なぜ「働いていると本が読めない」本が売れたのか
この回のきっかけは、三宅香帆さんの著書『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』です。しゅうへいさんによると、この本は30万部ほど売れたといいます。
なんか変な、そんなタイトルの本ってよく売れるなみたいな感じですよね。みんなこんなタイトルに共感して本が読めない人がいるのかっていうのはちょっと衝撃的な。
しゅうへいさんは内容の良さを認めつつ、働いていると本が読めなくなるという悩み自体がベストセラーになったことを「すごい象徴的」と受け止めています。幸あれこさんも、それだけ多くの人が同じ悩みを抱えているのだろうと応じました。
収録中にはしゅうへいさんのスマホのAIが突然話し出し、幸あれこさんが「ドッペルゲンガーがいるのかな」と驚く一幕もありました。
並行して20冊、寝起きに片目で読む幸あれこさんの習慣
最初に取り上げられたのは、幸あれこさんの読書習慣です。しゅうへいさんによれば、幸あれこさんは本を読まない日がないほどで、電子書籍も含めて並行して20冊ほどを読んでいるといいます。
そうですね。で、(読んだ本の)内容を忘れるんですけれども。
「何のために読んでいるのか」と聞かれると傷つくという幸あれこさんですが、本人の答えは「読むのが楽しいから」というシンプルなものでした。
幸あれこさんはフリーアナウンサー時代、早朝から深夜まで働いていた時期も本を読み続けていました。その時間の作り方の1つが、起きた直後の読書です。
パッて目覚めた時、半分だけ目開いてる時間ってあるじゃないですか。あの時にもう開けるんですよ、本。枕の横に置いておいて。
バッて開けて読むっていうのを必ず朝やってきて。もうこれずっともう10年以上やって。
この習慣は今も続いていて、しゅうへいさんは、隣で幸あれこさんが目が開ききらないまま片目で本を読んでいる姿を目撃しています。しゅうへいさんはこれを「起きる儀式みたい」と表現しました。
幸あれこさんのもう1つの読書時間は通勤です。カバンに単行本を3冊入れて、電車に乗ったら読むと決めていたといい、ちょっとした空き時間を読書に充てる習慣がアナウンサー時代の読書を支えていました。
書店員さんの態度を変えた「読む贈り物」
しゅうへいさんが印象に残っているのは、幸あれこさんが担当していたラジオ番組の、書店員さんがおすすめ本を紹介するコーナーでのエピソードです。幸あれこさんは紹介された本を毎週1週間で読み切り、感想を伝えていました。
めちゃくちゃやる気ない、なんかもうやっぱさ、上の人から言われてるだけだから、なんで俺が来ないかんねんみたいな感じですよね。
当初の書店員さんは、他の仕事を切り上げてスタジオに来ていたこともあり、適当に1冊を選んで早く終わらせたい様子だったといいます。ところが幸あれこさんが毎週楽しみに読んできたことを伝えるうちに、その態度が変わっていきました。
上から言われて来ているだけでやる気がなく、適当に1冊を選んで早く終わりたい様子だった
「今度この本選んでみました」と楽しそうに本を選び、笑顔でスタジオに来るようになった
番組としても声や説明に熱がこもり、コーナーはぐっと良くなったそうです。幸あれこさんはこの経験から、誰かがすすめた本を読むことは「読む贈り物」になると感じたといいます。
時間を作るのではなく「人生にビルトイン」された読書
幸あれこさんの話を聞いたイケダハヤトさんは、時間の作り方というレベルを超えていると驚きます。
幸あれこさん自身も「作るっていうか、もうねじ込む」と表現し、しゅうへいさんは「歯磨きみたいなもん」とたとえました。苦痛ではなく、当たり前にやるものという感覚です。
一方で、読んだ内容を1週間ほどで忘れていくという話に、イケダハヤトさんは「いろんな意味ですごすぎだろ」と笑います。それでも幸あれこさんは、ちょっとした言葉をきっかけに思い出すこともあり、どこかで積み重なっているはずだと信じたいと話しました。
漱石から始まったイケダハヤトさんの読書と、今の「まとめ読み」
イケダハヤトさんが本に親しんだのは高校生の頃です。図書館で勉強していたときに夏目漱石を手に取り、面白いと感じたのが入り口でした。大学時代もずっと図書館で本を読み、1冊の本が別の本へとつながっていく面白さに気づいたといいます。
ただし今のイケダハヤトさんは、読書の時間をほとんど取っていないと率直に語ります。
優先順位的に言った時に、本を読むっていうのはどうしても僕の中で下の方に行かざるを得ない瞬間が多いからね。
それでも一度スイッチが入れば読むのがイケダハヤトさんのスタイルです。10冊ほど溜まった本を土日にまとめて読み、半分読んだら残り5冊、という進め方をしています。積読は多いものの、その気になれば消化できるとわかっているので置いたままにしている、と話しました。
毎日必ず読む。寝起きや通勤などの隙間時間に、並行して20冊ほどを読み進める
普段は優先順位が低く読めない。スイッチが入ると溜まった本を土日にまとめて読む
本は「気晴らし」から「読むべきもの」に変わった
しゅうへいさんは、三宅香帆さんの本で印象に残った内容を紹介します。しゅうへいさん自身は細部まで覚えていないと前置きしたうえで、本の位置づけが時代とともに変わってきたという話です。
朗読の時代
1人1冊を持たず、みんなで読み上げる文化だった
黙読と立身出世
明治の立身出世の文脈で、自己啓発のように本を読む人が出てきた
息抜きとしての本
本を読んでいると「遊んでるんじゃねーよ」と言われる、気晴らしの面もあった
現在
本は読むべきもので、読めていない自分は勉強できていないと感じるようになった
しゅうへいさんは、当時の本や新聞は今でいえばTikTokのようなものだったと例えます。そのうえで、自分にとって本を読むことは「崇高なこと」に感じられ、ちゃんと読まなければという感覚が強いからこそ積読になっているのかもしれない、と振り返りました。
幸あれこさんは、ある専門家の未来予測として、本を読むのはこれから富裕層だけになるのではないかという話を紹介しました。ショート動画のようなわかりやすいものはなくならず、時間もお金もかかる長い本を読むのは限られた人になっていく、という見方です。
Audibleで「読むハードル」を下げたしゅうへいさん
しゅうへいさんが読書に入るうえで助けられたのは、Audible ── Amazonが提供する本の朗読音声を聴けるサービス。プロのナレーターなどが読み上げた書籍を、移動中などに耳で楽しめますによる聞く読書でした。セミナーで車移動していた頃、2時間ほどの移動中に2.5倍速で聴けば1冊を聴き終えられたといいます。
完璧に理解していなくても、哲学の本ではこんなことが言われているのかとわかる。しゅうへいさんは番組でも紹介した『暇と退屈の倫理学』をAudibleで聴いて哲学の面白さに気づき、それまでのやる気の作り方やお金の増やし方といった本から、より難しい本にも手が伸びるようになりました。
(読書時間を)取らなくていいんで。今ある時間を置き換えるだけでいいし。
しゅうへいさんは、本を「すごいこと」「読まないといけないもの」と感じている人ほど、通勤時間にAudibleを聴くところから始めればいいと提案します。腰を据えて活字に向き合いたくなったら読めばいい、という考え方です。
読書は優先順位の問題。強制力をどう仕込むか
イケダハヤトさんは、読書時間の問題を優先順位の問題だと整理します。番組で紹介しなければならない本は、優先順位が高いから必ず読む、という自分たちの経験が根拠です。
そこでイケダハヤトさんが挙げたのが、読まざるを得ない強制力のある場を自分の中にインストールするという方法です。例として、番組のコミュニティで課題図書を決め、Zoomで声だけでも必ず感想を言う読書会を作るアイデアを出しました。
隣で読む人がいると、自分も読みたくなる
幸あれこさんは、寝る前に布団で本を読んでいると、以前のしゅうへいさんから「よく読むよね」とからかわれていたと明かします。そのしゅうへいさんが今は一緒に読んでいる理由を尋ねました。
全部読まなくても本って面白いじゃん。当たり前の話だけど。
しゅうへいさんの答えは、1ページでも言葉に触れて面白いと思える経験が増えたこと、そして1冊の中で1つでもポイントを覚えておけば十分だと考えられるようになったことでした。番組を始めて、哲学や宗教のような本が、目の前の現実の考え方や見え方を変えてくれると実感したことも大きいといいます。
中学時代に『指輪物語』を通読した原体験もあるものの、物語の面白さは大学や社会人の読書にはあまりつながらなかった、としゅうへいさんは振り返ります。
話を聞いたイケダハヤトさんは、幸あれこさんが隣で読んでいることが大きいのだろうと指摘します。イケダハヤトさん自身も、妻や娘が本を読んでいると自分も読もうと思うそうです。
みんなが本読んでるとこいたら多分本読むんだよね、人って。
しゅうへいさんも、以前紹介した『ヒデンポテンシャル』に、家庭で親が本を読んだり本の話をしたりすると子どもも本を読むと書かれていたと紹介し、読書は環境要因が大きいと同意しました。ただ核家族化や一人暮らしでは、そうした環境は作りにくいという課題も挙がっています。
ブッククラブと書店、AI時代に本はどうなるか
幸あれこさんは、海外でブッククラブがなくならないのは、みんなで読む楽しさがあるからではないかと話します。イケダハヤトさんも、語り合う楽しさは間違いないとしつつ、それでも優先順位が下がってしまうと付け加えました。
しゅうへいさんは、アメリカでは書店の売り上げが増えているというデータを見た記憶があると紹介します。日本では街から書店が消えていると言われる一方で、ここから本が読まれ始めるのかもしれない、という見方です。
その理由としてしゅうへいさんが挙げたのがAIです。AIの出力を判定するには自分自身が学ばなければならず、本は映画を観に行くような体験になっていくのかもしれない、と話しました。
話題の終盤では、イケダハヤトさんがリスナーにおすすめの本を教えてもらい、自分たちが読んで番外編で感想を話すという企画を提案しました。しゅうへいさんはブロックチェーンで読書会の参加記録を残す「新しい図書カード」のアイデアも出しています。
やりたいことを見つけるための読書
幸あれこさんは、本を読んで自己完結すると無意味に感じてしまいそうでも、人とのつながりがあれば読んだことに意味が見出せるのではないかと話します。
しゅうへいさんはここから、AI時代の読書の意味に話を広げます。Claude Codeなどを使えば、AI秘書や会社組織のような仕組みも文字で指示するだけで作れる時代です。だからこそ大事なのは、何をやりたいと思うかという「願望の厳選」だといいます。
やりたいことはもうこの言えばできちゃうのに、やりたいことがないみたいな。
しゅうへいさんは、本には人口減少のような未来の予測やデータが書かれていて、それを自分の中にインストールすれば、この地域でこれがやりたいという考えが生まれると話します。AIが伸びれば伸びるほど本を読む構造があるのではないか、というのがしゅうへいさんの見立てです。
AIが実行を担う
やりたいことは文字で指示すればAIができてしまう
願望が問われる
何をやりたいかという「願望の厳選」が大事になる
本から考えを得る
本の情報や考え方を取り込み、やりたいことが生まれる
AIと向き合える
自分の考えを持ってAIに対面できる
しゅうへいさんは、LinkedInなどで哲学を専攻した人を採用する企業が増えているという話も紹介しました。最後は、リスナーにおすすめの本やそれぞれの読書時間の作り方を「#ほんつま」で募集し、次回のテーマ「労働の未来」を予告して締めくくられています。
まとめ
3人の読書習慣はばらばらですが、話は「読書時間は優先順位と環境で生まれる」という点に集まりました。毎日読む人も、まとめて読む人も、耳から入る人も、それぞれのやり方で本と付き合っています。
- 幸あれこさんは寝起きや通勤の隙間時間に読み、読書が生活に組み込まれている
- しゅうへいさんは、本を崇高なものと感じる人ほどAudibleなどでカジュアルに始めればいいと提案している
- イケダハヤトさんは、読書は優先順位の問題で、読書会のような強制力のある場が効くと話している
- 隣で誰かが読んでいる環境や、みんなで語り合う場が読書を後押しする
- AIが何でもできる時代こそ、やりたいことを見つけるために本が必要になるという見方も示された







