なぜブラウザの歴史から互換性を考えるのか?
この回は、前回の続きとして始まります。前回のテーマはAIウェアラブルやAIデバイスで、ハードウェア側には周りの情報を集めて状況を理解する「コンテキスト認識」が必要だという話でした。
宮武さんは今回、そのソフトウェア側の話をします。AIのイノベーションが進むには、ソフトウェアの互換性をサービスとして提供する必要があるのではないか、という問題提起です。
さらに宮武さんは、前回のハードウェアと今回のソフトウェアを組み合わせることで、次世代のAIファーストのデバイスが生まれるのではないかと考えています。その前提として、まずブラウザの歴史から互換性の大切さを振り返ります。
MosaicやNetscapeなど初期のブラウザを開発していた人たちは、何を最適化するかで悩んでいたといいます。方向性は大きく2つありました。
サイトをより速くロードさせる。通信環境が遅かった当時、初期ユーザーや業界の多くが望んだ方向
誰でもサイトを簡単に作れるようにする。Netscapeが選んだ方向
宮武さんによると、通信が限られていた当時は、業界の多くの人がパフォーマンスを上げてほしいと考えていました。その逆を行ったのが、Netscapeとマーク・アンドリーセン ── 初期のWebブラウザMosaicの開発に関わり、Netscapeを共同創業した人物。現在はベンチャーキャピタルa16zの共同創業者として知られますマーカン・ドゥーシェンさんだったといいます。
Netscapeの判断の1つ目は、すべてのプロトコルとフォーマットをテキストベースにしたことです。もう1つの選択肢は、0と1で表すバイナリでした。
宮武さんは、テキストにしたことでHTTP ── Webページのデータをやりとりするための通信の取り決め。人が読める文字で書かれたやりとりが基本になっていますやHTML ── Webページの構造を記述する言語。見出しや段落、リンクなどを文字のタグで表しますという概念が生まれたと説明します。
当時は実は結構多くのエンジニアはそれ(テキスト化)を見て、「なぜバイナリにしないのか」と。
バイナリなら、限られた通信の中でも送る情報量を減らせます。パフォーマンスだけを見ればバイナリのほうが有利だった、というのが当時の批判の理屈でした。
Netscapeの判断の2つ目は、Webサイトのソースコードを誰でも見られるようにしたことです。これにも「頑張って作ったものをコピーされるのは嫌だ」という批判が多かったといいます。
それでも宮武さんは、テキスト化とソースコードの公開という2つの判断が、インターネットを広げる大きなきっかけになったと見ています。
「汚くても動く」HTMLが広げたもの
宮武さんによると、Netscapeの2つの判断は、1つの設計思想から生まれたものでした。それが「emit cautiously, interpret liberally」という考え方です。
(この言葉は)「慎重に排出してフレキシブルに読み取る」っていう、多分日本語で直訳するとそんな感じになるんですけど。
この思想の意味は、作る側と読む側で役割を分けることです。サイトを開発する人はできるだけクリーンなコードを書くべきですが、間違えても大丈夫なように、ブラウザ側は柔軟に読み取るべきだとされました。
宮武さんは子どもの例を挙げます。いろいろなサイトのソースコードを見て、パーツを自分のサイトにコピペして公開すると、見た目はボロボロでも、とりあえず動くといいます。
スラッシュとか、なんかブラケットとか、なんかそういうのを入れなくても、(ブラウザは)なんとか読み取ってくれるんですよ。
一方で、PythonやPerl、C++などのプログラミング言語は、基本的にすべてが完璧でないと動きません。スラッシュが1つずれるだけで、読み取ってもらえないこともあります。
汚くても動く。CSSがなくても、閉じ忘れがあっても、ブラウザが何かしら表示してくれる
すべてが完璧でないと動かない。スラッシュが1つずれるだけで読み取れない
宮武さんは、この考え方を生物学にもたとえます。人間の体の中も完璧ではなく、いろいろな間違いがあっても、全体としてはうまく働いています。
完璧を求めすぎますと何が起こるかというと、それができる人が限られてしまう。
完璧さを求めると、作れる人が減り、普及のスピードが落ちます。だからこそ、エラーに強い仕組みを作ることが大事で、それがブラウザにもともとあった意味での互換性だと宮武さんは説明します。
今のアプリ開発は、PythonやPerlのように完璧さが求められる世界に近いといいます。宮武さんは、AIコーディングツールで開発を速めるだけでなく、まったく違う形でAIを活かせるのではないかと考えています。
iOS版とAndroid版を別々に作らなくてよくなる?
宮武さんが挙げるAIの活かし方の例は、デバイスごとにアプリを作り分ける手間をなくすことです。今は、iOSのアプリとAndroidのアプリを別々に開発しなければなりません。
(iOSのアプリを)Androidで表示しようとすると、AIが勝手にそこで、Android携帯用に、その表示してくれる。
便利。
宮武さんによると、スタートアップの多くはまずiOSから始め、数ヶ月後、場合によっては数年後にAndroid版を出します。Androidは端末の画面サイズがさまざまで、すべてに対応するのが大変なうえ、完璧なコードでないと出せないからです。
例として挙がったのがSnapchatです。宮武さんの記憶では、Android版はiOS版の約1年後に出たものの、バグが多く、作り直しに1年半ほどかかってようやくiOS版と同じレベルになったといいます。
iOSの中でさえ、iPad版を作らない企業は多いといいます。草野さんは、小さい画面のままiPadで表示されるアプリを思い浮かべてうなずきます。
さらに、Apple Watch版やVision Pro版を出さないと判断する企業もあります。宮武さんは、AIが互換性を担えば、コードを書き直さなくても、デバイスに合わせてアプリを表示してくれるのではないかと話します。
表示をそのまま移すだけではありません。たとえばApple Watchは画面が小さいので、重要なボタンだけを出すといった調整も考えられます。宮武さんは、こうした判断を開発者だけでなくAI側が担う設計が、いずれ可能になると見ています。
デバイスはもう体験の中心ではない
宮武さんは、互換性がサービス化していく流れの重要なポイントとして、デバイスが今まで以上に体験の中心ではなくなっていることを挙げます。iPhoneはやや例外ですが、パソコンとテレビはすでにコモディティ化していると見ています。
パソコンの例では、多くのファイルはもうローカルに保存されていません。Googleドライブ、Dropbox、Boxなどのクラウドで管理し、ローカルに置いたファイルもiCloudなどでバックアップされています。
そのまあパソコン、デスクトップである必要がなくなりますよね。そこで作業する必要がないというか。
宮武さんは、昔はパソコンをなくすとファイルが全部なくなっていたと振り返ります。そこから、パソコン上の仕事が段階的にオンラインへ移っていったと整理します。
ローカル中心
ファイルはパソコンの中だけ。オンラインはメールやメディアの閲覧程度
クラウド保管
Googleドライブなどでファイルをオンラインに保存できるようになる
コラボレーション
FigmaやGoogle Docsで、オンライン上での共同作業が可能になる
デバイスは「箱」に
OSの重要性が下がり、デバイスはただの箱に近づく
では、本当のOSは何になるのか。宮武さんは、この問いを考えている企業がいくつかあるといいます。Slackはもともと仕事上のOSになりたかったと見られ、Slack上でさまざまなワークフローが動くようになっていました。
Microsoftも似た考えを持っていて、CEOのサティア・ナデラ ── 2014年からMicrosoftのCEOを務める人物。クラウド事業への転換を進めたことで知られますさんは「ブラウザを次のOSにしたい」と話していたといいます。
ブラウザをOSに変えるArcの狙いとは
「ブラウザをOSにする」という考え方から、宮武さんが思い出したのがThe Browser Companyです。同社はArc ── The Browser Companyが開発するWebブラウザ。タブの扱い方を大きく変えるなど、独自の操作体験を打ち出していますというブラウザを作っています。
二つ目のブラウザとしてたまに使ってます。なんかコマンドで切り替えたい時とか、あのChromeだけだとできないので。
宮武さんもArcを何度か試したものの、ワークフローを移しきれず、完全には切り替えられていないといいます。それでも、スピード面の良さに加えて、デスクトップアプリが要らなくなる点を評価しています。
宮武さんによると、FigmaやSlackのデスクトップアプリは、結局Web版を少し変えたものです。それがすべてArcの中で使えれば、デスクトップもすっきりします。
とはいえ、Arcが最初に出てきたとき、宮武さんの率直な印象は「なぜわざわざ新しいブラウザを作るのか」「Chromeに勝てないのでは」というものでした。考えが変わったのは、The Browser Companyの話を聞いてからです。
CEOの目的はブラウザを作ることではなく、OSを作ること。
The Browser CompanyのCEOは、この構想を「インターネットコンピューター」と呼んでいるそうです。デバイスの前に座らないとアクセスできない既存のOSではなく、どのデバイスからでも自分のファイルにアクセスできる世界を目指しています。
この世界では、デスクトップでもiPhoneでも、アプリをダウンロードする必要がありません。すべてがブラウザの中で動き、ブラウザ自体がOSになります。
宮武さんは、以前の回で扱ったStripeの「薄いレイヤーになる」戦略と似ていると話します。1つの薄いインターフェースを通じて、どのデバイスからでもすべてのアプリとコンテンツにアクセスできるという発想です。
ここでの要点も互換性です。iOSのものにAndroidからはアクセスできませんが、ブラウザのレイヤーなら基本的にアクセスできます。宮武さんは、イノベーションとオープンさのバランスではHTTPが一番バランスが良いと見ています。
その分難しそうですね。
宮武さんも難しさは認めます。ただ、AppleでもAndroidでも、多くのデバイスでブラウザは使えるので、可能性はあると考えています。
その例として挙がったのが、MetaのCTOでReality Labsのトップを務めるボズさんの発言です。宮武さんによると、ボズさんは昨年末、Quest3で人気が高まっているアプリを聞かれて「ブラウザ」と答えていました。
宮武さんは、Vision Proでも初期はブラウザが重要になると予想します。アプリの数が足りないため、どうしてもブラウザを使う場面が増えるからです。
草野さんは、Arcの思想を実際に感じるといいます。Arc上でメモが書けたり、ダウンロードしたファイルに自動で名前をつけてくれたりと、ブラウザの機能を超えた部分が面白いと話します。
どのデバイスにも「自分のAI」がついてくる世界
宮武さんは、Arcが勝ち抜くかはわからないとしながらも、その思想はAI的なハードウェアやソフトウェアが普及するうえで重要だと話します。そこで、前回のハードウェアの話と今回の互換性の話を組み合わせ、どんなデバイスが考えられるかを描きます。
宮武さんが描くソフトウェアは、まず利用者のアイデンティティや好みを理解します。そして本人の許可を得たうえで、どのデバイスを使っても、そのデバイスとやりとりします。
やりとりの際には、利用者の好みや過去の履歴に合わせて、適したアプリとインターフェースが表示されます。同時に、ハードウェアにできることとできないことも踏まえます。
宮武さんの簡単な例では、画面が小さいデバイスならExcelを出さない、といった判断になります。このデバイスはオンラインでもオフラインでも使え、Wi-FiがなくてもBluetoothなどで「自分のAI」をデバイス間で移せるといいます。
対象はパソコンやスマホだけではありません。スマートカーや、ホテルにあるスマートコーヒーメーカーでも、自分に合わせて動いてくれるイメージです。
基本的に自分にフィットしたAIがついてくるっていう。それを、どのデバイスにも、付け加えられるっていう。
それできたらいいですね、確かに。
アプリのアイコンを押さないスマホとは
次に宮武さんは、ハードウェア側としてAIファーストのスマホがどうなるかを想像します。宮武さん自身、この回の話はほとんどが想像だと前置きしています。
宮武さんの問いは、アプリという概念がそもそも必要なのか、というものです。未来を考えるにはSF映画を見ることが大事で、SF映画にはアプリの概念がほとんど出てこないといいます。
アプリストアにちょっとダウンロードしないといけないので、ちょっと5分待ってくださいみたいな話ってないじゃないですか。
宮武さんは、AIファーストのスマホでは、特定のアプリのアイコンを触らなくてよくなるかもしれないと話します。たとえばNetflixのアイコンを押す必要がなくなる、ということです。
代わりに宮武さんが描くのは、状況に合わせて中身が変わる「コンテキストベースのスマホ」です。NetflixやTikTokではなく「動画」というボタンだけ、あるいはもっと広く「エンタメ」というボタンがあるだけかもしれません。
そのボタンを押すと、利用者の好みや今の環境をハードウェアとソフトウェアが認識して、提案を変えてくれます。
ボタンを押す
「動画」「エンタメ」「ショッピング」などの大まかなボタン
状況を認識
これまでの好みと、今いる場所や時間などの環境をハードとソフトが把握する
サービスを横断して提案
Netflix、Hulu、Disney+など複数サービスからおすすめを出す
宮武さんの例では、ベッドの中で時間があるなら映画をいくつか勧めてくれます。次のミーティングまで30分しかなければ、20分で終わるものを勧めてくれる、といった具合です。飛行機の機内エンタメにも似た機能があるといいます。
ショッピングも同じで、宮武さんは「ショッピング」ボタンだけあればよいと考えます。究極的には、利用者はShopify、Amazon、楽天のどこで買っているかをあまり気にしていない、という見立てです。
でもそれが例えば、それがNIKEなのかっていうのは気にするかもしれないですけど。
草野さんはこの見立てに疑問を投げかけます。本やコスメを買うとき、どのサイトで買うかは個人的に選んでしまう、というのです。
この本がAmazonでしかないとか、この本がShopifyでしかなければそこに行くじゃないですか。
宮武さんの答えは、欲しいのはあくまでその本だから、という整理です。サイトを気にする人の好みはAIが加味してくれるし、気にしない人には1つのインターフェースで完結させられる、と話します。
宮武さんは、メッセージアプリにも同じことが言えるといいます。宮武さん自身、LINE、Messenger、WhatsApp、Telegramを使い分けていて、それらを統一するアプリも存在します。
一つのフィードなんですけど、裏方でAIが全部サービスを裏方で動かしてくれてる。
ボタンの分け方も、利用者に合わせて変わります。「ショッピング」1つでいい人もいれば、靴と家電を分けたい人もいます。Netflixや NIKEが本当に好きな人は、専用のアプリを自分で作れるかもしれないといいます。
宮武さんはこれを、開発者が作ったアプリをユーザーが使うという関係の逆転だと話します。ユーザーがアプリを作り、AIがそこに合う情報を集めてくる世界です。
草野さんは、Apple TV+のアプリで検索すると、Amazon Primeにある映画も表示されることを挙げます。最終的にはAmazonのアプリに移ってしまうものの、近い発想だと感じたといいます。宮武さんも、複数のアプリをバンドル化する考え方は似ていると応じます。
すべてをAIに勧められる世界でいいのか?
宮武さんは、AIがすべてを勧めてくる世界観は、個人的にはあまり好きではないと打ち明けます。それでもTikTokのエンゲージメントを見ると、結局はレコメンドされる流れになるのではないかと考えています。
Googleも同じだと宮武さんはいいます。情報が多すぎるので、人はフィルタリングやアルゴリズムで絞り込んでほしいと思っている、という見方です。
そのうえで宮武さんは、どこまで互換性が必要かという問いを立てます。ヒントにしたのは、リアルな世界ではある程度、場所ごとに役割が分かれていることです。
映画館は映画を見る場所、学校は学ぶ場所、公園は主に遊ぶ場所、ジムは主に運動する場所です。デジタルの体験をどこまで分け、どこまでつなぐかは調整が必要だと宮武さんは話します。
今のアプリの世界。Netflixで見たものは、CourseraやDuolingoに行っても反映されない
リアルな世界に近い形。映画で見たことを覚えたまま学校に行くように、体験から学んだことがサービスをまたいで生きる
宮武さんは、リアルな世界では活動そのものは分かれていても、そこから学ぶ体験には互換性があると指摘します。まず目指すべきは、その学びがアプリをまたいで反映される世界だといいます。アプリ自体がどこまで統合されるかは、正直わからないとしています。
うーん、どうですか?そうなる未来の方が好きですか?
好きかどうかはわからないですけど、そうなるのかなっていうのは思いますね。
宮武さんは、映画館や学校もある意味でアルゴリズムだと話します。誰かが上映作品や教える内容をキュレーションしているからです。AIファーストの世界は、そのデータ量が多いバージョンなのかもしれない、という見立てです。
一方で宮武さんは、人間が選択しなくても、すべてを受け身で受け入れてよい時代になるのが本当にいいのか、疑問も持っていると話します。草野さんも「どうなんだろう」と考え込みます。
AmazonやGoogleがしてきたことをAIが担う
複数のアプリを統合させる動きは、過去にも起きていると宮武さんは指摘します。Googleは、さまざまなサイトを1つの検索結果に並べて表示し、その結果メディアがコモディティ化していきました。
Amazonもショッピングで同じことをしてきたといいます。ブランドが重要でなくなったわけではありませんが、どの店に行くかより、まずAmazonで検索することが大事になりました。
その中で何か特定のブランドとか探すっていうところを、なんかそれがAmazonっていうものではなくて、AIっていうものになってくる。
ただし、こうした世界には多くの企業が反対するだろうと宮武さんは見ています。草野さんが「独占できないですもんね」と応じると、宮武さんは、乗り換えが異常に簡単になってしまうからだと付け加えます。
Appleのクローズドな互換性をオープンにできるか?
宮武さんは、このAI中心の世界観をつくるうえで一番の障壁はAppleだと見ています。Appleは、クローズドでありながら互換性のあるエコシステムを作っているからです。
むしろクローズドだからできるっていう部分があるんですけど。
自分たち(Apple製品同士)は互換性がめちゃくちゃあるみたいな。
宮武さんが例に挙げるのは、Continuity ── Appleの機能群の総称。iPhone、Mac、Apple Watchなどの間で作業を引き継いだり、データを受け渡したりできますと呼ばれる機能です。新しいMacBookを買ったとき、前のデバイスから一気にデータを移せます。
ほかにも、パソコンでの買い物をiPhoneやApple WatchのApple Payで決済できます。宮武さんが一番使っているのは、スマホでコピーしたものをパソコンに貼り付けるデバイス間のコピペだといいます。
AirDropとかめちゃくちゃ使うんですけど、それはめちゃくちゃいいですよね。互換性の極みみたいな。
Apple製品同士なら、データ移行・決済・コピペなどがスムーズ。クローズドだからこそ実現できている
Apple同士でなくても同じことができる。例外への対応が難しかったが、AIがニュアンスを読み取って補う
宮武さんは、Apple同士でなくても同じことができる世界を目指すべきだと話します。オープンなエコシステムでは例外的なケースが多く、完璧なコードを前提にした従来の作り方では対応しきれませんでした。
そこで生きるのがAIだといいます。AIはニュアンスを読み取れるので、細かな例外に合わせたインターフェースや解決策を出せる、という見立てです。そしてそれをつなぐ裏側の薄いレイヤーは、おそらくブラウザになると宮武さんは考えています。
アプリファーストとハードウェアファースト、どちらから攻める?
宮武さんは最後に、コンテキストを認識するハードウェアと互換性のあるソフトウェアを実現するには、複数のアプローチがあると整理します。1つ目はアプリファーストです。
アプリファーストの代表として挙がったのはOpenAIのChatGPTです。宮武さんは、ChatGPTが最終的に目指しているのはこの回で話したような世界だろうと見ています。
ChatGPTはツールから始まり、インターネットにアクセスできるようになり、アプリの概念やアプリストアも出てきました。宮武さんは、ここからインフラ、さらにハードウェアのレイヤーへ降りていくと予想します。
宮武さんによると、これはGoogleの昔の戦略と同じです。Googleは検索から始まり、Chromeなども手がけ、Androidに進み、Pixelまで作るようになりました。MicrosoftのTeamsや、The Browser CompanyのArcもアプリファーストのプレイヤーに数えられています。
2つ目のアプローチはハードウェアファーストです。Appleがこの戦略を取っていて、Humane ── AIウェアラブル端末「Ai Pin」を開発するアメリカのスタートアップ。元Appleの社員らが創業しましたやTabもこの方向に向かうと宮武さんは見ています。
| アプローチ | 進み方 | 挙がったプレイヤー |
|---|---|---|
| アプリファースト | アプリから始め、インフラやハードウェアへ降りていく | OpenAI(ChatGPT)、Google、Microsoft(Teams)、The Browser Company(Arc) |
| ハードウェアファースト | デバイスから体験をつくる | Apple、Humane、Tab |
ハードとソフトを両方つくるスタートアップへの期待
宮武さんは、どちらが勝つのか、本当にその方向に進むのかはまだわからないと話します。そのうえで、アメリカではハードウェアとソフトウェアの両方を作るプレイヤーが増えると考えています。
次のOSを作るためには、やっぱりそのミックス(ハードとソフト)が必要。
宮武さんは、Metaはこの点で一度やられているので、一番理解している企業だろうと話します。Humaneについても、成功するかどうかは別として、ハードとソフトの両方を出す考え方は重要だと評価しています。
まあハードウェアだけいいってとこないですもんね、あんまり。なんかめっちゃかっこいいけど、中身空みたいな。
宮武さんは草野さんの指摘を受けて、ハードウェアはかっこいいのに中身がAndroidというパターンが多いと応じます。それは、アプリやOSを作りきれなかった結果だといいます。
宮武さんはさらに、AIファーストのデバイスを作るには、今のスマホのあり方を完全に無視したほうがいいかもしれないと話します。草野さんが例に挙げたRabbitについては、それに当てはまるかはわからないとしつつ、アプリの概念を消すような発想が必要だと考えています。
なぜアプリって必要なんでしたっけ?っていうのを、あの、いわゆるそのユーザーがアプリを触る必要があるのかっていう。
ユーザーとの接点、特にインターフェースの部分には、まだ考える余地が多いと宮武さんは話します。そうしたAIが生きるスタートアップが増えてほしいという願いを込めて、この回を出したと締めくくっています。
まとめ
この回では、Netscapeが選んだ「汚くても動く」設計思想を出発点に、AIがデバイスやアプリの壁を越える互換性を担う未来が語られました。宮武さんは、ブラウザがその薄いレイヤーになり、ハードとソフトの両方を作るプレイヤーが次のOSを生むと見ています。
- Netscapeはパフォーマンスより作りやすさを選び、テキスト化とソースコード公開でWebを広げた
- AIが互換性を担えば、iOS版とAndroid版のようなデバイスごとのアプリ開発が不要になるかもしれない
- Arcの「インターネットコンピューター」構想のように、ブラウザ自体がOSになる流れがある
- AIファーストのスマホでは、アプリのアイコンではなく「動画」「ショッピング」のような状況に応じたボタンが中心になる可能性がある
- Appleのクローズドな互換性をオープンに広げることが課題で、ハードとソフトを両方作るスタートアップに期待が寄せられた





