今日の質問はバターの値上がりについて
今日の配信では、リスナーから届いた質問に答えていきます。届いた質問は、牛乳とバターの価格の違いについてでした。
牛乳は割と価格が安定しているイメージですが、バターがよく値上がりしているのはなぜなのでしょうか?
川上さんは「実は酪農家から買い取る牛乳の値段も上がっていて、それが価格に反映されている部分もある」と前置きしつつ、そもそも価格がどう決まっているのかを調べてきたと話します。
牛乳が安定して見える理由
日本の飲用牛乳、つまりそのまま飲む牛乳は、毎日スーパーに並んで当たり前の食品です。だからこそ、価格変動を抑えて在庫を切らさないという方針が、国レベルで強く働いています。
飲む牛乳は生活必需品に近いので、価格が乱高下しないように仕組みが作られている。これが牛乳が安定して見える理由なんですね。
バターは「余った脂肪」で作られる
ここが今回いちばん大事なポイントです。バターは、余った乳脂肪で作られる食品なんです。
牛乳というのは、水・乳糖・たんぱく質・乳脂肪がセットになった原料です。そして日本の乳業は、まず最優先で飲用牛乳を作ることを目的にしています。
バターはどう作られるかというと、飲用牛乳を作ったあとに余った乳脂肪を集めて作られます。
つまりバターはメインの商品ではなく、副産物から作られる。これが全ての根っこにあります。
一方で牛乳の生産量は年々減っていて、生クリーム・洋菓子・パン・外食といった需要は増えています。つまり乳脂肪の需要が増える中で、国内の生産量は減っているというギャップがあるんですね。
乳業の最優先
飲用牛乳を作ることが目的
バターの立ち位置
飲用牛乳を作った後の余った乳脂肪で作る副産物
需要と生産のギャップ
乳脂肪の需要は増えるのに国内生産量は減っている
結果
脂肪が足りず、不足イコール価格上昇になる
牛乳をいっぱい絞ればいい、とはいかない理由
「じゃあ牛乳をいっぱい絞ればいいじゃん」と思うかもしれません。でも、そこに落とし穴があります。
牛乳1Lに含まれる乳脂肪の割合は3.5%から4%程度。皆さんが買っている牛乳の裏の表示表を見てみてくださいね。つまりバター1kgを作るのに、牛乳が20Lから25Lも必要なんです。
だけど日本では飲用向けの牛乳が優先されます。飲む人が減っているのに、乳脂肪、つまりバターだけは欲しいという、アンバランスな構造が続いているんです。
価格の仕組みの違いが高騰を生む
さらに、価格の仕組みの違いもバターの高騰につながっています。
牛乳の飲用向けは価格を急に上げられませんし、国が制度で安定させている部分があります。牛乳は毎日作って毎日売られる商品です。
一方バターは、在庫が少しでも減ると価格が乱高下します。輸入品も限定的なので、需要の変動が直撃するという側面があるんですね。
しかも製造ラインを自由に増やせません。乳業工場の枠が決まっていて、バターを作れる工場も限られています。
牛乳は安定供給の商品で、バターは不足するたびに価格が変動する商品というふうになっています。
なぜ慢性的に不足が続くのか、3つの理由
では、なぜバターの原料になる乳脂肪が慢性的に不足し続けるのか。川上さんは理由を3つ挙げます。
1つ目は、日本は乳脂肪を増やしにくい家畜飼養構造だということ。今年も5月ごろから10月ごろまでずっと暑く、半年間ほど続いた夏の暑さの影響があります。加えて飼料を輸入していることや、粗飼料不足も関係します。乳脂肪を上げるには草が豊富に必要なので、そこが不足すると牛の乳脂肪率が落ちやすいんです。
2つ目は、工場の処理能力が上限に近いこと。乳業工場は急に脂肪だけ倍作れる状態ではありません。
バターのラインを増設するには数十億から100億円規模の投資が必要で、すぐにはできないというところがあります。
3つ目は、消費動向の変化が激しいこと。パン、スイーツ、外食のクリームなどが一気に伸びても、生産が追いつかないんです。テレビを見て「美味しそう」とすぐ買ったり、「もう飽きた」と買わなくなったり、そうした動きに影響を受けやすいんですね。
理由1
乳脂肪を増やしにくい飼養構造(夏の暑さ・飼料輸入・粗飼料不足)
理由2
乳業工場の処理能力が上限に近く、増設に巨額の投資が必要
理由3
パン・スイーツ・外食の需要変動が激しく生産が追いつかない
輸入バターと未来への取り組み
続いて川上さんは、需要と供給のギャップをどうすればいいかという未来の話をします。
難しいのは、需要と供給のバランスがリアルタイムに共有されていないこと。そこでAIやWeb3を使い、消費と生産のバランスをリアルタイムに観察するシステムを、メタグリ研究所と一緒に作ったそうです。牛乳パックの裏の表示表やゲームで遊びながら消費動向を教えてもらうと、それが生産現場につながる仕組みなんだとか。
さらにコメント欄では、輸入バターの話にも触れました。海外から輸入されるのは主に加工向けの「ポンドバター」と呼ばれる20kgほどの業務用バターで、スーパーで買う国産バターとは分かれています。
ただ、海外からバターを輸入するほど日本のバター市場が圧迫されます。円安が進むと輸入価格も上がり、海外に頼りすぎると何か問題が起きたときに価格が跳ね上がるリスクもある。安定させるのが難しい構造なんですね。
消費者の皆さんがポンドバターをたくさん買ってしまうと、海外からの輸入意欲が増えて加工バターがどんどん入ってきて、国内の酪農家の牛乳の価格が落ちてしまうという側面もあります。
コメントで届いた素朴な疑問に回答
配信の後半では、リスナーから届いたさらに素朴な疑問にも答えていきました。
バターを作るために脂肪を抜いた後の液体はどうしているんでしょうね。
バターを作るときには、脂肪を取り除いたお乳が必ず出ます。これを粉末にしたものが脱脂粉乳で、ヨーグルトなどの加工品に使われます。
牛乳1Lから取れるバターは40gほどで、それ以外はほぼ脱脂粉乳になります。だから脱脂粉乳はどんどん増えてしまうんですね。在庫が積み上がると牛の餌に回す動きもありますが、餌にすると食品として売るより安くなり、酪農家の手取りが下がってしまうという難しさもあります。
スーパーで見かけるバターは無塩バターの方が高いのはなぜでしょう。塩分を足した方が高くなると思うのですが。
塩分を足すと水分が抜けて歩留まりが良くなり、保存性も上がって賞味期限が長くなります。その分、在庫や流通がしやすくなるため、有塩バターの方が価格が安くなりやすいそうです。逆に無塩バターは賞味期限が短めになります。
まとめ
牛乳は生活必需品として国レベルで安定供給される一方、バターは飲用牛乳を作った後の余った乳脂肪で作られる副産物。だから脂肪が足りない日本では、バターだけ値上がりが起きやすいという構造が見えてきました。
- 日本の乳業は飲用牛乳を最優先で作り、価格が安定するよう国の仕組みが働いている
- バターは余った乳脂肪で作られる副産物で、脂肪が不足すると価格が上がりやすい
- バター1kgには牛乳20〜25Lが必要で、飲む人が減っても脂肪の需要は増えるアンバランスがある
- バター製造の副産物として脱脂粉乳が大量に出るなど、乳製品どうしはつながっている
- 輸入バターや無塩・有塩の価格差の背景にも、保存性や市場のバランスという理由がある
