初めての出産を見た研修生の感想
収録日は11月17日。今日のテーマは研修生からのリクエストで「牛の出産」です。
研修生は牛の出産を初めて見たばかり。川上さんに感想を聞かれ、「生命の誕生」への感動を語りました。
感動しますよ。やっぱりこんにちはって感じ。この世界にこんにちはっていう。
川上さんは少しゆるいとツッコミつつ、話は牛のお産の仕組みへと進んでいきます。
自然分娩と、人が助ける分娩のちがい
研修生の疑問は「自然の牛は、逆子だとほぼ死んでしまうのか」というものでした。
川上さんによると、体勢や流れが正常なら、お母さんと子牛の共同作業でちゃんと生まれるそうです。
自然の牛は自然分娩で、ちゃんとした体勢で流れがちゃんとしてると、ちゃんと生まれるんです。
ただ、正常にならない場合は「整復」といって、お腹の中の子牛の向きを直してあげないと分娩が止まり、最悪死んでしまうこともあります。
自然に治るケースもありますが、お母さんが座った拍子や陣痛の衝撃でたまたま元に戻る、という「時の運」に近いものだといいます。
助ける派の理由と、悔しさ
自然分娩と介助、どちらがいいのか。研修生の問いに、川上さんは意見が二極化していると答えます。
見つけたら助けた方がいいという獣医もいれば、人が介入するのは不自然だという立場もあるそうです。
医学的にどちらがいいかの統計はまだない、というのが現状のようです。そのうえで川上さんは「助ける派」だと話します。
自分で産めっていうの、大変じゃん。ちゃんとした適切な助け方をしてあげた方がいいかなって思ってる派ですね、僕は。
経営者としての本音も語られました。助けられたはずなのに助けられなかったときの悔しさが大きい、というのです。
逆子・胎盤剥離、赤ちゃんが亡くなる理由
子牛が亡くなるのは逆子のときだけではありません。川上さんはいくつかのケースを説明します。
まず逆子。通常は頭から出ますが、後ろ足から出ると体が出る前にへその緒が切れてしまいます。
へその緒が切れた瞬間に、後ろ足から出てる場合だと、頭がお腹の中にあるので、羊水をそのまま吸ってしまって、窒息してしまう。
だから逆子では、へその緒が切れた瞬間にすばやく出してあげる必要があります。赤ちゃんは本来くるくる回りながら骨盤を痛めないように出てくるため、引っ張るときも回しながらが楽なのだそうです。
もうひとつが「胎盤剥離」。破水や陣痛から時間が過ぎると、赤ちゃんを包む膜がお母さんから剥がれてしまいます。
胎盤剥離が起きると、へその緒はつながっていても酸素が届かず、お腹の中で亡くなってしまうことがあります。
見極めは観察だけ、そして分娩監視の道具
では異常はどう見極めるのか。研修生の問いに、川上さんの答えはシンプルでした。
観察しかないです。
朝の搾乳で尻尾を上げていたのに気づかず夕方まで放っておくと、亡くなった状態で出てくることもある。正常な分娩の目安は陣痛が始まってから2時間以内だといいます。
一方で15分ほど話しているうちに生まれることもあれば、なかなか生まれないこともあり、本当に牛次第です。
つなぎ牛舎では、後ろで生まれた赤ちゃんのところへお母さんが行けないため、冬場は低体温症や溝への転落といったリスクもあります。板を敷いたり監視カメラをつけたりして対応しているそうです。
分娩監視には、体温変化でメールを知らせるセンサーもあります。膣内にセンサーを入れ、体温が下がったタイミングで通知が届く仕組みです。
子牛一頭死んだら元が取れるので。
帝王切開はどんなとき?麻酔をかけない理由
帝王切開もあります。ただし牛の場合、麻酔をかけないことが多いと聞いて研修生は驚きます。
牛に麻酔かけたら、お乳を絞れなかったりするじゃないですか。子牛にも麻酔が行ってしまったら、そのまま死んでしまう。
体を固定するので大暴れはしないものの、麻酔なしでメスを入れることもあるといいます。
帝王切開が必要になるのは、黒毛和牛の子牛が大きすぎて出てこられないようなケース。お母さんが苦しさから息むのをやめ、途中で餌を食べ始めてしまうこともあるそうです。
陣痛でうーとかって言いながらパクパクみたいな。苦しみながら草食うんだと思って。
息むのをやめると産道が開かなくなり、狭い産道で大きな子牛は出せないと判断されると、お腹の横を切って取り出します。
双子のときも帝王切開が多くなります。両方が同時に出てこようとしたり、中で絡み合ったり、片方だけ逆子だったりと、パターンがさまざまだからです。
牛はなぜ夜に産むのか
最後に、牛の出産が夜に多い理由が語られました。
野生では放牧場で外敵に襲われやすいため、夜に産むのが生物として自然なのだといいます。研修生が出産に立ち会えたのは、それだけ確率の低い出来事だったわけです。
川上さんは、赤ちゃんがお腹の中でどうなっているかがわかる海外の解説動画を探して見てみてほしい、とすすめて締めくくりました。
まとめ
研修生が初めて見た牛の出産をきっかけに、自然分娩と介助のちがい、逆子や胎盤剥離、帝王切開まで、牛のお産のリアルが語られた回でした。人が「どこまで手を貸すか」に正解はなく、日々の観察と判断が命を左右することが伝わってきます。
- 正常な体勢なら牛は母子の共同作業で自然に生まれるが、異常時は整復が必要になる
- 介助の是非は意見が二極化しており、川上さんは「助ける派」
- 逆子や胎盤剥離など、子牛が亡くなる原因は逆子だけではない
- 異常の見極めは基本的に観察頼み。監視カメラや体温センサーも活用されている
- 帝王切開は子牛が大きすぎる場合や双子などで行われ、麻酔をかけないことが多い
