FastFailの説明への違和感
番組冒頭、はりまさんはFastFailという言葉を取り上げます。「早く失敗しろ」「どんどん失敗するといい感じになる」とよく言われる考え方です。
ただ、はりまさんはこの言葉になんとなく納得しつつも、ピンと来ていないと打ち明けます。
よくある説明は、失敗ルートと成功ルートがあって、数をこなせばいつか成功ルートにたどり着く、というものだといいます。
なんかそうかなと。そんなことないんじゃないかというふうに思ってたんですよ。
やーまんさんはFastFail自体には賛成派だと応じます。はりまさんも賛成なものの、説明の仕方に自分の感覚とのズレを感じていました。
なんとなくその正しいというのは我々同意なんですけれども、なんかそこのディテール部分をもう少し詳しく知っておくと、より早くいけるんじゃないかなと思うので。
正しいカードを引く感覚がない
はりまさんは、選択肢が5個あって、その中の1つが正解だという説明に違和感があるといいます。5枚のカードから一番いいものを早く引けばいい、という理解です。
しかし自分の経験では、正しいカードを引けたという確信を一度も持ったことがないと語ります。
正しいカード引けたなっていう確信って今まで一度もないんで。
ゲームなら最適解が決まっていることもあります。はりまさんは初代マリオのRTAを例に挙げます。地下に潜るルートが最速だと決まっていて、1フレームでも短くする勝負になります。
けれど人生はそうではない、と話します。ルートは無限にあり、正解の選択肢はほぼなく、しかも選んだ瞬間には正解かどうかもわからないといいます。
1ヶ月後とか1年後とかに、ああまあ良かったのかなっていう、振り返ってようやく結果がわかるみたいなところがある。
成功を引き当てるのではなく、正解に寄せていく
やーまんさんも同じ感覚だと同意します。成功を引き当てるのではなく、正解に改善して寄せていく感覚だといいます。
やーまんさんは、俯瞰すればあみだくじのように無数の道があっても、走っている当事者から見れば歩ける道は一本しかない、という一本道のイメージを語ります。
その扉の先には無数の道がありますけど、自分が歩ける道って一本しかないじゃないですか。やり続けるしかない、繰り返すしかないっていう感覚。
はりまさんは一本道という表現には迷いつつも、繰り返すしかないという点には強く同意します。
そして、自分の選んだ道を後から正しくしていく作業だと言い換えます。
もしかしたら一番ベストな選択ではなかったかもしれないけれども、これがベストだったことに、未来の歴史を修正していかねばっていう。
決済システム変更で起きた失敗
はりまさんは具体例として、最近変えた決済システムの失敗を挙げます。お月謝のようにもらっているクレジットカード決済を、より高機能なものに変えたのです。
良かれと思っての変更でしたが、支払い日をよく見ていなかったといいます。
売上が振り込まれるタイミングが、以前より1ヶ月半も先になってしまいました。
1ヶ月半の間に実質2ヶ月分の支払いがあるんで、タイミング的に。2ヶ月売上なし状態になっちゃったんですよ。やべえと思って。
そこだけ見れば明らかなミスです。しかしはりまさんは、そこを乗り越えて便利になった機能を使いこなし、いい感じにしていくのが今やるべきことだと語ります。
この経験からはりまさんは、早く失敗しても正しいルートを選べるようになるわけではない、という感覚を示します。
失敗を失敗で終わらせずになんとかするみたいな力がつくっていう方が、数多く失敗するメリットなのかなっていう感じがある。
仮説を立て、殿様セールスで早く見極める
やーまんさんは、FastFailは適当にやることでも思い切ってやることでもないと強調します。大切にしているのは、事前に仮説を立てるフローを忘れないことだといいます。
はりまさんは、時間をかけると愛着が湧いて損切りできなくなると応じます。
やーまんさんは、お盆に実家から持ち帰った神田昌典さんの『非常識な成功法則』を引き合いに出します。そこに出てくる「殿様セールス」がFastFailの考え方に近いといいます。
殿様セールスとは、買いたくもない相手をしつこく説得するのをやめる考え方です。見込み客100人のうち5人が買うと仮説を立てたら、その5人をいかに早く見つけるかに集中します。
やーまんさんは本から線を引いた箇所を読み上げます。
セールスの目的は相手を説得することではなく、相手が買う確率が高いかどうかを判断すること。
だから営業マンは購入する確率が高いお客にだけ時間を使い、購入する確率が低い客はさっさと断らなければならない。
失敗を損にしない力と、判断の嗅覚
はりまさんは、多くの人が失敗したくないという思いを強く持っていると指摘します。評価が下がりそう、頭が悪いと思われそう、という不安です。
失敗を損にしない力と言い換えてもいいかもしれない、早く失敗しろというのは。
失敗か成功かのゼロイチで諦めて次に行くだけでなく、そこから得た何かが残ると語ります。怒られたときや損したときにどうするか、という経験値が溜まっていく感覚です。
やーまんさんも、FastFailをやればやるほど判断が早くなり、判断できる要素が増えて嗅覚のようなものが身につくと応じます。
2人は、人生は正しいルートを選ぶゲームではない、という結論に近づきます。
はりまさんはゲーム「FallGuys」を例に挙げます。飛び石の障害物では、前の人の失敗を見て学べますが、慎重に見てばかりだと上位に行けません。ときにはエイやで進む必要があるといいます。
最初から正しいルートを当てるゲームだと思わない方がいいよね。間違ったルートをいかに早く捨てれるかのゲームでございます。
ゲームルールを理解しないと疲弊するだけ
一方でやーまんさんは、ゲームルールの設定が抜けたままFastFailをやると疲弊するだけだと注意を促します。
ゲームルール設定ないままファストフェイルやってたら疲弊するだけやもんね。何の基準もなく小さい失敗を繰り返し、ひたすら繰り返すっていう。
はりまさんは、それではひたすら小さい傷が増えていくだけだと補います。経験は豊かでも方向性が定まらず、何も実行できなくなってしまうといいます。
はりまさんは、コンバージョン率の例でゲームルールの違いを説明します。中小企業なら5パーセントの施策が明らかに良く見えます。しかし大企業では、あえて1パーセントを選ぶこともあるといいます。
5パーセントの施策はターゲットを絞るぶん上限が決まります。一方1パーセントの施策は日本全国民を対象にでき、率は低くても総売上の天井がないという理屈です。
ターゲットを絞れて効率は良いが、対象が限られ売上の上限が決まる
率は低いが対象を広くとれ、総売上の天井がなくなり得る
どのゲームで戦っているかというルールは会社によって全く違う、と2人は面白がります。
デザイン業界のゲームルールの変化
やーまんさんは話を戻し、デザイン業界のゲームルールが変わってきていると語ります。かつては素人には作れないシュッとした見た目や、情報を綺麗に整理して読みやすくすることに価値がありました。
しかしAIの進化もあり、一定レベルはできて当たり前になってきたといいます。その先に問われるのが、市場にどういう効果をもたらすかというシナリオ設計です。
シナリオ設計がね、もうそれしか生き残る道ないんじゃないかなって思うぐらい考えてます。
やーまんさんは、かっこよく作ることが正解とは限らない例も挙げます。社長自身が撮ったブレブレの動画のほうがファンが増える、といったこともあり得るといいます。
プロに頼むときれいに作ってくれますねってなるんですけど、マーケットに投入してどっちが結果出すんですかって言ったら、自分で作ったやつの方がヒット量産するやんみたいな。
クライアントワークでどうFastFailするのかという難しさも話題になります。仕事では失敗できず、10個納品するわけにもいきません。
やーまんさんは、半年契約で目的に向かってデザインワークをサポートするような、月額型の関わり方に時代が向かっていると話します。一発100万ではなく、月10万を半年や1年という形です。
発注する側の悩みと、育てていくプロジェクト
話は発注する側の悩みに移ります。はりまさんは、どのタイミングで発注すべきかをいつも考えてしまうといいます。
依頼するということはちゃんとやっていく段階のはずですが、ある程度は自分でもできてしまう。一か八かで頼むのも違う、というジレンマです。
はりまさんは、自分でもどれを選んでいいかわからない状態で発注したいのに、いざ頼むと詳しい情報を求められる、と語ります。
発注する時に、自分でももうどれを選んでいいかわからない状態で発注したいんだけれども、いざ発注しようとすると、詳しく教えてくださいみたいに言われて。そこを一緒に考えたいんですけど。
やーまんさん自身は、目的や方針を決めてから発注するタイプだといいます。かつてはカメラマンに「何がしたいねん」と怒られたこともあったと明かします。
ただし決めすぎると予定調和になる、とも認めます。はりまさんは、自分の頭の中でイメージできることしかできないなら自分でやればいい、と感じるといいます。
自分の殻を破ってほしいみたいなフェーズがあって。逆にそういう時しか僕頼まないかもしれないですね。
はりまさんは、プロジェクトチームのように一緒に育てていく感覚を求めます。一方で、依頼される側は早く必要な情報が欲しいと考えがちで、そこにすれ違いが生まれると語られます。
説明力とシナリオ設計力、意味付けの力
やーまんさんは、ロゴマークの仕事がとりわけ難しいといいます。ロゴは意味付けであり、それ単体では効果を出しにくいからです。
結局はコーポレートアイデンティティのように、制服や挨拶の言葉まで含めてトータルで考える話になっていくといいます。
はりまさんは、開発の世界にあるウォーターフォール型とアジャイル型を紹介します。仕様書通りに作るのが前者、最低限動くものから様子を見て作り込むのが後者です。
仕様書がガチガチに決まっていて、その通りに作る進め方
最低限動くものをまず作り、様子を見ながら作り込んでいく進め方
デザイナーもこうした進め方ができるとよい、とはりまさんは話します。ただし化粧品のパッケージのように、一発勝負で検証が難しい媒体もあると2人は認めます。
はりまさんは、デザインは作ることがメインだと思っていたが、なぜこのデザインにしたのかという説明フェーズの影響が大きいと気づいたと語ります。
むしろそっちがメインディッシュなんじゃない?って思う時あるもんね。なぜこのデザインなのかの説明ができるもの、できないものによって、プロが作ったもの、プロじゃない人が作ったものの差が出る。
これからのデザイナーに必要なのは説明力とシナリオ設計力だ、と2人は整理します。やーまんさんは、言葉を再定義して意味付けし、もう一度働いてもらう力だといいます。
赤色を血ということもできるし、革命の赤っていうこともできる。意味付けを、言葉を再定義して、意味付けして、もう一回働いてもらうみたいな。
夢を見させる力と、40代の仮説思考
はりまさんは漫画『推しの子』を引き合いに、可愛い子が大量にいる中でひときわ輝く子が生まれる理由に触れます。それは夢、言ってしまえば嘘を真実だと信じ込ませる力だといいます。
やーまんさんは、カリスマ経営者にも同じ力があるのではないかと応じます。はりまさんは、資金調達の場面を例に、わからないことをさも本当のように語る力が求められると話します。
逆にああいう場面で現実的なプラン持っていったら、なんかマナー違反みたいなとこあるんですよ。もっとお前らは夢を売る仕事なんだから、でかい数字を持ってこれる資料にしなさいみたいな。
やーまんさんは、自分はそうした夢を見させる力がもっと欲しいと語ります。そしてつい現実的に考えてしまう自分を、40代の難しさとして振り返ります。
20代は勢いで動け、30代は経験を積む時代だったといいます。40代は、経験で少し賢くなった自分が自分にブレーキをかけ始める時代だと語ります。
若い頃の無鉄砲さに戻れない。もうちょっと現実的に仕組みとか、意図的に自己暗示をかけて、経験を重ね合わせてやるしかない。
だからこそ仮説がめちゃくちゃ大事だ、とやーまんさんは締めくくります。実行すればこうなるはずという仮説を立て、その通りになったかならなかったかを検証して繰り返すだけだといいます。
20代は仮説なしで突っ込んでいたが、いまはそれをしっかりできるようになったことをアドバンテージだと語ります。
まとめ
FastFailは、数を打っていつか正解を引き当てるゲームではありません。選んだ選択肢を後から正解に寄せ、失敗を損で終わらせずになんとかする力を積み上げていく発想として2人は語りました。仮説を立てて小さく検証すること、そして自分がどのゲームルールで戦っているかを理解することが、疲弊しないための鍵だと締めくくられます。
- FastFailは正解を引くのではなく、選んだ道を後から正解に寄せていく作業
- 仮説を立て、最小コストで検証し、数字で判断してダメならピボットする
- ゲームルールを設定しないままの失敗は、小さな傷が増えるだけで疲弊する
- AIの進化でデザインは、見た目より効果を設計するシナリオ力と説明力が問われる
- 発注は答えのない状態から一緒に育てるプロジェクトになり得るが、受発注ですれ違いも起きる
