実物のオーラに惹かれた収録現場
収録前、出演者たちはビニールハウスで実物のサボテンを見て大興奮していました。撮影スタッフまで「弟子入りしたい」という様子だったといいます。
小畑さんは当初、ネタ作りのつもりで何か買おうと考えていました。しかし実物を見ているうちに、本当に欲しくなってしまったと話します。
なんかネタ作りのためみたいな感じで買おうかなと思ったんですけど、普通に見てたらめちゃくちゃ欲しくなって。
種市さんは、この感覚は古着に惹かれるのと同じだと指摘します。説明ではなく、ものそのものが放つオーラに人は惹かれる、というわけです。
そうね、植物のオーラに惹かれる。
3センチの苗が育つまで
鶴岡さんが持参したのは、コピアポア「黒王丸」という種類の小さな苗でした。多くの人はこの小さな苗を買い、育てる楽しみを味わうといいます。
手のひらサイズの苗は約3センチで、種をまいてから3年ほど経ったものだと説明されました。
これでもう3年ぐらい経ってますね。種まいてから。
同じ種類でひと回り大きな株は、この苗からさらに5年ほど、つまり生まれてから8年ほどのものでした。
大きさは水や光である程度コントロールできますが、棘が太い、球形になる、細長くなるといった株ごとの素質にもよると鶴岡さんは話します。
定価のない世界で値段はどう決まるのか
話題は価格に移ります。小さな苗の段階で将来性を見抜けるかが目利きの核心だといいます。
このキッズの時に要は目利きできるかどうかってことでしょう。その時にわかるの。こいつ良くなるとか。
鶴岡さんは、長年大量に育てていると「大きくなって良くなる顔」がわかると語ります。ただしそれは自分の好みでもある、と付け加えます。
僕と好みが正反対であれば安いもの買えるし、僕と好みが違うと高いもの買わないし。
素人向けのコツとしては、黒い棘のものが人気で、小さいうちは棘が密になりすぎていないほうが、大きくなったときに直径が出やすいと教えてくれました。
紹介された1万2200円の苗は、大きく育つと3万5000円ほどになるといいます。育てる期間の分だけ価格が上がり、途中でダメになる株もあるためです。
種市さんは、稚魚が安く成魚が高い熱帯魚と同じ構造だと重ねました。
ここで種を蒔いた株には定価がないという話になります。鶴岡さんは、仕入れ品には仕入れ価格に準じた値をつけるが、種から育てたものは自分たちの感性で値段をつけていると明かします。
同じ株が店によって大きく値段が違うのかという問いにも、そういう世界だと答えます。種市さんが「怖くない?」と戸惑う場面もありました。
小畑さんは、だからこそ誠実にやってきた店が100年続くのだろうと解釈します。不誠実なことをしていれば続かない、そこが信頼なのではないか、と話しました。
そういうところを誠実にやってきたから100年続いてんでしょうね、きっとね。
一方で、今はスマホでいくらでも相場を調べられる時代です。実際に売り場でスマホ片手に価格を調べる客もいるといいます。
バズった鉢とNEIGHBORHOODコラボの裏側
続いて、2人が気になっていた鉢の話へ。今の鉢ブームのきっかけを作ったのは、インビジブルインクという作家だったと鶴岡さんは振り返ります。
インスタで見て「魔物が住んでる鉢」だと感じるほど惹かれていたところ、その作家が偶然売り場に来店したことから取引が始まったといいます。
これめちゃくちゃなんかかっこよくて、なんか魔物住んでる鉢だなと思って。
その鉢は発売直後から大きな反響を呼びました。やがてNEIGHBORHOODの滝沢さんもこの鉢を気に入り、コラボの話が進みます。そこに加わったのがFRAGMENTでした。
このコラボ鉢はコロナ前、5〜6年ほど前にNEIGHBORHOODの店舗で販売され、大きな反響があったと語られました。
作家との出会い
インビジブルインクの鉢に惹かれ、来店をきっかけに取引開始
反響
発売直後から大きな話題に
コラボ
NEIGHBORHOODの滝沢さんが気に入りコラボへ
FRAGMENT合流
さらにFRAGMENTが加わり実現
現在は別の作家の鉢にも取り組んでおり、鶴岡さんの息子「トム」の名を冠したトムモデルや、鶴岡さん自身のhideモデルなど、別注の鉢も作られています。
枯らさないコツと「沼」の入り口
鉢を買ったあとは植え替えが必要で、春か秋がその時期にあたります。実際に育てるには、植物と鉢と土、そして室内なら光を補うライトが必要だと説明されました。
枯らさないコツは、一定の場所で長く日が当たる環境を作ってあげることです。出窓やサンルームが向いています。
ただし種類によって適した環境は異なります。サボテンは野ざらしに向きませんが、パキポディウムなどの多肉植物は春から秋なら雨ざらしでも平気だといいます。
自分の環境に合わせたものを買うか、こいつが好きなものに環境を合わせるかっていうことだよね。
サボテンは中心から新しい棘が出てくる時期が成長期で、その動きさえ分かれば日当たりのよい場所で放っておいても育つといいます。ただし観察を怠るとダメにしてしまうことが多いそうです。
1つ買うと、多くの人はフォーメーションを組んで複数を集め始めるといいます。種市さんは、これは同じようなシャツや眼鏡を何個も買う感覚と似ていると重ねました。
うんちくより「もの自体」で勝負する老舗
話は再び価値の話へ。鶴岡さんは、年を重ねるほど株のオーラを感じるようになる「趣味家」だと自認します。植物をやる人は変態と呼ばれるのを好む、とも語ります。
今若者に人気なのは黒王丸などのコピアポアだといいます。ブームは特定の誰かが作るというより、インスタの投稿を通じて自然に広がっていくと説明されました。
そのうえで、影響力のある店として自分たちが仕掛ける面もあると認めます。ただし鶴岡さんは、うんちくを書いて客を引っ張るのは好まず、商品そのもので勝負していると話します。
種市さんも、前職を含めて自分は最も語らないタイプだと共感します。言いすぎると野暮になる、と鶴岡さんと近い感覚を明かしました。
俺は逆に言うとそれは言いすぎると野暮になるって思ってるタイプだから、それは実はヒデと似てて。
100年の老舗が「うんちくだけじゃない」と語るのは面白い、と種市さんは受け止めます。それに対する鶴岡さんの返しも、この回らしいものでした。
語りすぎるとさ、ボロが出ちゃうじゃん。
最後に鶴岡さんは、「買ってみようかな」と思わせる株を揃えることが自分の仕事だとまとめました。次回は、鶴岡さんが苦手とする領域を小畑さんの力で補えないか、という話へつながっていきます。
まとめ
定価のないサボテンの世界では、目利きと感性が価格を決め、それを誠実に続けてきたことが老舗の信頼につながっていました。うんちくよりもの自体で勝負する姿勢と、話題のコラボ鉢の裏側から、嗜好品市場の奥深さが見えてきます。
- 種から育てた株には定価がなく、店の感性で値付けされる
- 小さな苗の段階で将来性を見抜くのが目利きの核心
- NEIGHBORHOODやFRAGMENTとのコラボ鉢は、1人の作家の鉢への熱から生まれた
- 育成の鍵は日当たりと観察で、種類ごとに適した環境が異なる
- 鶴仙園はうんちくではなく商品そのもので勝負する姿勢を貫いている
