リスナーからの質問「牛は他の生き物に襲われる?」
今回のテーマは、TikTokのリスナー・Tラテ子さんから届いた質問です。
昔テレビで牛がカラスによる被害を受けていたのを見ました。川上牧場は熊が出ないとのことですが、他の生き物による被害はありますか?
川上牧場は住宅地に囲まれた都市近郊酪農都市部やその周辺で営まれる酪農のこと。周囲に住宅地や商業地が多く、大型の野生動物が出にくい一方、消費地に近いという特徴があります。なので、大型の野生動物の被害はあまりないそうです。
出てもタヌキが餌をかまう程度で、カラスやネズミはいるものの、熊やイノシシのような大型獣はほとんど出てこないと話します。
そのうえで今回は、他の牧場の被害やニュース、酪農ヘルパーとして各地を回って聞いた話などをまとめて答えていくとのことです。
一番深刻なのは「小さくて賢い」カラス
まず結論から。熊やイノシシがいなくても、牛は他の生き物から被害を受けることがあると川上さんは言います。
そして一番深刻なのは、体が小さく知能が高く、学習する生き物。その代表がカラスです。
特に狙われやすいのは、分娩直後の牛や起立困難牛、弱って横になっている牛など、抵抗できない状態の牛だそうです。
カラスが牛に与える具体的な被害
ここからはかなり具体的な話になります。カラスは赤いものや血管が浮いているところをよく狙うといいます。
まず乳房や乳房静脈牛の乳房に血液を送る太い静脈。皮膚の表面に浮き出て見えることがあり、傷つくと大量に出血することがあります。。突かれると出血し、そこから感染して乳房炎になり、最悪の場合は死につながることもあるそうです。
次に背中の皮膚が薄い脊髄付近。牛は四つ足で背中に口も足も届かないため、弱った牛は突かれるままになってしまいます。
そして一番つらいのが、産後の陰部への被害です。
分娩後は出血して組織が露出し、牛自身も疲弊しています。その状態で突かれると、短時間で深刻な損傷になるといいます。
朝来たら、もうそこをつつかれて食べられちゃってますね。
なぜカラスがここまでするのか。単なるいたずらではなく、高い知能と学習能力を持ち、仲間内で情報を共有しているからだと川上さんは説明します。
一度「ここは餌になる」「ここは安全」と学習すると、人がいない時間帯を狙って繰り返しやってくる、かなり厄介な存在なのです。
カラス以外の生き物による被害
被害を与えるのはカラスだけではありません。
キツネやタヌキは、子牛の初乳や胎盤、分娩後の血の匂いに寄ってきて、子牛の耳や尾を噛むこともあります。
ネズミは餌の飼料を荒らしたり、電気の配線をかじったりして、衛生面を悪化させます。配線をかじられて火事につながることもあるそうです。
さらに意外なのがハエや吸血昆虫。牛のストレスが増えて乳量が下がり、皮膚炎や感染症のリスクも高まる、立派な生き物被害だといいます。
完璧な対策はない、でも減らせる
では対策はあるのか。川上さんは正直に「完璧な対策はありません」と話します。それでも被害を減らすことはできると言います。
そして一番効果があるのは、人の目と手が入ることだといいます。
こうした話をすると「かわいそう」「そんな環境で飼うのは間違っている」という声が出ることもあります。
でも放牧でも舎外でも都市近郊でも、生き物同士の関係は避けられません。だからこそ大事なのは、なかったことにするのではなく、起こりうるリスクとして理解し、管理することだと川上さんは語ります。
病気の広がりと、それでも牛を守る酪農家
川上牧場の牛舎は屋根はあるものの囲われていない舎外で、カラスが自由に入ってこられる環境もあるそうです。
さらに地球温暖化の影響もあり、渡り鳥による鳥インフルエンザや、ハエが運ぶ病気も課題になっています。
たとえばランピースキン病牛に発熱や皮膚のこぶなどを引き起こすウイルス性の伝染病。もともとインドやアフリカで見られ、近年アジアにも広がっています。は、インドやアフリカあたりの病気が大陸を回り、韓国を経て日本に入ってくるようになりました。人やモノが動くことで、病気がどこでも広がるリスクがあるといいます。
牛乳の値段は大きく上がっていませんが、酪農家はこうした対策にもお金を投資しています。
生産性を落とさずに、なおかつ安全性もプラスさせて頑張っておりますので、牛乳が値上げする際は、こういう裏側も理解して、引き続き応援して飲んでいただけたら嬉しいです。
まとめ
熊やイノシシがいない都市近郊の牧場でも、牛はカラスをはじめとする生き物から被害を受けることがあります。目をそらすのではなく、現場のリアルを知ることが第一歩になりそうです。
- 熊やイノシシがいなくても、牛は他の生き物から被害を受けることがある
- 特にカラスは深刻で、弱った牛や分娩後の牛が狙われやすい
- キツネ・タヌキ・ネズミ・ハエなども被害や病気の原因になる
- 完璧な対策はないが、防鳥ネットや管理、人の目と手で減らせる
- 酪農家は牛を守るための対策にも投資しながら牛乳を生産している
