元VinerがByteを買収?ClashとByteの逆転した関係
ショート動画アプリの最近のニュースとして、草野さんがまず挙げたのは買収の話です。Vineの創業者が作った動画アプリ「Byte」が、元Vineのクリエイターが創業したサービス「Clash」に買収されることになりました。
草野さんは、この買収を「Byteを救った」ように見えると受け止めています。宮武さんも、Vineに関わった人たちがいろいろ戻ってきたようで、構図がちょっと複雑だと話しています。
宮武さんによると、ユーザー数ではByteが圧倒的に上です。去年の夏ごろにTikTokが禁止されるかもしれないというニュースが流れ、その影響でByteのダウンロード数が大きく伸びたといいます。
ちょっと今どれだけアクティブ数がいるかわかんないんですけど、一応聞いてる話だと(Byteの)登録者数は450万人いるんですよ。
それと比べるとClashって多分50万人ぐらいしかいないんですよ。
ClashとByteの関係で面白いのは、買収した側のClashのアプリがアプリストアから消え、すべてByteに統合される点です。宮武さんは「アプリはByteに吸収されるが、会社としては逆」と説明しています。
さらにClashは、Redditの創業メンバーであるアレクシスさんのSeven Seven Six ── Redditの共同創業者アレクシス・オハニアン氏が立ち上げたベンチャーキャピタル。創業期のスタートアップへの投資を手がけていますからの資金調達も発表しました。
宮武さんの説明では、Clashはクリエイター向けのツールや収益化の機能が強く、すでに投げ銭やサブスクができます。その仕組みを、ユーザーの多いByteにそのまま持ち込む狙いだと考えられています。
投げ銭やサブスクなど、クリエイターの収益化ツールと新たな資金。アプリ自体はストアから消える
TikTok禁止騒動で増えたユーザー基盤。統合後のアプリとして残る
クリエイター収益化の難しさと、Byteにいる意味
草野さんは、VineがTwitterに買収されてサービス終了したあと、元創業者がVineによく似たByteを作り、それを元Vinerが買収したという流れを「ちょっと感動的」と話します。クリエイターが起業家になったケースとしても面白いと感じたそうです。
一方で草野さんは、クリエイターの収益化そのものは難しそうだという第一印象も語っています。TikTokも収益化に取り組んでいますが、サブスクなどの形がうまくいくかは見えにくいという受け止めです。
宮武さんは、TikTokやInstagram、Snapchatのスポットライト、Clubhouseなど、多くのプラットフォームがクリエイターに金銭的なインセンティブをどう渡すかに注力していると指摘します。Clashもその前提で作られているので、そこは面白いと話しています。
ただし宮武さんは、ユーザーがわざわざByteにいる意味がどこにあるのかには疑問を示しました。TikTokと違う属性のユーザーがいるのか、まったく違う使い方が生まれているのかが見えないからです。
草野さんの印象では、ByteはVineのクリエイターがそのまま移ってきた場所で、TikTokらしいダンス動画は少なく、ミームやコントっぽい面白系の動画が多いといいます。宮武さんはそれを「(TikTokを)砕いたバージョン」と表現しています。
(面白系の動画はTikTokにもあるので)結果として新しい何かの需要を埋めてるのかって言われると、正直まだまだ見えてないっていうところかなと思います。
快手の上場が示す中国ショート動画市場の大きさ
次の話題は、中国の人気ショート動画アプリ「快手(クアイショウ)」の上場です。宮武さんによると、快手の株価は初日に一時3倍になり、その後少し下がったものの、時価総額は160ビリオンドル(約16兆円)ほどになりました。
宮武さんが注目するのは、快手がまだ赤字企業でありながら、売上が大きく伸びている点です。同じ売上マルチプル ── 企業価値を売上高の何倍で評価するかを示す指標。成長企業の価値を比べる際によく使われますをByteDanceに当てはめると、ByteDanceの時価総額は600ビリオンドルほどになる計算だといいます。
ByteDance自体は、2020年の売上が37ビリオンドルで、7ビリオンドルの黒字を出しているそうです。快手も、もうすぐ8億MAUに届く見込みで、デイリーアクティブユーザーの平均滞在時間は85分と高めです。
宮武さんは、快手とドウイン ── TikTokを運営するByteDanceが中国国内で提供するショート動画アプリ。中国語表記は「抖音」ですの違いにも触れます。快手は地方のユーザーが多く、農家のおじいちゃんおばあちゃんも使っているのに対し、ドウインは都会のイメージが強いそうです。両者はいま互いのユーザーを取り合っているといいます。
快手の関連会社は、一時期アメリカにも進出していました。宮武さんによると、TikTokのライト版のようなアプリで大量に広告を出し、フィードで動画を見るだけでユーザーにお金がもらえる仕組みだったそうです。
(動画を見るとお金がもらえるのは)エンゲージメントとユーザーを増やしたいっていう、それだけなんですよ。
このアプリは一時期USのアプリランキングで上位に入ったものの、ドウインから引っ張った動画も多く、結局そこまで伸びなかったといいます。草野さんは「すごいグロース施策」と驚き、宮武さんは「怖いですよね」と返しています。
YouTube Shortsは使うべき?「縦型ショートに強いクリエイター」という考え方
YouTube Shortsは去年末ごろにリリースされ、この回の時点ではアメリカで正式リリースされていません。それでも日本やアメリカで使う人が増えていて、特にインドで大きく伸びていると宮武さんは話します。
インドってそもそもTikTok BANしてるので。だからこそYouTubeが入る余地がすごいあって。(YouTube)Shorts自体が1日35億再生回数いってるんですよ、今。
草野さんは、Clubhouseで日本のTikTokerたちが話していた部屋の内容を紹介します。そこでの結論は、YouTube Shortsは「見られる」ので使わない手はない、というものでした。
その部屋では、YouTubeの横型動画と縦型のショート動画は戦い方が違うので、TikTokerは縦型のショートムービーに強いクリエイターと捉えるべきだという話が出ていたそうです。YouTube Shorts、リール、TikTokのすべてに上げ続ければ、どれかは必ずバズるという考え方です。
草野さん自身も、YouTube Shortsを見ているとTikTok出身の作り手が多く、動画のクオリティはTikTokerのほうが高いと感じているといいます。
宮武さんは、YouTube ShortsがYouTube内での発見(ディスカバリー)につながると見ています。ホームフィードにもShortsが入り始めていて、YouTubeが最終的にTikTokを意識していることがわかるとも話しています。
宮武さんはさらに、YouTubeがクリエイターへの支払いをきちんとしている会社であることを強調します。広告費用も含めて、ここ数年でクリエイターに支払総額を払っているといい、草野さんはYouTubeを「クリエイターエコノミーを作っているプラットフォームの一つ」と表現しています。
1分以内の動画を上げるYouTuberと、David Dobrikの動画の作り方
宮武さんは、YouTubeはShortsを別アプリにはせず、日本でもアメリカでも強く押してくると見ています。実際にアメリカでは、1分以内のとても短い動画をあえてYouTubeチャンネルに大量に上げるYouTuberも出てきました。
普通のYouTube動画は5分から10分ほどが多いので、1分以内の動画はかなり異例です。宮武さんによると、こうした短い動画には広告がつかず、目的はチャンネル登録者を増やすことだといいます。
宮武さんは、アメリカの人気YouTuberの動画はもともと短い場面の積み重ねだと指摘します。特にDavid Dobrik ── アメリカの人気YouTuber。短いカットを高速でつなぐVlogスタイルで知られ、Vine出身のクリエイターでもありますさんの動画は、10秒ほどのとても短いカットを大量につなぎ合わせて作られています。
David Dobrikさんの動画は、いろいろなランダムなイベントを撮った中から、本当に良い場面だけを並べたものです。冒頭が誕生日のシーンでも、2分後にはまったく別の日の別の話をしていることがあるといいます。
彼の人生の面白い部分を、ちょい覗きをいっぱいできるみたいな。いろんなアングルからみたいな感じなんで。
宮武さんは、こうした作り方がTikTokっぽいからこそ、アメリカのYouTuberはTikTokやShorts、スポットライトに動画を上げやすいと話します。すでに数秒で注目を取れる場面を作っているので、その部分だけShortsに上げても人気になるのです。MrBeastさんも「MrBeast Shorts」という別チャンネルを作っています。
草野さんは、TikTokerがYouTubeを始めるとき、1分や30秒の動画を5分にすると別物になって厳しいという声を紹介しました。そのうえで、5分ほどの動画を作ってからTikTok用に1分へ切り出す「逆算」の作り方もあるのでは、と提案しています。
宮武さんは、長い動画の作り方にもいろいろなスタイルがあると説明します。MrBeastさんは結果がわかっている結末へうまくビルドアップしていく「ジェンガ式」です。David Dobrikさんは、サムネイルとタイトルが最初のシーンだけで、その後はまったく違う展開になるのに、面白すぎて見てしまう作りだといいます。
最後の結果がわかっている状態で、そこへ向けてうまくビルドアップしていくジェンガ式
サムネイルとタイトルは最初のシーンだけ。短いカットを重ね、大きな浮き沈みを間々に挟む
すごいランダムに見えるんですけど、あえて多分ランダムじゃなくて。そこの作り方がめちゃくちゃ計算されてるなって思いましたね。
Snapchat Spotlightとは?MAU1億人とウォーターマーク対策
続いて話題はSnapchatのスポットライトに移ります。スポットライトはTikTokを意識したSnapchatの機能で、Snapchatの決算発表では、スポットライトのMAUが1億人に達したと発表されました。
宮武さんは、SnapchatがあえてMAUを出したことを不思議に思っています。Snapchatは通常DAUを発表していて、アプリ全体では2.6億人ほどのDAUがいます。宮武さんは、スポットライトのDAUは上がったり下がったりしているのかもしれないと推測しています。
スポットライトの中身は、基本的にユーザーの投稿だけです。友達向けではなくパブリックに動画を出せ、Snapchatで撮った動画でなくてもかまいません。宮武さんは、InstagramのリールとまったくU同じ仕組みだと説明しています。
ただしSnapchatは、TikTokのウォーターマーク ── 動画に重ねて表示されるロゴやIDなどの透かし。TikTokから保存した動画には、TikTokのロゴが入りますが入った動画のアップロードを認めていません。そのため、TikTokの動画をウォーターマークなしでダウンロードしてから上げる人たちもいるといいます。
1日1億円をばらまくSnapchat Spotlightの施策はスターを生むか
宮武さんによると、スポットライトのユーザー数が伸びている理由の一つは、Snapchatがクリエイターに1日1億円を出していることです。その日に最もエンゲージメントが高かった動画の投稿者に、3000万円、500万円、30万円など幅広い額が配られています。
実際にDavid Dobrikさんも一度受け取ったほか、多くのTikTokクリエイターが稼いでいます。チャーリー・ディアメリオほど有名ではないクリエイターが、過去と現在のTikTok動画を毎日上げ続け、3〜4週間で3億円ほど稼いだ例もあるそうです。
宮武さんによると、スポットライトはまだ新しく、日によって投稿の多さが違うため、同じ動画を毎日投稿してもパフォーマンスが大きく変わるといいます。草野さんは、クリエイターにとって「今使うべき」タイミングだと反応しました。
支払いまでの流れについて、宮武さんは1月初めごろに聞いた話として次のように説明しています。
宮武さんがClubhouseでTikTokerたちと話していたとき、その場であるTikTokerにSnapchatからDMが届き、3000万円もらったと話していたそうです。TikTokに上げた動画と同じものを出しただけ、というケースも珍しくないといいます。
宮武さんは、この施策を「すごいパワープレー」と評します。TikTokのクリエイターファンドは選ばれたクリエイターしか受け取れませんが、スポットライトは誰でもバズればお金がもらえる仕組みです。
一方で宮武さんは、お金だけで人を集めている点に課題があると話します。スポットライトらしい動画もまだなく、スポットライト発のスターも生まれていません。
TikTokが強すぎる理由はアルゴリズムと編集ツール
草野さんは、TikTokという大きなアプリがある以上、スポットライト発のスターは生まれにくいと話します。スポットライトで人気が出ても、TikTokやリールにも動画を出したくなるからです。
宮武さんは、TikTokがスターの生まれ方そのものを変えたと指摘します。昔はソーシャルグラフ ── SNS上の友達やフォロー関係のつながり。誰とつながっているかによって、情報の広がり方が決まりますを通じてスターが生まれていましたが、TikTokはFYPのアルゴリズムによって、毎日のように新しいスターを生み出しています。
ソーシャルグラフ(つながり)を使って、スターが生まれていた
TikTokのFYPのアルゴリズムで、毎日のように新しいスターが出てくる
宮武さんはその例として、ディズニーチャンネルなどに出ていたオリビア・ロドリゴさんの名前を挙げ、音楽のセンスで大ヒット曲を出したと話しています。常に新しい人が生まれる仕組みは、他のプラットフォームでは今は真似できないといいます。
草野さんは、TikTokの制作ツールが「最強すぎる」点も強みだと話します。リールの編集ツールは微妙で、YouTube Shortsには制作ツールがほぼありません。TikTokはアプリ内で編集でき、より高品質な編集ツールも別に出しています。
宮武さんも、Instagramのトップであるアダムさんが「リールはまだTikTokのレベルに行っていない」と認めていたことを紹介しました。草野さんは、InstagramやSnapchatは編集アプリを買収したほうがいいと提案します。宮武さんも、SnapchatがなぜTrashを買収しなかったのか不思議だと話しています。
全部のプラットフォームでTikTokの転載になってしまうっていう事態から抜け出さないと難しそうだなっていうふうに思いますね。
YouTube Shortsは本体とつなげるべきか?後発プラットフォームの立ち位置
宮武さんは、後発のショート動画機能が既存のサービスとどうつながるかは、プラットフォームによって違うと話します。InstagramとSnapchatは、置かれた状況がはっきり分かれています。
既存のプラットフォームとつなげられる。アルゴリズムがリールを押していて、リールを出すとアカウント全体のエンゲージメント率が上がるという話もある
そもそもコミュニケーションツールなので既存機能とはつなげにくく、スポットライト単体で勝負するしかない
YouTube Shortsについて、草野さんは「チャンネル登録者数が伸びることにつながるのでは」と考えます。これに対し宮武さんは、Shortsをどういう切り口にするか次第だと答えました。
ただ、完全別コンテンツを(YouTube)Shortsに出した場合って、それってどこにつながるんでしたっけ?っていう、チャンネル登録につながるのか、それってShortsの登録につながるのか。
YouTuberが自分の動画を切り取ってShortsに出すなら、本体のチャンネルにつなげられます。現時点では登録も同じですが、宮武さんは、YouTubeがShortsを本体の一部にするのか、別でやるのか、何らかの形で連携させるのか、まだ戦略が見えていないと話しています。
最後に草野さんが「結局TikTokが強いという話ですか」と尋ねると、宮武さんは、汎用的なプラットフォームとしてはTikTokが圧倒的に強く、そのアルゴリズムに似たものを作れた会社はまだないと答えました。
そのうえで宮武さんは、スポーツやファッション、ビューティーなどの分野に特化した動画プラットフォームが次々に立ち上がっていると指摘します。そうした場所では、コミュニティが活性化したり、プラットフォームが伸びたりする可能性があると話しています。
まとめ
今回のOff Topicでは、ByteとClashの統合、快手の上場、YouTube Shorts、Snapchat Spotlightを通して、ショート動画市場の動きが語られました。後発のサービスはお金や既存サービスとの連携で追いかけていますが、アルゴリズムと編集ツールを持つTikTokの強さは、まだ揺らいでいないと考えられます。
- ClashはByteを買収したものの、アプリはByteに統合され、Clashの収益化ツールをByteに持ち込む形になる
- 快手は時価総額約16兆円で上場し、中国では地方に強い快手と都会に強いドウインがユーザーを取り合っている
- YouTube Shortsはインドを中心に1日35億回再生まで伸び、TikTokerは「縦型ショートに強いクリエイター」として活用する価値がある
- Snapchat Spotlightは1日1億円の配布でクリエイターを集めているが、お金が止まったあとに人が残るかは見えていない
- TikTokの強さはFYPのアルゴリズムと編集ツールにあり、後発勢は転載先から抜け出すことと既存サービスとの連携が課題になる




