外国人労働者なしでは回らない酪農の現場
今回のテーマは、第一次産業の外国人労働者について。研修生さんが選んだこの話題から、話はどんどん現場のリアルへと広がっていきます。
川上さんによると、大きなファームでは外国人労働者を使わないともう回らないほどの状況になっているそうです。
外国人労働者を使わないともう回らないような現状になってきてますよ。世の中の大きいところはね。
出張で大きなファームを訪れると、外国人労働者はほぼ100%いると川上さんは話します。日本人従業員だけでやっているところもあるものの、外国人労働者を使っているところの方が圧倒的に多いのだそう。
研修生さんは、酪農の仕事は力作業が多く、ちょっとの単語さえわかれば「これやっといて」で伝わる面もあるのでは、と指摘します。
派遣のしくみと、農家が負う手間
外国人労働者の受け入れには、長い歴史があります。補助金や支援金が国から出ることもあり、それを手配する会社もすでに確立されているそうです。
派遣会社が年間契約のように「あなたのところに何人連れていきます」と手配し、来日する人たちは向こうで畜産の勉強をしてから来るのだと川上さんは説明します。
もう完全に経験者。
経験者というか、知識があって。搾乳とかそういうのを覚えて。ただ、それも人によるけどね。
ただし、農家側が補助金を活用しているわけではなく、費用面での負担は決して安くないと川上さんは言います。
安定的に確実に欲しい時に人がいるっていうのが確立されるだけで、最低賃金以上を払わないといけないし、居住の場所とか手続きとか、車に乗れない人だったら買い物に連れてってあげたりとか。全然大変ですよ。
欲しいときに確実に人がいる安心感はあるものの、住まいの手配や生活のサポートまで含めると、受け入れる側の手間は大きいんですね。
島根に増えるブラジル人と、酪農との接点
話は、島根県に多いブラジル人労働者へと移ります。研修生さんが「なんでブラジル人が多いの?」と尋ねると、村田製作所との提携がきっかけだと川上さんは答えます。
その影響でブラジル人が急増し、出雲には4000人近くいるといいます。ただ、酪農をしているブラジル人はいないのが現状だそうです。
そういうのうまいことすればいいのになと思うよ。本当にその4000人の中で、バリバリ農業やってましたみたいな人がめっちゃいるんで。
川上さんは、田舎には外国人向けの農業系エージェントがほとんどないことに、ビジネスチャンスを感じていると話します。都会にはキャリアエージェントのようなしくみが多い一方、田舎は収益化が難しく、なかなか広がらないのだそうです。
信頼できる派遣会社を見きわめる難しさ
農業系エージェントは、マッチングした際の紹介手数料で収入を得ています。だからこそ、数を送れば送るほど儲かるしくみになっている、と川上さんは指摘します。
システム的には、誰でもいいから送ってやれっていうのが多いんだよね。ちゃんとした会社もあるんだけど、気をつけないと。
ちゃんとした農家の人は、ベトナムやフィリピン、タイなど、現地まで足を運んで来る人を実際に見ることもあるそうです。長い目で見れば、対面で雰囲気や仕事ぶりを確認した方がいい、という話にうなずきが返ります。
介護の世界でも外国人なしでは回らなくなっていて、知り合いには現地の高校生など若い時期から日本で働きたい学生を育てる教育体制を作っている人もいるそうです。
出雲は本当に人口がめっちゃ減ってきてるじゃないですか。本当に維持をしようと思ったら、そういう移民政策でもないけど、そういうのをしないときついよね。
文化と宗教を理解しないと成り立たない
海外の酪農現場は、日本とは風土も文化も規模も全然違うと川上さんは話します。使う機械もその国のものが主流で、日本では大手メーカーがかなりの割合を占めているそうです。
研修生さんは、友人がオーストラリアで酪農をやってみて「日本でやっていく意味ないよ」と言っていたエピソードを紹介します。同じ酪農でも、やり方や規模がまるで違うんですね。
ブラジルの人は体格がよく、力作業も簡単にこなすと川上さん。以前来ていたブラジル人は、サトウキビや鶏卵を運ぶトラック運転手で、マフィアに銃を突きつけられトラックごと盗まれた経験もあったそうです。
そういうの聞いたりすると、全然文化が違うなと思ったりするよ。
今来ている人への指示は、ボディランゲージと翻訳アプリでなんとかなっている、と川上さんは言います。研修生さんが「できるもんですか?」と聞くと、実際にできているから、と返します。
大事なのは言葉そのものよりも、コミュニケーションだと川上さんは強調します。
宗教や文化を理解することも欠かせません。ブラジルはキリスト教なので、クリスマスは家族と過ごし、完全に休むのだそう。さらに、ワールドカップでサッカーが勝った翌日も休むのが当たり前だといいます。
来なくて、今日何?って聞いたら、サッカー勝ったよって言われて。それなら仕方ねえなと思ったけど。
研修生さんは、日本人はどこに行ってもその国をリスペクトしてなじもうとするけれど、海外の人は自分の文化を優先するハートがすごい、と感想を述べます。
一方で出雲に来ている人たちは、親族に日系ブラジル人がいることが多く、醤油や味噌、桜、魚を食べる文化など、日本の文化をある程度理解しているのでなじみやすいのだそうです。
誇大広告と、子どもたちが背負う切ない現実
ここから話は、川上さんが「本当はしゃべりたくない」と前置きする、制度の影の部分へと進みます。
ブラジルから日本へ働きに出たい人に向けて、「日本で豊かな暮らしができる」「給料もたくさんもらえる」といった誇大広告が出回っているといいます。
ところが実際に来てみると、給料は決まっていて、そこからアパート代や車代、住居代が引かれます。しかも仲介業者が間に入り、年齢や能力で決まった給料からさらに何パーセントも引かれるのだそう。
来た時点で、あなたは何歳です?何ができます?で給料が決まって、そこから何パーセントとバーンと引かれてくるからね。マジでえげつねえと思う。
それでも人を回転させるほど出雲市には税金が落ちるため、市としては支援したくなるしくみになっている、と川上さんは説明します。
さらに深刻なのが、子どもたちの問題です。若い夫婦が来日し、子どもが生まれると、その子は日本しか知りません。それなのに「お帰り願います」となる状況に、川上さんは強い違和感を示します。
子どもはもう日本しか知らないじゃないですか。その中で暮らしてて、お帰り願いますって言って帰る。マジ無理よ。
国籍もブラジルで、その国のことも知らないのに、あれが国籍が取れないから。今、私の友達にもいます。
日本で暮らすイメージで来た子どもたちが、行き場を失ってしまう。二人は「本当に可哀想」「大人の勝手だな」と言葉を重ねます。
一方で、担い手不足の日本では、外国人労働者を使っていかないと回らなくなるのも現実です。日本人が出て行き、人がどんどん足りなくなる中で、答えの出しにくい話題として今回のトークは幕を閉じました。
まとめ
大きなファームでは外国人労働者なしでは回らなくなっている今、川上さんが語ったのは制度のしくみから文化の違い、そして子どもたちが背負う切ない現実まで、現場だからこそ見える生々しいリアルでした。
- 大きな酪農ファームでは外国人労働者がほぼ100%おり、使わないと回らない状況になっている
- 派遣は経験者を手配してくれる一方、農家は最低賃金以上の給与や住まい・生活のサポートまで負担する
- 島根にブラジル人が多いのは村田製作所との提携がきっかけで、出雲には4000人近くいる
- 言葉より人柄とコミュニケーション、そして宗教や文化への理解が受け入れの鍵になる
- 誇大広告や仲介業者の手数料、そして日本しか知らない子どもたちの国籍問題など、制度の影も大きい
