとしてよくできていると評価しました。
宮武さんは通知へのこだわりにも触れます。何回読まれたかを数字で示す通知があり、記事を書いた人には自分の記事の閲覧数が届くといいます。
パブリッシャーを選ぶ「バイアス前提」のネットワーク
宮武さんによれば、2度目の起業だからこそ、ケビンさんたちはコンテンツモデレーション ── 投稿内容を監視し、不適切な投稿の削除や表示制限を行うこと。SNS運営で大きなコストと批判の的になりやすい領域ですへの期待値を強いプレッシャーに感じていると話していました。
草野さんは、そもそもどのメディアを載せるかを選ぶところから難しいと指摘します。宮武さんが「すごい」と感じるのは、Artifactが選ぶことを明言している点です。
彼らの編集能力でやるって言っているので、いわゆるバイアスを前提としたネットワークなんですよね。それは結構レアだなっていうのは思いますね。
多くのSNSは偏りを避けるか、UGC ── User Generated Contentの略。一般ユーザーが作って投稿するコンテンツのことで、SNSの投稿の大半がこれにあたりますを全部受け入れる形をとります。一方でArtifactは現状、運営が選んだパブリッシャーだけが投稿できる仕組みです。
ただしArtifactは最終的にソーシャルアプリにする予定で、コメント機能やライターをフォローできる機能がすでに出始めています。
なぜ最初のカテゴリにニュースを選んだのか
Artifactがニュースを選んだのは意図的だと宮武さんは説明します。ニュースは毎日作られるので、運営が自分たちで生成しなくてもコンテンツが必ず供給されます。
ニュースはテックなどすでにカテゴリ分けされているため、機械学習でユーザーのプロフィールや好みをつかみやすい点も理由です。さらに、パブリッシャーを選べば一定の品質を担保でき、コンテンツモデレーションのリスクも下げられます。
毎日供給される
自分たちで作らなくても、ニュースは毎日出てくる
分類しやすい
既存のカテゴリで、ユーザーの好みを学習しやすい
品質を担保できる
パブリッシャーを選ぶことで、モデレーションのリスクを減らせる
個人の投稿を全員に許すと「この投稿を取り下げろ」というクレームが大量に来ますが、今のArtifactにはほとんど入っていません。宮武さんは、供給側を選んでいるからだと見ています。
この考え方は、Instagramの始まりとよく似ているといいます。初期のInstagramはSNSではなく、無料で使えるおしゃれなフィルターアプリで、加工した写真をカメラロールに保存せずそのまま共有できるところから始まりました。
まさにこれが、クリス・ディクソンさんが言った、「Come for the tool, stay for the network」ですよね。
宮武さんによれば、Instagramは初年度に約1000万人、その後半年で3倍ほどに増え、買収時には12人のチームでした。草野さんは、Artifactがあえて機能を制限しているところに思想を感じると話します。
友達が好きなものを自分も好きとは限らない
Artifactの一番の仮説は、SNSを「コンテンツのフィルター」と捉え直すところにあります。インターネット上の大量のコンテンツの中から、自分に合ったものを出してくれるのがSNSだという見方です。
これまでのSNSは、Instagramも含め「友達が面白いと思ったものは自分も面白いと思う」という仮説で作られてきました。ケビンさんは、これが過去20年間のSNS業界で最大のミスだったかもしれないと語っているそうです。
例に挙がったのがケビンさんとマイクさん自身です。2人のソーシャルグラフは大きく重なっていますが、見たいコンテンツはまったく違い、マイクさんはF1、ケビンさんは日本の建築デザインが好きだといいます。
今までのSNSだってやっぱそれを出してくれなくて、それを出してくれるのが例えばTikTokとかですよね。
大学のように近い距離の友達同士なら、同じものを見る可能性が高いため、昔のFacebookではソーシャルグラフが機能しました。しかし大学の外にスケールすると、それが使えなくなります。
だからこれからのSNSは、ソーシャル要素を減らさないといけないと宮武さんは説明します。フォローという概念は、ほかにいいコンテンツの出し方を誰も思いつかなかったための「ハック」でしかなかったというのがケビンさんの見立てです。
フォローしている友達・家族の投稿を出す。友達が面白いものは自分も面白いという仮説
ユーザーの行動データから、その人が本当に好きなものを推薦する
パーソナライゼーションは彫刻を作ること
推薦の元になるのは、TikTokと同じくユーザーの行動データです。そこからユーザーをクラスタリングし、さらに一人ひとりに合わせてパーソナライズしていく2段階の仕組みだといいます。
Artifactには、人は自分をユニークだと思いがちでも、実は考え方が似ているという仮説があります。宮武さんは、サンフランシスコに住む人はTechCrunchを読みがちで、The Atlanticでメンタルヘルス系の記事を読む人は特定の別メディアも読む傾向がある、という例を挙げました。
ゼロから人を作るのではなくて、もうブロックがあって、これは例えばテック関連の人だっていうのを最初のクイズで決めて。そこからちょっとずつ削って、その人のパーソナライズされた形を作る。
ケビンさんによるこの彫刻の比喩に、草野さんは「すごいですね」と感心します。最初に選ぶカテゴリはテックやビジネス、アートといった大まかなものだけで、F1や日本の建築デザインのような細かい選択肢はありません。
それでもケビンさんのフィードには、本人が一言も好きだと伝えていない日本の建築デザインの記事がたくさん出てくるそうです。何百本も記事を読む必要はあるものの、Artifactはすでにそのレベルに達していると宮武さんは評価します。
Google Newsのような一般的なニュースサービスとの違いは、ヘッドラインではなく、その人が本当に興味を持つものを出し、それについての会話を作りたい点です。コンテンツのキュレーションは、SNS化に向けた第一歩という位置づけです。
政治で分断された人を、スポーツでつなぐ
SNSの課題として宮武さんが挙げるのが分断の問題です。たとえば民主党支持の人は民主党寄りのコンテンツしか見ない、という状況があります。
Artifactは、誰がどんな記事を読んでいるかをデータとして持っているため、異なるグループの共通トピックが見えてきます。政治では同じ記事を読まない人同士でも、スポーツなら同じ記事を読んでいるかもしれません。
なんで、スポーツでまずつなげましょうと。
そもそも、全く話さないのが良くないので、まず一緒に話せる場を作るっていうのがすごい重要だと思っていて。
草野さんが、Artifactはユーザーにどんな行動をさせたいのかと尋ねると、宮武さんは、自分が本当に好きなものを読み、それをいろいろな人と話せることだと答えます。共通点を見つけることで分断が本当に解決するかはまだわからないとしつつも、その発想を面白いと評価しました。
人の幸せをどう数字にするか
Artifactが見ている指標として宮武さんが挙げたのは、リアクションがつかない投稿の数です。さらにケビンさんたちは、長期的な人の幸せ度合いをアプリ内でどう数値化するかを、答えが出ないまま考え続けているといいます。
今のほとんどのSNSは、利用時間などのエンゲージメントで成果を測っています。その前提には、長く使うほどユーザーはハッピーになるという仮説がありますが、草野さんも宮武さんも、実際にはそうとは限らないとうなずきます。
宮武さんは、そもそもの考え方を問い直している点に、2度目の起業らしさを感じたと話します。多様なコンテンツのあるフィードがいいのか、記事を多く読むのがいいのか、読まないほうがいいのかなど、考え方はいくつもあり得ます。
草野さんはArtifactのフィードに日本の庭園や旅、料理、インテリアの記事が出てきたとき、Twitterにはない「癒やし」を感じたといいます。
Twitterとかはまさにそのニュースをキュレーションして見るためにはすごくいいんですけど、エンタメとか、もうちょっとプライベートっぽいトピックとかはすごいここで見つけるの楽しいなと思いました。
宮武さんは、そうした記事はいいねがつきにくく、バズらないため発見されにくいと応じます。ただし癒やしになる記事の割合を増やせばいいのか、一定までにとどめるべきかは、定義が難しい問題だと話しました。
ストリークとユーザーレベルは幸福度を上げるか
草野さんは、ユーザーのレピュテーションや「ビギナー」「エクスプローラー」のようなレベル表示があってもいいのではと提案します。どこまで自分向けにパーソナライズされたかがわかることに、幸せを感じるかもしれないという発想です。
宮武さんが個人的に好きだというのは、Snapchatにもあるストリーク ── 連続で利用した日数を記録・表示する仕組み。途切れさせたくない心理が働くため、習慣化や継続利用を促す機能として多くのアプリで使われていますです。Artifactでは何日連続で見たかが表示され、宮武さんはようやく2桁に届いたそうです。
ただ、クリックしている記事は少ないため、まだ自分向けには育っていないと宮武さんは話します。理想的な使い方は、Twitterに出てこない別のトピックをひたすらArtifactで見ることかもしれない、と考えています。
草野さんが新しいジャンルの情報を知りたくないかと聞くと、宮武さんの答えは、テック系とジェネラル、スポーツならThe Athleticと、見るところは決まっているというものでした。料理や音楽の話題は、D2C系の人をフォローしているとTwitterでたまに流れてくる程度だといいます。
新しいSNSは既存のSNSをコピーしない
新しいSNSを作るうえで重要なのは、基本的にコピーしないことだと宮武さんは話します。Instagramも、Twitterのビジュアル版を目指したわけではありませんでした。
当時のTwitterは画像やフィードに力を入れず、Facebookはデスクトップのみでモバイルを気にしていませんでした。Instagramは、その誰もいない領域に入っていったといいます。
Snapchatも同様に、Instagramではカジュアルな写真を投稿しにくくなった需要を満たしました。全部のSNSは似ているものの、それぞれ違うバリューを提供しており、そこを理解することが重要だとされています。
| SNS | 既存SNSの状況 | 満たした需要 |
|---|---|---|
| Twitterは画像に消極的、Facebookはデスクトップのみ | モバイルでの写真共有 | |
| Snapchat | Instagramではカジュアルな写真を出しにくくなった | 気軽な写真のやり取り |
草野さんは、コンテンツ系SNSとしてSubstackも近い競合ではないかと指摘します。Substackではライターが前に出ていて、記事に対して読者とのディスカッションがチャットで生まれる設計が、満足度の高さにつながっていると感じているそうです。
宮武さんによれば、政治などシリアスなトピックを議論するSNSは過去にいくつも出ましたが、どれもうまくいきませんでした。SubstackやArtifactは、ベースとなる記事やライターがいる中で議論させる点で、アプローチが違うといいます。
1万人のAIフォロワーに囲まれるSNSは成り立つか
Artifactはディスカバリーの部分をAIで補っていますが、宮武さんはエンゲージメントもAIで補えるのではないかと問いかけます。
AIアバターと聞くと、多くの人は人間らしく振る舞う高機能な1体のAIを思い浮かべます。しかし人間らしさを求めるほど、今の技術ではボロが出やすいと宮武さんは見ています。
SNSを作る時のオンボーディングで、いっぱい最初から1万人フォロワーがつくみたいな。(それが)全員全部AIですみたいな。
宮武さんが流行る可能性を感じるのは、役割の違う小さなAIアバターをたくさん用意する形です。投稿に対してAIが批判したり、応援したり、議論したりと、人間らしい多様なリアクションを返します。
草野さんにAIからのコメントは嬉しいかと聞かれた宮武さんは、質問されるなど内容によっては嬉しいのではと答えます。将来は人間の友達よりAIの友達のほうが多い時代が来て、違和感がなくなるかもしれないとも話しました。
宮武さんは、フォロワーの多いインフルエンサーでも返信や引用ツイートは意外と見ていると指摘します。ほとんどの人は返信しないからこそ目に留まるもので、AIのコメントでも内容次第でいいねするインフルエンサーが徐々に出てくるかもしれないといいます。
AIがハイライト動画を選ぶ「AIネイティブのストーリーズ」
パーソナライズが進みすぎると、グループの共通の話題がなくなってしまいます。そこで宮武さんが考えるのが、AIネイティブ版のInstagramストーリーズです。
たとえば友達グループが1週間に撮った写真や動画を、AIが毎週日曜に集めてハイライト動画にまとめます。複数のパターンを作ったり、テーマを提案したりすることも考えられるといいます。
そもそも、全部の写真が選ばれないので。そのAIに選ばれるような写真を作り出すっていう。
5人や10人のグループなら全員の写真は入らないため、AIに選ばれること自体がステータスになります。宮武さんは、仲間内のハイライト動画を作るStudioのような会社がすでにこうした方向を考えていると紹介しました。
Instagramは「写真アプリ」ではなかった
SNSの進化について、宮武さんはInstagramのリールズへのシフトを例に挙げます。本当のプロダクトは写真なのにと批判する人がいましたが、そもそもInstagramは写真のフィルターアプリから始まり、写真アプリ、SNSへと進化してきました。
2013年に15秒動画を発表した際、ケビンさんはInstagramのコアはビジュアルだと語り、動画は当然の次のステップだと話していたそうです。
Twitterも英語圏で140文字の制限があり、Instagramも最初は正方形の画像だけ、Facebookは大学限定でした。宮武さんは、コアのアイデアを抱えながらプロダクトを進化させることが重要だと話します。
草野さんは「機能の変化は過小評価されがち」と応じ、Snapchatのパクリと言われたストーリーズも結局使われていると振り返ります。
Facebookのコアはコミュニティのための場所で、今いちばん人気の機能であるグループとマーケットプレイスもそこに当てはまると宮武さんは説明します。特にマーケットプレイスは、米国ではとても人気だそうです。
SNSのインキュベーターとしてのFacebook
批判されがちなFacebookですが、宮武さんはSNS業界に大きく貢献したインキュベーターだと評価します。A/Bテストを回して科学的にグロースさせるという、SNSのプロダクト開発の考え方の根本は、Facebookから来ているといいます。
Facebookって結局そのゼロイチがすごい困ったりするんですけど、そのプロダクトを1から100に成長させるのはめちゃくちゃうまいっていう。
ケビンさんも、Facebookに買収されるまでグロースのインサイトはまったくなかったと語っていたそうです。草野さんは「いい買収先だったのかもしれない」と話し、宮武さんも両方にとってよかったと応じました。
「楽しい」の次に「評価されたい」をどう作るか
最近のSNSがなぜうまくいかないのかを考えるため、宮武さんは自身のフレームワークを紹介します。SNSには大きく2つのフェーズがあるという見方です。
フェーズ1: 楽しい
みんなでやるから面白い体験が生まれ、最初のバズが起きる
フェーズ2: ステータス
ネットワークの中で評価され、それを見せたいと思える仕組みができる
フェーズ1の例は、Facebookの大学ネットワーク時代や、猫やランチの投稿が中心だった初期のTwitterです。生き残れるSNSは、次のステータスのフェーズに進めるかどうかで決まるといいます。
ステータスの最もわかりやすい例はフォロワー数です。宮武さんは、BeRealはまだこのフェーズに進めていないと見ています。楽しい時間を投稿するだけで、プラットフォーム上で誰がより評価されているかという比較がないためです。
(ステータス作りは)いわゆるその評価されたいっていうのをいかに作るかっていうところですね。
ステータスはプラットフォームが評価する形もユーザー同士で評価する形もあり、Snapchatではストリークがその役割を担っています。ユーザー同士で作るステータスについては、Twitterがなぜコピーされにくいかとあわせて翌週に話す予定だそうです。
ケビンさんがInstagramでいちばん後悔しているのは、インフルエンサーという概念が生まれたことだといいます。それでも宮武さんは、その概念がなければInstagramは成立しなかったのではと考えています。
宮武さんは実際にSNS企業にアドバイスするとき、今どちらのフェーズにいて、ステータスをどう作ろうとしているかを必ず聞くそうです。
なぜ人間はステータスを求めるのか
草野さんの「なぜ人はそんなにステータスが欲しいのか」という問いに、宮武さんは以前番組で取り上げたルネ・ジラール ── フランス出身の思想家。人は他者の欲望を模倣して欲しがるという「模倣的欲望」の理論で知られ、シリコンバレーでも参照されますさんの話につながると答えます。人はどうしても比較し、ロールモデルを持ってしまうからです。
イケてるっていうのが分かりやすくなるっていうのがステータスだと思うんですよね。
フォロワー数のような数字だけでなく、運営がユーザーをストーリーズでフィーチャーするのもステータスです。選ばれたいからこそ、みんなが投稿するようになります。
ここをいかに理解するかっていうのが、すごい多分ソーシャルアプリにとって重要なことで、ただ楽しい時間ではないっていう。ちょっと悲しい話ですけど。
草野さんも、ソーシャルやコンシューマー向けサービスには人間の欲望が深く関わっていると応じます。翌週は、Twitterを題材にした指標や具体的なTipsの話が続く予定です。
まとめ
この回では、Instagram創業者によるArtifactを手がかりに、次世代SNSの作り方が語られました。友達ではなく興味でつなぐ推薦、幸福度という新しい指標、AIによるエンゲージメント、そしてコアを保った進化とステータス設計が、AI時代のSNSを考える軸として示されています。
- Artifactは「友達が好きなものを自分も好き」という従来の仮説を疑い、行動データからその人が本当に好きなものを推薦する
- ニュースは毎日供給され、分類しやすく、パブリッシャーを選べば品質も担保できるため、SNS化の入り口に選ばれた
- エンゲージメントではなく人の幸せをどう測るか、Artifactはまだ答えを出さずに模索している
- Instagramはフィルターアプリから動画まで、コアを捨てずに機能を変えることで生き残ってきた
- SNSが生き残るには「楽しい」の次に「評価されたい」というステータスの仕組みが必要だと宮武さんは考えている





