イノベーションは本当に加速しているのか
宮武さんは、テック業界でここ2〜3年のあいだに世代交代ともいえる大きなシフトが起きていると切り出します。その前提として振り返ったのが、Off Topicで約2年前に扱った「イノベーションは加速しているか、減速しているか」というテーマです。
宮武さんの整理では、デジタルの領域はイノベーションが許された環境にあったため加速していました。一方で、ヘルスケア、教育、軍事、製造、エネルギーといったリアルな領域では、イノベーションが難しくなり減速していたといいます。
ビットの世界、デジタルな世界ですと加速していて、原子の世界、リアルな世界ですと減速してたと。
デジタル領域だけが加速していたために、世界全体が加速しているように見えてしまった、というのが宮武さんの見立てです。その状況から生まれたのが、非常に価値の高いソフトウェア企業でした。
イノベーションが許された環境にあり、加速していた
ヘルスケア・教育・製造・エネルギーなどで、イノベーションが難しく減速していた
特にSaaS企業は8割、9割のマージンを生む、宮武さんいわく「本当に多分世界一のビジネスモデル」を持っていました。宮武さんは、この状態が一時的なものなのか、それとも業界全体が別の形へ進むのかが問われる段階に来ていると話します。
宮武さんの結論は、SaaSやソフトウェア領域がようやくコモディティ化し始め、次の革命は原子のリアルな世界で起きるのではないか、というものです。そこに合わせて新しい世代の起業家が生まれている、というのがこの回の主な概念です。
SaaSの8〜9割マージンは一時的な現象だった?
宮武さんは、SaaSのコモディティ化といっても、ソフトウェアが完全になくなるわけでも、すべてがリプレイスされるわけでもないと前置きします。Salesforce、Microsoft、Notionのような連携の多いサービスやバンドル化されたサービス、ネットワーク効果のあるサービスは、置き換えが非常に難しいといいます。
変わるのはソフトウェアのコスト構造、つまりエコノミクスだと宮武さんは見ています。8割、9割の高マージンは、インターネットが普及してからAIの発展が早まるまでの一時的な現象だったのではないか、という問いかけです。
いわゆるエンジニアが足りてないからゆえの、あの価格感が出せたんじゃないかと。
宮武さんによれば、AIの発展によってエンジニアの数が実質的に無限に増え、誰でもコーディングができるようになります。そうなると原価が変わるというより、誰でも似たサービスを作れるために売上のほうが下がるのではないか、という見方です。
AIの発展
誰でもコーディングができるようになる
エンジニアが実質無限に
似たようなサービスを誰でも作れる
売上の低下
高い価格を維持しにくくなる
マージンの低下
SaaSが多少なりコモディティ化する
宮武さんは歴史も引き合いに出します。どの市場でも、最初は50〜70%のマージンがあった企業も、いいビジネスで最終的に30〜40%ほどに落ち着くといいます。そのため70〜90%というマージンは、割と非現実的なのではないかと話しています。
Cartaのコピーが30日で作られた件
コピーのしやすさを示す例として宮武さんが挙げたのが、資本政策のスタートアップ「カルタCarta」です。今年1月頃、カルタのサービスとクライアントである創業者との関係が悪化して炎上し、その際に誰かがオープンソース版を30日間で作ったといいます。
完全に同じサービスではないものの、ある程度の機能は使えるといいます。カルタは年間で場合によっては100万以上かかることがあるのに対し、コピー版はほぼゼロで使えます。草野さんが今も使われているのかと尋ねると、宮武さんはカルタ自体もいいサービスなのでいまだに使われていると答えています。
この状況を見て動いたのが、Social Capital創業者のチャマスチャマス・パリハピティヤさんです。チャマスさんは、世界中のトップのエンタープライズソフトウェアをAIでコピーするインキュベーターを作りたいと表明しました。
(コピー版で)それの、まあ80パーセントバージョンを90パーセントのディスカウントで提供しますと。
宮武さんは、この構想が成功するかはわからないとしつつ、少なくとも最初はバーティカル系のソフトウェアが影響を受けると見ています。例として、ECブランド向けのレビューサービス「ヨットポYotpo」のベース機能は、ECブランドが自らAIですぐ作れてしまうと話しています。
AIがソフトウェアを選ぶ時代、Salesforceも安泰ではない?
宮武さんがもう一つ重要だと指摘するのは、AIとの関係の変化です。今は人間がどのソフトウェアを購入するかを判断していますが、それをAIが担うようになれば、AIは効果とコストの面で最も効率的なものを探し、場合によっては自社開発すべきだと判断するといいます。
宮武さんは、Off TopicがCRMを導入するケースを想定します。年間100万円の予算があるとき、草野さんが自分で検索や比較をするのではなく、AIに「100万円でベストなCRMを見つけて」と任せるようになる、という例です。
人間にとっては、Salesforceのようにデータソースが1つにまとまったバンドル型のほうが扱いやすいものです。しかし宮武さんによれば、AIなら同じデータを10個のサービスに簡単に入れられます。
もしかしたらAIの場合ですと、10個のオープンソースのすごい安いソフトウェアに入れて、データを入れて、それでまあ裏方すごいマニュアルな作業をAI化して、それで連携して、最終的にそれをアウトプットし出す可能性がある。
そうなれば、Salesforceでさえ最終的にリプレイスされるか、価格を落とさないと成り立たなくなる可能性があると宮武さんは話します。さらに、以前のAIネイティブの回でも触れた従量課金モデルへの移行が進めば、利用ベースのモデルはマージンが低くなりやすいといいます。
データソースが1つにまとまったバンドル型サービスが扱いやすい
複数の安いソフトに同じデータを入れて連携でき、自社開発も選択肢になる
コモディティ化は悪いことなのか?
草野さんは、消費者にとっては嬉しい話で、大変になるのはミドル層のスタートアップではないかと問いかけます。宮武さんは、最初に影響を受けるのはミドル層で、後々大手やスタートアップにも影響が及ぶと答えています。
ただし宮武さんは、コモディティ化をネガティブに捉えすぎる必要はないと考えています。例として挙げたのがリテール業界で、Tシャツという商品自体はコモディティでも、Tシャツを売る会社に価値がないわけではありません。
宮武さんによれば、Tシャツを主に売るブランドのTrue Classicは年間200ミリオンの売上を出しており、ナイキなども大成功しています。その一方で、ウォルマート、ターゲット、Amazonのように、リテール業界そのものをコモディティ化させたビジネスも存在します。
ソフトウェアについては、Rebuildリピートライブで江村江村さんが話していた「AIはExcelのような立ち位置になる」という見方を紹介します。ベーシックなタスクならソフトに課金せずExcelで済ませるように、シンプルなツールはAIで自社開発するか、ほぼ無料で使えるようになるという考え方です。
次のイノベーターはハードとソフトのハイブリッド型
マージンが絞られていく中で、ソフトウェア企業はどこまでピュアなソフトウェア企業でいるべきか、という議論が必要になると宮武さんは話します。実際、例外のSalesforceを除けば、世界のトップ7社ほどのテック企業は、かなりの部分でフィジカルな事業を抱えています。
| 企業 | フィジカルな事業 |
|---|---|
| Apple | iPhone |
| Microsoft | データセンター、Xbox、Windows |
| データセンター、スマホ | |
| Amazon | ディストリビューションセンター |
| NVIDIA | チップ |
| Meta | データセンター、ヘッドセット |
| Tesla | 車、ロボット、工場 |
ここから宮武さんは、次の大きなイノベーターはソフトウェアとハードウェアのハイブリッド型を実現する人ではないか、という個人的な仮説を示します。草野さんが同時に立ち上げるイメージかと尋ねると、最初からある程度両方を兼ね備え、場合によってはハードファーストだと宮武さんは答えています。
宮武さんは、マーク・アンドリーセンさんの「ソフトウェアが世界を食べる」という名言にも触れます。
なぜハードとソフトの両方を持つと強いのか
宮武さんによれば、スタートアップは他のスタートアップと大手の両方に対して優位性を作らなければなりません。ハードとソフトを兼ね備えることは、その両面で強い武器になるといいます。
ソフトウェアの領域はAIである程度誰でも入り込めますが、ハードウェアや化学、物理、機械、製造といったハードウェアやディープテックは他の人が入りにくい領域です。そこでの競合は基本的に大手になります。そして大手はソフトウェアに弱いため、ソフトを持つことで大手に対しても優位性を作れる、というのが宮武さんの説明です。
わかりやすい事例が、以前の回でも扱った防衛テックのAndurilです。宮武さんによれば、大手防衛企業と似たハードウェアを作りながら、大手のマージンが7〜8%ほどなのに対し、Andurilはソフトウェアを加えることで40〜50%を目指しているといいます。
ハードウェアスタートアップが集まるコミュニティ
ハードとソフトを組み合わせた会社の例として、宮武さんは2〜3年前のFactory as a Serviceの回で触れたHadrianやValarを挙げます。ほかにも、ワイヤーハーネスの製造管理プラットフォームのSenraSenra、分散型の工場を作るGenFabGenFabなどが出てきているといいます。
宮武さんによると、Valar、Hadrian、Andurilの3社は実は仲がよく、同じコミュニティにいるそうです。そのコミュニティがある特定の場所こそが、次のクレイジーな起業家、いわゆるカルトリーダーが生まれる場所ではないかと宮武さんは考えています。
LA空港の左側に広がるハードテックの街エル・セグンド
その場所はLAにあります。LAといえばエンタメやコンシューマー系の印象が強く、LA空港に着陸する際の右側にはハリウッドのサインやビバリーヒルズが見え、スタートアップ業界でもSnapchatを含むコンシューマー系やインフルエンサーの街と見られている、と宮武さんは話します。
到着する時に右側ではなくて左側を見て欲しくて。
LA空港から5〜10分ほど南に行くと、エル・セグンドという街があります。宮武さんは、ここがアメリカの「ハードテックのフィレンツェ」と呼ばれるような場所になっていると紹介します。
エル・セグンドは1917年に設立された街です。宮武さんによれば、シェブロンシェブロンがそこに2つ目の製油所を作ったことが名前の由来で、エル・セグンドは英語で「The Second」、2番目という意味だといいます。
面積は14平方キロメートルほどで、人口は2万人に満たない小さな街です。それでもプロスポーツチーム、LAタイムズ、ロレアル、バービーで知られるマテルなど、多くの企業が拠点を置いているといいます。
航空・宇宙産業が育てた「何でも作れる場所」
宮武さんがより重要だと強調するのは、航空関連の企業が非常に多いことです。ボーイングやレイセオンもオフィスを構えています。エル・セグンドを含むLAカウンティには、2012年時点で318社ほどの航空関連の製造会社やパーツメーカーがあったといいます。
アメリカで初期の航空会社や飛行機関連の会社にはLA出身が多く、ロケットも作られてきました。1940年代から60年代にかけて、ロッキード・マーティン、ボーイング、レイセオンといった防衛企業がオフィスや工場を作り、飛行機からロケット、ミサイルまで何でも作れる場所と言われるようになったそうです。
1980年代から90年代には宇宙産業がブームになり、街は大いに賑わいました。草野さんが儲かるビジネスだったのかと尋ねると、宮武さんは政府がお金を入れ、それがボーイングやレイセオンなどに流れていたと説明します。
イーロン・マスク上陸と、ハードウェアに理想的な環境
1990年代の終わりにスペースシャトルなどのプログラムが止まったあと、2002年に元PayPalの従業員、つまりイーロン・マスクさんがLAに来てSpaceXを立ち上げ、エル・セグンドにオフィスを構えます。当時はスタートアップエコシステムがまったく存在せず、航空関連やモータースポーツのメッカとしての人材を取るための選択だったといいます。
草野さんが「いいエンジニアがもともといたんですね」と確認すると、宮武さんはそれに加えて、より物理的な理由もあると話します。ハードウェアの会社には、スペースだけでなく、機械を扱える電力やローディングドックと呼ばれる搬入設備が必要です。
それをゼロから作るのって結構めんどくさいんですけど、エルセグンドってそれがもう備え付けであったりする場所が多いので。なのでハードウェア系の会社としてはもう理想的な環境なんですよ。
宮武さんは、SpaceXに加えてRadiant Nuclear、Varda、ABL Space Systems、少し離れるとAnduril、Hadrian、Rocket Lab、Relativity Space、Impulse Spaceなどが集まっていると挙げ、SpaceX効果の大きさを指摘します。
SpaceXマフィアが生む次世代の起業家
草野さんが、界隈ではSpaceXから盛り上がっているという認識があったのかと尋ねると、宮武さんは「まさにSpaceXマフィアがそこにいる」と応じます。直近のSpaceXの時価総額は、テンダーオファーベースで180ビリオンほどだといいます。
宮武さんは、それ以上にSpaceXが人材面で貢献していると見ています。最後に確認した時点で、100人以上のSpaceX卒業生がスタートアップの起業家になり、合計4.5ビリオン以上を調達しているそうです。Valar、Relativity Space、EpsilonEPSILONなど、宇宙系にとどまらない企業が含まれます。
天気をコントロールするRainmaker
宮武さんは、エル・セグンド周辺から生まれた面白い会社を3社紹介します。1社目は、その名の通り雨を降らせ、天気をコントロールすることをミッションに掲げるRainmakerです。草野さんは「可愛い」と反応しています。
背景には世界的な水不足があります。宮武さんによれば、アリゾナでは地下水の利用に上限が設けられ、カリフォルニア州の干ばつでは農家が1.7ビリオン分の売上を失い、コロラドでは川からの水よりも需要がはるかに高くなっているといいます。
海水の淡水化という解決策もありますが、お金がかかるうえ、海のない内陸ではやりにくいと宮武さんは説明します。そこでRainmaker創業者のオーガスタス・ドリコオーガスタス・ドリコさんが考えたのが、天空にある水を取るという発想でした。
宮武さんによれば、世界には大量の水蒸気が流れ込む大気の川 ── 大気中を帯状に流れる、水蒸気が非常に多い気流のこと。陸地にぶつかると大雨や大雪をもたらすことがありますという現象があり、アメリカ西海岸では降水の30〜50%ほどがそこから来ているといいます。干ばつの厳しいエリアを通るときに数%の水をもらおう、という考え方です。
雲から雨を降らせる技術自体は、1940年代からアメリカが考えたものです。今は中国やフランス、中東の一部の国などが使っており、中国では長江の水量を増やすために使われているといいます。Rainmaker創業者は、アメリカはこれを再び発展させるべきだと考え、より低価格でサステナブルな技術を開発しているそうです。
宮武さん自身「まあまあやばい発言」と評しますが、草野さんは考え方が面白いと受け止めます。アメリカがこれまで取り組まなかった理由について、宮武さんは使える環境が限られていたこと、銀を使うためコストが高いこと、自然ではないことをやっているという批判があることを挙げています。資金はディープテック系のVCから調達しているそうです。
小惑星でレアメタルを採掘するAstroForge
2社目は、宮武さんが創業者と一度話したことのあるAstroForgeです。小惑星でレアメタルを探すことを目指す会社だといいます。
宮武さんによれば、地球上ではプラチナなどのレアメタルが不足し始めています。iPhoneや医療機器、テスラの車づくりにも必要なのに量が減っているため、価格が上がってしまいます。それなら宇宙で探せばいい、というのがAstroForgeの発想です。
空気から石油を作るValar Atomics
3社目は、宮武さんが「さらにちょっとやばいかもしれない」と前置きするValar Atomicsです。この会社は空気から石油を作ろうとしています。
石油やガスは主に炭化水素でできているため、炭素と水素があれば理論上は作れ、両方とも大気中に存在します。ただし膨大なエネルギーが必要で、Valarの社長であるアイザイア・テイラーアイザイア・テイラーさんは、それを原子力でまかなおうとしています。
宮武さんが面白いと感じたのは、テイラーさんが指摘する原子力のディストリビューションの課題です。今の原子力はアウトプットが電気で、電気は保管しにくくそのまま流す必要があるため、原子力発電所を住宅街の近くに置かざるをえないといいます。
アウトプットは電気。保管しにくく、住宅街の近くに置く必要がある
アウトプットは石油やガス。パイプやトラックで運べ、住宅街から遠ざけて置ける
アウトプットが石油やガスになれば保管ができ、施設を住宅街から離れた場所に置けるため、より安全を確保できると宮武さんは説明します。大気から作るのでカーボンニュートラルな燃料になる点も特徴です。宮武さんは本当にできるかはわからないとしながら、この発想を持つこと自体が面白いと話しています。
草野さんは、二酸化炭素からウォッカや航空機燃料を作るスタートアップ「AIR」に近いのではと尋ねます。宮武さんは考え方は似ているとしつつ、石油やガスに変えるほうがウォッカよりエネルギーがかかると答えます。ちなみに、Valarの社長の曾祖父はマンハッタン計画 ── 第二次世界大戦中にアメリカが進めた原子爆弾の開発計画。多くの著名な科学者が参加しましたに関わった科学者だったそうです。
エネルギーコストが工場の勝負を決める時代へ
宮武さんによれば、テイラーさんの目的の1つはエネルギーコストを最小限にすることです。現在、アメリカのエネルギーコストは中国のおよそ1.8倍あり、物の製造では今後大きな課題になるといいます。
宮武さんはテスラの人型ロボット「オプティマス」を例に挙げます。テスラが最終的に想定しているのは、人間ではなくオプティマスが車を作る工場です。
そうすると、今後の工場ですと、労働コストではなくてエネルギーコストの方が重要になってくるんですよ。
ロボットが製造を担う
オプティマスのような人型ロボットが車を作る
コストの重心が移る
労働コストよりエネルギーコストが重要になる
低コストなエネルギーの需要
Valarのような技術が役に立つ可能性が高まる
「SaaSはクリンジ」エル・セグンドの起業家の特徴
紹介した3社はいずれも、リアルなものを作りながら一部をソフトウェアで補っています。そのうえで宮武さんは、エル・セグンドの起業家にはいくつかの特徴があると話します。
1つ目の特徴は、ソフトウェアの時代が終わるかもしれないと最も強く思っているのがエル・セグンドの人たちで、アンチSaaSだという点です。「SaaSはクリンジだ」と言う人が多いそうです。
クリンジっていうのはどういう。
なんか嫌とか気持ち悪いとか。
宮武さんによると、「エル・セグンドはSaaS企業のゾーンではありません」というミームまであるそうです。ほかにも、愛国心が強く、本気で世界を変えようとするオプティミストが多いといいます。
さらに、全員ではないもののドロップアウトが多く、大学だけでなく高校の中退者も多いそうです。Valarの社長も高校を中退しています。草野さんが理由を尋ねると、宮武さんは、小さいころから機械をいじり、学校に意味がないと考えて自分たちで学び起業した人たちだと説明します。大学やMBAを経て起業する層へのカウンターになっている部分もある、という見方です。
- アンチSaaSで「SaaSはクリンジ」と言う人が多い
- 愛国心が強い
- 本気で世界を変えようとするオプティミストが多い
- 大学だけでなく高校の中退者も多い
小さな街が生むネットワーク効果とインターネット初期の熱気
宮武さんは、小さな街に全員が集まっているからこそ、地域的なネットワーク効果が生まれていると見ています。スタートアップ同士がパーツを買ったりサービスを提供したりする、ボトムアップ型のコミュニティができているそうです。昔のサンフランシスコのように、どのコーヒーショップに行っても起業家がいるといいます。
草野さんが、アンチソフトウェアと言いつつそうした場所で仕事ができるのかと尋ねると、宮武さんはピュアなソフトウェアの起業家は入りづらいものの、ハードウェアをやる人たちが集まり始めていると答えます。メッセージアプリのように一社がシェアを独占するのではなく、複数社が生き残れる世界なので、地域的なネットワーク効果はハードウェア企業のほうが重要だという説もあるそうです。
宮武さん自身は現地に行ったことがなく、聞いた範囲での話だと断ったうえで、インターネット初期の盛り上がりを感じさせる雰囲気だと話します。草野さんが触れた白人男性の多さについては、ややブロカルチャー的で、エナジードリンクを大量に飲む人たちがいるとしつつ、昔のスタートアップも同じような感じだったと振り返っています。
イノベーションは再び加速するのか
宮武さんは、エル・セグンドが次の起業家の街になるかはわからないとしたうえで、ビットの世界をイノベーションしてきた流れが、原子のリアルな世界へ積極的に向かい始めている象徴だと捉えています。
今のスタートアップ業界の課題は、もっと大きな夢を持つ起業家が必要なことだと宮武さんは考えています。エル・セグンドの起業家はそれを一部実現しているように見え、宮武さんは「安心した」と話します。
安心っていうのは、その、どういう意味で。
今後のそのイノベーションが加速するか減速するかっていう話の中で、加速する可能性が出てきたんじゃないかなっていうふうに。
冒頭の「イノベーションは加速しているか、減速しているか」という問いに対し、宮武さんはエル・セグンドにリアルな世界のイノベーションが加速する可能性を見いだしています。
最後に草野さんは、お金のかかるハードウェアに資金が集まっていることに驚きつつ、国の支援はあるのかと尋ねます。宮武さんは、防衛テックが政府に売り込むことはあっても、現時点では政府の資金提供はほとんどなく、CIAの投資部門もエル・セグンドの会社にはほとんど投資していないと話します。後々投資するとは思うものの、起業家側がむしろ最初はそうした関与を嫌う傾向もあるようだ、というのが宮武さんの見方です。
まとめ
この回では、AIによってSaaSの高マージン時代が揺らぎ、ソフトウェアがコモディティ化していく流れを起点に、ハードとソフトを兼ね備えた新世代の起業家が集まるエル・セグンドが紹介されました。宮武さんは、そこにリアルな世界のイノベーションが再び加速する兆しを見ています。
- SaaSの8〜9割マージンは、エンジニア不足ゆえの一時的な現象だった可能性があると宮武さんは見ている
- AIでコピーや自社開発が容易になり、ソフトを選ぶ主体がAIになれば、Salesforceでさえ価格を下げる圧力を受けうる
- ハードウェアやディープテックとソフトウェアを組み合わせることが、スタートアップにも大手にも勝つ優位性になる
- 航空・宇宙産業の歴史とSpaceXの人材輩出により、エル・セグンドはハードテックの集積地になりつつある
- Rainmaker、AstroForge、Valar Atomicsのような大きな夢を持つ起業家に、宮武さんはイノベーション加速の可能性を感じている



