農業高校生から届いた「資格はいる?」という質問
今回のお便りは、Instagramのストーリーズに届いた質問から。農業高校で酪農を勉強しているミオさんからのものです。
酪農関係の仕事をする上で必要な資格はありますか?
川上さんは、参考にと川上牧場のSNSを見てくれていることに感謝しつつ、こう受け止めます。未来の酪農を作っていくのは若い世代だ、という気持ちで答えたい、と。
未来の酪農を支えるのは、作っていくのは君たちだっていう気持ちでやらせていただこうと思っております。
この質問は川上牧場にもよく届く「あるある」なんだそうです。今回は事前にまとめを準備して、じっくり答えていきます。
結論:ほとんどの酪農の仕事に資格はいらない
まず結論から。ほとんどの酪農の仕事は、資格がなくても始められます。そもそも農家という職業には、必須の資格がないんですね。
牛の世話、搾乳、餌やり、牛舎の作業。これらをやるのに、法律で決められた必須の資格はありません。
未経験でも、学生でも、他業種からの転職でも大丈夫。他の産業と比べても、かなり珍しい特徴だと川上さんは話します。
あると役立つ資格たち
ただ、資格に意味がないという話ではありません。仕事の内容によっては、あった方がいい資格もあります。
まず多いのが、大型特殊免許とけん引免許。大型特殊免許はトラクターに、けん引免許はトラクターの後ろにつける作業機を運転するために役立ちます。機械を使った仕事に就けるようになるわけですね。
ポイントは、最初から持っている必要はないこと。多くの牧場では「働きながら取っていい」「必要になったら取ってきて」というケースがほとんどだそうです。
大きい牧場だと機械に乗らないと仕事にならない部分もあり、免許必須や「入ったら取ってもらいます」と書かれた求人票もあるとのこと。
フォークリフトもよく聞かれる資格。餌や資材を扱う牧場では役立ちますが、これも必須ではなく、入ってから会社負担で取るパターンが多いそうです。
専門職を目指すなら関わる資格
もう少し専門的になると、人工授精師や削蹄師といった資格が出てきます。家畜人工授精所の技術職として独立する場合などに、資格や講習が必要になります。
ただし、これはまず酪農をやってみてから考える世界。いきなりここを目指す必要はない、と川上さんは言います。
一方で、家畜人工授精師の講習では酪農の基礎をしっかり学べるため、就職の際の安心感にもつながるそう。国家資格で各都道府県知事の証明書が必要なので、県をまたぐと再発行の手続きは要るものの、どこでも使える資格です。
種付けの作業自体は資格がなくてもできますが、人工授精をしたという証明書を書くには資格が必要、という違いも説明されました。
削蹄も、資格がなくても自分の牛には行えます。他の牧場の牛を削蹄することはできませんが、講習を受けるのはかなりおすすめだと話していました。
資格より大事な「現場での姿勢」
ここからが、川上さんが今日いちばん伝えたい話です。酪農で本当に大事なのは、資格よりも現場での姿勢と感覚だといいます。
牛を怖がらせない動き、体調の変化に気づく観察力、毎日同じ作業を続ける持久力、わからないことを素直に聞ける力。これらは資格証では測れません。でも、牧場側が一番見ているのは実はここだそうです。
資格は後からいくらでも取れる。でも、人としての姿勢は簡単に変えられない。だから「資格がないから無理かな」と思っているなら、それは心配しすぎだと励まします。
まずは現場を見て、触れて、感じてみる。それが一番のスタート資格です。
スモールスタートと、若いうちに取る資格
資格が必須でないからこそ、酪農は1頭から始めることもできます。持ち家なら、家畜保健所やJAに相談し、近所の承認も得られれば、1頭からでもスタートできるのが農業なんですね。
農業全般も、家庭菜園から始めて道の駅やECサイトで直売したり、量が取れればJAに卸したりすれば、それで農家。第一次産業にはこうした始め方が多いといいます。
一方で、今から本格的に始めるなら、牧場で研修を受け、空いた牧場を任せてもらう流れが一般的だとも話します。必要な資格は牧場の規模や飼養管理のやり方、自分がどんな牧場をしたいかで変わってくるそうです。
ただし、取れる資格は若いうちにどんどん取っておくのがおすすめ、と川上さんは強調します。
若い時の間にですね、資格をバババって取ってしまった方がおすすめかなと思ったりします。
周りでも30を超えた人が講習所に通っていて、運転の練習も頭に入れるのも大変そうだとのこと。だからこそ、若いうちに取ってしまう方がいい、というわけです。
SNSで質問するときの注意
最後に、農業高校生や大学生に向けて、川上さんからひとつアドバイスがありました。
SNSをやっている酪農家の中には、変な人もいるので気をつけてほしい、ということ。レポートや卒論のために情報がほしいとメッセージが来ることもあるけれど、注意が必要だといいます。
これはもう酪農に限ったことではなく、SNSというのはそういうものなので、気をつけてくださいね。
鍵アカウントだから大丈夫、と思っても油断は禁物。気持ち悪い人もいるので、本当に気をつけてほしいと繰り返し伝えていました。
まとめ
農業高校生からの「酪農に資格は必要?」という質問に、川上さんが現場目線で答えた回でした。必須の資格はなく、大事なのは現場での姿勢。そのうえで、取れる資格は若いうちに取っておくのがおすすめ、という実感のこもったアドバイスが印象的でしたね。
- 牛の世話や搾乳など、酪農の基本作業に法律上必須の資格はない
- 大型特殊・けん引・フォークリフトなどは働きながら会社負担で取れることが多い
- 人工授精師や削蹄師は専門職・独立向け。講習は基礎学習として役立つ
- 牧場が一番見ているのは、挨拶・牛への優しさ・誠実さといった人としての姿勢
- 資格は若いうちに取るのが吉。SNSで質問するときは相手選びに注意を
