10話目でようやく自己紹介という背景
今回はこの番組で初めてのビデオポッドキャスト。冒頭では、島田先生が一週間ほどベトナムに滞在して帰国したばかりだという話から始まります。お土産を探す中で知った「ホーチミンサンダル」の話題など、旅の発見が次々にこぼれ出しました。
そんな雑談のあと、酒井さんが「10話目にしてようやく自己紹介」という本題を切り出します。ひたすら音声を出し続け、自己紹介をサボってきたことに、別番組『ポッドキャスト総研』を聴いて「毎回冒頭で自己紹介をした方がいい」という真っ当な助言に気づかされたのがきっかけだといいます。
今日ようやく十話目にして自己紹介っていう。
そんな遅いことあるのか。
二人の馴れ初めは中学時代
二人は中学からの友人で、付き合いはおよそ28年になるといいます。中高一貫校の同級生で、最初の2年ほどは同じクラス、その後は理系に進んだ島田先生と文系に進んだ酒井さんで進路が分かれました。それでも6年間ほぼ一緒に過ごした間柄です。
大学からは別々の道へ。酒井さんは東京の大学へ、島田先生は九州の大学へ進みます。ただ島田先生が研修医として関東(埼玉)に来てからは、都内にいた酒井さんとよく会っていたそうです。研修先の病院まで車で迎えに行った、いわば「出待ち」の思い出も語られました。
島田先生──精神科医から西洋古典の道へ
島田先生は医学部を卒業後、研修医を経て精神科医になりました。関東のいくつかの病院で働き、そのうちの一つではアルコール依存症アルコールの摂取をコントロールできなくなる精神疾患の一つ。飲酒への強い欲求や離脱症状を伴い、専門的な治療が必要とされます。を多く扱っていたといいます。雑食日和の第1回のテーマがまさにアルコール依存症だったのは、この専門性が背景にありました。研修医から数えると臨床経験は約15年に及びます。
そして現在は、なんと大学に入り直して西洋古典学古代ギリシャ・古代ローマ時代に、古典ギリシャ語やラテン語で書かれた文献を研究する学問。文学・哲学・歴史を広く対象とします。を研究する大学院生です。30代半ばで学士編入し、「東大生になるんだ」という野心を持って踏み出したといいます。
医学部・研修医
九州の大学を卒業後、関東で研修医に。
精神科医(約15年)
アルコール依存症などを扱う病院で臨床経験を積む。
西洋古典学の研究者へ
30代半ばで学士編入。現在は東大の博士課程に在籍。
西洋古典学とは何か。島田先生によれば、シェイクスピアのような「古い西洋文学」とよく混同されるものの、意味合いは異なるといいます。対象は主に古代ギリシャ・古代ローマの時代で、時間軸としては紀元前8世紀ごろから紀元後500年ほどまでが守備範囲。テルマエ・ロマエ古代ローマの浴場を題材にしたヤマザキマリの漫画。ローマ帝国も西洋古典学の対象範囲に含まれることの分かりやすい例として挙げられました。のようなローマ帝国も含まれます。
島田先生自身が今関心を寄せているのは、その中でも医学に近い領域。具体的には、古代ギリシャの時代に精神疾患がどのように捉えられていたのかを研究しているといいます。精神科医としての歩みと、古典学の研究がここで交わっているのです。
興味の源泉は、中高時代から好きだった歴史。本を読む中で「ギリシャ・ローマを模範として」といったフレーズに繰り返し出会い、「どんな文化・世界なんだろう」という関心がずっと消えなかったといいます。大学に入り直してからは6〜7年目。「気がついたらそのぐらいになっていた」と振り返りました。
酒井さん──政治学から資本主義の世界へ
続いて酒井さんの番。一浪を経て慶応大学の法学部政治学科に進学しました。志望のきっかけは、高校1年の時に起きたアメリカ同時多発テロ(911)2001年9月11日、アメリカで発生した同時多発テロ事件。旅客機がニューヨークのワールドトレードセンター(ツインタワー)などに突入しました。。テレビでツインタワーが崩れる衝撃的な映像を見たことで、国際政治への関心が強まったといいます。もともと歴史も好きだったことが、政治学科への進学につながりました。
大学では中国の政治経済のゼミに所属し、サブで大和田先生慶応義塾大学法学部の教員で、ヒップホップやブラックミュージックの歴史などを扱う研究者として紹介されました。のアメリカ文化史のゼミにも参加。ヒップホップやブラックミュージックの歴史を扱う変わったゼミで、映画や音楽といったアメリカのカルチャーにも当時から親しんでいたそうです。
就職の道としてはメディアやマスコミも選択肢にありましたが、酒井さんは「資本主義の方に寄ってしまった」と表現します。新卒でAppleに入社し3年、その後コンサルティング業界に3年、さらに別のコンサルで6年。コンサル時代はヘルスケア領域が多く、製薬会社が顧客だったこともあり、精神疾患の領域では島田先生に相談していた記憶もあるといいます。二人の関心が意外なところで重なっていたわけです。
直近ではデザイン会社に勤めたのち、会社勤めを辞めて独立。合計4社を経て、現在は自身の会社を営みながらこのポッドキャストを始めたといいます。島田先生からは「ずっとコンサルをやっていたイメージだった」と、初めて知る一面に驚きの声が上がりました。
番組名「雑食日和」に込めた思い
番組名「雑食日和」は、あらゆるテーマを語るという、ある意味「一番やってはいけない」スタイルの表れだと酒井さんは笑います。何者なのかを明確にしない、その姿勢そのものです。ちなみにポッドキャスト登録時のジャンルは、ビジネスの話を一つもしていないのに「ビジネス」になってしまっているのだとか。
酒井さんは「雑」という言葉に強い興味を持っています。「雑に仕事するな」のようにネガティブに使われがちな一方で、「雑談」のように現代では大事に思える使われ方もある、というのがその着眼点です。そのきっかけの一つが、小6から飼い続けている亀「大ちゃん」の徹底した雑食ぶりでした。
「雑に仕事するな」「雑然とした」など、いい加減さを表す使われ方。
「雑談」のように、現代でむしろ大事に思える使われ方。
酒井さんは、AIの時代に人間の知的労働の意味が薄れていく中で、「雑にいろいろつまみ食いしていく」という行為に何かできることはないか、とぼんやり考えているといいます。浅井亮の『イン・ザ・メガチャーチ』を引きながら、40〜50代でカフェで雑談する男性がもういないのではないか、という一節にも触れました。「雑談だとストレートすぎる」から「雑食」にした、というわけです。
これからの雑食日和
番組で扱いたいテーマは、島田先生の専門であるメンタルヘルスをはじめ、歴史、カルチャー、社会、人間関係の悩みなど幅広く挙がりました。ビジネス領域については、諸先輩方がたくさんいる中で語るのは少し心苦しいと前置きしつつも、扱っていきたいとのことです。
二人は番組の準備段階で、テーマをあいうえお順で洗い出し、キーワードをおよそ500個ほど並べたといいます。ただ「あ」の欄に書いた「アジャリ(阿闍梨)」のように、書いただけで何も語れないものもあるようで、消化しきれていないストックがまだ大量にあるそうです。一方で「アンディフグ」については、中学時代に一緒にK-1を見に行った思い出から語れるとして盛り上がりました。
今後はnoteの更新や、一週間ほど前に開設したばかりのXの運用にも力を入れていく方針。まずは5月のポッドキャストエキスポを一つの目標に据え、「一年ぐらいは続けよう」と語り合いました。次に取り上げたいテーマとして、島田先生からは滞在したばかりの「ベトナム回」や「ヤル文化」への関心が挙げられ、この日の自己紹介回は締めくくられました。
まとめ
第10回にしてようやく行われた自己紹介は、28年来の友人である二人が、これまで意外と語ってこなかったお互いの歩みを明かす回となりました。精神科医から西洋古典学者へと転身した島田先生と、Appleやコンサルを経て独立した酒井さん。まったく異なる道を歩みながら、ヘルスケアという接点で交わってきた二人の関係性が見えてきます。
「雑食」という言葉に込めた、ジャンルにとらわれず何でもつまみ食いしていくという姿勢は、AI時代の人間らしさへの問いかけでもありました。まさに「友達です。こっから頑張ります」という等身大の宣言で、番組は新たなスタートを切っています。
- 酒井さんと島田先生は中学からの友人で、付き合いは約28年になる
- 島田先生は約15年の精神科医経験を経て、現在は西洋古典学(古代医学の領域)を東大の博士課程で研究している
- 酒井さんは慶応の政治学科出身。Apple・コンサルを経て独立し、コンサル時代はヘルスケア領域を担当していた
- 番組名「雑食日和」は、ジャンルにとらわれず語る姿勢と、AI時代の「雑談」の価値への関心から生まれた
- 今後はメンタルヘルス・歴史・カルチャーなど幅広いテーマを扱い、noteやXも活用していく方針
