リスナーからの「わざわざ自分でやる意義」という質問
今回の配信は、音楽配信アプリAWAのラウンジから届いた質問への回答からスタートします。質問の主はヤマさん。
川上さんにとって牧場経営をわざわざ自分でする意義って何だと思いますか?
川上さんはまず、この問いを普段あまり考えたことがなかったと打ち明けます。
わざわざ自分でする意義っていうのを、普通に酪農経営をしていて考えたことはなかったんですけど。
というのも、酪農にはすでにいろんな「外部委託」があるからです。人工授精士や餌会社の飼料設計、削蹄師など、専門作業はプロに頼むのが当たり前。それなら経営も委託していいはずなのに、なぜしないのか。ここが今回のテーマです。
一番の本音は「自分の牛を自分で管理するのが面白いから」
いくつも理由を挙げる前に、川上さんは一番シンプルで本音の答えから話します。
牛の状態や餌の違い、反すうや乳量、そして昨日と今日の微妙な行動の違い。それを自分の目と感覚で感じ取って、「今日はこうしよう」と決めて、結果がちゃんと返ってくる。この面白さは外から見ているだけでは味わえない、と話します。
「外部委託できるならしたい」でも任せられる人がいない
意外にも川上さんは、「外部委託できるならしたい気持ちもある」と正直に認めます。ただし、任せるには条件が高すぎるのです。
経営管理がめちゃめちゃうまく、川上牧場の牛のことを本気で理解していて、地域の事情も分かっていて、世界経済や酪農業界の構造も見えていて。
これから酪農を志す人の未来まで考えて、しかも黒字を出し続けて、最終的に自分が納得できる経営をしてくれる人。
そんな人がいるならば外部委託したい気持ちは正直あります。でも今のところそんな人はゼロです。
経営は乳量やコストといった数字だけの話ではありません。この牛は次にどこまで伸びるか、この地域でこれ以上無理をしていいのか、今ここで投資する意味はあるのか。人口が減り平均年齢も上がる出雲市で、沈んでいく船にわざわざ乗っているのか、という問いも川上さんの頭にあります。
外から見ればボロボロの牛舎でも、牛だけはいい牛を作っている自信がある。そんな価値観や感覚を含んだ判断は、数字だけでは下せない、と言います。
効率がいいから自分でやっているわけじゃない
川上さんは、自分で経営するのが必ずしも一番効率のいい選択ではない、とはっきり言います。時間も取られ、考えることも多く、責任も全部自分に返ってきます。
それでもやるのは、判断の重さに納得したいから。誰かに任せて「仕方ないよね」と思いながら続けるより、自分で決めて責任を取る方が精神的にはずっと楽なのだそうです。
自分がやったことだったら自分で納得できる。自分で考えて自分で決めて自分で責任を取る方が、精神的にはずっと楽です。
牧場経営は「一つの主張」でもある
もう一つ大事な理由として、川上さんは牧場経営を「単なる仕事」ではなく「一つの主張」だと語ります。
これを言葉だけでなく現場で証明したい。そのためには自分がハンドルを握っていないと意味がない、と話します。
理由のまとめと「任せられる人を育てたい」という思い
川上さんは、わざわざ自分で経営する理由をこう整理します。
環境が変われば、いつか誰かに任せる日が来るかもしれない。でも今は自分でやること自体に意味があるフェーズだ、と川上さんは考えています。
実際、「川上さんを顎で使ってほしい」「規模拡大したら従業員で雇ってほしい」と、以前から半ば冗談交じりに周りへ声をかけているそう。ただ、酪農をしっかりやりながら牛の成績も出し、消費者にも同じ熱量で発信している人はなかなかいない、というのが実感です。
本当に任せられる人っていうのは多分現れないんではないかなとは思ったりしますけど、こういうのを育てていかないといけないなっていう思いもあります。
今いる研修生がもうすぐ別の仕事に就くこともあり、「川上さんの代わりに川上牧場をやってくれる」熱意のある人がいれば連絡してほしい、と呼びかけて回を締めくくりました。
まとめ
「わざわざ自分でやる意義は?」という問いに、川上さんは効率のよさではなく、面白さ・価値観・未来への主張という角度から正直に答えました。任せたいけど任せられない、だから今は自分でハンドルを握る。そんな酪農家の本音が伝わる回でした。
- 一番の本音は「自分の牛を自分で管理するのが楽しくて面白いから」
- 外部委託できるならしたいが、条件を満たせる人が今はいない
- 牧場経営は数字だけでなく価値観や地域・業界の未来まで含めた判断
- 自分で決めて責任を取る方が精神的に楽で、判断の重さに納得できる
- 牧場経営は「小さくても戦える」を現場で証明する一つの主張でもある
