今日の牧場の様子と近況
配信は7月15日水曜日、最高気温34度の晴れ時々曇りという猛暑日に行われました。この日、川上さんは子牛の出荷を控えていて、島根県の子牛市場に牛を出品する予定だと語ります。牛の価格が高騰しているなか、自身の牛は血統が早いため、どれくらいの評価になるか心配しつつも楽しみにしているとのことでした。
また、前日の会議で会計係という役職が新たに一つ増えたことにも触れ、「牛舎での仕事ができなくなる」とこぼしつつも、「会議に出て意見を言わないと組織は変わらない」と前向きに語っていました。若手の参加者が少ないことが課題だとも話しています。
会議に出て意見を言わないとどんどん変わらないので、頑張っていきたいなと思ってます。
夏の猛暑と牛乳供給の懸念
川上さんの牧場では、暑さで牛の食欲が落ちているものの、直近のバルク乳検査で乳脂肪が4%を超えていたと報告しています。餌の配合を増やして無理に絞ると、秋口に牛が体調を崩して倒れてしまうため、乳量を増やさず牛の体調を優先しているとのことでした。
一方で、連日の猛暑によって全国的に搾乳量が減少し、一部地域では「お一人様牛乳パック1本まで」という制限や、そもそも販売されていない地域も出てきているといいます。川上さんはこれを「由々しき事態」とし、北海道への一極集中化の懸念にも触れながら、夏場の牛乳をしっかり飲んで応援してほしいと呼びかけました。
牛乳は熟成するのか?
牛乳を買って5日くらい経った牛乳の方が美味しく感じます。熟成や発酵で旨味が増すのでしょうか?
普段から「牛乳は鮮度が命」「搾りたてが美味しい」と伝えてきた川上さんは、この質問を初めて聞いたときは「そんなことあるわけない」と感じたそうです。しかし、きちんと調べてみないとわからないと考え直し、実際に調べてみたところ、いくつかのことがわかったといいます。
まず結論として、牛乳はチーズやヨーグルトのように熟成する食品ではありません。チーズ微生物や酵素の働きでタンパク質や脂肪が分解され、時間とともに香りや旨味が増していく発酵食品。は微生物や酵素の働きでタンパク質や脂肪が分解され、香りや旨味が増していきます。ヨーグルト乳酸菌が乳糖(乳の糖分)を分解することで、酸味や独特の風味が生まれる発酵乳製品。も乳酸菌が乳糖を分解して風味が変化します。
一方、市販の牛乳は殺菌されています。日本で販売される牛乳のほとんどは、細菌が増えないように加熱殺菌され、その後は冷蔵保存されます。つまり、時間が経つことで美味しく熟成することは基本的にないのです。
微生物や酵素の働きで分解が進み、香りや旨味・酸味が増していく「熟成する食品」
加熱殺菌・冷蔵保存されるため、時間が経っても基本的に熟成はしない
数日後の方が美味しく感じる3つの理由
では、なぜ5日ほど経った牛乳の方が美味しく感じる人がいるのでしょうか。川上さんは考えられる理由を3つ挙げています。
1つ目の温度については、牛乳に限らずジュースや果物でも同じで、冷蔵庫の奥でキンキンに冷えた牛乳より、少し温度が上がった牛乳の方が甘みや香りを感じやすいといいます。「買って5日後」というより、飲むときの温度が違っていた可能性があるという指摘です。
2つ目の脂肪球については、牛乳はホモジナイズ牛乳中の脂肪を細かく砕いて均一化する工程。均質化とも呼ばれ、これにより脂肪の分離(クリームが浮くこと)が起きにくくなる。という工程で脂肪を細かく砕いているため基本的に分離しません。ただ、保存中にわずかな変化を感じる人もいるとのことです。
そして川上さんが「一番大きいかもしれない」と語るのが3つ目の味覚です。疲れている日は甘いものが美味しく感じ、暑い日は冷たい牛乳、寒い日は温めた牛乳が美味しく感じるように、同じ牛乳でも飲む環境で印象は大きく変わります。
時間が経つと品質はどう変わる?
では、時間が経っても本当に何も変わらないのでしょうか。川上さんは「実は少しずつ品質は変化していく」と説明します。冷蔵保存していても、牛乳中の酵素や脂質はゆっくり変化します。ただし、これは旨味が増える変化ではなく、鮮度が少しずつ落ちていく変化です。
メーカーは賞味期限を設定するときにこの品質変化を考慮しています。つまり、賞味期限内であれば安全に飲めますが、「熟成して美味しくなる」という考え方とは違うということです。
特に夏のこの時期は要注意で、「ちょっと酸っぱいな」と思ったら飲むのをやめるよう、川上さんは強く注意を呼びかけていました。開封後であれば賞味期限内でも、保存状態によっては飲まない方がいい場合があるとのことです。
美味しさは鮮度だけでは決まらない
今回の質問を通して川上さんが改めて感じたのは、「美味しさは成分だけ、鮮度だけでは決まらない」ということでした。牛乳の温度、飲むタイミング、その日の体調、一緒に食べる料理といった条件で、同じ牛乳でも全く違う印象になります。
そのため、リスナーが「5日後の方が美味しい」と感じるのは決して間違いではありません。ただ、その理由は牛乳が熟成して旨味が増えたからではなく、飲む条件や味覚の変化が影響している可能性が高いと考えられます。
一生懸命絞って、いち早く皆さんのところに届けようって思ってるんですけど、消費者の皆さんはそういうのを求めてない可能性もあるっていうのを知って、ちょっと衝撃でございます。
酪農家としては、いち早く鮮度のいい牛乳を届けたいと考えているだけに、この発想は「衝撃だった」と川上さんは率直に語ります。それでも「5日目の牛乳が美味しい」という発想があると、牛乳の価値観の幅が広がるのかもしれない、といろいろ考えさせられた質問だったと締めくくりました。
まとめ
今回は「牛乳は買って5日後の方が美味しいのか」という珍しい質問をきっかけに、牛乳が熟成するのかどうかを酪農家目線で掘り下げました。結論としては、市販の牛乳は殺菌・冷蔵保存されているため熟成はしないものの、温度・脂肪球の状態・味覚の変化によって「美味しく感じる」ことは十分にありうる、というのが川上さんの解説でした。
鮮度を追い求める酪農家と、飲む条件によって印象が変わる消費者。両者の視点の違いから、牛乳の価値観の幅が広がるヒントが見えた回でした。ただし、酸っぱく感じる牛乳は品質が変化しているサインなので、特に夏場は無理に飲まないよう注意が必要です。
- 市販の牛乳は加熱殺菌・冷蔵保存されているため、チーズやヨーグルトのように熟成することは基本的にない
- 5日後の方が美味しく感じる理由は「温度」「脂肪球の状態」「味覚の変化」の3つが考えられ、特に味覚の影響が大きい
- 冷たすぎると甘みを感じにくく、少し温度が上がった牛乳の方が甘みや香りを感じやすい
- 時間が経つと品質は少しずつ落ちる(鮮度低下)が、旨味が増える変化ではない
- 酸っぱく感じる・ヨーグルト状になった牛乳は微生物が増えたサインで、特に夏場は飲まない方がよい
- 美味しさは成分や鮮度だけでなく、飲むタイミングや体調など環境全体で決まる
