番組と2人の自己紹介
この番組は、北九州・門司港からマーケティングの視点で社会や人生を眺める音声メディアです。日常や仕事、地方での暮らしや価値観を通じて、新たな発見をそっと届けます。
MCは2人。移住者のSeiyaさんと、地元出身のYujiさんです。別の雑談番組を半年ほど続けてきた流れで、今回は改めてテーマを立てて話す企画を始めました。
プライベートによりすぎず、なんか別に誰が聞いてるわけでもないから、適当に喋る。そのバランスが良くて、お互い結構学びになる。
Seiyaさんは1987年生まれ、横浜市戸塚区の出身です。ウェブ広告からウェブマーケティングを手がけ、2019年に門司港へ移住しました。
移住の理由は、自分でサービスや商品を作りたいという思いからでした。広告代理店では代理の仕事が多く、自ら事業をやることを目指したと話します。
門司港では「四稀」というカフェを構えています。四季を感じる空間と商品で稀な時間を過ごしてほしい、という思いを込めたコンセプトです。現在は休業中とのことです。
一方のYujiさんは1992年生まれ、門司区の出身です。新卒で東京の企業化支援・コンサル系のベンチャーに約2年勤めたあと、フィリピンに1年ほど留学しました。
帰国後は前職の同僚の会社を手伝い、伸びた事業をきっかけに役員へ。マーケティング会社でCOOとして5〜6年勤め、福岡で上場するところまで携わりました。
上場のタイミングで退任し、今はフリーランスとして複数の会社と関わりながら、大阪の建築会社の役員も務めています。2人の共通点はウェブマーケティングという領域です。
そもそも門司港とはどんな街か
最初のテーマとして選んだのが「門司港1950団地」です。県外の人からもよく聞かれるほど、Yahooニュースやテレビで度々取り上げられている場所だといいます。
いろんな人から、県外の方からいろいろ言われることが多くて。だから意外と地元にいる人も、県外の人も知ったり知らなかったりしてるかなと思って持ってきました。
団地の話に入る前に、まず門司港という街そのものを整理します。福岡県北九州市にあり、山口県との県境に位置する街です。
もともとは港と鉄道を中心に発展した実用的な街でした。物流や商業、金融が集まり、人が働くための街として成長してきた歴史があります。
かつては神戸港、横浜港と並ぶ日本三大港のひとつでした。それだけ栄えていた土地だと2人は振り返ります。
門司港には「見せる顔」と「暮らす顔」の2つがあると話します。海沿いのレトロ地区は観光地としての表の顔です。
一方で少し坂を上がると、住宅地や団地が広がる暮らしの門司港が現れます。この2つの距離感がとても近いのが特徴だといいます。
最近は移住者が増え、小さな商店やカフェもちょこちょこ増え始めています。暮らし方そのものに価値を見出す人が集まってきていると2人は感じています。
都会でハードワークを一回経験した人は、海と人の温かみをよく感じて住んでいるような印象があります。
門司港1950団地とは何か
いよいよ本題の門司港1950団地です。門司港レトロの観光地のすぐ裏手の高台にある、古い団地です。
この団地は旧波多田団地と呼ばれ、戦後間もない1951年に建てられた県営住宅でした。70年以上の歴史を経て、2021年に最後の住人が退去しました。
一度は役割を終えたこの団地は、2024年に売りに出されます。そして90万円という破格の価格で落札され、再び人の手で息を吹き返すことになりました。
新しいオーナーは吉浦さんという方です。このプロジェクトには「渋沢プロジェクト」という名前がついています。
名前の由来は実業家の渋沢栄一だといいます。渋沢栄一が多くの事業を作ったように、ここからいろいろなものが生まれるといい、という願いが込められているという話です。
仕組みも独特です。入居者を募集し、家賃は月1万円。ただし条件として、入居者自身が部屋をDIYして改装することが求められます。
建物も部屋もボロボロだから、入居者自身が部屋をDIYして改装することを条件にしています。壁とか間取りとか、結構勝手に改築しまくっていいという仕組みです。
材料費の一部はオーナーが支給しているようです。ふすまを壊すなど、間取りをかなり自由に変えられるといいます。
結果として、この古い団地に全国から多種多様な人が集まりました。ブックカフェを準備する若い人、占い師、看護師出身の人が開いたカフェなどがあるといいます。
全34部屋は、現在満室になったといいます。立地は決してよいとは言えない高台にあるにもかかわらず、です。
なぜ満室に?三方良しの構造を読む
2人はこの仕組みを、売る側・買う側・住む側のそれぞれから読み解きます。まず最初のオーナー、つまり売った企業側です。
古い団地を持ち続けても固定資産税がかかり、取り壊すにも数百万円かかります。売れれば税負担も解体費用もなくなるため、売る側には願ったり叶ったりだと話します。
問題は買った吉浦さんの側です。Seiyaさんは最初に話を聞いたとき、経営的に厳しいのではと心配したと明かします。
結構きついと思うよって。大先輩なんであれですけど、大丈夫すかねっていうのはちょっと思った。
ただ、後で吉浦さんの記事を読んで見方が変わったといいます。過去にも借り手がつかなかった物件を工夫して満室にした成功例があり、これは3つ目のチャレンジではないかと推測します。
つまり吉浦さんには、空室を埋めるマーケティングの見込みがあったのではないか、という見立てです。
Yujiさんは、これが三方良しの形にきれいにはまっていると整理します。90万円で買い、家賃1万円×34部屋なら、3ヶ月ほどで初期費用をペイできる計算です。
その先は工事費を差し引いてもプラスになるだけで、黒字は年内にも見えそうだといいます。住む人も低コストでやりたいことを実現でき、期待は満たされています。
そして門司港という地域が注目され、地域のためにもなっています。売る側・買う側・住む側に加え、地域まで潤う構造だと2人は見ます。
一方でSeiyaさんは、ここからが入居者自身のマーケティングの勝負だとも指摘します。商売として続けるなら、集客という難題が待っているからです。
人を呼ぶってめちゃくちゃ難しい。集客っていつだって難しいじゃん。商売をやるんだとすれば、そこで自分がどんな価値を作るのかっていう話。
もし趣味として楽しむなら、その視点は必要ないかもしれません。ただ本気で商売にするなら、団地の中の店がどれだけ人を呼べるかが、門司港の商圏の広がりにつながると考えます。
他県の団地再生との違い
団地再生という軸で見ると、他県にも事例はあります。神奈川県二宮町、愛知県春日井市、兵庫県などが挙がりました。
たとえば神奈川県二宮町では、みんなで暮らしを作る団地再編プロジェクトのような取り組みがあるといいます。写真を見ると内装がとても綺麗で、整った印象です。
ただ、門司港1950団地は少し軸が違うと2人は感じます。整えるというより、住む人がそれぞれ自由に作り込む「カオス」に近い場です。
その背景には、門司港という街の特殊性があります。Seiyaさんは移住当初、半年で40〜50店舗を回って挨拶したそうです。
一通り回ったつもりでも、シルクロードに魅せられた女性が営むカフェや、瓶が並ぶ隠れ家的なカクテルバーなど、まだ知らない店が次々と現れたといいます。
こんな店あるんだっていう、なんか門司港のポテンシャルを感じるというか。深さ、深みがあるなみたいな。
独特のコンセプトを持つ店や人が集まる土地柄です。その特殊性が、多種多様な人が入る団地の雰囲気とも重なると2人は話します。
団地を支えたのはスキルか、人柄か
Seiyaさんは、吉浦さんを羨ましいと語ります。自分でリノベーションできるからこそ、入居者にノウハウや材料費まで提供できる点です。
もし工事費が自己負担なら、内装に数百万円かかると聞いて入居をためらう人もいたはずだといいます。その負担を担保できることが、満室を支えた要因のひとつだと考えます。
Seiyaさん自身はDIYがあまり得意ではなく、自分の店の壁塗りは修行のようだったと振り返ります。だからこそ建築のスキルを持つ人を羨ましく感じるといいます。
ただYujiさんは、決め手はスキルよりも吉浦さんの人柄ではないかと投げかけます。
吉浦さんこういうことをやりたいんだよねっていうビジョンと、地域での信用と、あの声の大きさ、拡散力がやっぱあって。その共感でみんなが入ったんじゃないかと思うんですよね。
同じスキルを持つ人が誘っても、乗らない人は乗らないはずです。渋沢プロジェクトというネーミングにも、その人柄や志が表れているのかもしれないと2人は話します。
話は、熱量と論理のバランスへと進みます。Seiyaさんは、直感的な時と合理的な時の両方が自分にあると自認しつつ、何かを形にするには直感に振り切る力が要ると感じています。
熱量とか実行力とか、そういった類いのものは、論理とかデータからは生まれないじゃん。
これに対しYujiさんは、熱量や実行力がベースにあり、その上に論理が乗るのではないかと返します。どちらか一方では足りない、という整理です。
団地に足を運んでみたい
2人はこの団地の今後を見ていきたいと話し、実際に足を運ぶことを決めます。Yujiさんはまだ訪れたことがないそうです。
現時点で、デイジーさんのカフェやブックカフェができているといいます。アトリエのような場もあると聞き、一度見に行こうと盛り上がります。
吉浦さん自身がツアーを組んで案内することもあり、その前段でSeiyaさんが門司港の街を紹介することもあるそうです。
最後にSeiyaさんは、ただ「へー」で終わらせず、どう作られ、どんな人がいるのかを筋立てて考えることの面白さを挙げます。
最終的に吉浦さんが人だと思うみたいな話で、俺ちょっとハッとしてるもんね。まだまだだわ。
まとめ
門司港1950団地は、90万円で落札した古い団地を、家賃1万円・DIY自由という仕組みで再生した事例です。売る側・買う側・住む側、そして地域まで潤う三方良しの構造が満室を後押しし、その根底には吉浦さんの熱量と人柄があると2人は読み解きました。
- 門司港1950団地は1951年築の旧県営住宅で、2024年に90万円で落札され再生された
- 家賃月1万円・入居者自身がDIYで改装する条件で、全34部屋が満室になった
- 売る側は税・解体費の負担を回避、買う側は短期でペイ、住む側は低コストでやりたいことを実現する三方良しの構造
- 材料費やノウハウを提供できる吉浦さんの建築スキルが、入居のハードルを下げた
- 決め手はスキル以上に、ビジョンと信用、拡散力を含む吉浦さんの人柄や熱量だと2人は結論づけた
