サボテンの魅力は「一つとして同じ顔がない」造形美
番組後半のテーマは、サボテンの魅力の掘り下げから始まりました。小畑さんが一言で言うと何が魅力かと尋ねると、靏岡さんはまず造形美を挙げます。
サボテンって造形美が一番の魅力かな。一つとして同じものがない、唯一無二の形を作る。実生で種をまいても、やっぱり一つ一つ顔が違ってくるので。
植物なら全部そうでは、という問いに対し、靏岡さんは市場に出回る花は同じものを増やして流通させるため均一だと説明します。
一方でサボテンや多肉植物は、一株ずつに差があるといいます。ただし、その差は趣味にしないとわかりにくいものだそうです。
うちの温室に来ていても、全部同じに見えていたと思うんですけど、やり始めると、そのちょっとの差を見るようになる。コレクション性があるんです。
種市さんは、この楽しみ方をデニムに例えます。同じ501でも、赤耳や製造国の違い、色落ちの差といった細かいディテールを見比べる感覚に近いといいます。
靏岡さんによれば、見分けるポイントはトゲの色や肌の質感です。黒いトゲ、白いトゲ、肌の色の違いなど、一株ごとにバリエーションがあるそうです。
光・風・水で自生地を再現する栽培の基本
話題は、実際にどう育てるかへ移ります。サボテンは球形で、一つ一つがゆっくり大きくなる植物だといいます。ある程度の大きさになると、2年に一度は鉢替えが必要だそうです。
育てる基本として、靏岡さんは日光、風、水の3つを挙げます。
お日様によく当てて、鉢の中の培養土が乾いたらたっぷり水をあげる。で、風をしっかり回してあげる。
日光が足りないと、間延びして成長が悪くなったり、根腐れにつながったりするそうです。
「風を回す」とは、空気がよどまないようにすることだといいます。ベランダなど壁で空気が滞る場所では、扇風機を使うのも有効だそうです。
靏岡さんは、栽培の面白みを自生地の環境を家庭で再現することだと語ります。
この植物はこういう環境に住んでるんだなっていうイメージをしながら、その環境を自分の家庭でできる限り作ってあげる。それが一番の面白みかもしれない。
水は自分でコントロールできるため、1週間から2週間あげなくても、日光さえ当たっていれば平気だといいます。旅行が多い人でも扱いやすいそうです。
庭に置く場合、サボテンは雨に当たらない軒下や屋根の下がよいとのこと。一方で多肉植物には雨ざらしで育てられる種類もあり、管理する場所によっておすすめする植物も変わってくるそうです。
日光
最も大事な要素。不足すると徒長や成長不良、根腐れにつながる
風
空気をよどませない。壁で滞る場所は扇風機で回す
水
自分でコントロールできる。培養土が乾いたらたっぷりあげる
生産・セレクト・販売を全部こなす植物のセレクトショップ
鶴仙園がどんな形態の店なのかも話題になりました。花市場のように、サボテンにも市場卸の業者はいるといいます。ただ靏岡さんは、マニア的なものを扱うため、生産者のもとまで足を運ぶことが多いそうです。
靏岡さんは、自分の植物観にかなったものだけを仕入れて作り、販売するスタイルだと語ります。千葉では自分で種をまいて生産もしつつ、苗を買って大きく育てることもあるそうです。
種市さんは、その立ち位置をセレクトショップに例えます。
植物のセレクトショップみたいな感じで、いろんな業者さんや仲間、時にはライバルだったり仲間だったりするけど、助けてもらって商品を分けてもらって、池袋で販売しているという形だね。
以前は鶴仙園が販売するサボテン・多肉植物だけを扱う店でしたが、今は他店の名前を出して「何々さんのものが入りました」と紹介することもできるようになったといいます。
サボテン屋の始め方を問われると、靏岡さんは意外な答えを返します。
サボテン屋さんは、お金儲けをしようと思ってやると失敗する。趣味の世界だから、売ろう売ろうと思うと、多分売れないと思う。
鶴仙園が販売する自社のサボテン・多肉植物だけを扱う店
自社生産に加え、他店の商品も仕入れて紹介する植物のセレクトショップ
大学時代、父のヘルニアがきっかけで継いだ3代目
小畑さんは、3代続く家業を継ぐことに抵抗はなかったのかと尋ねます。靏岡さんは、すんなり継ぐ気にはならなかったと明かします。
転機は大学時代でした。父がヘルニアで半年ほど仕事ができなくなり、その間ずっと手伝っていたそうです。
その間ずっと手伝ってて。サボテン屋さんの会合がいろいろあるので、そういうところに出て、サボテン屋になるって紹介されちゃって。
種市さんは学生時代からの知り合いとして、靏岡さんの人柄を振り返ります。弟たちがやんちゃだった一方で、長男である靏岡さんはしっかりしていて、いずれ継ぐのではと外から見て思っていたそうです。
靏岡さんは、海外へ行けとも言われたものの、大学4年で卒業してすぐ結婚し、企業に勤めることなく家業に入ったといいます。
あんた生活力あるの?って、向こうの親に言われて。
さまざまな事情が重なり、一生懸命サボテンをやって今に至ると靏岡さんは語りました。
インスタで火がついたエケベリアと「鉢の沼」
なぜみんな買うのか、という小畑さんの問いから、購買層の話へ広がります。靏岡さんによれば、今は女性の愛好家も多いそうです。
女性に人気なのがエケベリアという種類です。バラの花のような、柔らかい姿の多肉植物だといいます。
種市さんは女性が入るきっかけを不思議がりますが、靏岡さんはエケベリアの流行はインスタグラムがきっかけだと説明します。
インスタで「ミックスベリア」というブランドを立ち上げた人物がいたそうです。1番から100番台まで番号がつけられ、コレクションとして競って買われるといいます。
ミックスベリアという商標を取って商品化する。エケベリアの交配種をいろいろ作って。基本的には雑種だけど、いいものを作って。
種市さんは、これを既存のジャンルに視点とやり方で価値を与えるブランディングだと評します。もともと花好きだった人が、より土いじりの世界へ移行してくる流れもあるそうです。
話はさらに、植物を格好よく見せる鉢の世界へ進みます。靏岡さんが始めた頃はプラ鉢が主流でしたが、そこから陶器鉢と植物を合わせる文化を作り出していったといいます。
そのコーディネートがまた楽しいらしいのよ。洋服みたい。この上にはこれが合うみたいな。
靏岡さんによると、植木鉢を作る格好いい作り手が出てきて、鉢目当てに行列ができることもあるそうです。植物と鉢を、洋服のスタイリングのように楽しむ文化が根づいてきたといえます。
ハオルチアの世界的ブームと、店の歩み
靏岡さんがこの世界を始めたのは、バブルがはじけた頃でした。趣味の嗜好品ほど不況の影響を受けやすく、一番底の状態からのスタートだったといいます。
僕が始めた時はもうバブルがはじけて、一番底辺に行ったサボテン屋から始めています。
そこから靏岡さんは、ハオルチアという多肉植物を諸先輩に勧められ、綺麗だと思って作り続けたそうです。それがたまたまブームに当たったといいます。
靏岡さんによれば、中国やタイなど諸外国でもサボテン・多肉植物のブームが起き、日本のものがいいと仕入れられるようになったそうです。
世界的にブームが起きているんですよ。で、やっぱり日本のものがいい、日本から仕入れようって。
人気のサイクルは早く、洋服のトレンドのように移り変わると靏岡さんは語ります。だからこそ、栽培場では常にオールジャンルを作るようにしているそうです。
番組の最後には、種市さんの母が実際に多肉植物を持ち帰ったエピソードも飛び出し、小畑さんと種市さんがそろって「欲しくなってきた」と口にしていました。次回はトレンドの話をさらに深掘りする流れとなりました。
まとめ
サボテン・多肉植物の魅力は、一株ごとに顔が違う造形美と、光・風・水で自生地を再現する育てる面白さにありました。鶴仙園は生産からセレクト、販売までを担う植物のセレクトショップとして、鉢とのコーディネートや世界的なブームとともに歩んできたことが語られました。
- サボテンの魅力は、一つとして同じ顔がない唯一無二の造形美とコレクション性
- 育てる基本は日光・風・水の3つで、自生地の環境を家庭で再現するのが面白み
- 鶴仙園は生産・セレクト・販売を全部こなす「植物のセレクトショップ」
- 靏岡さんは父のヘルニアをきっかけに、大学時代から家業を継いだ3代目
- エケベリアやハオルチアのブームには、インスタや世界的な人気が背景にある
