Clubhouseはなぜ急に日本へ広がったのか
招待制の音声アプリClubhouseが、収録の前の週あたりから日本のスタートアップ界隈で一気に盛り上がりました。草野さん自身も、この時期に招待枠が増えた一人です。
宮武さんは、Clubhouseが日本に広がった理由を2つ挙げます。1つは、招待券の手に入れ方をTwitterで公開する人が現れたことです。日本人はまだ招待券をあまり持っていない一方、海外には30件ほど持っている人もいて、DMを送ると意外と普通にもらえたといいます。
もう1つは、もともとサンフランシスコにいた人たちが日本人に招待券を渡し、そこから日本のテック業界で一気に広がったという流れです。
(サンフランシスコにいた人たちが)日本人とかに招待券を渡して、それが徐々に日本に来て。で、一気にテック業界の中で広がり始めたっていう感じだと思いますね。
草野さんは、去年からClubhouseに入ってはいたものの、一緒に話す人やオーディエンスがまだ少なかったと振り返ります。日本のユーザーがやっと増えてきたことで、わっと盛り上がったという見方です。
宮武さんによると、Clubhouseでは誰から招待枠をもらったかがすべて表示されます。招待の連鎖をたどっていくと、日本のユーザーが最終的にどこから来たのかが見えるそうで、宮武さんは冗談めかして「ソース元のストーキング」を勧めていました。
Off Topicとしても、毎週月曜日の夜9時にClubhouseで話す場を持ちたいと話しています。YouTubeやnoteは解説寄り、Instagramはプロダクト紹介寄りなので、Clubhouseではもう少しニュース寄りの話をする想定です。あわせて、YouTubeでメタバースの解説動画など独自コンテンツを出し始めたことも告知されました。
ユーザー数が2週間で倍増、資金調達もタウンホールで発表
収録日には、Clubhouseの資金調達が正式に発表されました。社長のポールさんは、まずClubhouse内の「タウンホール」で発表し、その後に会社のプレスリリースが出ています。今回のラウンドをリードしたアンドリーセン・ホロウィッツ ── シリコンバレーを代表するベンチャーキャピタル。略称a16z。Clubhouseの初期ラウンドにも投資していましたも、投資の考えを説明するメモを出しました。
タウンホールは、ユーザーを集めてフィードバックを受ける場です。宮武さんは、調達をユーザーの前でまず発表するやり方を「Clubhouseっぽい」「ポールさんっぽい」と評しています。
(ポールさんは)ユーザーと一緒にそういう話をするみたいな感じの方が、なんか彼らしいなと思いましたね。
草野さんも、創業者自らがオンボーディングを担っていることや、使っているユーザーに最初に調達を伝えることを高く評価し、今のコミュニティ型スタートアップらしい振る舞いだと話しました。
宮武さんが紹介したClubhouseのユーザー数の推移は、伸びの速さをよく表しています。
宮武さんによれば、最近は日本を含む海外での広がりが大きく、ドイツやアフリカでも利用が伸びています。ナイジェリアではアプリランキング1位になったこともあったそうです。
何時間も抜けられない会話は欠点か、魅力か
草野さんは、Clubhouseは滞在時間が長く疲れるという声に触れ、物珍しさで始めた人がどれだけリピートするかが論点だと問いかけます。草野さん自身、宮武さんがClubhouseでD2Cの話をした部屋にいたとき、ほとんど話していないのに疲れたといいます。
(Clubhouseは)抜けるタイミングが本当にわからないのと、普通に聞いててとても面白いので、やっぱ聞いちゃうんですけど、気づいたら5時間、6時間みたいな。
宮武さんは、抜けられないほどの長さこそがClubhouseの素晴らしさだと答えます。決まったコンテンツではなく、ニュアンスのある複雑な会話がカジュアルな場で広がっていくことが重要だという考えです。
宮武さんによると、Clubhouseでは眠くなる人がとても多いそうです。前日も日本の人たちと夜中の1時ごろまで話していて、寝落ちしそうだという声が出ていました。ずっと話していないモデレーターが、気づいたら寝ていたこともあるといいます。
宮武さんは、Clubhouseの体験を「大学時代の気持ちに戻る」と表現するVCが多いことも紹介します。友達と人生や恋愛やくだらないことを延々と話し、気づいたら朝の6時になっていた、あの夜の会話です。
今までのSNSと比べて圧倒的にソーシャルな場所っていうのがClubhouseの強みかなと思いますね。
Clubhouseでは、そうした会話を友達とだけでなく、友達の友達や初めて会う人ともできます。宮武さんは、これを今までにないソーシャルな体験だと位置づけています。
匿名ではない声と、その場にいた人だけが聞ける会話
草野さんは、ダブルの井口さんが「アメリカにはポジティブなソーシャルサービスがあまりなく、Clubhouseは意外と稀な存在だ」と話していたのを思い出します。宮武さんも同じような話をしていたと応じました。
宮武さんは、Secret ── 2014年ごろに人気を集めた匿名の投稿アプリ。友人関係の中で匿名の打ち明け話ができる仕組みでしたやWhisperなどの匿名アプリと比べ、Clubhouseが基本的に匿名ではないことを重要視します。本人の声で話すからこそ親近感やリアルさが生まれ、裏に実在の人がいるとわかるので変なことを言いにくくなる、という見方です。
草野さんは、ポッドキャストを続けてきた立場から、音声には記事に出せない人となりが表れると話します。そのうえで、ポッドキャストとClubhouseの違いにも触れました。
Clubhouseだと、そこにいなくちゃ聞けないことっていうことが(重要なポイントで)、多少音声が悪くても聞いちゃうっていうのは、なんか今までなかったなって思いました。
宮武さんは、この違いをステータスの概念と結びつけます。今はお金ではなくアクセスがステータスになっていて、その会話に入っていたかどうか自体に価値が生まれるという考えです。
いつでも聞けるため他の番組と比べられ、音質などコンテンツとしての質が問われる。後から聞けるので、知っているかどうかはステータスになりにくい
一度きりの会話で、その場にいないと聞けない。多少音声が悪くても聞かれ、会話に居合わせたこと自体がステータスになる
(ポッドキャストだと)後々聞くみたいな。そうすると何か情報知ってる、知ってないがステータスにならないっていうか。
カンファレンスに近い使われ方と、モデレーターの役割
草野さんは、日本のスタートアップ業界でのClubhouseの使われ方は、カンファレンスに近いのではないかと話します。Instagramのライブ配信をしている層とは、雰囲気が違うという感覚です。
宮武さんは、今の日本のユースケースがIVSやB Dash Campのようなカンファレンスに聞こえるという声に同意しつつ、部屋の設定次第ではその後の懇親会のような場にもなると話します。どちらになるかは、部屋の設定とモデレーターのスキルで変わるという見方です。
(モデレーターは)めちゃくちゃ重要ですね。やっぱClubhouseがモデレーターにお金を払うほど、やっぱ重要な存在ではあるので。
ただし、Clubhouseのモデレーターはカンファレンスの司会とは役割が違う、という点で二人の意見は一致しました。草野さんは、話をきっちり仕切るよりも、間ができたときに誰かに話を振る役割だと説明します。宮武さんは、面白い話をしてくれそうな人を部屋に招待することも挙げ、草野さんはそのための人脈も重要だと付け加えました。
宮武さんは今後の課題として、DMができないことや、Clubhouse上のクリエイターをどう育て、どう稼げるようにするかを挙げます。ここで言うマネタイズは、Clubhouse自身の収益ではなく、Clubhouseがクリエイターに稼がせる仕組みのことです。
それでも宮武さんは、アメリカでは半年以上前から熱量の高いネットワークになっていて、Clubhouse経由でコミュニティや出会いや新しいビジネスが生まれていると話します。Clubhouse上でVCから資金調達を受けたスタートアップもあるそうです。
草野さんは、日本のClubhouseを聞いていて、一番のユースケースは起業家よりもクリエイターだと感じたといいます。Clubhouseは自分のコミュニティを作るためのツールだという見方です。
宮武さんは、午前中にメルマガを配信し、午後にその内容をClubhouseで議論するような場が生まれそうだと話しました。草野さんも、音声配信をしてきたOff Topicとは相性がよさそうだと応じています。
Genevaに見る、ブランドが作るコミュニティ
話題はClubhouse以外のコミュニティ型スタートアップに移ります。草野さんは、クリエイティブエージェンシーGin Lane ── ニューヨークを拠点にD2Cブランドのブランディングを数多く手がけたクリエイティブエージェンシー。のちに事業を転換しましたの元メンバーが作ったコミュニティアプリGenevaを使ってみた感想を話します。
(Genevaは)結構ほぼほぼSlackだなっていう印象あって。でもやっぱアプリが綺麗なんですよね。
草野さんによると、Genevaはイベント作成や音声など機能が多く、コミュニティ運営で痒いところに手が届くサービスです。宮武さんは、Genevaは大まかなコミュニティ向けというより、ブランドが作るコミュニティ、特にD2C向けのサービスだと見ています。
宮武さんは、Genevaの創業メンバーと話したことがあり、今後の展開はSlackやDiscordやChalk ── コミュニティ向けのチャット系サービスの一つとして、この回で名前が挙がったアプリとは違う方向を考えているといいます。今後はよりブランド向けの展開になるだろうという見立てです。
具体例として宮武さんが挙げたのが、Z世代向けのスキンケアブランドBubbleです。宮武さんは、Bubbleを「Z世代のGlossier」のようなブランドだと説明します。Bubbleは商品を作る前に、Geneva上でコミュニティを作っていました。
宮武さんがGenevaの担当者に頼んでBubbleのコミュニティを覗いたところ、話題はスキンケアに限られていませんでした。部屋がたくさんあり、セラピストを呼んだQ&Aも開かれていて、Z世代のライフスタイル全般の相談コミュニティになっていたそうです。
本当にそのプロダクトだけ話したら、ただのプロモーションだなみたいな感じるので。
宮武さんは、Z世代はインクルーシブなコミュニティを好み、なぜそのコミュニティにいるべきかを考える人たちだと話します。だからこそ、商品だけでなく情報やライフスタイル全体でつながりを作ることが重要になるという見方です。草野さんも、パターンのグループで音楽や趣味のチャンネルの中に企業ニュースが混ざっている見せ方を評価していました。
Monetのコミュニティは、なぜ出会い系アプリを超えたのか
宮武さんが次に挙げたのは、以前Off TopicのInstagramでも紹介した出会い系アプリMonetです。MonetはTikTokで大きく伸びてユーザーを集め、Discordにもコミュニティを持っています。宮武さんは、投資を見送ったことを少し後悔するかもしれないとも話していました。
Monetのコンセプトは、メッセージの代わりに絵を描いて送ることです。草野さんは、スマホで描くと誰でも下手で緩い絵になるので、自然とカジュアルなやり取りが生まれる点がいいと話します。
絵がどんなにうまい人でもすごい緩い変な絵になっちゃうんで、なんかすごい自然とカジュアルなコミュニケーションができるなっていう。
宮武さんが面白いと感じたのは、MonetのDiscordで実際に起きていることです。誰かからもらった絵を共有する場になると思われがちですが、実際にはユーザーが自分の描いた絵をどんどん披露し、送らない絵も含めて面白い絵を描く場所になっているといいます。
宮武さんは、若い世代ほどクリエイティビティを求め、コンテンツを作りたい人が増えていると見ています。MonetのDiscordでは最近みんなでゲームをするようにもなり、そこで仲良くなった人がセントルイスからLAまで飛んで会ったこともあったそうです。
絵を描く
Monetのコンセプトに沿って、ユーザーが絵を描く
Discordで披露する
送る相手のいない絵も含め、自分の絵を共有する
一緒に遊ぶ
コミュニティ内でゲームを始め、友達になる
実際に会う
アプリではなくDiscordで出会った人同士が、現実で会う
Discordはゲームだけのツールなのか
草野さんは、日本でもAmong Usの流行とともにDiscordを使う話を聞くようになったと話し、Discordはゲーム用なのか、それともコミュニケーションツールの一つになっているのかを尋ねます。
宮武さんは、Discordはすでにコミュニケーションツールであり、日本の若い層もそうだと答えます。数年前にZ世代がFaceTimeで話していたように、Discordがやり取りの場になっているという見方です。日本の実態は正直わからないとしつつ、アプリランキングの上位10位に入っている以上、ゲームだけではない気がすると話しました。
本当にそこのコミュニケーションレイヤーとしてDiscordって本当に使われ始めてるかなと思いますね。
宮武さんは、コミュニティのあり方そのものも変わってきていると続けます。
ブランドがコミュニティを作り、人が集まってコンテンツを作ったりマネタイズしたりしていた
個人のクリエイターがオーディエンスやコミュニティを作るケースが増えていく
宮武さんは、どちらのやり方も正解だとしたうえで、コミュニティを最初に作ることがどんどん重要になっていると話します。コミュニティファーストで会社を作る流れです。
コミュニティ疲れの先にある「バンドル化」とは
ここで草野さんが、コミュニティのバンドル化はあり得るかと問いかけます。Discordを使う人は複数のサーバーに入り、ClubhouseもDiscordも他のサービスも使うと疲れるので、1つか2つに絞られていくのではないかという問題意識です。
宮武さんは、コミュニティが多すぎる状態は絶対に出てくると話します。宮武さん自身もたくさんのSlackコミュニティに入っていて、通知が来ても見ないコミュニティがすでに出てきているそうです。理由は投稿量の多さではなく、自分にとってためになるかどうかだといいます。
結構そのいいコミュニティを作るには、結構カテゴリ絞らないといけないと思っていて。
宮武さんは、カテゴリの絞り方として、デザイナーだけ、PMだけといった役職や、D2Cの中でも飲食系だけといったトピックを例に挙げます。草野さんは、Shopifyの話だけするコミュニティもあり得ると応じました。
ただ、絞り込まれたコミュニティにたくさん入ると、人は自然と優先順位をつけます。宮武さんはPMではないので、PM向けのLennyさんのコミュニティは最近あまり見ていない一方、Z世代向けVCのコミュニティは必ず見ているそうです。
(コミュニティのバンドル化は)できたらすごい面白いなって思いました。
宮武さんは、需要はあるものの、解決策を作っている人はいない気がすると話します。草野さんは、Substackのようなメルマガなら1対1のやり取りではないのでバンドルしやすいが、コミュニティは複雑なので難しそうだと指摘しました。そのうえで、有名なPM同士のコミュニティが合わさって対談するような形ならあり得るかもしれないと考えます。
宮武さんは、まずメルマガを1つに束ね、そこから徐々に大きなコミュニティにまとめる方法を挙げました。
コミュニティのバンドル化は「買収」なのか
草野さんは、コミュニティのバンドル化とは結局は買収なのかもしれないと言います。熱量の高いコミュニティにお金を出して仲間にするという形で、対等な統合は難しいのかもしれないという見方です。
宮武さんによると、大手テック企業はそれぞれ違う買収戦略を持っています。AppleやSnapchatの買収戦略を調べている宮武さんは、コミュニティを買う戦略を取っているのはMicrosoftだと話します。
マインクラフト、GitHub、なんかいろいろ考えるとめちゃくちゃコミュニティ買ってるなっていうのは思いますね。
宮武さんは、LinkedInも同じ流れにあると付け加えます。大きなコミュニティになれば、Microsoftに買収される可能性も十分あるという話です。
草野さんは別の可能性として、Substackで有名なメルマガのグループがClubhouseと組み、「ここでしか喋りません」という公式の場を作る形を挙げます。宮武さんは、Spotifyがジョー・ローガンの番組を独占契約したような形だとたとえました。
宮武さんは、AppleやAmazonが手を出す可能性にも触れます。Appleはサブスクでニュースを届けているので、Substackを買収すればApple Oneのプロダクトの中にSubstackが入る形もあり得そうだという見立てです。
| 主体 | 形 | 挙がった例・発想 |
|---|---|---|
| Microsoft | コミュニティごと買収する | Minecraft、GitHub、LinkedIn |
| Clubhouse | 有名メルマガと組んで独占の場を作る | Spotifyの独占配信契約のような形 |
| Apple | サブスクにメルマガを組み込む | Substackを買収してApple Oneに入れる |
番組の最後には、毎週月曜日の夜9時にClubhouseでもニュースの話をしていることが改めて告知されました。
まとめ
Clubhouseの急拡大をきっかけに、この回は「熱量のあるコミュニティをどう作るか」と「コミュニティが増えすぎた先に何が起きるか」を語っています。Clubhouseの長い会話、BubbleやMonetのコミュニティ、コミュニティのバンドル化と買収の話は、いずれもコミュニティを最初に作ることの重要さにつながっています。
- Clubhouseは匿名ではない声と、その場にいないと聞けない一度きりの会話によって、居合わせたこと自体がステータスになる場を作っている
- Clubhouseのモデレーターは司会ではなく、間を埋め、面白い人を招く役割が重要だと話されている
- BubbleやMonetの例では、商品の話に閉じずライフスタイルや創作でつながるコミュニティが熱量を生んでいる
- Discordはゲームに限らないコミュニケーションの場になりつつあり、コミュニティファーストの流れが強まっている
- コミュニティ疲れの解決策としてのバンドル化はまだ無く、メルマガの統合や大手企業による買収がその形になる可能性がある




