「ちょうどいい関係性」を探す番組のはじまり
番組「戦略的社員論」は、岐阜県多治見市を日本一電気代の安い街にすることを目指す株式会社エネファントが運営するラジオ番組です。
MCを務めるのは、エネファントの西尾拓哉さんと、株式会社MIKKEの井上拓美さん。2人は岐阜県恵那市で出会い、4〜5年の時を経て今回一緒に番組をやることになったそうです。
番組が探求したいのは、企業と社員の「ちょうどいい関係性」。井上さんは、この「ちょうどいい」がキーワードになると話します。
社員と企業っていう対立軸で、どちらかにもたれかかってるっていうよりも、お互いに心地よい、ちょうどいい関係性がどこにあるのかな、どういう関わり方があるのかなっていうのが、今回の企画の最初の大きな問いでもあったかなと思ってます。
これまで働き方の話は「社員目線」と「組織目線」で分かれがちでした。井上さんは、今回はその両方をもっとフラットに行き来しながら考えたいと話します。
初回は、井上さんが西尾さんに質問していく形で進みます。井上さんは、西尾さんが今すごく「ちょうどいい関係性」を模索できているように見える、と言います。
まな板の上の鯉ということで、解剖されたいと思います。
映画にフェス。会社員なのに、なぜやる?
西尾さんはエネファントで営業や社員研修、採用、広報など幅広い業務を担当しています。それに加えて、会社の外でもいろいろな活動をしているのが特徴です。
ちょうど1年前は、1年間ずっと映画を作っていたそうです。週末はロケハンに行き、「業界人ぶった感じの1年間だった」と振り返ります。
ほかにも地元のイベント企画や、地域企業の新規事業へのプロボノ参加、住んでいる岐阜県美濃加茂市の音楽野外フェスの実行委員なども経験してきました。
井上さんは、自分で会社をやっている立場だと何かを形にするのは普通だけれど、会社員が社外でそこまで動くのは珍しいと感じ、素朴な疑問をぶつけます。
西尾さんって、どんな立場で関わってたりとか、そういうのってやるってなる?って。やるってならんくない?って思うところが多い印象があって。
西尾さんの答えはシンプルでした。映画は4人ほどのほぼ友達のチームで、「一緒にやろうよ」と誘われて「いいよ」と入ったのがきっかけ。音楽フェスも、知り合いが実行委員長で、前職の人材支援の経験を見込まれて誘われたそうです。
前職がNPOで採用支援とか就職支援をやってたのもあって、「人材のところ得意でしょ」という誘い文句で、フェスは当日ボランティアやスタッフの対応があるので、そこやってってことでお誘いもらって、「おもろそうっすね、やります」という感じで入っていきました。
集まりが苦手でも行けたのは「ビジネス下心」があったから
社外の動きの原点は、前職の2社目、NPO時代にさかのぼります。支援先企業の新規事業へのプロボノ参加や、「岐阜アラサー会議」という集まりがきっかけだったそうです。
この会議は飲み会ではなく、各地域で活動する人が自分たちの取り組みをプレゼンする場でした。全国から100人ちょっとが集まり、関西や関東からの参加者もいたといいます。
ここで井上さんは、自分自身の悩みを打ち明けます。実はこういう集まりがとても苦手で、「行く行く」と言って当日行かないこともある、と。だからこそ、西尾さんが行けた理由が気になったのです。
そもそも行きたくないっていう感覚はなかったのか。そして、集まりに行ったとして、実際に次につながることってあるのか。この2つが聞いてみたかった。
西尾さんの答えは意外なものでした。行きたくないと思っていた可能性もあるけれど、それでも「行こう」と決めた理由は、仕事にありました。
実際僕がやってた仕事が営業活動で、NPOなので自分たちの団体の取り組みに共感してくれるお客さんを増やしていくことがあった。日中の営業活動だけじゃなく、仕事以外の時間も含めていろんな方々と会っていかないといけないかなと思ってたので、よし行こうかって決めたんじゃないかなと思います。
井上さんは、これを「ビジネス下心」と呼びつつ、むしろポジティブに受け止めます。仕事という目的があるから社外に動く。それでいいじゃないか、と。
下心はあっても「脇に置く」。信頼が先、営業はその後
ただし、下心が丸見えだと胡散臭くなってしまいます。そこで西尾さんが意識していたのが、下心を「脇に置く」ことでした。
営業を長くやってきた西尾さんは、相手に貢献しないとリターンがない、という感覚を持っていました。だから下心はありつつも、まずはやると決まった企画を一生懸命成功させることに集中したそうです。
売りに来る人と、なんか違う企画を立ち上げて一緒にやるって、ちょっと嫌じゃないですか。なので単純に、参加してる皆さんで立ち上げた企画やイベントを成功させる。その後どうなるかは、その後の話かなと思ってるんで。
いい関係性が築けて、相手の状況もわかった上で、必要なら提案をする。西尾さんは、その順番を大事にしていたと話します。
企画・イベントを一緒に成功させる
まずは参加者みんなで立ち上げたものを本気でやり切る
信頼関係が築かれる
売りに来る人ではなく、一緒にやる仲間として見てもらえる
相手の状況が見えてくる
相手の仕事や課題、欲しいものが自然と話に出てくる
必要なら営業的な提案をする
信頼を土台にした上で、はじめて商談の話をする
井上さんは、この考え方が普通の営業とは逆だと指摘します。目的を一旦脇に置いた方が、結果として目的にもつながる、というわけです。
趣味がないから、仕事が社外につながる便利な道具になる
では、そもそもなぜ仕事以外の時間にまで仕事のことをやれるのか。井上さんが動機を尋ねると、西尾さんはまず「趣味がない」ことを挙げました。
一つはすごい個人的な話ですけど、まず趣味がないっていうのが大きいと思います。夜とか土日にやる趣味がない。時間があるっていうことですね。
自分から「これがやりたい」と思うことはあまりない。でも面白そうなことには関わりたい。西尾さんは、それを「巻き込まれる力」だと表現します。
映画を自分から作ろうってなってはないんですね。フェスを自分でやろうともなってない。「フェスやるらしいよ」「え、おもろそう」みたいな。そこに乗っかる力は結構あると思ってるんで。
さらに西尾さんは、いろんな人と出会うと「今の自分の尺度がわかる」と言います。自分に何ができて何が足りないか、人からどう見られているかが見えてくるのだそうです。
会社の中にいると、一緒に働くチームや上司部下って、ある意味家族みたいな暗黙の了解で進むことも多い。そんな中でゼロから関係を作っていくのは、気づきや発見が多くて、自分の血肉になる部分がすごい多いなと思ってます。
そして「基本は家にいるのが好きなネクラだけど、友達ができるから楽しい」とも。人見知りだけど、友達が欲しくないわけではない、というバランスです。
井上さんは、ここに「仕事の便利さ」を見出します。趣味も、外へ出る能動性もない。でも変化はしたい。そんなとき、仕事がちょうどいい入り口になる、というわけです。
営業活動って、営業先を自分で選べるじゃないですか。営業という謳い文句、言い訳をもとに、会いたい人に会いに行けるっていう、そういうのは正直あるかなと思うんですよね。
井上さんは、これは仕事を自分のためにうまく生かす発想だと感想を述べます。単なる作業に見えることさえ、こうやって捉え直せば自分の欲求につながる手段になる、と。
初回を終えて。仕事は「やりたいこと」につながる手段
初回を終えて、西尾さんは「最後は結構緊張した」と打ち明けつつ、井上さんの質問で新しい発見があったと振り返ります。
仕事を自分にとっていいように捉えて活用してるかみたいな話。会いたい人に会いに行くのが営業だみたいな。聞かれるまであんまり自分でも考えたことなかったので、言われてみるとそうかもなって、すごい腑に落ちた質問だったなって気がしてます。
井上さんは、仕事の結果はもちろん大切としながらも、日々の業務を「会いたい人に会うための手段」として再解釈できると話します。
次回は、今日の話をもとに、どうしたら企業と社員がちょうどいい関係性を作れるのかを、社員目線と企業目線を行き来しながら具体的に模索していく予定です。
まとめ
初回は、趣味も「やりたいこと」もない西尾さんが、なぜ仕事を口実にして社外とつながっていけるのかを掘り下げました。「巻き込み力より巻き込まれ力」という言葉が、その関わり方をよく表しています。
- 企業と社員の「ちょうどいい関係性」を、社員目線と組織目線を行き来しながら探る番組
- 集まりが苦手でも、「仕事のため」というビジネス下心があれば社外に動ける
- 下心はありつつも脇に置き、まず企画を成功させて信頼を築くのが西尾さんの順番
- 自分から動く「巻き込み力」より、面白そうなことに乗る「巻き込まれ力」
- 趣味も外へ出る能動性もない人にとって、仕事は会いたい人に会うための便利な手段になりうる
