冷凍牛乳と、伸びる賞味期限のはなし
この日のテーマは「畜産の最新技術」。まず話題にあがったのが、北海道で始まった冷凍牛乳です。
牛乳は普通に凍らせると、脂肪分と水分が別々に固まって分離してしまいます。解凍するとシャバシャバになってしまうんですね。
ところが川上さんによると、マイナス60度ほどのアルコールの液体に瓶ごと入れる特殊なフリーザーを使うと、分離せず普通の牛乳として飲める冷凍牛乳ができるそうです。
牛乳の賞味期限がめっちゃ伸びるので、海外に売れたりとか、販路が広がったりとか、飲み方もいろいろ変わってくるよねみたいな感じで。それは面白いな。
さらに、大手メーカーが牛乳の賞味期限を2日間伸ばした話も。これは昔の流通や販売方法に合わせた古い基準が見直されたためだと説明されています。
牛乳は農産物。鮮度をめぐる会話
話は牛乳の鮮度へ。地元・島根のスーパーだと、搾ってから3〜4日で並ぶこともあるそうです。
牛乳は新鮮な方が美味しいんですか?
もう完全に農作物なので。白くて見た目はよくわからないけど、キャベツや果物と一緒で、2〜3日経ったやつと新鮮なやつだと、やっぱり新鮮な方が美味しいです。
一方で、お肉は少し置いた方がアミノ酸が分解されて旨味が増すとも。ただしスーパーの肉は一番おいしいタイミングで並んでいるので、買ったらすぐ消費するのがおすすめだそうです。
「東京で飲む北海道の牛乳は味が落ちるのでは」という研修生さんの問いには、今は流通がとても気を使っているので、そんなに変わらないと川上さんは答えます。
その流通の話から、輸出用の大きなタンクをそのまま船で運べる技術や、北海道から沖縄へ飛行機で直送する取り組みへと広がっていきました。
大量流通を支える「コールドチェーン」
海外展開で鍵になるのが、冷蔵したまま各国・各地域へ配れる仕組みです。
冷凍できたら一番いいですよね。
冷凍できたらだけど、大量流通しようと思うと、日本で冷蔵して向こうに持っていっても、そこから各国や各地域に配布できるコールドチェーンがないとできないことなので。
だからこそ、牛乳そのものだけでなく、流通網の技術も日本は輸出していかないといけない、と川上さんは話します。
臓器移植用の豚と、リスクゼロを求める国
続いて川上さんが「今、激アツ」と語ったのが、臓器移植用の豚です。日本でも育てられるようになったそうで、これも規制改革のひとつだと説明されています。
海外では、豚から作った腎臓を移植した人が最長7ヶ月まで健康に生きている事例があるとのこと。ただ、日本はリスクゼロを求める国なので、1年後に拒絶反応が出るかもしれない、といった長期の安全性を気にすると、なかなか踏み切れないといいます。
他の動物の臓器を人間の中に移すって、すごい抵抗感があるというか。なんか不思議な感覚じゃないですか。
全然、僕は技術に対してどんどんやってくれって思ってるから。だって自分の身内で治せない病気とか出てきたら、僕は絶対それにすがるけどね。
川上さんは、人工透析の大変さや、生まれたばかりでドナーがいない子どものことを思うと、どんどん進めてほしいと考えているそうです。
一方で「何たることか」と反対する人もいます。動物の生死の方が尊重される感覚や、アニマルウェルフェアの考え方が背景にあるのでは、と話が広がりました。
現場で変わる、命との向き合い方
ここから話は、研修生さん自身の心境の変化へ。犬のような愛玩動物とちがい、牛は経済動物です。育てた牛もいずれお肉になります。
客観的に見たら可哀想かもしれないけど、いろいろ含めて考えたら、なんかまあでもしょうがないでしょとは思い始めてはきてます。
川上さんは、これを「川上イズムに汚染されてる」と冗談めかしつつ、リスナーからも毎年、研修生が年々変わっていくと言われるのだと明かします。
リスナーの皆さんが、毎年研修生が来るたびに、最初はこういう感じだったのに、だんだん汚染されてるって言い方されるんですよ。
ただ川上さんは、これを前向きにとらえています。畜産・酪農をやるなら、命とは辞めるまで、いや死ぬまで向き合っていかなければいけない。だからこそ現場での実感が大事だといいます。
結局やってみると、何もわかんないですからね。
AIカメラと、これからの酪農経営
最後は、酪農現場でのAI活用へ。ChatGPTがブラウザ上で操作できるようになった話から、畜産でのAI事例へと話が進みます。
SNSで話題になっていたのは、カメラで写真を撮るだけで牛の体重がわかる技術や、搾乳室(パーラー)に来る牛の歩き方を解析する技術です。
これまでは首や耳にセンサーをつけて行動量を把握していましたが、牛舎にカメラを設置するだけで、発情や餌を食べていない状態までわかるようになってきたそうです。
ただし川上さんは、便利さと採算、そして現場に本当に普及するかは別だと冷静に見ています。良い技術が出ても「今のでいいや」となれば進まないからです。
「一番欲しい技術は?」という問いには、搾乳ロボットと自動餌やり機を挙げつつ、牛舎が古くて重い設備を置けない事情も語られました。
さらに研修生さんが「糞に特化した酪農があっても面白い」と話すと、川上さんも経営の多様性が広がると応じます。
牛乳を売るだけじゃなくてね、酪農の条件としてやりにくいところでも、牛を飼って経営が回る可能性が出てくる。そういうのは面白いなと思いますね。
まとめ
冷凍牛乳やコールドチェーン、臓器移植用の豚、AIカメラまで、畜産をめぐる技術は目まぐるしく変わっています。そしてその裏で、命や家畜への価値観も少しずつ変わっていく。技術と現場の実感の両方を大事にする川上牧場らしい回でした。
- 特殊な冷凍技術で分離しない冷凍牛乳が登場し、牛乳の販路や飲み方が広がりつつある
- 牛乳は農産物で鮮度が命。海外展開にはコールドチェーンという冷蔵物流の技術が欠かせない
- 臓器移植用の豚は海外で最長7ヶ月の事例があり、日本の規制やアニマルウェルフェアとの間で議論がある
- 研修生さんは現場を通じて、経済動物としての命の見方が少しずつ変わってきている
- カメラで牛の体重や行動を解析するAI技術が登場する一方、採算と普及は別の課題として残る
