総合診療医とは何か
番組の第1回は「睡眠について」がテーマですが、まずは出演者の自己紹介から始まりました。
総合診療医をしてます津島太陽と申します。太陽と書いて「たかひろ」と読みます。
津島太陽さんは薬剤師として約10年働いたあと、医師免許を取り直した経歴の持ち主です。番組内では「太陽(たいよう)さん」と呼ばれることになりました。
聞き手の茉莉さんは、総合診療医という言葉を初めて聞いたと言います。
まだ全然知らない、「は?」って思われる方多いと思うんですよね。実は最後にできた診療科なんです。
各科が18個あったんですね、今までね。国が主体で10年前ぐらいに、その診療科を作りましょうということで作ったのが総合診療科なんですよ。だから19番目なんですね。
なぜ総合診療医が必要とされたのか
日本ではこれまで、各臓器ごとの専門医を育ててきました。しかし津島さんは、その仕組みには限界があると話します。
自分の科だけしか見れないと、いろんな病気を持ってたりする人全体をマネージメントできない。それで不都合なことが起こったりすることもあって。
胃は消化器内科、肺は呼吸器内科、糖尿病は糖尿病代謝内科というように、症状が複数の科にまたがると診療が分断されてしまう問題があるといいます。
一方、海外では総合的に診る医師がまず診察し、必要に応じて専門医へ紹介する仕組みが一般的だと説明されました。
アメリカとかイギリスとか、その家庭医療専門医とか、総合的に見れる医者がまず診て、専門の医師に紹介する必要がある場合に紹介するみたいなのが一般的なんですけど、それが日本にはうまくシステムとしてできてなかったので、それで始まったんですね。
日本の開業医も全般的に診てはきたものの、それを専門として学ぶ機会は少なかった、と太陽さんは補足します。
薬剤師から医師へ、太陽さんが選んだ道
太陽さんが薬剤師から医師を目指した背景には、「ポリファーマシー」という問題への強い問題意識がありました。
お薬がどんどん増えちゃって、調子悪くなって、体調を崩してるっていう人を結構見てたんですね。薬剤師として関わってて、なかなかそこの問題にうまく取り組めてなくて。
総合的に診られる医師が少ないと感じた太陽さんは、28歳で医学部を目指すことを決意します。2年半の受験を経て、3回目の受験で弘前大学の医学部に入り直しました。入学時は31歳でした。
現在も大学院生で、卒業がかかった論文を執筆中とのこと。今日も睡眠不足だと笑いながら語りました。
今は私自身が睡眠不足という現実・・・。
聞き手の菅原茉莉さんも自己紹介を行い、理系が苦手だからこそ、この番組で医学や科学のことを聞いてみたいと語りました。
大人になるにつれて、科学でもう解明されてたり、医学では常識だったりすることをずっと何十年も悩んでたんだな、と知る機会が結構あって。好き、嫌いではなくて、苦手でも知ることが自分のためにもなるんだ、って。
日本は世界一の睡眠不足国
いよいよ本題の睡眠へ。津島さんは、睡眠は多くの人が思っている以上に大事だと切り出します。
日本は世界で最も深刻な睡眠不足の国って言われてるんですよね。もう個人の健康を超えたとても大きな話なんですよね。
その根拠として示されたのが、OECD諸国の平均睡眠時間です。
OECD諸国の平均睡眠時間は約8時間20分。この数字に茉莉さんは驚きます。
えっ、日本だと8時間って子どもの睡眠時間というイメージです。めっちゃ寝てますね。
そして日本は、38カ国中38位。平均睡眠時間は約7時間20分で、OECD平均より1時間も短いといいます。
睡眠不足がもたらす14.5兆円の損失
睡眠不足は個人の問題にとどまらず、大きな経済的損失につながっていると津島さんは指摘します。
睡眠不足による経済的な損失が年間大体14.5兆円っていうね。日本のGDPの大体3パーセントぐらいなんです。
あまりに大きな数字に、茉莉さんは実感が追いつかない様子でした。
節約とかしてる場合じゃないですね。
太陽さんは、この損失の大きさを身近な例と比べて説明します。誰もが「体に悪い」と考えるタバコによる損失は約2兆円。睡眠不足の損失は、その7倍以上にあたるといいます。
さらに、タバコの損失は喫煙者だけでなく副流煙の影響を受ける同居者なども含むのに対し、睡眠は子どもから高齢者まで誰にでも関わるものだという点も語られました。
眠りは、ちびっこからおじいちゃんおばあちゃんまで、ほんとみんなの一大事!
寝る努力から「帳消しにする」努力へ
多くの人が睡眠を軽視した生活を送っていて、忙しさや加齢のせいだと単純に片づけてしまいがちだと太陽さんはいいます。
この点に関連して、茉莉さんは近年のCMの傾向の変化に気づいたと話します。
前はよく眠れるようにっていう商品をよく見た気がするんですけど、最近は眠りの質を上げるとか、朝の疲れをなくするみたいな感じになってるなと思って。
眠るための商品から、起きたときの疲れに着目した商品へ。その背景には、睡眠時間そのものを増やすことを諦めた人々のニーズがあるのではないかと2人は語り合います。
寝る時間を増やすのは多分諦めてるっていうか、それよりもグッと効果を上げるみたいな。
太陽さんは、毎晩「過圧の酸素カプセル」に入って短い睡眠時間で過ごしていた知人の例も紹介しました。茉莉さんは、生活を変えずに睡眠を帳消しにしようとする方向にニーズが向かっているのではと指摘します。
生活は変えたくないですもんね、皆さんね。
では、なぜ日本人はこれほど寝られていないのか。太陽さんは、その理由を考えることが海外との違いを知るヒントになると話します。
大きな理由の一つとして挙げられたのが、睡眠時間が6時間未満の人の割合です。
6時間未満の睡眠時間の人が全体の4割もいるんですよ。その人たちが、平均をグッと下げてるんですね。
6時間未満が4割という数字を、茉莉さんは「普通な気がしちゃうのがもうちょっとバグってるんでしょうね」と受け止めていました。日本人の睡眠感覚そのものがずれている可能性が浮かび上がります。
まとめ
第1回前編では、総合診療医という新しい診療科の紹介から始まり、日本が世界で最も睡眠不足の国であるという実態が語られました。睡眠は個人の健康を超えた、大きな社会問題として捉え直す必要がありそうです。
- 総合診療医は約10年前にできた19番目の診療科で、患者全体を総合的に診る役割を担う
- 日本の平均睡眠時間は約7時間20分で、OECD38カ国中最下位
- 睡眠不足による経済損失は年間約14.5兆円で、タバコの約7倍にあたる
- 日本では睡眠時間が6時間未満の人が全体の4割を占め、平均を押し下げている
- 近年は睡眠時間を増やすより「起きたときの疲れを帳消しにする」商品へニーズが移りつつある
