WILL・CAN・MUST/NEEDをキャリア選択にどう使うか
今回は、これまで2週にわたって取り上げてきた「WILL・CAN・MUST/NEED」の考え方を、実際のキャリア支援の実例を通して紹介する回です。プライバシー保護のため具体的な部分は伏せつつ、対話の中でどう活用するかが語られます。
キャリア支援の多くは、人生全体を扱うライフキャリアというより、わかりやすい「仕事を選ぶ」ワークキャリアの場面で行われることが多いといいます。新卒採用の就職活動や、転職活動における自己分析などがその代表例です。
業界はWILL、職種はCANで選ぶ
新卒でも転職でも基本は同じで、WILLは「やりたいこと」「目指したい状態」「目的」を指します。これは会社選びのうち業界同じ産業に属する企業の集まり。ビール業界、食品業界、エンターテインメント業界など。それぞれ社会の中で存在し続ける目的を持つとされる。選びにつながる、と金岡さんは考えます。業界や産業が日本の中で存在し続けている理由、いわば存在目的があるはずだからです。
例として挙げられたのは、金岡さん自身が所属するビール会社です。ビールをはじめとしたお酒を通して世の中に豊かさを届けるというパーパス企業や組織が社会において果たす存在意義・目的のこと。近年、経営やブランドを語るうえで重視される概念。があるといいます。その目的に自分のWILL(価値観)が共鳴するかどうかが、業界選びのコツだと語られます。
もう一つの軸が職種です。ビール業界にもマーケティング職、セミナー講師職、営業職に加え、法務・人事・経理・製造などさまざまな職種があります。ここで大切なのは、CANと紐づく強みが生かせるかどうかという視点です。つまり職種はCANから選ぶ、というわけです。
WILL:やりたいこと・目的。業界のパーパスに自分の価値観が共鳴するか。
CAN:できること・強み。その職種で自分の強みが生かせるか。
サッカーに例える「役割の相互補完」
職種選びのわかりやすい例として、サッカーの試合が挙げられます。サッカーという競技が成り立つ裏には、さまざまな役割の人がいます。選手を采配する監督、ゴールを守るのが得意なゴールキーパー、攻めてシュートを打つのが得意な選手、そして応援が得意な観客、判断が得意な審判もいます。
それぞれが得意なことや強みを生かし合ってゲームが成り立っている。これを仕事に置き換えると、いろんな人がそれぞれのCANを生かしながら相互補完的に組織が回っているといえます。だからこそ、自分にはどんな強みがあり、どういう職種で働けるのかを客観的に説明できるとよい、というのが金岡さんの考えです。
さらに、そのCANは組織にどんなNEED(必要とされていること)やMUST(求められること)があるのかを紐解くことで、より明確に見えてくると語られます。
実例:業界に迷う人のWILLを紐解く
「どんな業界で働くと自分がいいのかわからない」という相談では、価値観を紐解いていきます。その人がどういう人生を歩んで、何にワクワクし、何に悔しい思いをしたのか。印象的な経験から感情が動いた瞬間を探っていきます。
ある方の場合、人生の中で「食品・食べ物」に強く心を動かされてきた瞬間があったといいます。そこから「身近なものを通して心を動かす仕事がしたい」というWILLが見えてきました。すると、「心を動かす」という観点で見れば、食品業界だけでなくエンターテインメント業界や、日用品のような身近なもので心を動かせる業界も候補になるのではないか、という話に広がっていったそうです。
実例:当たり前の行動からCANを見つける
「自分のCAN(強み)が何なのかわからない」という方には、普段から自然とやってしまっている、当たり前だと思っている行動を教えてもらいます。ある方は、部活の中で率先して準備をする人でした。努力してやってあげているのではなく、当たり前に人より率先して準備をし、場やチームのために進んで動き出せる。しかし本人は長年やってきたことなので、それを強みとは見逃していたのです。
金岡さんが「それは僕にはできないことです」「みんなができるわけじゃないから、それはあなたの強みなんじゃないですか」と伝えると、本人は「こんなんが強みでいいんですか?」と驚いたといいます。
みんなができるわけじゃないから、それってあなたの強みなんじゃないですか?
さらに金岡さんは、場の課題に気づいて率先して動けることは、電車の安定稼働や、エンジニアがシステムを安定して動かす仕事にも似ていると伝えます。何か課題を見つけて率先して解消する動きは共通する、というわけです。すると本人も「確かに共通点があるかもしれない」と、新しい職種で強みが生かせるかもしれないという発見につながりました。
これも、組織にはどんなMUSTがあり、この会社が回るのに必要とされている仕事は何かを考えた結果です。目立たないけれど安定稼働を支える保守運用のような仕事があるからこそ、その方のCANが生かせる。組織で果たせる役割がイメージでき、自信を持って自分を語れるようになっていったといいます。
率先して準備する行動を「長年やってきた当たり前のこと」として見逃していた。
「みんなができるわけではない強み」だと気づき、保守運用など課題を率先して解決する職種で生かせると発見。自信を持って自分を語れるように。
まとめ
転職や就活の場面では、まず組織のWILL(存在目的)から紐づくMUST・NEEDを見て、そこに自分のCANが生かせるか、そしてWILLに本当に共感できるかを具体的に考えてみるとよい、というのが今回の結論です。業界はWILL、職種はCANで選ぶという軸を持つことで、キャリア選択の迷いが整理されていきます。
金岡さんは、ちょうど就職や転職を考えている人にとって、この考え方が少しでも参考になればと語り、この回を締めくくりました。
- 業界はWILL(やりたいこと・目的)から、職種はCAN(強み)から選ぶのが基本の考え方。
- 業界の存在目的(パーパス)に自分の価値観が共鳴するかが業界選びのコツ。
- サッカーのように、組織はそれぞれのCANを生かし合う相互補完で成り立っている。
- WILLは印象的な経験や感情が動いた瞬間を紐解くと見えてくる。
- 当たり前にやれている行動こそが強み。組織のMUST/NEEDと結びつけると生かせる職種が見える。
